景気回復、失業率0.1%低下といいつつ、なぜか勤労世帯の消費支出は減り続ける…。はたしてこれで、本当に景気回復といえるのでしょうか?
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公的資金返済で売却益8200億といっても…
大手銀行の資本増強のために12兆3869億円の公的資金が注入されたが、それによって国が取得した株式が、公的資金の返済にともなって売却され、8200億円の売却益が出ているという。
しかし、破綻金融機関の処理で、すでに10兆4326億円の赤字(国民負担)が確定。8200億円ぐらいの売却益ではねぇ…。
OECD、「日本は貧困層の割合が最も高い国の一つになった」と指摘
OECDが報告書で、「日本は貧困層の割合が最も高い国の一つになった」と指摘。相対的貧困率の高さが、アメリカに次ぐ第2位に。
この格差拡大を防ぐために、「企業が非正社員より正社員を増やしやすくする政策を」と述べていることに注目。
「日本、貧困層の割合が最も高い国の1つ」OECD報告(NIKKEI NET)
↓グラフ OECD諸国の相対的貧困率(2000年)。(クリックすると大きく表示します)
収入の二極化すすむ
厚生労働省が2005年の「国民生活基礎調査の概況」を発表。年収300万円未満層と1000万円以上層が増えるなど、二極化が進んでいることが明らかに。
全世帯の平均所得は580万円ですが、それ以下の世帯数は60.5%もあって、300万円未満層が30%を占めています。
本当に国内消費は堅調なのか?
今年1?3月期のGDPの2次速報値が発表され、実質成長率が年率換算で3.1%へと1.2ポイント上向きに修正されました。これは主には民間設備投資が3.1%増(速報値1.4%増)と大きく伸びたことによるものですが、個人消費も0.5%増(速報値0.4%増)と「堅調」に推移しているということになります。
しかし他方で、5月の消費者の購買意欲を示す消費者態度指数は0.2ポイント減少で、50を割り込み、「横ばい」に。4月の家計消費調査でも、勤労者世帯の消費支出は4カ月連続で前年比マイナスになっていました。また、企業物価指数(むかしの卸売物価指数)は、原油高などを反映して、前年同月比で3.3%と、25年ぶりの大幅上昇。これらをみていると、個人消費は「堅調」とは言ってられない事態です。
GDP年率3.1%に上方修正 1?3月期(朝日新聞)
1?3月期実質GDP改定値、年率3.1%増―速報値は1.9%増(NIKKEI NET)
5月の消費者態度指数50%割れ、基調「横ばい」に下方修正(日経新聞)
5月の企業物価3.3%上昇・25年ぶり伸び率(日経新聞)
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単純計算…
取締役が4人増えて役員報酬が7億円増えたというのですから、取締役1人当たりの報酬は1億7500万円という計算になります。それが11人いるわけだから、単純計算すると、1億7500万円×11人=19億2500万円で、役員報酬の必要額は19億円あまり。ところが、日産が実際に支払った役員報酬は25億円強。ということで、約6億円の差が残ります。
まあ、言うまでもないことですが、1人当たり役員報酬が平均約2億3000万円だからといって、カルロス・ゴーン氏が同じだけしかもらっていないというのはあまり考えられません。
つまり非常に単純でおおざっぱに考えれば、ゴーン氏が、1億7500万円+6億円(要するに、合計で7億円?8億円)もらっている、という計算が成り立つのですが、はたして実際はどうなんでしょう? 一人で10億円もらっているという説もありますが、こうやって考えると、それもあながちデタラメとは思われません。
財務総合政策研、経済格差についての報告書を公表
財務省財務総合政策研究所が「日本の経済格差とその政策対応に関する研究会」報告書を公表。
それによれば、ジニ係数(当初所得)は、1990年から1996年まではほぼ横ばいだったのにたいし、その後は上昇傾向であることが明らかに。1999年の0.482から2002年には0.514へと所得格差は拡大しています。また、25歳未満の若年層では、1987年?2002年の15年間にジニ係数が26%も拡大。
財務総合政策研究所の報告書の要旨はこちら。
→「我が国の経済格差の実態とその政策対応に関する研究会」報告書(PDFファイル、101KB)
日経新聞の気になるコラム
「日経新聞」の本日付夕刊「十字路」欄に「就労世代への社会支出増を」というコラムが載っています。筆者は、日本総合研究所理事の足立茂氏。
気になったのは、ここ。
経済協力開発機構(OECD)統計によると、わが国は就労世代の税・社会保障負担・給付前所得(以下、当初所得)でみたジニ係数や相対的貧困率(中位所得費50%未満所得層の割合)が低く、平等感が強い国民意識と整合する。しかし、税・社会保険料を差し引き、社会保障給付を加えた可処分所得ではジニ係数はOECD平均より高く、貧困率も高水準だ。同比率は就労世代のいずれの年齢層でも高く格差が大きい国となる。
一般的な理解では、当初所得では格差が大きく、税・社会保険料を引き社会保障給付を加えた再配分後の所得では格差が小さくなる、というのではないでしょうか。ところが、当初所得の方が平等で、再配分後の所得の方が格差が大きいとは、こりゃいかに? というのが、よく分からないところです。どなたか詳しい方、ぜひご教授を。m(_’_)m
さて、それはそれとして、面白いのは、このコラムの内容。足立氏は、続けて次のように指摘しています。
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勤労者世帯の消費支出、4カ月連続前年比マイナスに
4月の家計調査が発表されました。勤労者世帯では、1カ月の消費支出が前年同月比で実質4.3%減。これで今年に入って4カ月連続のマイナスになりました。
「雨が多くて夏物衣料が売れなかった」などとの分析もありますが、注目すべきは可処分所得が実質で4.8%減だったこと。可処分所得が減れば、特別な事情がない限り、消費が減っていくのは当然です。
銀行は過去最高の利益を上げているが…
2006年3月期連結決算で、大手銀行6グループの最終利益が3兆1212億円にのぼっていたことが明らかに。この額、なんと前期比4.3倍!
しかし、TBS News-iのニュースが指摘するように、こうした経営の回復は「預金者の犠牲の上に達成された」もの。長期にわたる異常な超低金利で、本来預金者に入るはずだった金利304兆円が銀行のものになったという試算もあるそうです。100万円を1年定期にしても、利息はわずか640円…。これで儲からなかったら、アホです。
ということで、せめて、こんな理解不能な手数料を取るのだけはやめて、預金者に利益還元してほしい。
- 自分の銀行で、自分でATMを操作して、自分の口座から現金を引き出すのに105円の時間外手数料をとられる。
- 自分でATMを操作して、同じ支店内の口座の間で振り替えをするときに手数料を取る。
後者についていえば、同じ支店内での口座振替というのは、ただたんに店舗内で帳簿の数字を付け替えるだけ。その操作を利用者自身にやらせておいて、いったいどういう理由で手数料が取れるんでしょう?
30?40代で所得格差が拡大
30?40代の男女で、所得格差が拡大していることが明らかに。当初所得でみると、年収1000万円以上の世帯13%にたいし、100万円未満は約23%に。
これが厚生労働省の所得再配分調査
→平成14年所得再分配調査報告書(厚生労働省)
経済同友会が靖国参拝再考を求める提言
経済同友会が、小泉首相の靖国参拝の再考を求める提言を発表。財界首脳部から再考を求められて、さて小泉首相はどうするつもりでしょう?
経済同友会の提言は、これ。
→今後の日中関係への提言―日中両国政府へのメッセージ―:経済同友会
日本経団連が義務教育改革について提言
ニュースになってないようですが、日本経団連が「義務教育改革についての提言」を発表。
学校選択制の全国的導入を全面に掲げて、学校選択のための学校評価、教員評価の実施、さらに学校選択制の結果として人気がある(つまり生徒数が多い)学校への予算の集中配分などを主張しています。
企業の余剰資金87兆円
日銀の資金循環統計による試算で、民間企業(金融を除く)の余剰資金が87兆3000億円になっていることが明らかに。
他方で、雇用者所得や家計の現金・預金は減少。かつては「大企業がもうかれば、やがて中小企業や家計も潤う」と言われましたが、今は、大企業がもうかっても、家計に「潤い」は回ってこなくなってしまっているのです。
いまの日本経済は「全体が底上げしている」と言えるのか?
日本経団連の奥田会長が、「格差社会」について、「全体が底上げしていれば、格差が拡大しても問題ない」と発言。
いまの日本、「全体が底上げしていれば」などと言えるのでしょうか? 「誤った印象論で構造改革を中断すべきない」と言う奥田会長の議論の前提の方が、そもそも「誤った印象論」なのでは?
定期預金の金利引き上げ相次ぐと言っても
日銀の量的緩和策の解除にともなって、銀行が定期預金の金利を引き上げる動きが続いているというニュース。
しかし、定期預金の金利引き上げ幅は0.05%ほど。すでに住宅ローンなどは0.1?0.2%で引き上がっており、その差は歴然。まして普通預金の金利はそのまま。とても顧客の理解が得られる、という状況ではありません。
金融・証券/定期預金の利上げ相次ぐ 大手行、好業績で利益還元(FujiSankei Business i.)
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いよいよインフレの時代到来か…?
日本銀行が、量的緩和政策を解除。物価上昇0?2%を目安にするというけれど、いよいよインフレ時代の到来か?
勤労者世帯の所得は現象し続けているにもかかわらず、量的緩和政策の解除で、ローンの金利は上がるし、さらに物価プラスでインフレになったら、いったいどうしたらいいのか? (^_^;)
「正社員が足りない」企業が30%に
厚生労働省の調査によると、正社員が足りないとする企業が全体の30%に上ったとのこと。
へー、景気が良くなってんだ?、と喜んでいるだけではダメ。要するに、これまで正社員を減らしすぎてきたということ。また、「足りない」からといって、はたして企業がすぐに正社員を増やすかどうかは分かりません。企業は「即戦力」志向を強めており、限られた「即戦力」予備軍の中での採用拡大で終わってしまう可能性もあります。
政府調査で所得格差の拡大が明らかに
総務省の「家計調査」で、所得格差が開いていることが明らかに。収入の多少に従って5等分したとき、年収が最も少ない世帯と年収が最も多い世帯の格差は3.46倍となり、3年ぶりに拡大ました。
『世界』3月号 特集「景気の上昇をどう見るか」
雑誌『世界』3月号が、「景気の上昇をどう見るか――格差拡大の中で」という特集を組んでいます。中身は以下の通り、なかなか読み応えがありました。
- 高杉良・佐高信:対談 偽りの改革とメディアの責任を問う
- 丹羽宇一郎:インタビュー 「第二の踊り場」に来た日本経済
- 橘木俊詔:格差拡大が歪める日本の人的資源
- 高橋伸彰:「景気回復劇」の舞台裏で――何が回復したのか
- 山家悠紀夫:「実感なき景気回復」を読み解く
- 町田徹:小泉改革が煽る「独占の波」
- 藤田和恵:ルポ 郵政民営化の大合唱の陰で――郵便局の労働現場はいま
この中で一番面白かったのは、伊藤忠商事会長・丹羽宇一郎氏へのインタビュー。日本経済の現状について、丹羽氏は次のように指摘。
日本経済の現状についてですが、私は「一段高い踊り場に来ている」と思います。「踊り場を脱したのか脱しないのか」という議論がありますけれども、過去の低いところの踊り場は脱しているだろう、しかしその原因はエネルギー価格の高騰、素材関係の高騰という風が中国を発信源として吹いてきたということで、本当に日本経済が力強い回復を開始し始めたというとやや疑問です。……そして、日本経済の先行きについて、やや疑問になる点も出てきました。
その疑問点というのは、貿易収支に翳りがでるのではないか、ということ。国民経済論では、S(貯蓄)-I(投資)=X(貿易収支)という恒等式がありますが、この間、日本の貯蓄率は低下(1991年に15%だったものが、2005年は8%、2010年には3%になるといわれている)。そうなると、恒等式から貿易収支が縮小することになる、というのです。
そこで丹羽氏は、「経済成長を2%から2.5%の範囲で維持するためには、国内の消費を増やさないといけない」と主張。日本経済がいまの「踊り場」を脱却するためには、「輸出の減少を国内の消費で埋めていかなければならない」と指摘されています。
さらに格差拡大の問題について、丹羽氏は、財務省の法人企業統計調査データにもとづいて、次のように主張されています。
これでみると、過去10年間の法人企業従業員1人当たりの給与所得はどうか。中小企業・零細企業というのは、資本金1億円以下の企業です。この人たちの平均給与が過去10年間で、16%下がった。資本金が1億円から10億円の間の中堅企業の平均給与は、9%下がりました。そして、資本金10億円以上の大企業の人たちの給与は1%上がりました。内閣府はジニ係数を使って実態は変わっていないといっているけれど、この財務省の調査データをどうみるか。日本は、中小企業・零細企業が、全法人企業従業員の70%を占めている。そこが16%も下がっているんですよ。私が言いたいのは、貧富の差が拡大にしているとうことです。
その上で、丹羽氏は、アメリカのような弱肉強食の社会が「果たして、日本を本当に強くするのか」が問われていると指摘。安定した中間層の存在が、良質の労働者、欠陥品の少ない商品をつくり、高い技術を共有し、理解度が高く、倫理感の強い人たちが日本社会を支えてきたのではないかと問いかけ、「踊り場」ということばの中には、この日本の国をどうするのか、それを「所得の再配分である税体系、税制をどうするかによって決めていかなければなりません」、そういう選択の意味も込められていると述べています。
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