最近買ったもの…

え――っと、前に買った本をろくに読んでもいないのに、またいろいろ買い込んでしまいました。

  • 纐纈厚『文民統制 自衛隊はどこへ行くのか』(岩波書店、新刊)
  • ロバート・サーヴィス『ロシア革命 1900-1927』(岩波書店、新刊)
  • 島田俊彦『関東軍 在満陸軍の独走』(講談社学術文庫、新刊)
  • 戸田芳美『初期中世社会史の研究』(東大出版、1991年=古本)
  • 戸田芳美『日本中世の民衆と領主』(校倉書房、1994年=古本)
  • 永原慶二『日本封建制成立過程の研究』(岩波書店、初版1961年=古本)
  • 永原慶二『<新装版>日本封建社会論』(東大出版、初版1955年、新装版2001年=古本)
  • 永原慶二『荘園』<日本歴史叢書>(吉川弘文館、1998年=古本)
  • 吉岡吉典『日清戦争から盧溝橋事件』(新日本出版社、1998年=古本)

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奥平康弘『「萬世一系」の研究』

奥平康弘『「萬世一系」の研究』

 最近、女性の皇位継承を認めるかどうかの議論がクローズアップされ、政府も有識者会議を設けて議論を始めています。しかし、憲法学の泰斗である著者は、単純に「女帝」の是非を論じる訳ではありません。

 歴史的にみれば、女性の天皇もいましたが、女性天皇の子どもが皇位を継いだことはなく、天皇の地位が男系によって受け継がれてきたことは事実。明治の皇室典範では、それを「男系男子」に限るとした訳ですが、著者は、明治皇室典範制定過程の詳細な検討から、「男系男子」への限定が「庶出」(つまり正妻=皇后以外の女性を母親とする天皇)の容認と一体のものであったことを明らかにします。ところが、戦後、国会が審議・制定することになった現在の皇室典範では、嫡出(正妻の子ども)の男系男子に限られています。現在の「お世継ぎ」問題は、そこに端を発しているのですが、制定当時の国会審議の検討から、当時、支配層は、そういう事態が起こりうることは認めつつも、「当分、そんな事態は起こらないから大丈夫」と事実上先送りしたことが分かります。

 もちろん著者の主張は、庶出を容認せよということではありません。もはや時代は庶出の「象徴」を容認するような状況にはありません。しかし、だからといって「女帝」を認めよ、「男子に限るのは女性差別だ」というだけでは、憲法論議として不足であると著者は指摘します。象徴天皇という制度そのもののもつ不平等さを問題にすべきだというのです。
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子安宣邦『国家と祭祀 国家神道の現在』

???宣邦『国家と祧??』

本書は、青土社『現代思想』2003年7月号〜2004年4月号に連載されたものをまとめたもの(2004年7月刊)。著者は、大阪大学名誉教授で、元日本思想史学会会長、新井白石、荻生徂徠などの研究者として著名ですが、最近は、近代以降の日本思想に対象を移し、「日本的なるもの」の問題機制を鋭く問いつづけておられます。

さて、本書をつらぬく著者の視角は、次の一文にあると思います。

国家神道とは、ただ過去に尋ねられるべき問いではない。国家神道への問いは、日本という国家の祭祀性・宗教性をめぐってわれわれがなお発し続けねばならない、あるいはまさに現在発せねばならない緊要な問いとしてある。(本書、10?11ページ)

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木村敏『関係としての自己』についての野田正彰氏の書評

木村敏氏の『関係としての自己』(みすず書房、2730円)についての書評を、精神科医の野田正彰氏が「東京新聞」に書かれています。

その末尾で、野田氏は、次のように指摘されています。

ヴァイツゼッカーは「生それ自身は死なない、個々の生き物だけが死ぬ」といって、ナチによる精神障害者の殺害を受け入れていった。著者が高く評価する西田幾多郎にしても「皇室は主体的一と個別的多との矛盾的自己同一としての自己自身を限定する世界の位置にある」と述べて、天皇教に擦り寄っていた。こんな他者や歴史との間にある自己は、著者の関心の外にあるようだ。

これを「無い物ねだり」と言って非難することは可能ですが、やはり、今日、ハイデガーやヴァイツゼッガー、西田幾多郎などに言及するのであれば、こうした点を問わない訳にはいかないでしょう。野田氏だからこそできる問いかけだと思います。

※このヴァイツゼッガーは、精神医学者のヴィクトル・フォン・ヴァイツゼッカーのこと。「荒れ野の40年」の演説をしたリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー元ドイツ大統領とは別人ですので、お間違えのないように。

アフリカについて考えた/勝俣誠『現代アフリカ入門』(岩波新書)

勝俣誠『現代アフリカ入門』

あらためてアジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国の動きが注目されていますが、アジア諸国やラテンアメリカ諸国の動きは、直接の交流もあって、だいぶ分かってきたのにたいして、まだまだよく分からないのがアフリカ諸国。直接の交流も、地中海沿岸のイスラム教諸国の一部と南アフリカ共和国に限られています。そこで、もう14年前の本になりますが、勝俣誠さん(明治学院大学)の岩波新書『現代アフリカ入門』を読んでみました。

結論からいうと、同じ新興独立国といっても、アジア諸国とアフリカ諸国とではずいぶんと様子が違うということがよく分かりました。第2次世界大戦以前から独立運動の歴史をもつアジア諸国にたいし、アフリカ諸国では、50年代、60年代になって突如「独立」が浮上してきたといいます。また、経済発展という点でも、独立後、それなりに自生的な発展の道をきりひらいてきたアジア諸国と、アフリカ諸国の現状とは対照的です。

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今村仁司『マルクス入門』

筑摩書房のマルクス・コレクションを読んでいる手前、仕方なく購読。

結論からいうと、あれこれ今村流マルクスを描いていますが、マルクスの全体像が見えてこないだけでなく、今村氏がいまマルクスを通して何を主張したいのかさえよく分かりませんでした。

全体として、『資本論』の話は、一部を除いて、主には価値形態論までで終わっており、たとえば未来社会における個人所有の復活という問題でも、「いったんは私的所有へと変質し頽落した個人所有を、もう一度共同所有と結合する」「個人所有と自由な個人を優位におき……共同所有を劣位におく仕方で、個人と共同体を結合する」など述べるだけで、意味不明というか、個人所有と共同所有の関係が問われている時に、その関係を明らかにしないままに、その周辺をあれこれさまよっているだけです。

とくに最後の2章は、「第4章と第5章は、いささか自説を押し出す試みをしてみた」(あとがき)だけあって、出来が悪いですね。

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日本中世史研究をふり返る

雑記@史華堂: 史学史を学ぶで、『歴史評論』6月号「特集 日本中世史研究の現代史」を知り、さっそく購入しました。特集は以下の論文。

  • 鈴木靖民、保立道久「対談 石母田正の古代・中世史論をめぐって」
  • 池 享「永原慶二 荘園制論と大名領国制論の間」
  • 伊藤喜良「非農業民と南北朝時代――網野善彦氏をめぐって」
  • 木村茂光「戸田芳実氏と在地領主制論」
  • 竹内光浩「河音能平『天神信仰論』のめざしたもの」

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伊勢崎賢治『武装解除』

伊勢崎賢治『榨??解除』本カバー

現在、立教大学教授の伊勢崎賢治さん(正確には、伊勢崎の「崎」は上が「立」)は、国際NGOのシエラレオネ現地事務所長を皮切りに、西アフリカで4年間活動した後、1999年10月に始まった東チモールでの国連PKOに参加し、インドネシアと国境を接するコバリマ県で国連暫定政府から全権委任された知事として地方行政と、国連平和維持軍、文民警察を統括。2001年5月からは、ふたたびシエラレオネの国連PKOのミッション(UNAMSIL)のDDR(Disarmament〔武装解除〕、Demobilization〔動員解除〕 & Reintegration〔社会再統合〕)の責任者として、武装解除を遂行。帰国後、2002年4月から立教大で教鞭を執るが、2003年2月から1年間、日本政府がアフガニスタンですすめる「復員庁構想」の統括者を務めた、という経歴を持っておられます。

最初、書店でこの本をみたときは、帯に書かれた「職業:『紛争屋』」というコピーから、勝手に“軍事オタク”の本だと思い込んで手にも取らなかったのですが、5月13日付「東京新聞」夕刊にのった同氏の「軍事のコストと文民統制」を読んで認識を一新。さっそく買い込んで読んでみました。
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いろいろ買い込んだもの

えっと、備忘録です…。

まず憲法関係。3冊目のは去年出たものだけど、買い忘れていたのを発見!

  • 全国憲法研究会編『法律時報増刊・憲法改正問題』
  • 『ジュリスト』2005年5月1・15日合併号「特集・憲法改正論議の現在」
  • 『法律時報』2004年6月号「特集・国際社会と憲法9条の役割」

その他に。

  • 伊勢崎賢治『武装解除 紛争屋が見た世界』(講談社現代新書、2004年12月刊)
  • 朝日新聞「自衛隊50年」取材班『自衛隊 知られざる変容』(朝日新聞社、新刊)
  • 田沼武能『難民キャンプの子どもたち』(岩波新書、2005年4月刊)
  • 莫邦富『日中はなぜわかり合えないか』(平凡社新書、新刊)
  • 宮本正興・松田素二編『新書アフリカ史』(講談社現代新書、1997年7月刊)
  • 暉峻淑子『格差社会をこえて』(岩波ブックレット、2005年4月刊)
  • 今村仁司『マルクス入門』(ちくま新書、新刊)

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昨日買った本

もうちょっと節約モードでないとダメなんですが、ついつい買ってしまいました。

  • スペンサー・R・ワート『温暖化の<発見>とは何か』(増田耕一・熊井ひろ美共訳、みすず書房、2005年3月刊、本体2800円、ISBN4-622-07134-7)
  • 相沢幸悦『アメリカ依存経済からの脱却』(NHKブックス1027、2005年4月刊、本体970円、ISBN4-14-091027-5)

ということでさっそく読んでしまいました

面白そうな本を見つけたと言った三戸祐子さんの『定刻発車』ですが、さっそく読み終わりました。

JR東日本の在来線の90.3%が「1分違わず」正確に発着しており、1列車あたりの遅れは平均0.8分という日本の鉄道の正確さ。それが当たり前になっているから、3分でも遅れようなら、乗客はイライラし始める…。

こんな“日常”がどうして誕生したか? 著者は江戸時代にまで遡って文化的背景を探るとともに、技術的側面に光を当てて、そうした「正確な運行」がどうして生み出されてきたかを明らかにしています。面白いと思ったのは、日本の鉄道が正確に発着するのは、乏しい施設・車両で、たくさんの乗客をさばかなければならなかったという日本の鉄道の“後進性”にあるという指摘です。

ということで、普段“当たり前のこと”として見過ごしているようなことに背景に、実は、膨大な蓄積やらシステムがあることをみせてくれるので、とても面白く読めます。ただし、いかに正確に運行されているか、ということの解明に力点が置かれているので、当然のことながら、JR宝塚線の脱線事故のような事態がなぜ生まれたのか、というトラブル発生の側面は、ほとんどまったくといっていいほど触れられていません。その意味で、JRは素晴らしいという話で終わっているのが、勿体ないという感じです。

面白そうな本見っけ!

定刻発車

三戸祐子著『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』(新潮文庫、2005年5月、税別590円)。

著者は慶応大経済学部卒、数理経済学専攻ということで、時間と経済との関係を研究しているらしい。親本は、『定刻発車 日本社会に刷り込まれた鉄道のリズム』(交通新聞社、2001年2月刊)。文庫化にあたり、改題、加筆・改稿したとあります。

とりあえず面白そうなので読んでみます。(^^;)

著者のホームページ

もう1つ読みたい本

『温暖化の〈発見〉とは何か』

昨日の「毎日新聞」に書評が載っていたもの。

スペンサー・R.ワート著『温暖化の〈発見〉とは何か』(増田耕一・熊井ひろ美訳、みすず書房、2005年3月刊、税込2,940円)

化石燃料の消費によるCO2の増加ということがなくても、これまでも地球は、何度かの氷河時代(そのなかにも氷期・間氷期がある)があり、寒冷化・温暖化を繰り返してきました。だから、いまおこっていることが、本当に化石燃料の大量消費による「温暖化」なのか、いまだに異論を唱える人もいるほどです。それだけに、「温暖化」問題がどのように明らかにされてきたかは、興味あるテーマです。

グレッグ・ルッカ『耽溺者』

グレッグ・ルッカ『耽溺者』

同じ作者のボディガード・アティカス・シリーズの番外編。アティカスの彼女・私立探偵のブリジッド・ローガンを主人公にしたお話。薬物中毒だった頃の親友に助けを求められ、自ら囮となって麻薬密売組織に単身乗り込む…。

ということで、女性が主人公となったミステリーもの好きな私としては、アティカス・シリーズにはまったく手をつけなかったのですが、この番外編にはちょい期待して手に取ってみました。お話自身はなかなか面白いし、元ジャンキーで、現在は私立探偵というヒロインは、そうとうぶっ飛んだキャラで、なかなか魅力的。
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吾妻ひでお『失踪日記』 断然、読むべし!

全部実話だそうです

あの!伝説の漫画家・吾妻ひでおが、突然失踪。そして、自殺未遂、路上生活、肉体労働、アルコール中毒で強制入院。それを全部漫画にしてしまった…。

これを読まずして、いったい何を読む!

【書誌情報】著者:吾妻ひでお/書名:失踪日誌/発行:イースト・プレス/定価:本体1140円+税/ISBN4-87257-533-4

頭の痛い話

私は頭痛持ちです。近視がひどいこともあって、仕事がつんできたりすると、目がゴロゴロして、何とも言えない頭痛がしてきます。また、首、肩、背中などがカチカチに凝ってしまい、目、頭、肩と三重苦に、ほんとに涙が出そうになるときもあります。

という訳で、古井倫士著『頭痛の話』(中公新書、2005年2月刊)を読んでみました。他の病気や怪我で頭が痛いという場合を除けば、頭痛は、片頭痛と緊張型頭痛との2つに大きく分かれるそうです。
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花見の前に…

佐藤俊樹著『桜が創った「日本」』

そろそろ東京でも桜が咲き始めましたが、今年のお花見の前に、ぜひ読んでおきたいお薦めの本があります。佐藤俊樹著『桜が創った「日本」』(岩波新書)です。

いま「桜が咲き始めた」と書きましたが、その桜は何か?といえば、気象庁の開花宣言でも基準にされているソメイヨシノです。葉が出る前にいっせいに花を咲かせ、公園や並木通りでは、文字どおり、煙るように一面の花となるソメイヨシノ。「桜」といわれれば、誰もが、こうした満開のソメイヨシノを思い浮かべるに違いありません。
また、60年前までは、「同期の桜」などといわれ、パッと咲き、さっと散る、散り際の良さが「日本人らしさ」といわれました。

しかし、こうした桜の景色は、実は、ごく最近(著者は、大正以降だといっています)のことなのです。
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大橋英夫著『現代中国経済論』

大橋英夫著『現代???経済論』

大橋英夫氏の『現代中国経済論』(岩波書店)を読みました。

日本人の書く中国論は、中国「脅威」論だったり、あれこれの事例をあげた「崩壊」論だったりと、およそ初めっからバイアスのかかった著作が多いのですが、この本は、「改革開放」政策のもとで中国経済がどうなっているか、全体を俯瞰しつつ、発展の方向性と問題点を率直に指摘しています。

その内容は、目次をみてもらった方が早いかも。

  • 序章 全面的な「小康」社会の実現に向けて
  • 第1章 経済成長の検証
  • 第2章 経済改革の深化
  • 第3章 市場経済の制度化
  • 第4章 国有経済の退出
  • 第5章 経済格差の拡大
  • 第6章 「社会安全網」の構築
  • 終章 「全球化」と構造調整

で、面白いのは、第6章「社会安全網」の構築が、「現代中国経済論」の“落としどころ”になっていること。
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山家悠紀夫『景気とは何だろうか』

山家悠紀夫『景気とは何だろうか』

ここ最近の日本経済の動きを知りたいと思って、山家悠紀夫さんの新著『景気とは何だろうか』(岩波新書、2月刊)を読んでみました。序章+第1章?第6章+終章の8章立て。前半の第1章?第3章は、「景気とは何か」「景気循環とは何か」「景気はなぜ循環するのか」という、どちらかといえば一般論的な内容。それにたいし、第4章以降の後半は、1997年以降の日本の景気の動き方が、実は少し変わってきたのではないか、というお話になっています。

後半では、1997年はほんとは景気上昇期だったのに、いわゆる橋本内閣の9兆円国民負担増(消費税の3%→5%への引き上げ、医療費の本人負担1割→2割など)という政策によって意図せざる景気後退が引き起こされた、と指摘。そのため、次の小渕内閣では、財政再建が棚上げされ、公共事業拡大、政策減税(こんど打ち切られた定率減税もこのときのもの)などがおこなわれ、1999年、2000年と短い景気拡張を迎えたが、2002年にアメリカの景気後退と小泉内閣の「構造改革」政策によって激しく落ち込んだこと。その後、輸出に導かれてゆっくりと回復に向かったこと(というより、日本の景気が輸出の伸びに左右されるようになったこと)などが明らかにされています。
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