ブラームスの革新性とは?/都響第607回定期演奏会Aシリーズ

金曜日に続いて、今夜は、上野の文化会館で都響の定期演奏会(Aシリーズ)を聞いてきました。

  • ブラームス:大学祝典序曲 op.80 男声合唱付
  • シェーンベルク:「ワルシャワの生き残り」 op.46
  •     intermission
  • ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 op.25 オーケストラ編曲版

保守的な古典主義者といわれるブラームスと、無調と12音技法のシェーンベルク。この繋がりは?と思ったのですが、プログラムの解説(寺西基之氏)によれば、シェーンベルクは、ブラームスの音楽を好み、彼の音楽の斬新さに注目し、「革新主義者」と呼んでいたそうです。そして、3曲目のブラームスの「ピアノ四重奏曲第1番」をオーケストラ版に編曲したというのです。

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都響・契約楽員制度

昨日の都響のコンサートのとき、アークヒルズの入り口で、日本音楽家ユニオン関係者と思しき方が「都響楽員を応援してくださった皆様」と題したチラシを配っておられました。「契約楽員制度」導入問題についての、さしあたりの解決を見たことの報告です。とっさのことで、チラシを受け取っただけでしたが、都響楽団員のみなさん、本当にご苦労さまでした。m(_’_)m

音色を磨け 都響が能力による年俸制(東京新聞、4月9日付夕刊)

いったん全員解雇など厳しい条件もあります。能力・業績評価に「マナー」や「規律遵守」が含められ、こんご何かあったときに財団の方針に異を唱えたら「マイナス評価」にならないか心配ですが、全員3年契約とはならなかった点などは運動した成果といえるのでしょう。これからも応援します。p(^_^)q

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都響第606回定演Bシリーズ/ワーグナー:ニーベルングの指輪ハイライト

今シーズンは、都響定演Aシリーズ(上野・文化会館)をとっているのですが、今日は、ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指輪」ハイライトで、緑川まりさんがブリュンヒルデを歌うということで、サントリーホールの定演(Bシリーズ)に行ってきました。

  • 「ラインの黄金」?前奏?ラインの乙女たちと黄金強奪
  • 「ワルキューレ」?ワルキューレの騎行/ヴォータンの告別と魔の炎の音楽(フィナーレ)
  • 「ジークフリート」?愛の二重唱(フィナーレ)
  •     休憩
  • 「神々の黄昏」?夜明けとジークフリートのラインの旅/ジークフリートの死と葬送音楽/ブリュンヒルデの自己犠牲と終曲

【演奏会情報】指揮:飯守泰次郎/ブリュンヒルデ:緑川まり/ジークフリート:成田勝美/ヴォータン:長谷川顯/アルベリヒ:島村武男/ヴォークリンデ:平井香織/ヴェルグンデ:田中三佐代/フロスヒルデ:大林智子/サントリーホール 2005年4月22日 19時開演

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オール・ロシアン・プログラム 日フィル定期

昨日、サントリーホールで日フィルの第569回定演に行ってきました。
プログラムは、ロシアの作曲家3人の楽曲です。

  • リャードフ:交響詩《魔法にかけられた湖》 作品62
  • プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 作品16
  •     (休  憩)
  • ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 作品27

指揮は尾高忠明さん、ピアノは若林顕さんでした。

リャードフ(1855〜1914)、プロコフィエフ(1891〜1953)、ラフマニノフ(1873〜1943)という3人の作曲家が、それぞれ、1909年、1913年(演奏は1923年改訂版)、1906〜07年というロシア革命前の時期につくった楽曲ですが、3曲が3曲とも雰囲気がまったく違う、というなかなか面白い趣向を凝らしたプログラムでした。

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「バッド・エデュケーション」 う〜む、やっぱり…

バッド・エデュケーション

「オール・アバウト・マイ・マザー」、「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル監督の最新作、「バッド・エデュケーション」を見てきました。今年10本目の映画です。

1980年のマドリード。若くして映画監督として成功したエンリケ(フェレ・マルチネス)のところに学生時代の友人イグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナール)がシナリオを持って訪ねてくる。彼は、エンリケの少年時代の神学校寄宿舎での親友。16年ぶりに出会った旧友のあまりにも変わりようにエンリケは戸惑いつつ、彼の持ってきたシナリオに思わず引き込まれる。そこには、寄宿生時代に2人が体験したある“事件”が描かれていた。その事件とは…

ということで、イグナシオのシナリオを出会った“現在”のお話が、少年時代の“事件”と、その“事件”をめぐる現在の“事件”と、重なり合いながら、ストーリーは展開します(詳しいことは、見てのお楽しみ。不思議の仕掛けはやがて明らかになります)。

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オルフ/カルミナ・ブラーナ

hiroさんのnikki_2:出張おわり/カルミナ・ブラーナで紹介されていたアンドレ・プレヴィン指揮の「オルフ/カルミナ・ブラーナ」を買ってきました。

買ってきたのはSACDではなく、ただのCDのもの。録音が1993年10月となっていますが、多分同じものでしょう。

実をいうと、カルミナ・ブラーナは、聴いてみると、いろいろと聴いたことある音楽が登場するのですが、コンサートはもちろん、CDを買って聴くのは初めてです。

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「タッチ・オブ・スパイス」

タッチ・オブ・スパイス

アップするのが遅れてしまいましたが、先々週、渋谷のBunkamuraル・シネマで見てきました。今年8本目です。

舞台は、1960年代のコンスタンチノープル。スパイス店を営むおじいちゃんのもとで、ファニスは暮らしていたが、ギリシャとトルコの対立から、ついにギリシャ人は追放されることになり、ファニス一家は、おじいちゃんを残して、アテネに移住する。しかしファニスは、おじいちゃんが忘れられず、おじいちゃんに教えてもらったスパイスを使って料理に熱中する。しかし、ファニスの父は、「男は台所に入ってはいかん!」と宣言。怒ったファニスは、バスルームに立て籠もる…。
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「大統領の理髪師」

大統領の理髪師(チラシ)

今日もまた、渋谷Bunkamuraル・シネマで映画を見てきました。韓国映画「大統領の理髪師」です。(今年9本目…8本目が飛んでいるのは投稿し忘れ。あとで書き込みます)

青瓦台(韓国大統領府)のすぐ隣りにある孝子洞で理髪店をひらいているソン・ハンモ(ソン・ガンホ)は、ある日突然、朴正熙大統領の専属理髪師になってしまう。大統領主催の昼食会に招かれて、商売も順調にゆき、万事うまくいくかに見えたとき、北朝鮮ゲリラの青瓦台襲撃事件が起こる…。しかし、「フィクション」であるこの映画では、このゲリラたちはマヌケ揃いで、みんな下痢をして、しゃがみ込んでいるところを捕まってしまいます。しかし、そこから市民の間に下痢(流行性腸炎)が広がり始めます。「下痢をしている者は、スパイに接触したに違いない」と言われ、下痢をした者は“マルクス病”と呼ばれ、次々と情報部に逮捕され、拷問をされる。そんなとき、ハンモの息子ナガンも下痢になり、情報部に送られてしまう。ハンモは必死になってナガンの行方を捜すが、どこに連れて行かれたか分からない。やがて“マルクス病”騒動は収まり、ようやくナガンも戻ってくる。しかし、ナガンは歩けなくなっていた…。

笑わせ、泣かせ、松竹新喜劇のような荒唐無稽なストーリーが展開します。しかし、折り目折り目に…
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音楽の友4月号に

神奈川フィル&埼玉オペラ協会のオペラ「吟遊詩人〜イル・トロヴァトーレ」の横浜公演の音楽評が掲載されています。

……因縁復讐劇といえるヴェルディの傑作を、息つく間もないほどにくりひろげた。第一に歌い手たちが揃った。レオノーラ木下美穂子、マンリーコ松本薫平、ルーナ伯黒田博、アズチェーナ坂本朱、フェルランド新保堯司のほか脇にも中前美和子、吉田伸昭、笹倉直也、丸谷周平など勢いに乗る歌い手たちが、声と演唱を競い、それを現田茂夫指揮がオケともども巧みにドラマタイズさせた。……
(小山晃・評、「音楽の友」2005年4月号、153ページ)

横浜みなとみらいでのこの公演は、いわゆる演奏会形式。僕が見に行ったのは、3月6日の埼玉会館でのオペラ公演でした(僕の感想はこっち)。
友人の名前を、こういう音楽誌の中で読むのは、ちょっと不思議な感覚ですね。自分の論文が初めて雑誌に載ったときもちょっと興奮しましたが、それ以上に、年間の「回顧と展望」に自分の論文が取り上げられていたのを読んだときのワクワクした気分に似ているかも知れません。(^_^;)

「微笑みに出逢う街角」

微笑みに出逢う街角

昨日、集会の後、日比谷のシャンテ・シネで「微笑みに出逢う街角」を見てきました。(今年7本目)

アンゴラ内戦で両親を殺された少女の写真がTIME誌の表紙を飾り、一躍注目を集めることになった若い写真家ナタリア。22年ぶりに出所してきた父親と対面するチェリストのキャサリン。車椅子の夫との生活に“疲れた”様子を見せるオリビア――。トロントの街を舞台に、3人の女性の“心の動き”をゆるやかに描いていきます。

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日フィル定演

昨日は、サントリーホールで日フィルの演奏会を聴いてきました。2005年度定期演奏会シリーズの第1回です。

  • ショスタコーヴィチ:交響詩《10月》 作品131
  • ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77
  •       ***休憩***
  • エルガー:エニグマ変奏曲(創作主題による変奏曲) 作品36

ヴァイオリンは堀米ゆず子さん。指揮は広上淳一氏。

前半は、ショスタコーヴィチの曲。交響詩10月は、十月革命50周年記念として作曲されたもの。ただし、とても浮かれた雰囲気はありません。ヴァイオリン協奏曲の方は、1947?48年にオイストラフのために作曲されたものですが、48年2月に交響曲第9番がジダーノフに批判されたため、1955年まで発表されなかったという曰く付きの作品。堀米ゆず子さんのヴァイオリンは力強く、さすがという感じでした。

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ベルティーニ氏逝く

東京都交響楽団の音楽監督ガリー・ベルティーニ氏が、17日、テルアビブで死去。今年3月末で都響音楽監督を退任し、桂冠指揮者に就任する予定でした。

僕は、残念ながら、ベルティーニ&都響ではなかなか納得できる演奏に出合えませんでした。しかし、そのマーラーの迫力は凄まじいものがありました。桂冠指揮者となってからも、当然、また指揮をみる機会はあるものだと思っていただけに、残念です。合掌。

指揮者のベルティーニさん死去 都交響楽団の音楽監督(朝日新聞)

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吟遊詩人 IL TROVATORE

吟遊詩人 IL TROVATORE(チラシ)

昨日、浦和の埼玉会館で、ヴェルディのオペラ「イル・トロヴァトーレ」を見てきました。というか、大学時代の友人がイネス役で登場するということで、応援に行ってきました。(^^;)

「トロヴァトーレ」は、レオノーラという女性をめぐって、吟遊詩人のマンリーコとルーナ伯爵とが対決する話と、マンリーコの母であるジプシー(ロマ族)のアズチェーナが、先代のルーナ伯爵に処刑された母親の復讐を遂げるという話とが、複雑に絡み合ったオペラです。アズチェーナが、復讐のためにルーナ伯爵の息子(現在のルーナ伯爵の弟)をさらってきたのだけれども、動転のあまり自分の息子を火の中に投げ込んでしまう、それでアズチェーナは、敵の息子だったマンリーコを我が子として育てる、それを知らないマンリーコが実の兄であるルーナ伯爵と恋敵となり対決する――「お?、なんという運命の悪戯!」と言うわけです。(^^;)

でも最初にストーリーを知った時は、いくら動転してても、間違えて我が子を火に投げ込んだりはしないだろう…と、あまりの荒唐無稽な展開に、とてもついていけそうにありませんでした。

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日比谷映画、みゆき座が閉館!

グリグリさんのchat gourmand:日比谷座&みゆき座閉館記念名作上映会をみて、びっくり! 日比谷映画とみゆき座が閉館するんだって! また映画館が減っていきますねえ。残念。

で、閉館記念の名作上映会がおこなわれるらしい。しかも入場料金が、開館当時の1本1回300円! 「博士の異常な愛情」と「ロミオとジュリエット」は見てみたいなぁ…

日比谷映画・みゆき座閉館記念名作上映会

NHK、アンデルセンの「雪の女王」を連続アニメ化

雪の女王

アンデルセンの「雪の女王」というと、旧ソ連のレフ・アタマーノフ監督による超名作アニメ(1957年)がすでに存在します。何を今さら、それを超える作品ができるとでもいうのでしょうか? しかも39回シリーズなんだそうな(「東京新聞」夕刊による)。

頼むから、しょーもないことはしないでくれ? せっかくの「雪の女王」が台無しになる?

DVDもあります。

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アイドルタレントの給料

日テレの「行列のできる法律相談」でゲストのくまきりあさ美(ホリプロ所属)が絶叫!

「私の給料、せめて2桁にしてほしい」「2桁なんですけど、保険を1万円引かれると、1桁になっちゃうんです」

そこに、上原さくらが「私も3年目まで1桁だった」と言うと、くまきりあさ美は「私、もう6年目なんです」

…出演の弁護士さんが言っていたように、月給だとすると、月9万円は、最低賃金法違反です(東京の最賃は時給710円)。
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ペンクラブの緊急集会

12日にひらかれた日本ペンクラブの緊急集会「いま、戦争と平和を考える」には400人を超す聴衆が集まったけれど、一般紙の報道はベタ記事扱い。しかし、今日の「東京新聞」夕刊は、文化欄で、それを詳しく報道しています。

阿刀田高氏

 もし日本が攻撃されたらとの仮定で語った阿刀田氏。「憲法のいう『諸国民の公正と信義』を信じていたら、変なのが来たらやられる。それは分かっている。でも私たちは戦争は悲惨であるとつくづく分かったのでこの憲法をつくった」。憲法が時代遅れと言われ、改憲論が強まる中で、敗戦後の憲法制定の初心に立ち返るよう呼びかけた。
 「平和憲法は、命を捨てても守っていいほど価値がある」とも言う同氏だが、それは他国の脅威を座して待つ姿勢ではない。「攻撃されないための外交努力は、とことんやってほしい」と、武力によらない政策展開をうながした。

吉岡忍氏

 政治家たちの言葉の危うさについては、吉岡忍氏も米中枢同時テロ以降のブッシュ米大統領と小泉首相の発言録をもとに分析。「一読して分かるのは感情的、情緒的な言葉が多いこと。根拠のなさをごまかすためどんどん感情的になっていくのがよく分かる」
 その根底にあるのは、すべてを単純化し、「善悪、白黒」といった二元論で割り切る態度だと同氏はみる。

辻井喬氏

 辻井喬氏は「平和」の概念を考え直す問いを発した。「平和とは、戦争をしていない状態でしょうか? グローバリゼイションの浸透で、昔の平和とは中身が変わった。石油文明的な、あこがれの生活を過ごし、戦争がなければいいと満足していていいのか。私たちの平和は戦争をなくす方向に働きかける平和か、グローバリゼーションで追いやられる人たちがいつか爆発する契機となる平和か、検証する必要がある」
 辻井氏はまた「平和が戦争を推進する方に乗じられるおそれがある。近くの国が核兵器を持つなら、私たちも平和のために核兵器を持つのか」との設問も示した。戦争と平和を問うことは、私たちの生き方そのものを問うこと。そう思わせる言葉だった。

ほかにも、ペンクラブ会長の井上ひさし氏や翻訳家の米原万里さん、アジ研の酒井啓子さんの発言なども紹介されています。文化欄のほとんど全部を費やしての報道、ほんとうにご苦労さまでした。

ハッピー・バースデー! コルボ/フォーレ「レクイエム」

ミシェル・コルボ(プ?グラムから)

一昨日に続いて、今日もミシェル・コルボのコンサートに行ってきました。今日は、オペラシティ・コンサートホールです。今日のプログラムは、以下の通り。休憩前の前半2曲は、予告と曲順が入れ替わっています。

  • ヴィヴァルディ:グローリア ニ長調 RV589
  • ヘンデル:ディクシット・ドミヌス(「主は言われた」) 詩篇110[109]
  • フォーレ:レクイエム op.48

今日のメインは、休憩後のフォーレ「レクイエム」。前半の2曲が18世紀(グローリアは作曲年不明だそうですが)の曲なのにたいし、「レクイエム」は1888年初演ということで、たった120年ほど前の新しい曲! 一昨日のバッハ「マタイ受難曲」をふくめ、同じ宗教音楽といってもずいぶんと違って聞こえました。
全体として、ゆっくりしたテンポ。とくに、第1曲の「入祭唱とキリエ」は特にそう感じました。ちょっとオーケストラの演奏がもたつく感じがするほど。しかし、ソプラノ独唱(シルヴィー・ヴェルメイユ)の第4曲「ピエ・イエズ」は、もうこれ以上にないほどの透明感ある声で惹き込まれました。また、第6曲「リベラ・メ」のバス(マルコス・フィンク)も、深く感じ入る響きで感動しました。
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