終わりよければ… 都響定期/マーラー:交響曲第2番「復活」

その都響定期ですが、ジェイムズ・デプリースト氏の常任指揮者就任後、初の定演登場ということで、上野の文化会館も9割方埋まる盛況ぶりでした。プログラムは、マーラーの交響曲第2番「復活」。

ソリストは、ソプラノ澤畑恵美さん、メゾソプラノ竹本節子さんで文句なし。合唱は、晋友会合唱団。その指導にあたってこられた関屋晋さんは去る4月9日急逝されたばかりでもあり、「復活」という演目が意味深く思われたりしました。

「復活」をナマで聴いたのは3回目ですが、曲が曲だけに、どうしても「そう易々と、曲に乗せられてなるものか」と構えてしまうのは、生来の天の邪鬼? デプリースト氏の指揮は、明快、平易というべきで、マーラーだからといってことさらにしかめっ面するようなところはどこにもありません。それは好感が持てたのですが…

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ジャン・フルネ氏引退

都響定期で文化会館に来ていますが、会場に「謹告」として張り紙がしてありました。
曰く、ジャン・フルネ氏が今年12月20、21日の都響定演を最後に、引退を決意された、と。当日のプログラムも変更され、愛弟子の伊藤恵さんを迎えてモーツァルトのピアノ協奏曲第24番が演奏されます。

ジャン・ルフネ氏は93歳。引退後もオランダやフランスで指導は続けるとのことですが、長い間ご苦労様でした。

追記:
12月24?26日の都響の「第九」公演は、主席客演指揮者・小泉和裕氏が指揮をとることになりました。

都響定演 追記

  1. 上野の文化会館は、サントリーとはまた客層がちょっと違う…。僕は、2階のR席で聞いていましたが、近くに、雪駄履きで来られていたおじいちゃんがいました。僕も、ジーンズでコンサートに行く方ですが、さすがに雪駄履きのお客さんを見たのは初めて…。
  2. 演奏会が終わったあと、文化会館の出口を出たところで、「都響楽員を応援してくださった皆様」というチラシをいただきました。配っていたのは都響のオケのみなさん。演奏会直後だったのでみなさん燕尾服のままでの“ビラ配り”のようでしたが、直接お客さんに、支援感謝の気持ちを伝えたいというオケのみなさんの気持ちも伝わったのではないでしょうか。都響のみなさん、本当にご苦労さまでした?

ブラームスの革新性とは?/都響第607回定期演奏会Aシリーズ

金曜日に続いて、今夜は、上野の文化会館で都響の定期演奏会(Aシリーズ)を聞いてきました。

  • ブラームス:大学祝典序曲 op.80 男声合唱付
  • シェーンベルク:「ワルシャワの生き残り」 op.46
  •     intermission
  • ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 op.25 オーケストラ編曲版

保守的な古典主義者といわれるブラームスと、無調と12音技法のシェーンベルク。この繋がりは?と思ったのですが、プログラムの解説(寺西基之氏)によれば、シェーンベルクは、ブラームスの音楽を好み、彼の音楽の斬新さに注目し、「革新主義者」と呼んでいたそうです。そして、3曲目のブラームスの「ピアノ四重奏曲第1番」をオーケストラ版に編曲したというのです。

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都響・契約楽員制度

昨日の都響のコンサートのとき、アークヒルズの入り口で、日本音楽家ユニオン関係者と思しき方が「都響楽員を応援してくださった皆様」と題したチラシを配っておられました。「契約楽員制度」導入問題についての、さしあたりの解決を見たことの報告です。とっさのことで、チラシを受け取っただけでしたが、都響楽団員のみなさん、本当にご苦労さまでした。m(_’_)m

音色を磨け 都響が能力による年俸制(東京新聞、4月9日付夕刊)

いったん全員解雇など厳しい条件もあります。能力・業績評価に「マナー」や「規律遵守」が含められ、こんご何かあったときに財団の方針に異を唱えたら「マイナス評価」にならないか心配ですが、全員3年契約とはならなかった点などは運動した成果といえるのでしょう。これからも応援します。p(^_^)q

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都響第606回定演Bシリーズ/ワーグナー:ニーベルングの指輪ハイライト

今シーズンは、都響定演Aシリーズ(上野・文化会館)をとっているのですが、今日は、ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指輪」ハイライトで、緑川まりさんがブリュンヒルデを歌うということで、サントリーホールの定演(Bシリーズ)に行ってきました。

  • 「ラインの黄金」?前奏?ラインの乙女たちと黄金強奪
  • 「ワルキューレ」?ワルキューレの騎行/ヴォータンの告別と魔の炎の音楽(フィナーレ)
  • 「ジークフリート」?愛の二重唱(フィナーレ)
  •     休憩
  • 「神々の黄昏」?夜明けとジークフリートのラインの旅/ジークフリートの死と葬送音楽/ブリュンヒルデの自己犠牲と終曲

【演奏会情報】指揮:飯守泰次郎/ブリュンヒルデ:緑川まり/ジークフリート:成田勝美/ヴォータン:長谷川顯/アルベリヒ:島村武男/ヴォークリンデ:平井香織/ヴェルグンデ:田中三佐代/フロスヒルデ:大林智子/サントリーホール 2005年4月22日 19時開演

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オール・ロシアン・プログラム 日フィル定期

昨日、サントリーホールで日フィルの第569回定演に行ってきました。
プログラムは、ロシアの作曲家3人の楽曲です。

  • リャードフ:交響詩《魔法にかけられた湖》 作品62
  • プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 作品16
  •     (休  憩)
  • ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 作品27

指揮は尾高忠明さん、ピアノは若林顕さんでした。

リャードフ(1855〜1914)、プロコフィエフ(1891〜1953)、ラフマニノフ(1873〜1943)という3人の作曲家が、それぞれ、1909年、1913年(演奏は1923年改訂版)、1906〜07年というロシア革命前の時期につくった楽曲ですが、3曲が3曲とも雰囲気がまったく違う、というなかなか面白い趣向を凝らしたプログラムでした。

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オルフ/カルミナ・ブラーナ

hiroさんのnikki_2:出張おわり/カルミナ・ブラーナで紹介されていたアンドレ・プレヴィン指揮の「オルフ/カルミナ・ブラーナ」を買ってきました。

買ってきたのはSACDではなく、ただのCDのもの。録音が1993年10月となっていますが、多分同じものでしょう。

実をいうと、カルミナ・ブラーナは、聴いてみると、いろいろと聴いたことある音楽が登場するのですが、コンサートはもちろん、CDを買って聴くのは初めてです。

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音楽の友4月号に

神奈川フィル&埼玉オペラ協会のオペラ「吟遊詩人〜イル・トロヴァトーレ」の横浜公演の音楽評が掲載されています。

……因縁復讐劇といえるヴェルディの傑作を、息つく間もないほどにくりひろげた。第一に歌い手たちが揃った。レオノーラ木下美穂子、マンリーコ松本薫平、ルーナ伯黒田博、アズチェーナ坂本朱、フェルランド新保堯司のほか脇にも中前美和子、吉田伸昭、笹倉直也、丸谷周平など勢いに乗る歌い手たちが、声と演唱を競い、それを現田茂夫指揮がオケともども巧みにドラマタイズさせた。……
(小山晃・評、「音楽の友」2005年4月号、153ページ)

横浜みなとみらいでのこの公演は、いわゆる演奏会形式。僕が見に行ったのは、3月6日の埼玉会館でのオペラ公演でした(僕の感想はこっち)。
友人の名前を、こういう音楽誌の中で読むのは、ちょっと不思議な感覚ですね。自分の論文が初めて雑誌に載ったときもちょっと興奮しましたが、それ以上に、年間の「回顧と展望」に自分の論文が取り上げられていたのを読んだときのワクワクした気分に似ているかも知れません。(^_^;)

日フィル定演

昨日は、サントリーホールで日フィルの演奏会を聴いてきました。2005年度定期演奏会シリーズの第1回です。

  • ショスタコーヴィチ:交響詩《10月》 作品131
  • ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77
  •       ***休憩***
  • エルガー:エニグマ変奏曲(創作主題による変奏曲) 作品36

ヴァイオリンは堀米ゆず子さん。指揮は広上淳一氏。

前半は、ショスタコーヴィチの曲。交響詩10月は、十月革命50周年記念として作曲されたもの。ただし、とても浮かれた雰囲気はありません。ヴァイオリン協奏曲の方は、1947?48年にオイストラフのために作曲されたものですが、48年2月に交響曲第9番がジダーノフに批判されたため、1955年まで発表されなかったという曰く付きの作品。堀米ゆず子さんのヴァイオリンは力強く、さすがという感じでした。

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ベルティーニ氏逝く

東京都交響楽団の音楽監督ガリー・ベルティーニ氏が、17日、テルアビブで死去。今年3月末で都響音楽監督を退任し、桂冠指揮者に就任する予定でした。

僕は、残念ながら、ベルティーニ&都響ではなかなか納得できる演奏に出合えませんでした。しかし、そのマーラーの迫力は凄まじいものがありました。桂冠指揮者となってからも、当然、また指揮をみる機会はあるものだと思っていただけに、残念です。合掌。

指揮者のベルティーニさん死去 都交響楽団の音楽監督(朝日新聞)

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吟遊詩人 IL TROVATORE

吟遊詩人 IL TROVATORE(チラシ)

昨日、浦和の埼玉会館で、ヴェルディのオペラ「イル・トロヴァトーレ」を見てきました。というか、大学時代の友人がイネス役で登場するということで、応援に行ってきました。(^^;)

「トロヴァトーレ」は、レオノーラという女性をめぐって、吟遊詩人のマンリーコとルーナ伯爵とが対決する話と、マンリーコの母であるジプシー(ロマ族)のアズチェーナが、先代のルーナ伯爵に処刑された母親の復讐を遂げるという話とが、複雑に絡み合ったオペラです。アズチェーナが、復讐のためにルーナ伯爵の息子(現在のルーナ伯爵の弟)をさらってきたのだけれども、動転のあまり自分の息子を火の中に投げ込んでしまう、それでアズチェーナは、敵の息子だったマンリーコを我が子として育てる、それを知らないマンリーコが実の兄であるルーナ伯爵と恋敵となり対決する――「お?、なんという運命の悪戯!」と言うわけです。(^^;)

でも最初にストーリーを知った時は、いくら動転してても、間違えて我が子を火に投げ込んだりはしないだろう…と、あまりの荒唐無稽な展開に、とてもついていけそうにありませんでした。

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ハッピー・バースデー! コルボ/フォーレ「レクイエム」

ミシェル・コルボ(プ?グラムから)

一昨日に続いて、今日もミシェル・コルボのコンサートに行ってきました。今日は、オペラシティ・コンサートホールです。今日のプログラムは、以下の通り。休憩前の前半2曲は、予告と曲順が入れ替わっています。

  • ヴィヴァルディ:グローリア ニ長調 RV589
  • ヘンデル:ディクシット・ドミヌス(「主は言われた」) 詩篇110[109]
  • フォーレ:レクイエム op.48

今日のメインは、休憩後のフォーレ「レクイエム」。前半の2曲が18世紀(グローリアは作曲年不明だそうですが)の曲なのにたいし、「レクイエム」は1888年初演ということで、たった120年ほど前の新しい曲! 一昨日のバッハ「マタイ受難曲」をふくめ、同じ宗教音楽といってもずいぶんと違って聞こえました。
全体として、ゆっくりしたテンポ。とくに、第1曲の「入祭唱とキリエ」は特にそう感じました。ちょっとオーケストラの演奏がもたつく感じがするほど。しかし、ソプラノ独唱(シルヴィー・ヴェルメイユ)の第4曲「ピエ・イエズ」は、もうこれ以上にないほどの透明感ある声で惹き込まれました。また、第6曲「リベラ・メ」のバス(マルコス・フィンク)も、深く感じ入る響きで感動しました。
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目の眩むような思い ミシェル・コルボ/マタイ受難曲

ミシェル・コルボ日本公演チラシ

今日は、ミシェル・コルボ指揮、ローザンヌ声楽・器楽アンサンブルの日本公演を聴きに行ってきました。ということで、一昨日についで、またまたサントリーへ。今日は、LB1の最前列ということで、舞台に向かって左手奥の席で、合唱団の斜め後ろから舞台を眺めるかっこうになりました。

演目は、バッハ:マタイ受難曲。午後6時開演で終演は9時を回る一大プログラムでした。

特徴的だったのは、第1部につづけて第2部に入り、第40曲のコーラスが終わったところで、休憩をとったこと。いちおう会場にその旨の張り紙があったんですが、お客さんにはほとんど伝わってなかったんでしょうね。第40曲が終わってもなかなか拍手が起こらず、コルボ氏が指揮台を降りて舞台袖に戻り始めて、ようやく拍手がわき起こるという次第になりました。
第40曲のところでというと、要するに、イエスが捕まってペテロが3度「あんな人は知らない」と言った直後に鶏が鳴く、それで「鶏が鳴く前に、あたなは3度私を知らないと言うだろう」というイエスの予言が成就したことを知り、ペテロが「私を哀れんでください」と泣いた後のところまでです。第41曲からあとは、いわゆる「処刑」の場面になるので、ここで休憩をはさんだというのは、ストーリー上は十分納得できるものです。

コルボ氏は明後日で71歳、一昨年大病をされたということでしたが、音の強弱、大小がはっきりしていて(それはコーラスも同じ)、メリハリを効かせた指揮で、全体としての演奏の流れが非常に分かりやすいと思いました。ソプラノの谷村由美子さんは、少し内にこもった(というと印象が悪いのかな)、丸みのあって、音が低くなるとちょっと聞こえにくくなったところはありますが、温かい声を響かせていらっしゃいました。カウンター・テナーのカルロス・メナも、高音で透き通った声を響かせ、なかなか印象的でした。
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井上道義&東フィル/ブルックナー交響曲第8番

井上道義・東フィル定期演奏会チラシ

今日は、井上道義さんが振るということで、東京フィルハーモニーの定期演奏会(サントリーホール)に行ってきました。プログラムは、

  • バーンスタイン/交響曲第2番 「不安の時代」
  • ブルックナー/交響曲第8番 ハ短調(ノヴァーク版第2稿)

前半は、仕事が押したために間に合わず聞けませんでした。めずらしい曲目なので聞きたかったんですけどね…。残念。

後半は、僕の大好きなブルックナーの最後の交響曲(第9番は未完だから)。井上さんの指揮は、力を内に込める?という感じで、派手さはないのですが、ぎゅうっと内実が詰まった感じでした。2階RB席ということで、バイオリンの音がストレートに飛んでくる感じで、ちょっと生々しくて最初は落ち着かなかったんですが、第3楽章になるとそんなのも気にならず、至福の音楽を楽しませていただきました。一転して第4楽章では、本当に力を内面にみなぎらせたという感じで、盛り上がりました。東フィルも、木管、金管ががんばって、力強い音を響かせていました。

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音楽のすばらしさ 「ベルリン・フィルと子どもたち」

ベルリン・フィルと?どもたちプ?グラム

不覚にも泣いてしまいました。なんで、こんな映画で涙が出てきたのか? われながら不思議です。(^^;)

僕は、タイトルから、ベルリン・フィルがどこかの子ども相手にオーケストラの練習をする、というNHK「ようこそ課外授業」的な映画を勝手に想像していました。しかし、実際に見て、全然違っていて、引き込まれてしまいました。まず登場する子どもたちが、本当にいろんな困難な条件におかれていること。そして、クラシックなんて一度も聞いたことがないし、ダンスをしたこともないという、その子どもたちが、ロイストン・マルドゥームによる練習を通して、少しずつ変わっていく様子が、サイモン・ラトルとベルリン・フィルの練習風景と片身代わりに登場しながら、映画はすすんでいきます。

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コバケン&日フィル/マーラー交響曲第1番

今日は、日フィル第567回定期演奏会でサントリーホールへ。プログラムは、

  • シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
  • マーラー:交響曲第1番 ニ長調 “巨人”

指揮は小林研一郎・日フィル音楽監督、ピアノは伊藤恵さん。

マーラーの交響曲は好きで良く聞くのですが、その中で唯一、苦手というか興味がわかないというか、それが第1番でした。あまりに標題音楽すぎて、「自然のように」とか「カッコーの鳴き声のように」とか、音楽が具象的すぎるのが馴染めないという感じでした。

しかし、今日の演奏を聴いて、すっかりそのイメージが変わってしまいました。最初から、物凄いエネルギーをわずかなAの音の中に集中させて、音楽がすすんでいきます。希望をいえば、もう少し弦がきれいに揃ってほしかったという部分もありますが、そういう“細かいこと”は問題にならない「熱演」でした。
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チョン・ミョンフン指揮東京フィルハーモニー「第九」を期間限定でインターネット配信

昨年、So-netが独占配信したチョン・ミョンフン指揮東京フィルハーモニーの「第九」が期間限定で復活。インターネットで鑑賞することができます。配信元はWonder Juke。2005年1月まで無料で全曲視聴可能です。

『第九』特別演奏会

「第九」いろいろ

友人から、「第九」のCDを2枚貸してもらいました。

1枚は、フルトヴェングラーが1942年4月19日にベルリン・フィルを振ったもの。もちろんモノラルで音が相当に悪いのは仕方ありません。実はこれは、ヒトラーの誕生日の前夜祭で演奏されたもので、フルトヴェングラーのナチ協力の「証拠」ともされたものだそうです。

CDジャケット

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