株の譲渡益・配当を300万円まで非課税にする、という話が急浮上しています。オイラは、こんな金持ち優遇減税は必要ないと思いますが、ちょっと違った角度からの批判が「日本経済新聞」に出ていました。
すなわち、300万円までの株式投資の譲渡益や配当を非課税にするというのは、「超複雑」な税制で「あまりに現実離れしている」というのです。12日付「日本経済新聞」13面の「一目均衡」欄で、同紙編集委員・前田昌孝氏が次のように書いています。
300万円非課税を現実の世界に落とし込んでいったときに、どんな仕組みになるかを麻生氏がどこまで考えているか不明だ。ただ少なくとも、投資家が自分で申告することによって、元本300万円までの株式の譲渡益や配当を非課税にするというのは、実際的ではない。
毎年、確定申告の季節になったら、前年の1年間の売買を振り返り、もうけの大きいものから順に並べて元本が300万円に達するまで非課税扱いの対象銘柄を選定するなど、想像するだけで気が遠くなる。現在の特定口座制度との整合性も取れそうにない。
さらに、株式の配当・分配金100万円まで、譲渡益500万円までは税率10%、それ以上は税率20%という来年1月からの証券税制についても、大きな困難がつきまとっているといいます。
一方で来年からの証券税制改正は撤回すべきだ。配当・分配金は100万円、譲渡益は500万円を境に、税率を10%から20%に引き上げるという。が、中途半端な優遇措置を残す結果、どう考えても正しい納税など期待できない複雑な税制になるからだ。
例えば、グローバル・ソブリン・オープンなど外債ファンドを千数百万円持つ人は、分配金が100万円を超え、申告納税が必要になる。誰かが「申告が必要」などと注意を促すわけではない。自分で「投信の普通分配金」と、「一銘柄当たり年1万円を超える株式配当」を足し合わせ、100万円を超えたら要申告だ。
合計額が110万円になった場合、源泉徴収されなかった1万円の追加納税だけでは済まない。専業主婦ならば夫が配偶者控除を受けられなくなる。国民健康保険の加入者ならば保険料がぐっと跳ね上がる。金額次第では高齢医療費の自己負担割合も3割になる。銀行などで買った投信を値上がりしたからといって解約する場合も、要注意だ。現在は解約時に税金が源泉徴収される。来年からは特定口座に移した後に解約した場合を除くと、解約時に税金は源泉徴収されず、自分で確定申告して納税する義務が発生する。
「超富裕層でもないのだから、申告を怠っても見つからない」などと考えるのは甘い。来年からは少額でも支払調書が税務署に提出される。「外債ファンドなどはもう買えない」。野村証券ではこんな顧客も散見されるという。
準備中の難解な税制は実行に移さずにお蔵入りすべきである。麻生税制の導入とセットで、現行10%の税率を一律に高めてもいいのではないか。貯蓄から投資へ、あとは割り切りだ。
前田氏は、譲渡益、配当300万円までの非課税の代わりに、入金限度額300万円程度の「非課税投資口座」をつくってはどうかと提案しています。その口座内であれば、どんな売買をしようと、譲渡益も配当も投信分配金も、いっさい課税しない、口座内での再投資も自由、という制度です。
まあ、それがいいかどうかは別にして、300万円までの非課税などという制度が、実際に証券投資をやっている側からすれば、とてつもなく面倒な制度であることだけは確かなようです。手続きが面倒になれば、「つい、うっかり」というのも含めて、税金を正しく納めないという事態を増やすことも明らか。そういう、ややこしい制度は、やっぱり中止すべきではないでしょうか?
本来は、投資益を含めた総合課税を目指すべきですが、仮に、源泉分離課税にするのであれば、税率は一律として、現行10%の税率を引き上げるべきでしょう。