日本の外貨準備が2月末で1兆ドルを突破したことが明らかに。
日本が2003年?04年春に約35兆円の大規模な円売り・ドル買い介入をしたというのは、要するに、世界中で投売りされるドルを日本政府が必死に買い支えた、ということ。その結果がこれだ。
2月末の外貨準備、1兆ドル突破・ドル安で資産目減り懸念も(日経新聞)
2月末外貨準備高、最高の1兆79億ドル・財務省発表(NIKKEI NET)
いまや、ドル安で1ドル103円から102円になっただけで、1兆円が消えていく計算になる。しかもドル安はさらに続く様子で、アメリカの通貨当局もそれを容認しているようだ(だから、今回は日本政府もドルの買い支えをしないのだが)。しかし、日本には、アメリカ国内で保有しているドル建て債権(ドル建ての外貨準備の大部分は、こういう形で保有されている)を売るだけの根性はない。このままドル安とともに、減っていく資産を握り締めているしか能がないのだろうか。
この点で注目されるのは、EUのアルムニア欧州委員(経済・通貨担当)が1月におこなった、「世界的な株安の原因は、アメリカが貿易赤字と財政赤字を放置していることにある」というアメリカ批判。これは、アメリカが貿易赤字と財政赤字をこのまま続けるなら、ドルは基軸通貨としての地位を失うぞ、という指摘であり、同時に、そうなってもEUはドルを支えたりはしないぞという宣言でもある。ユーロの強さ(ドルは、ユーロに対して激しく下落している)にたいする自信の表明でもあり、ユーロにはいつでもドルにとってかわる準備ができているぞということを示すものでもある。
しかし、残念ながら、円には、そうした準備はまったくできていない。
2月末の外貨準備、1兆ドル突破・ドル安で資産目減り懸念も
[NIKKEI NET 2008/03/07 07:00]日本の外貨準備高が2月末に初めて1兆ドル(約103兆円)を突破したもようだ。1兆ドル超えは中国に次いで2カ国目。過去の大量の円売り・ドル買い介入で政府が抱えたドル資金が膨らんでいる。外貨準備は外国への支払いの備えになる半面、日本の場合は元手となる資金を政府短期証券で調達しているため、国の債務が拡大していることも示す。財政健全化に逆行するとの見方があるほか、ドル安が加速すると資産が目減りするリスクもある。
財務省によると、1月末時点の残高は9960億4400万ドル。7カ月連続で過去最高を更新中で、同省が7日発表する2月末時点の残高は初めて1兆ドルを超えたとみられる。
巨額の外貨準備高が積み上がったのは、政府・日銀が過去に円高を食い止めようと繰り返し実施した円売り・ドル買い介入が主因だ。なかでも2003年から04年春にかけて約35兆円の大規模階級を断続的に実施したことで残高は急増した。その後は市場介入をしていないものの、外貨を米国債などで運用しているため、運用益が積み上がり、残高が増え続けてきた。
政府は円売り・ドル買い介入に必要な円資金を、政府短期証券を発行して、金融機関などから調達してる。外貨準備が増えるのと同時に、政府短期証券の発行残高も増加、国のバランスシートは資産と負債が両建てで膨らむ構図になっている。
産油国などでは資源価格高騰を背景に、輸出代金の収入が増え、政府が保有する外貨も膨らんでいる。東南アジア諸国などでは外貨準備高の増加が自国通貨の安定につながるともいわれる。中国が07年に政府系ファンドを設立するなど、資金を積極的に運用するため政府系ファンドを設ける動きも出てきた。
これに対して、日本では外貨準備の運用先が米国債などドル資産に偏っていることを不安視する声もある。ドル安が進むと、円ベースに換算したときの資産が目減りし、国の財務体質の悪化につながりかねない。
日本でも自民党内の検討チームが年3兆円前後の外貨準備の運用益を活用して政府系ファンドを設立すべきだと求めている。外貨準備を所管する財務省は運用について、「原則は安全と流動性」(篠原尚之財務官)と慎重な姿勢をみせてる。
先進国では多額の外貨準備を保有していない国がほとんど。日本の年間輸入額(約67兆円)を大きく上回る外貨準備をもつことの是非や運用方法の見直しなどを含めて、今後議論が活発になる可能性が大きい。〔外貨準備の概要〕元では国の債務 外貨準備
外貨準備は政府や中央銀行が輸入代金の決済や対外債務の支払いなどに備えて蓄えている外貨建ての資産。日本の場合は過去の円売り・ドル買い介入で円と交換したドル資金が積み上がっている。政府・日銀が市場介入が必要と判断した場合は、まず政府短期証券を発行して、民間金融機関から円を借り入れ、その資金を元手に外為市場で円売り・ドル買いに動く。このため外貨準備が増えるのと並行して、政府短期証券の発行残高(国の債務)も膨らむ。
〔きょうのことば〕主要国・地域の外貨準備高
▽…外貨準備高が世界で最も多いのは中国で、日本は2番目。中国は人民元相場の上昇に歯止めをかける目的で、元売り・ドル買い介入を続けており、外貨準備が膨らんでいる。日本は長年、外貨準備高が「世界一」だったが、2006年に中国に逆転された。残高の上位はアジア諸国やロシアが占める。
▽…東南アジア諸国では1997年のアジア通貨危機の際に外貨不足に陥った反省から、外貨準備を積み上げる動きが広がっている。一方、先進国の多くは外貨準備をあまり持たない。外貨準備が増えると為替リスクが増す。中国が政府系ファンドを設立したのもドル安による外貨準備の目減りへの対応が狙いとされる。
2月末外貨準備高、最高の1兆79億ドル・財務省発表
[NIKKEI NET 2008/03/07 12:58]財務省が7日発表した2月末の外貨準備高は1兆79億8100万ドル(約103兆円)となり、初めて1兆ドルを超えた。前月末に比べて119億3700万ドルの増加で、8カ月連続で過去最高を更新した。
外貨準備が1兆ドルを上回るのは中国に次いで、世界で2番目。中国は2007年末時点で約1兆5300億ドルの残高を抱えている。
残高が増加したのは、外国債券などの運用益に加え、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を背景に米国の長期金利が低下(債券価格は上昇)し、保有する米国債の評価額が膨らんだことが影響した。
積み上がった外貨準備については、自民党内の一部で政府系ファンドを設立して積極運用するよう求める声も上がる。額賀福志郎財務相は同日の閣議後の記者会見で「流動性の確保、安全性、適正な利潤を求めていく形で対応していく」と述べ、慎重な運用が必要だとの考えを改めて強調した。
↓日本の外貨準備高の変化を示すグラフ。毎日新聞による。実際、2003?04年にかけて大幅に増えている。10年前には、外貨準備は2000億ドルだったことを考えると、1兆ドル突破がいかに異常か、よく分かる。
関連ニュース。
中国の外貨準備高、1兆5300億ドル 07年末43.3%増(NIKKEI NET)
東南アジアの外貨準備高、51兆円超・世界3位のロシアに匹敵(NIKKEI NET)
中国の外貨準備高、1兆5300億ドル 07年末43.3%増
[NIKKEI NET 2008年1月11日 20:44]【北京=高橋哲史】中国人民銀行(中央銀行)は11日、2007年末の外貨準備高が前年末比43.3%増の1兆5300億ドルに達したと発表した。人民銀は人民元相場を実勢より低めに抑えるため市場で大量の元売り介入を続けており、外貨準備高の増勢は弱まっていない。
東南アジアの外貨準備高、51兆円超・世界3位のロシアに匹敵
[NIKKE NET 2008/02/14 07:03]【シンガポール=野間潔】東南アジア主要国の外貨準備高が1月末に合計で4800億ドル(約51兆円)を超えた。世界3位のロシア(約4845億ドル)と肩を並べる水準。域内各国の輸出が堅調で経常黒字が増加しているほか、タイやインドネシアで海外からの直接投資が増えた。外貨準備増加はアジア通貨の安定に加え、域内の政府系ファンドの運用資産増加にもつながる。
対象はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国。シンガポールの外貨準備高は1月末に1676億ドルと2006年末から23%増加した。12カ月連続で過去最高を更新した。外貨準備の一部は金融通貨庁(中銀に相当)からの委託で政府系ファンド、シンガポール政府投資公社(GIC)が運用。今後も日米欧などへの投資・運用が拡大するとみられる。