山田風太郎『戦中派不戦日記』

山田風太郎『戦中派不戦日記』(角川文庫・山田風太郎ベストコレクション)

角川文庫

知り合い から、『戦中派不戦日記』のなかで、山田風太郎が、敗戦の8月15日にエンゲルスの引用をしていると教えてもらいました。早速確かめて見ると、なるほど、8月16日の条に、前日の出来事として書かれています。

夜、阿南惟幾の割腹自殺のニュースを聞いたあとで、日本が敗れた「最大の原因は『科学』である」として、次のように書いています。(角川文庫版、367ページ)

 ここで痛感することがある。それはエンゲルスの次のような言葉である。
  「人間歴史は、もはや決して、今日成熟している哲理の裁断によってことごとく一様に有罪を宣告される様な、そして人は出来るだけ早くそれを忘れてしまうがよいというような、そんな無意味な暴動の荒れ狂いではなく、実に人類そのものの進化の過程と見るべきである。そこで学問の任務は、この過程の段々の進行を、そのあらゆる迷路の間に追究し、外見上、偶然と見える一切の現象の中に内的法則を発見することに在る」
 これはヘーゲルにとどめを刺す言葉であるから、語句の2、3は必ずしも妥当ではないが、こういう考え方は今の日本人にとって実に必要だと思われる。

これって、エンゲルスの何からの引用なのでしょうか?

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オイラの頭がアホなのか…

二期会オペラ「サロメ」(2011年2月22日)

二期会オペラ「サロメ」

コンヴィチュニーの演出ということで話題にもなっている二期会オペラ劇場「サロメ」を見て参りました。

ですが、オイラの頭がアホなのか、はたまた芸術的センスがゼロなのか、さっぱり訳が分かりませんでした。(^_^;)

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ブリュッヘンって、意外にお茶目?

新日本フィル第472回サントリー定期演奏会

フランス・ブリュッヘン指揮のベートーヴェン交響曲全曲演奏会。今日は、新日本フィルの定期演奏会での演奏です。

  • ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 op.93
  • ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ長調 op.125 「合唱付き」

今日の演奏で一番びっくりしたのは、「第九」の演奏で、第4楽章がすすんでそろそろ歌が始まるというのに、ソリストが舞台にあらわれなかったこと。どうするんだ〜?! と思っていたら、上手から、バリトンのデイヴィッド・ウィルソン=ジョンソンがあたふたと登場し、トロンボーンの後ろあたりで、客席に腕を広げて歌い始めたのです。

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神尾真由子×アルブレヒト×読響×ブラームス

読売日響名曲シリーズ(2011年2月19日)

読売日響名曲シリーズ

1月の定期演奏会で、テレビ撮影のために座席が変更になったので、読響さんから招待券をいただき、土曜日、池袋・東京芸術劇場で、神尾真由子さんと読響のコラボを聴いてきました。座席も2階後部席の前のほうという、なかなかよい席をいただきました。

この日のプログラムはブラームス特集。

  • ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77
  • ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73

神尾さんは、真っ赤なビスチェドレスで登場。これまで神尾さんというと、激しい演奏というイメージを持っていたのですが、この日のブラームスは、むしろ情熱をうちに秘めつつ、しっとりとした演奏でした。とくに第2楽章はうっとりするほどの優しさ。

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冷たい雪の中、熱く激しく

東フィル第798回定期演奏会(2011年2月11日)

積もるほどではなかったとはいえ、冷たい小雪舞い散る中、東フィルの定期演奏会を聴くために、サントリーホールまで出かけてきました。指揮は主席客演指揮者のウラディーミル・フェドセーエフ。

  • ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
  • ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版)

1曲目、オケがわりとあっさりと脳天気な音を出し始めたので、これはどうなることやらと思ったのですが、ソロのアレクサンドル・クニャーゼフがある意味外連味たっぷりに、チェロを“泣かせ“てくれました。

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3階席までびっしり満席 ブリュッヘン・ベートーヴェン・プロジェクト

フランス・ブリュッヘン ベートーヴェン・プロジェクト第1回(2011年2月8日)

古楽器・古楽演奏で有名なフランス・ブリュッヘンと新日本フィルによる「ベートーヴェン・プロジェクト」。錦糸町まで出かけて、第1日目を聴いてきました。

  • ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 op.21
  • ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 op.36
  • ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 op.55「英雄」

対抗配置10-8(後半は10)-6-4-3の小型の編成、ピリオド奏法による演奏。弦の音は非常にクリアで、管の音がくっきりと浮かび上がってくる。ブリュッヘンの指揮に新日本フィルもしっかりとこたえていて、かなりクオリティの高い演奏でした。第3番では、指揮台に手をかけたところで、まだお客さんが拍手しているあいだに、ひょいと手をふって演奏を始めるお茶目なところも見せていただきました。

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1月のコンサート

1月は、先日の読響第500回定期のあとも3つばかりコンサートを聴きましたが、いささか疲れてしまって、記事をアップするのがすっかり遅くなってしまいました。

ということで、3本まとめていきます。(^_^;)

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読響定期演奏会500回、おめでとうございます

読響第500回定期演奏会(2011年1月22日)

先週の土曜日、サントリーホールで読響の定期演奏会を聞いてきました。今回で読響定期演奏会は500回ということで、それを記念する特別小冊子をいただきました。

  • 池辺晋一郎:多年生のプレリュード―オーケストラのために
  • リスト:ファウスト交響曲

指揮は、読響正指揮者の下野竜也氏。

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映画「扉をたたく人」

扉をたたく人

今月28日で閉館になる恵比寿ガーデンシネマで、これまでスクリーンにかけてきた作品をリバイバル上映していますが、先日、映画「扉をたたく人」を見てきました。2009年に公開されたときは、残念ながら見逃していたものです。

ストーリーなどは、こちらを↓。
映画『扉をたたく人』(原題:the Visitor)公式サイト

原題は The Visitor。ウォルターがNYの自宅に久しぶりに帰ったら、そこにやってきていたという意味でも、タレクたちはVisitorですが、海外からアメリカにやってきた Visitor でもあります。そして、その Visitor たちが、9・11後のアメリカ政府やアメリカ社会のあり方はそれで良いのかと問いかけ、扉を叩いている。そんな作品でした。(今年4本目)

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買ってしまいました (^^)v

フルトヴェングラー/グレートEMIレコーディングス(21CD)フルトヴェングラー/ザ・レジェンド(3CD)

左は、フルトヴェングラー生誕125周年を記念して発売されたCD21枚組み「フルトヴェングラー/グレートEMIレコーディングス」。ベートーヴェン交響曲全曲のほか、ピアノ協奏曲第5番、ヴァイオリン協奏曲、フィデリオ全曲、ブラームス交響曲全曲、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲、などなどが収録されています。

右は「フルトヴェングラー/ザ・レジェンド」(CD3枚組み)。モーツァルト交響曲第40番、ハイドン「驚愕」、シューベルト「未完成」のほか、シューマン、メンデルスゾーン、シューベルト、ヴェーバーの序曲やリヒャルト・シュトラウス、リストの小品を集めたものです。

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新交響楽団第212回演奏会

新交響楽団第212回演奏会(2011年1月16日)

今日は、知り合いから招待券のお裾分けしてもらえるということで、寒いなか池袋まで出かけて、新交響楽団の演奏会を聴いてきました。

  • 高田三郎:狂詩曲第1番〜「木曽節」の主題による〜
  • 高田三郎:狂詩曲第2番〜「追分」の主題による〜
  • エネスコ:ルーマニア狂詩曲第2番 ニ長調/ルーマニア狂詩曲第1番 イ長調
  • ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年改訂版)

新響は、1956年に故・芥川也寸志氏によって創設された大変由緒あるアマチュアのオーケストラです。3カ月に1度演奏会を開いていますが、今日のプログラムのテーマは「踊り」の音楽。おもしろいと思ったのは、エネスコのルーマニア狂詩曲、とくに第1番の方。初めて聴きましたが、スラヴ的なリズムなどがなかなか印象的な作品でした。

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ピンチヒッター渡邊一正氏、奮闘す

東京フィルハーモニー交響楽団第796回定期演奏会(2011年1月14日)

東フィル新年最初の定期演奏会で、大野和士氏がショスタコーヴィチとプロコフィエフを振るということで、大いに期待してサントリーホールへ。

  • 望月京:むすび(東京フィルハーモニー交響楽団100周年記念委嘱作品)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 ロ短調 op.54
  • プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調 op.100

しかしたどり着いてみると、指揮者変更のお知らせが張り出されていました。大野氏は、頚椎の状態が悪くなり医師から5週間の治療・リハビリを指示されたということで、急遽、渡邊一正氏が登場。11日の発表で、13日から演奏会ということで、本当にあわただしいことだったと思われます ((演奏会が終わって自宅に帰ってから、東フィルから指揮者変更のハガキが届いていたことに気がつきました。))。

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で、家族の問題は解決したのか?

クリスマス・ストーリー

正月明けですが、恵比寿ガーデンシネマでクリスマス映画を見てきました。主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。今年、御年67歳の大御所ですが、この映画でもばりばりの貫禄を発揮しております。(今年3本目)

公式サイト:クリスマス・ストーリー

ストーリーは公式サイトを参照していただくとして、字幕だったからか、それともオイラがぼんくらだからなのか、ともかくこのややこしい人間関係の展開に十分着いてゆくことができませんでした。(^^;)

それでも、家族のゴタゴタ、親子、兄弟、夫婦と、表向きは円満でもそれぞれ複雑な事情を抱えて、暮らしているということを、雰囲気たっぷりに描き出すあたりは、やっぱりフランス映画ならでは。

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年の初めの験直し…

アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル(2011年1月9日)

先日のアリス=紗良・オット×飯森範親×東響がいまいちすっきりしなかったので、今日、験直しとばかりに横浜まで足を伸ばして、アリス=紗良・オットさんのピアノ・リサイタルを聴いてきました。

  • メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 ニ短調 op.54
  • ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」
  • ショパン:3つのワルツ op.34 「華麗なる円舞曲」
  • ショパン:ワルツ 第6番 変イ長調 「子犬」 op.64-1
  • ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 op.64-2
  • ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 op.31

後半はCDも出ているショパンの作品ですが、前半はメンデルスゾーンにベートーヴェンと、ちょっとこれまでとはイメージが違う作品で、なかなかおもしろかったです。

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年の初めの試しとて…

東京交響楽団第585回定期演奏会(2011年1月6日)

本日は、アリス=紗良・オットさんが東京交響楽団と競演するということで、サントリーホールへ行ってきました。

  • リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
  • マーラー:交響曲第1番 ニ長調 op.92 「巨人」

今年最初のコンサートです。まず前半、真っ赤なロングドレスに身を包んで裸足のアリス=紗良・オットさんが登場。

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悪態三昧 映画「人生万歳!」

映画「人生万歳!」

仕事始めのあと、今月で閉館となる恵比寿ガーデンシネマで、映画「人生万歳!」を見てきました。(今年2本目)

チラシには、こんなふうにストーリーが紹介されています。

 かつてはノーベル賞候補になりながら、いまではすっかり落ちぶれてしまった物理学者ボリス。ある夜、アパートの前で、田舎町から出てきた若い娘、メロディに声をかけられる。寒さで凍える彼女を気の毒に思ったボリスは、数晩だけという約束で泊めてやることにする。ところが、世間知らずのメロディは、冴えない中年男のボリスと暮らすうちに、彼こそは“運命の相手”だとすっかり勘違いしてしまう。そのうえ、愛する娘の後を追って、メロディの両親が相次いで上京したことから、自体はますますややこしいことに…… 年齢も知能指数もかけ離れた2人の“あり得ない”恋愛の行方は、果たしていかに?!

これを読むと、両親がやってきて、年の離れた娘の結婚に反対してドタバタ騒ぎが起こるというふうに思うでしょう。しかし、実際のストーリーはだいぶ違っていました。(^^;)

ともかく、このボリスがすごいキャラです。

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たっぷり堪能 映画「シチリア! シチリア!」

映画「シチリア! シチリア!」プログラム

映画「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督の最新作といえば、映画好きとしては、やっぱり見ずにはいられません。

舞台はイタリア・シチリア。貧しい農民チッコの家にペッピーノが生まれる。小学校のシーンでは、「総統」ムッソリーニが登場するから、時代は1920〜30年代あたり ((ムッソリーニの「ローマ進軍」と政権獲得は1922年。))。貧しさゆえにペッピーノは、チーズと引き替えに羊飼いの手伝いに出され、町に出てその場で牛の乳を搾って売る。やがて第2次世界大戦が始まり ((イタリアの参戦は1940年6月。))、ペッピーノの兄は徴兵され戦場へ。1943年7月にはシチリアに連合軍が上陸する。

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飯守泰次郎×シティ・フィル×マルケヴィチ版「第九」

東京シティフィル第九特別演奏会(2010年12月28日)

世間はすっかり年末気分になった28日、池袋・芸術劇場で、飯守泰次郎さんのマルケヴィチ版によるベートーヴェン「第九」演奏会を聴いてきました。

  • ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」
    (I.マルケヴィチ版による)

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