日本は再び「周旋屋」天国となった!!

『週刊コミックバンチ』2008年10月17日号

『コミックバンチ』に連載中のマンガ「蟹工船」。今週は第6話「組織の誕生」。いよいよ労働者がつながり始めたところです。次回からいよいよ佳境に入るようです(ただし次号は休載)。

で、毎回続けて掲載されている「蟹工船特別コラム」。今回は、NPO法人「もやい」事務局長の湯浅誠氏が、現代の派遣会社は、『蟹工船』に登場する周旋屋(しゅうせんや)のことだとズバリ指摘されています。

日本は再び「周旋屋」天国となった!!

湯浅 誠(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長)

 「周旋屋に引っ張り回されて、文無しになってよ」
 『蟹工船』冒頭に、そんなセリフが出てくる。「周旋屋」というのは、仕事を紹介する斡旋業者、今で言うブローカーだ。昔からずっと、そういう連中は「周旋屋」とか「口入屋」とか、いろんな言い方で呼ばれていた。日雇い労働者の街(「寄せ場」と言われる)では「手配師」とも呼ばれる。
 今でも、海外から来る外国人研修生などは、こうしたブローカーに騙されて、高い仲介料を取られたり、来てみたら聴いていた労働条件と全然違ったり、パスポートを取り上げられたり、とひどい目に遭っている。連中は、「仕事が欲しい」「仕事しないと食っていけない」という“NOと言えない労働者”の弱みに付け込んで、騙して、搾り取る。
 こんな連中がはびこっているようでは、正常な労働市場は形成されない、働く者の権利が守られないということで、戦後、私的ブローカーは禁止された。職業紹介は、ちゃんとした公的機関(職業安定紹介所=職安。今のハローワーク)じゃないとやってはいけない、ということになった(職安法44条)。
 しかし1985年、戦後40年間違法だった私的ブローカーが解禁され、合法となった。労働者派遣法だ。当初、許されていたのは専門的な13業種(通約など)だけだった。そうした業種の労働者なら「企業と高い交渉力を持つ」から(当時の審議会会長・高梨昌)、ブローカーを認めても労働市場がぐちゃぐちゃになることはないだろう、という読みだった。その人たちは、ひどい労働条件だったら拒否できる。つまり“NOと言える労働者”だから、というわけだ。ところが、96年には26業種に拡大され、ファイリングなどの「高い専門性を有する」とは言えない業種が紛れ込んできた。そして99年には限られた業種以外は原則OKとなり(ネガティブリスト化)、04年には製造業にも解禁された。
 こうして、日本は再び「周旋屋」「口入屋」天国となり、「仕事しないと食っていけない」という“NOと言えない労働者”がその餌食になって、35?40%に上るような中間マージンや、わけのわからない「データ装備費」などをかすめ取られた。「周旋屋」のボス・折口雅博は、そのお金で自家用ジェット機に乗り、六本木ヒルズに住み、そして日本経団連の理事にまで登りつめた。まさに『蟹工船』時代の復活だ。
 いま話題になっている日雇い派遣労働規制は、こうした経緯に立って「周旋屋」をどうするか、という話だ。30日未満の「日雇い」部門だけを規制すればいいというものではない。問題は「日雇い派遣」の「派遣」部分、つまり「周旋屋」のマージンに規制をかけられるか、にかかっている。そこが『蟹工船』の世界に留まってしまうかどうかの分水嶺だ。

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  1. ピンバック: ポラリス−ある日本共産党支部のブログ

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