サブプライムローン問題に端を発したアメリカの金融危機をめぐる動きが急だ。11日は、米カリフォルニア州の地方銀行で、住宅ローン大手のインディマック・バンコープが破綻。資産規模は約320億ドル。政府系住宅金融機関の不安もある。しばらく注意しておく必要がありそう。
7/15付日経記事によれば、米政府系住宅金融機関の債券を、日本の3大銀行(三菱UFJ、みずほ、三井住友)だけで4.7兆円、生保4社も住宅ローン担保証券を含めて4兆円以上保有しているらしい。サブプライムローンとは違って、いちおう信用の裏付けがあるとしているが、はたしてどうなるか。
米住宅金融大手破たん 資産320億ドル 銀行では過去3番目(読売新聞)
米インディマックが窓口業務再開、預金引き出しに数百人の列(NIKKEI NET)
〔焦点〕米インディマックが業務停止、さらなる米銀破たんの公算=アナリスト(ロイター)
〔焦点〕米GSE支援策には財政悪化・米資産離れのリスク、ドル見通し改善せず(ロイター)
米GSEの経営危機、今回が最後とはならず=ソロス氏(ロイター)
GSE支援策でも警戒感払しょくできず、投資家責任のあり方に関心(ロイター)
米住宅金融大手破たん 資産320億ドル 銀行では過去3番目
[2008年7月14日 読売新聞]【ニューヨーク=山本正実】米連邦預金保険公社(FDIC)は11日、米カリフォルニア州の地方銀行で、住宅ローン大手のインディマック・バンコープが経営破たんしたと発表した。資産規模は約320億ドル(約3兆4000億円)と、破たんした米銀では過去3番目の大きさ。米銀の破たんは今年5件目となる。
米国では、米連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)など政府系金融機関の株価が、経営の先行き懸念から急落している。インディマックの破たんで、金融不安の再燃に拍車がかかる可能性もある。
インディマックは今後、FDICが管財人を務めて事業を続け、受け皿となる支援企業を探す。
インディマックは個人向け住宅融資事業を展開し、低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」などを貸し付けて事業を拡大してきた。しかし、融資の焦げ付きが急増し、経営が悪化していた。
米銀の破たんとしては、1984年のコンチネンタル・イリノイ(資産336億ドル)、88年のファースト・リパブリック・バンコープ(同333億ドル)に次いで3番目の規模となる。
米インディマックが窓口業務再開、預金引き出しに数百人の列
[NIKKEI NET 2008/07/15 11:24]破綻したカリフォルニア州拠点の住宅金融大手インディマック・バンクコープは週明けの14日、窓口業務を再開した。各店舗は説明を求めたり、預金を引き出したりする顧客であふれた。
11日に金融当局から破綻宣告を受けて以来初の営業日となったこの日、ロサンゼルス郊外の本店には早朝から高齢者を中心とする顧客が詰めかけ、一時、建物の周りに数百人の列ができた。10万ドル(約1060万円)以上の預金は基本的には法的保護の対象外とあって、一様に不安な表情。ある女性はテレビ局の取材に「保護された預金に金利が支払われるのかどうか知りたい」と語った。
同社の資産額は320億ドル。中所得層向けの住宅ローンを得意としていたが、住宅市場のバブル崩壊で融資の焦げ付きが急増していた。今後は、管財人となった米連邦預金保険公社が受け皿機関を探す。(ロサンゼルス=猪瀬聖)
この記事↑によると、そうはいっても日本と違って、いちおう10万ドルでペイオフが実施されているようだ。
〔焦点〕米インディマックが業務停止、さらなる米銀破たんの公算=アナリスト
[2008年 07月 14日 15:32 JST][ニューヨーク 13日 ロイター] 米大手住宅ローン会社インディマック・バンコープが11日に業務停止し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれるなか、さらなる米銀行が経営破たんに陥る可能性が高い。
RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ジェラルド・キャシディ氏は、今後3年間で300行以上が破たんに陥る可能性があると述べた。キャシディ氏は2月、破たんの可能性がある行数を150未満としていた。
サブプライム住宅ローンに集中していた信用損失が、このほかの住宅ローンや、かつて安全と見なされていた債務に拡大するなか、銀行への圧力は増大している。
こうしたなか、投資家は連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の安定性を懸念するようになった。インディマックはこのどちらともつながりはない。
アナリストらは破たんの可能性がある銀行名を言明していないが、複数の中小行と一部の大手行は、株主資本と融資損失引当金の合計に対する不良資産比率が上昇している。
先のキャシディ氏は「建設融資やエキゾチック住宅ローンなどを含むリスク性が最も高い資産に大きなエクスポージャーを持つ金融機関を注視する必要がある」と述べた。
その上で「預金取扱機関にとって止めの一撃となるのは、低コストでの預金獲得が困難となる資金調達危機だ」と話した。
インディマックは、FDICの管理下に置かれる前の取り付け騒動で11営業日に13億ドル超の資金流出に見舞われた。
FDICのベアー総裁は13日、「すべての金融機関預金者は、自身の付保預金が安全であることを理解するべきだ。あなた方が預金している金融機関がFDICの管理下に置かれる可能性は極めて小さい。仮にそうなったとしても、自身の付保預金へのアクセスが事実上中断されることはない」と語った。
さらに「いずれの預金者も付保預金のわずかたりとも失ったことはない。この国の圧倒的多数の金融機関は安全かつ健全だ」と強調した。
インディマックは、かつて米最大手の住宅ローン会社であったカントリーワイド・ファイナンシャルを創設したアンジェロ・モジロ氏とデービッド・ローブ氏により1985年に設立され、借り手に収入や資産に関する書類を求めないオルトAと呼ばれる住宅ローンを専門としていた。
カントリーワイドは1日、米大手行バンク・オブ・アメリカ(BOA)により買収されている。
FDICは3月31日時点で、90行を「問題のある金融機関リスト」に掲載したことを明らかにしていた。これらの機関の資産総額は263億ドルとなる。リストに含まれているインディマックの資産と預金額は、それぞれ約320億ドルと約190億ドル。
1980年代と90年代序盤には2000行をはるかに上回る金融機関が破たんした。キャシディ氏は、貯蓄貸付組合(S&L)の清算を目的に創設された整理信託公社と類似した機関の設立を政府は考慮する必要があると述べた。
キャシディ氏は、銀行の不良資産が有形エクイティと融資損失引当金の合計を超えた場合、経営破たんの可能性は「非常に高くなる」と述べた。
レーデンバーグの銀行アナリスト、リチャード・ボーブ氏は13日付のリポートで、少なくとも90日延滞の融資を含む不良資産が、株主資本と引当金の合計の40%を突破した時点で「危険ゾーン」に突入すると述べた。
ボーブ氏は「官僚が弱気の発言をしているが、システムは80年代終盤から90年代序盤に存在した危機の領域には近づいていない」とする一方、「恐らく、第2四半期の決算は、こうした発言が正しいことを証明するだろう」との見方を示した。
ボーブ氏は3月31日付のFDICのデータを引用し、100余りの大手行の中で、株主資本と引当金の合計の対する不良資産の比率が146.2%のインディマックはリスクが最も高かったと述べた。
〔焦点〕米GSE支援策には財政悪化・米資産離れのリスク、ドル見通し改善せず
[ロイター 2008年07月15日 14:22 JST][ニューヨーク 14日 ロイター] 米政府が、米政府系住宅金融機関(GSE)の米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の支援策を発表したが、これまでのところ米ドルの暗い見通しは改善していない。
米財務省と米連邦準備理事会(FRB)が13日に発表した支援策に、大半の外為トレーダーやヘッジファンドのトレーダーが懐疑的な見方をしている。
米ドルは、支援策の発表を受けていったん上昇した。しかし、外為トレーダーは、政府の支援策には、米住宅価格のさらなる下落、ひいては住宅ローンの焦げ付き増加、ファニーメイやフレディマックが組成したモーゲージ債(MBS)の損失拡大に歯止めをかける効果がほとんどないのではないかと懸念している。
PIMCOのグローバル・インベスター・シリーズFXストラテジーズ・ファンドのポートフォリオ・マネジャー、トーマス・クレッシン氏にとっても、発表を受けたドルに対する楽観的見方を維持できるかどうか判断は難しい、という。
同氏は、11日に米大手住宅ローン会社インディマック・バンコープが事実上経営破たんしたことを踏まえ「ファニーメイとフレディマックの問題は一時的に緩和したかもしれないが、信用危機はまだ続いている」とし「11日はインディマック。あす、あらたな破たん話が出てくる可能性もある。まるで地雷だ。次はどこで爆発するか分からない」と述べている。
13日発表されたGSE支援策では、財務省がファニーメイとフレディマックへの融資枠を一時的に拡大、FRBは両GSEが必要な場合に連銀窓口貸出制度を利用することを認める、といった措置が打ち出された。
PIMCOのクレッシン氏は、ファニーメイとフレディマックの分を除くと、米国の信用供与の規模は減少しており、銀行業界全体としては、バランスシート(貸借対照表)上のレバレッジ外し、つまり帳簿上からリスク資産を減らそうとする動きが出ていることを示す、と指摘した。<支援策が持つ米財政への影響がドルの弱材料に>
今回発表された支援策がドルを圧迫するもう一つの要因は、財政への影響だ。
米財務省の支援措置は、財政赤字を拡大させ、対国内総生産(GDP)比の赤字比率を上げる可能性がある。そうなると、トリプルAの格付けも危うくなる。それは、外国の米財務省証券(米国債)購入意欲を冷やし、ドル相場に悪影響をもたらす事態だ。
ヘッジファンドTGキャピタルのデビッド・グリーンワルド最高執行責任者(COO)は「財政面で納税者にかかる負担が甚大で、それが米経済とドルにとってネガティブとなることを懸念している」という。
支援策発表を受けたドル上昇はたいしたことなく、対円では106.80円をわずかに上回る水準と、上昇幅は75ポイントに過ぎないと指摘。
「オーバーナイトで、ドル/円は106.80円を超えられず、S&P500種株価指数先物は不安定な動きだったのは、支援策への疑念がかなりのものであることを示す」と述べた。
FXコンセプツといった大手ヘッジファンドは、ドルショートを固持し、高金利の新興国通貨を買っている。
FXコンセプツのジョナサン・クラーク副会長は、GSE支援策は、ネガティブ要因を若干排除しただけでリスクがある、とみなし、ドル売り/高金利通貨買いを選好する、としている。
米GSEの経営危機、今回が最後とはならず=ソロス氏
[ロイター 2008年 07月 15日 09:22 JST][ニューヨーク 14日 ロイター] 著名投資家のジョージ・ソロス氏は14日、ロイターとの電話インタビューに応じ、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)など政府系住宅金融機関(GSE)の経営危機について、これが最後にはならないと指摘。
その上で、深刻化する信用危機は、すでに低迷している米経済に影響を与えるとの認識を示した。
米財務省はGSEの信用枠を現行の25億5000万ドルから引き上げるほか、必要に応じ出資する方針を決めた。連邦準備理事会(FRB)も公定歩合での窓口貸出を認める。
ソロス氏は「ファニーメイとフレディマックは流動性の危機ではなく、経営破たんの危機に直面している」と指摘。「両社の借り入れは問題ない。事実、問題がある場合FRBが流動性を供給する」と述べた。
とは言うものの、両社は「極端なレバレッジをきかしている。住宅市場の悪化、住宅差し押さえなどで資本金を上回る損失が出ている」と述べた。
さらに「これは非常に深刻な金融危機であり、我々が生きている時代では最も深刻な金融危機である」と述べた。
その上で「これが実体経済に影響を与えることは不可避だ。影響を与えずにこの種の危機をやり過ごせると考えるのは無駄」と述べた。
GSE支援策でも警戒感払しょくできず、投資家責任のあり方に関心
[ロイター 2008年 07月 14日 15:21 JST][東京 14日 ロイター] 米ベアー・スターンズ救済時と同様、米政府・金融当局が日曜日に米政府系住宅金融機関(GSE)の支援策を発表し、金融市場の一段の混乱防止に動いた。週明けの市場はドルが買い戻され、日本株も金融関連中心に反発。
とりあえず、支援策の実効性を見極めようとのムードになっている。ただ、日経平均が午後にマイナスに落ち込むなど警戒感は払しょくされていない。今後はGSEへの公的資金注入額や時期、その際の投資家責任のあり方がポイントになる、との見方が出ている。<株式は買い戻し中心、海外実需勢の動き鈍い>
株式市場では日経平均はもみあい。GSE支援策の発表で足元の金融不安が後退し、午前は銀行、証券、不動産などを中心に買いが入った。ただ、「売り込まれていたセクターの買い戻しが中心で、海外の実需勢の動きは鈍い」(準大手証券)といい、午後にはマイナスに転じた。
連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の株価が前週に急落し、両社の経営不安が金融マーケットの焦点になっていたが、「米国の金融問題は依然残っている。米当局の今後の動きを見極めるまで株価の上値は重い」(東海東京証券・エクイティ部長の倉持宏朗氏)との指摘もある。
大和総研投資戦略部シニアストラテジストの成瀬順也氏は「GSE救済策は、詳細が詰められていない。ファニーメイやフレディマックの株価が下落し、足元の資金繰りが危なくなり、市場の催促を受けて、また、NYタイムズ紙に米議員がリークしてしまったので、緊急に支援策だけ打ち出した感じがある。この先、具体的にどのように支援していくか不透明感が強い上、クレジット問題の抜本的な解決策にはなっていない」と話している。
商業銀行と異なり破たんを想定したスキームがない投資銀行の処理問題について、米政府内での議論が活発化している。「投資銀行が抱える証券化商品の実態や、破たんに備えたスキームが見えてこなければ、株価の戻りは限定的だ。海外勢もリスク商品への本格的な資金シフトには動きにくいだろう」(米系証券)との声も出ている。
一方、円債市場は小幅安。米国の金融システム不安がいったん和らいだとの見方から、質への逃避を巻き戻す動きが出た。「ロングポジションになっている海外勢がいったん国債先物に利益確定売りを出した」(国内金融機関)といい、中心限月9月限は一時32銭安の135円67銭に下落した。ただ、取引は閑散で今晩の米国市場動向を見極めたいとして、様子見ムードが広がっている。信用不安がくすぶる米金融機関の決算を控えて、下値を売り込むこともできず、地合いの底堅さを感じる相場展開だ。株価が伸び悩むにつれて切り返す場面もみられた。<投資家責任、株式と債券で違い>
三菱UFJ証券投資情報部長の藤戸則弘氏は今回の支援策について、「両社が資金繰りに詰まり破たんすることは当面ないが、一方で必要ならば両社の株式を取得する一時的な権限も保有するとしている。公的資金を投入し全面的な管理下におけば株主資本はゼロになる可能性が大きい。米国市場の反応を見るまでは評価は難しい」という。
東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は「今回の対策の中心は、連銀の窓口貸し出しという短期流動性の供与であり、経営安定化策としては心もとない内容だ」と指摘。「国有化しても株式のき損は避けられず、資本注入すれば、株が希薄化するため、両GSEの株主は救済されないだろう。アジア市場では、外為も株式市場も、支援策を一応好感しているようだが、きょう予定されるフレディマックの30億ドルの短期債発行に対する市場の反応が、本当の試金石となろう」とみる。
一方、債券・クレジット市場では受け止め方は異なり、ある大手証券筋は「GSEの債券は暗黙の政府保証を前提にしている、との受け止め方が一般的。この前提が崩れればシステマティック・リスクが発生する」と話しており、クレジット市場の反応は限られている。
日本のクレジット市場も「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、米政府のクレジット危機回避への強い表明を素直に評価し、目先タイト化の方向で推移する可能性が高い」(トヨタアセットマネジメント投資戦略部シニアストラテジストの濱崎優氏)という。<ドル買いに弾みつかず>
為替市場では朝方、ドル買いが優勢となったものの、その後は動意薄。GSE支援策の発表直後は、ドル/円が106.10円付近から106.71円まで上昇、ユーロ/ドルも1.5960ドル付近から1.5882ドルに下落するなど、ドル買いに転じる動きがみられた。「欧米金融機関の決算を控え、とりあえずは負のスパイラルを断ち切った」(クレディ・スイス証券エコノミスト、小笠原悟氏)「少なくともドル売り材料でもなく目先、ドル売りは回避された」(ドイツ証券シニア為替ストラテジスト、深谷幸司氏)との声が出た。
ただ、両氏ともにドルの本格反発とはみていない。
小笠原氏は「中長期的には公的資金注入も選択肢になり、米国の財政赤字拡大など、新たな懸念につながる要素もある」と話しており、深谷氏は「短期的には105-108円のレンジ内で右往左往する値動き」を予想している。(ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:内田 慎一)
日経の記事はインターネットに流れていないようだ。
金融庁、国内への影響注視 米住宅公社の関連債 保有額を調査
[日経新聞 2008年7月15日付朝刊]経営不安から株価が急落した米住宅金融公社2社が発行する債券について、日本の3大銀行は2008年3月末時点で約4兆7000億円、大手生命保険4社も住宅ローン担保証券を含め4兆円超を保有していることがわかった。日本の金融当局は今のところ影響は不透明と見るが、金融庁は金融機関がどの程度2社の債券を保有しているか実態調査に乗り出す。
3大銀4.7兆円/生保4社は4兆円超 大半は「運用変えず」
金融庁の佐藤隆文長官は14日の記者会見で、2社に対する米政府の支援を「前向きな要素」と評価した。道庁は米市場の混乱が日本の金融システムに直ちに深刻な影響を及ぼすことはないとの立場を崩していないが、健全性に与える影響を慎重に点検する観点から調査することにした。
財務相の杉本一幸事務次官も同日の記者会見で「適切な対策だと歓迎している」と述べたうえで、世界の金融市場には緊張が残っている問いsて「動向を注意深く見守っていきたい」との姿勢を示した。2公社の住宅ローン担保証券は、サブプライムローンと異なり、信用力の高い借り手による「プライム」と呼ばれるローンを裏付けにしている。大幅な価格下落はなさそうで「サブプライム問題とは次元が違う」(大手行)との位置付けだ。債券の償還でも市場参加者は「暗黙の政府保証」を前提としており、「価格が3-5割り下がって減損処理を迫られる可能性はきわめて低い」(外国証券のクレジットアナリスト)という。
このため日本の大半の金融機関は今のところ「運用方針の見直しなど特段の対応は必要ない」などと静観する構えだ。
3大銀が保有する2社の機関債で残高が最大なのは三菱UFJフィナンシャル・グループの3兆3000億円。自己資本のおよそ4割に相当する。みずほフィナンシャルグループが1兆2000億円、三井住友フィナンシャルグループが2000億円で続く。地方銀行では群馬銀行が前期までに関連債券をすべて売却するなど、残高を圧縮する動きも出ている。
生保では機関債と住宅ローン担保証券の合計で再王手の日本生命保険が2兆5000億円超、第一生命保険が約9000億円を保有。明治安田生命保険、住友生命保険を含めた大手4社の合計は4兆円を超える。損害保険でも東京海上日動火災保険などが保有する。証券では大和証券グループ本社が6月末時点で、2社などが保証する住宅ローン担保証券を約1400億円、両者発行の社債を数百億円保有している。
米住宅公社の債券は「米国債に準じる資産で安全性が高い」(大和証券グループ本社財務部)として、日本の金融機関は活発に売り買いしてきた。4月以降、残高を増やした大手銀もある。
もっとも、米国の住宅市況の低迷が長期化する兆候が出ているため、プライムローンの貸倒率が徐々に上昇しているとの指摘もある。将来も安全かどうかは「わからない」というのが本音。米政府の支援策の進展も含めて、今後の市場動向をこれまで以上に注視する必要に迫られそうだ。住宅ローン担保証券 2社保証分、下落リスク低く
公募の投資信託では米国の債券で運用するタイプを中心に米住宅金融公社2社が保証する住宅ローン担保証券を組み入れた商品が少なくない。
ニッセイアセットマネジメントが運用する「パトナム・インカムオープン」(残高約3900億円)では全体の約36%、損保ジャパン・アセットマネジメントの「TCW・MBSオープン」(為替ヘッジなしで約18億円)では同64.1%をそれぞれ組み入れている。フィデリティ投信の「米国投資適格債・ファンド」などでも投資対象になっている。
米公社2社が保証する住宅ローン担保証券は株と違って価格が急落していないうえ、米政府の支援方針の報道が出た先週末はむしろ値上がりした。ニッセイアセットは「割安と分析しており、引き続き保有を継続する方針」と述べ、現時点では投資家への影響は限定的としている。
両者が保証する住宅ローン担保証券は現在、格付けで最高ランクのAAA格だが、「今後、仮に格下げされると値下がりのリスクもある」(みずほ証券の石原哲夫シニアクレジットアナリスト)。その場合はこれらに投資する投信の値下がり要因となる懸念がある。金融庁は投信の運用会社などに対しても運用状況の調査を始めた。日本の金融機関の米住宅公社関連債券の保有残高(億円)
▽三菱UFJフィナンシャル・グループ 3兆3000
▽みずほフィナンシャルグループ 1兆2000
▽三井住友フィナンシャルグループ 2000
▽日本生命 2兆5000超
▽第一生命 約9000
▽明治安田生命 約900
▽東京海上日動 656
▽三井住友海上 450
▽大和証券グループ補社 約1400
(注)3大銀行は機関債の残高、保険は機関債と住宅ローン担保証券の合計残高でいずれも08年3月末、大和証券は住宅ローン担保証券の08年6月末の残高