小和田哲男『戦国の城』

小和田哲男『戦国の城』(学研新書)

お城といっても、江戸時代のお城ではなく、中世、戦国時代のお城の話です。

戦国時代のお城は僕も大好きで、たとえば東京周辺には、八王子城武蔵滝山城(ともに八王子市)とか鉢形城(埼玉県寄居町)など、後北条氏のお城があちこちにあります。

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共同通信社憲法取材班『「改憲」の系譜』

共同通信社憲法取材班『「改憲」の系譜』(新潮社)

共同通信憲法取材班がまとめた『「改憲」の系譜 9条と日米同盟の現場』。僕は、この手の問題で、これまでどういうことが明らかになっていて、今回の取材でどういうことが新しく解明されたのか、といったことにあまり詳しくないので、細かいことはよく分かりませんが、それでも、第2章「制服組の台頭」を読むと、制服組があからさまに政治に関与し始めていることに恐ろしささえ感じます。

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この間読んだもの 賃金論と富塚恐慌論

1つめは、60年代末に出た『講座 現代賃金論』(青木書店)の第1巻「賃金の理論」。いまさら、40年近く前の本をなぜと思われるかも知れませんが、前にも書いたように、賃金論そのものを勉強したことがないので、とりあえず昔の講座あたりをということで、選んでみました。

もう1つは、これも古い本ですが、富塚良三氏の『増補 恐慌論研究』(未来社、初版1962年、増補版1975年)。こっちも前に書いたことがありますが、富塚氏の均衡拡大再生産軌道を勉強し直すためです。

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いまどきの「悩み」の正体

香山リカ『「悩み」の正体』(岩波新書)

香山リカさんの最新著『「悩み」の正体』(岩波新書)を読んでいます。香山リカさんの本は、とりあえず書いたを集めた読み物と、ちゃんと考えて書かれた著作とがあります。こんなふうに書くと、著者からは“そんなことはない”と言われそうですが、なんにせよ、この本は後者、読んでおく値打ちありの本だと思います。

とくに注目されるのは、「まえがき」です。そのなかで、香山さんは、昔ならクリアできたようなことで「悩み」の相談にする人が増えていると言って、こんなふうに書かれています。

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最近買った本

富塚良三『再生産論研究』(中央大学出版部)富塚良三『経済原論(簡約版)』(有斐閣)
1月いらい最近買った本の整理をしてませんでした。ということで、ちょっと整理のために。

  • 富塚良三『再生産論研究』(中央大学出版部)
  • 富塚良三『経済原論(簡約版) 資本主義経済の構造と動態』(有斐閣)
  • 田中彰『近代天皇制への道程』(吉川弘文館、新装版)
  • 吉岡吉典『総点検 日本の戦争はなんだったのか』(新日本出版社)
  • 歴史教育研究会・歴史教科書研究会編『<日韓歴史共通教材>日韓交流の歴史 先史から現代まで』(明石書店)
  • ひらかれた歴史教育の会編『「新しい歴史教科書」の〈正しい〉読み方』(青木書店)

まだまだ続く…

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子安宣邦『日本ナショナリズムの解読』

子安宣邦『日本ナショナリズムの解読』(白澤社)

子安宣邦氏 ((大阪大学名誉教授、日本思想史学会元会長))の新著『日本ナショナリズムの解読』(白澤社)をさっそく読み終えました。

「日本ナショナリズム」なるものを支えた言説のあり方を、本居宣長から福沢諭吉和辻哲郎田辺元、橘樸(たちばな・しらき)へと、フーコー流「知の考古学」的手法を用いて追跡したものです。本居宣長や幕末の水戸学は、子安氏のホームグラウンドで、『古事記』から由緒正しい「やまとことば」を訓み出す宣長の手法の分析などは、くり返し指摘されてきたところですが、この本で、面白いと思ったのは、2つ――福沢諭吉の『文明論之概略』の分析和辻倫理学にたいする批判です。

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数学する遺伝子――数学はパターンの科学

キース・デブリン『数学する遺伝子』(早川書房)

もう大分前に読み終わっているのですが、いろいろ面白かったので、ちょっとメモっておきます。

一番興味深かったのは、「数学は、秩序、パターン、構造、および論理的関係性の科学である」(101ページ)というところ。
パターンという中には、結び目のパターンや花の対象性のパターンなど、数と関係のないものもあるが、こういう抽象的なパターンを研究するのが数学。あからさまには目に見えないパターンも、数学を使うと、目に見えるようになる、云々。

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数学を理解する能力は生得的?

キース・デブリン『数学する遺伝子』(早川書房)

『ワーキング・プア』も読み終わってないというのに、キース・デブリン『数学する遺伝子』(早川書房、1月刊)を買ってきました。(^_^;)

今週の日経新聞の書評で取り上げられていましたが、人間には生得的に数学を理解する能力が備わっている、ということを論じた本のようです。評者はそうした著者の主張に懐疑的でしたが、チョムスキー理論に関心がある僕としては、やっぱり読むしかありません。

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読んでます 『ワーキング・プア』

デイヴィッド・K・シプラー『ワーキング・プア アメリカの下層社会』(岩波書店)

岩波書店から先月邦訳が出た『ワーキング・プア』。すぐに買い込んで読んでいるのですが、ちっちゃい活字で上下2段組、しかも全体で390ページもあって、なかなか読み終わりません。(^_^;) それでも200ページを超えたから、なんとか半分は読み終わったというところです。

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伊藤誠『「資本論」を読む』

伊藤誠『「資本論」を読む』(講談社学術文庫)

宇野派第2世代の代表的人物の1人伊藤誠氏(東大名誉教授)の『「資本論」を読む』(講談社学術文庫)が、昨年12月刊に刊行されました。文庫本ですが、書き下ろしの新著です。

で、ぱらぱらとめくっていてビックリしたのは、巻末の参考文献の中に、共産党の不破哲三氏の『「資本論」全三部を読む』(全7冊、新日本出版社、2003?2004年刊)が上がっていたことです。

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短いけれど、ちゃんとした解説だぞ、こりゃ

木暮太一『世界一簡単なマルクス経済学の本 マルクスる?』(マトマ商事)

駅を出ると小雨が降っていたので、雨宿りをかねて駅前の本屋に。すると、なにやら怪しげな本が…。『世界一簡単なマルクス経済学の本』。帯を見ると、「3時間で見るマルクス経済学の基礎が身につく超入門本!」

うむむ…、同じ著者&イラストで、『落ちこぼれでもわかるマクロ経済学の本』『落ちこぼれでもわかるミクロ経済学の本』が出ているのは知っていたけど、この手の本は中身がマユツバなことが多いので、とりあえず買ってきて、ぱらぱらと読んでみました。

そうしたら、短いので、細かいところはいろいろ省略されているけれども、中身はちゃんとした解説になっています。へんてこりんなマルクス解釈など登場せず、むしろ真っ当なマルクス理解だと思いました。(^_^;)

それより面白いと思ったのは、実は、「はじめに」の部分。木暮さんは、こんなふうに書いています。

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牧原憲夫『民権と憲法 シリーズ日本近現代史<2>』

牧原憲夫『民権と憲法 シリーズ日本近現代史<2>』(岩波新書)

岩波新書の「シリーズ日本近現代史」の2冊目。牧原憲夫氏の『民権と憲法』を読み終えました。

1877年の西南戦争終結から、1889年の「大日本帝国憲法」発布までの時期が対象になっています。牧原氏が「あとがき」に書かれているように、この時代は、どんな工夫をしてみても、自由民権運動が高揚しながら、結局、敗北し、帝国憲法体制ができあがるという「大きなストーリー」は動かしようがありません。しかし、牧原氏は、民権派と政府の対抗という図式に、「民衆」という「独自の存在」を加え、「三極の対抗」としてこの時代を描き、民権派が「国権」にからめとられていく側面を民権運動の敗北というふうに一面的に見ず、民権派の複雑な諸側面を分かりやすく描くことに成功していると思いました。

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年末年始に買ったもの

今年は、新しい本を買うことよりも、これまで買った本を読むことにエネルギーを注ぎたいと思っています。そうはいっても待ってくれないのが、理論・イデオロギー分野の宿命ですが、なるべく精選していくつもりです。

ということで、最近買った本は、これまでよりちょっと少なめです。

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鈴木光司『なぜ勉強するのか?』

鈴木光司『なぜ勉強するのか?』(ソフトバンク新書)

『リング』『らせん』の作者である鈴木光司さんの『なぜ勉強するのか?』(ソフトバンク新書)。『リング』も『らせん』も読んだことはないのだけれど、この本は一気に読んでしまいました。

鈴木さんはまず、学校では知識を記憶するのではなく、「理解力」「想像力」「表現力」の3つの能力を身につけるのだと言います。

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