経営危機に陥っていた米保険大手AIGに、850億ドルの公的資金が投入されることに。850億ドルの貸付は、2年間で返済されるらしい。今後は、公的管理のもとで、資産の切り売りが始まる。
リーマン・ブラザーズとの最大の違いは、AIGがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)というかたちで、企業の貸付債権に一種の貸し倒れ保障を与えていたこと。そのAIGが破綻すると、逆に信用不安が拡大すると判断されたのだろう。
しかし問題は、これでアメリカの信用不安が解消するかどうかだ。信用不安が広がることを、とりあえずおさえたかもしれないが、信用不安そのものが解消したわけではない。
AIG:FRBと米連銀が約9兆円融資 公的管理下で再建(毎日新聞)
AIG:FRBがリストラ促す 日本国内子会社売却も(毎日新聞)
日本CDS指数がAIG救済で急低下、タイト化基調続かない可能性(ロイター)
AIG:FRBと米連銀が約9兆円融資 公的管理下で再建
[毎日新聞 2008年9月17日 11時37分(最終更新 9月17日 13時14分)]【ワシントン斉藤信宏】米連邦準備制度理事会(FRB)とニューヨーク連銀は16日、経営危機に陥っていた米保険大手AIGに対して最大850億ドル(約9兆円)を融資する方針を決めた。期間は2年。融資と引き換えに、米政府がAIG株式の79.9%を取得する権利を確保し、公的管理下に置いて経営再建を支援する。AIGの資産を事実上の担保とすることで納税者の利益を守る。保険契約は保護される見通し。低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題に伴う金融危機は、米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻に続き、AIGも政府が管理下に置いて救済するという深刻な事態に発展した。
FRBは「AIGの破綻は金融市場での資金調達コストの急上昇につながる恐れがあった」と支援に動いた理由を説明した。米金融当局による支援で、AIGは経営破綻を回避できると見られるが、政府による株式取得は、既存の株主価値の大幅な希薄化につながる恐れがある。
AIGはリーマンの経営破綻を受けて資金繰りが悪化、さらに米格付け会社が相次いで格付けを引き下げたため、保険業務上必要な高い格付けを維持できない懸念が強まっていた。リーマン破綻直前の14日には、格付けの維持に向けて100億ドル規模の増資計画とリストラ策に加えて、FRBへの400億ドルのつなぎ融資申請などを発表したが、FRBから一旦、融資を断られていた。
AIGはこれまでにサブプライム問題に絡む損失を計330億ドル(約3兆4600億円)計上しており、08年4?6月期まで3四半期連続の赤字に転落していた。サブプライム絡みの住宅ローン担保証券(MBS)を大量に保有しており、追加の評価損発生への懸念が強まっていた。【ことば】アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)
1919年創業。本社・ニューヨーク。130以上の国・地域に進出し、従業員は約11万人。保険業務のほか、デリバティブ(金融派生商品)取引や金融商品の保証などを幅広く展開してきたが、金融市場の混乱に直撃され、巨額のの損失を計上した。日本では、生命保険3社(アリコジャパン、AIGスター、AIGエジソン)と損害保険2社(アメリカンホーム、AIU)を運営し、富士火災とジェイアイ傷害火災の最大株主。破綻した旧千代田生命保険など国内生保の積極的な買収を進めるとともに、格安の保険料を売り物に業績を伸ばし、生保3社の保険料等収入は国内大手4社に次ぐ規模。
AIG:FRBがリストラ促す 日本国内子会社売却も
[毎日新聞 2008年9月17日 13時32分]米連邦準備制度理事会(FRB)は、救済策を発表した声明で、「融資はAIGの資産売却で返済される」と、AIGに積極的なリストラを促した。AIGは日本でアリコジャパンなど生命保険3社とアメリカンホームなど損害保険2社を運営しており、こうしたグループ会社の売却を迫られる可能性がある。
いずれも保険事業は順調なため、売却が決まれば、国内大手生損保や銀行などを含め、激しい争奪戦が繰り広げられるのは必至。国内生損保業界の大規模な再編につながるとみられる。ただ、アリコが保有するAIG株の価値が大幅に下落しており「本業はいいが、財務面での劣化が心配で簡単には飛びつけない」(大手生保)との見方もある。【辻本貴洋】
日本CDS指数がAIG救済で急低下、タイト化基調続かない可能性
[ロイター 2008年09月17日 14:49 JST][東京 17日 ロイター] 日本のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、世界的な金融不安の広がりを警戒する取引が前日勢いを増し、大幅にワイド化していた指標iTraxxJapanシリーズ9のプレミアムが17日、急低下した。
マーケットで破たんが懸念されていた米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N: 株価, 企業情報, レポート)が米政府から救済されることを材料視した。市場では、さらなるマーケットの混乱を回避できたとの見方がある一方で、AIGの救済だけでは、金融不安を払しょくできずタイト化の基調がこのまま続く可能性は低いとの見方も出ている。
米連邦準備理事会(FRB)は16日声明を発表し、ニューヨーク連銀がAIGに最大850億ドルの有担保融資を実施すると表明した。FRBは、世界経済に悪影響を及ぼす可能性のあるAIGの「無秩序な破たん」を回避することが狙いと説明している。
CDS指数シリーズ9は17日、前日に付けた最高値175bpから一気に35bp低下し、140bpで取引される局面があった。米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破たんして信用収縮への警戒が強まっていた局面で、米政府によるAIGの救済は、市場を落ち着かせる効果を生んだ。ただ、マーケットでは、AIGの救済だけでは、金融不安を払しょくできないとみている。AIGの救済について、トヨタアセットマネジメント・投資戦略部・シニアストラテジストの濱崎優氏は「AIG救済はクレジット市場にタイト化要因となろうが、信用リスクへの警戒がピークアウトしたとは言い切れず、タイト化の基調がこのまま続く可能性は低いとみている。リーマン・ブラザーズを破たんさせ、AIGを救済することを決めた米政府の金融機関救済に対する姿勢がはっきりしない点も気がかり」と述べた。シリーズ9のプレミアムは140bpを付けたのち、150-160bpの水準に上昇している。
前日急激にワイドしていたセクターのプレミアムが17日は小動きとなっている。金融セクターでは、アコムが16日比較で横ばい圏となる200bpと190bpでの取引。銀行のドル建て劣後の気配もみずほコーポレート銀行が165-240bp、三菱東京UFJ銀行が150-200bp、三井住友銀行が150-190bpと横ばい。輸出関連は日産自動車が130bpでの取引、ホンダが50-73bpの気配と、いずれも横ばい。(ロイター日本語ニュース 伊藤 武文記者)
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