国旗国歌強制違法判決 地方紙の社説を読む(2)

先日に続いて、21日の東京地裁判決にかんする地方紙の社説を眺めてみました。

神戸新聞は、東京だけが突出していることの異常さを指摘。控訴方針にも疑問を呈しています。高知新聞も、教育の現場で判決をふまえた対応を求めています。山陰中央新報の社説は、タイトルだけ見ると、教育現場への国旗・国歌持ち込みを推進するもののようにみえますが、「行政上の権力を背景に処分や強制をするのは行き過ぎ」と明確。「たとえ少数者であっても、心の自由は尊重されなければならない。それを多数者が踏みにじってきた歴史の教訓があるからこそ、憲法19条は『思想および良心の自由は、これを侵してはならない』と為政者を縛っている」とは、いまさらながら、基本中の基本です。

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東京地裁判決で地方紙の社説を眺めてみた

昨日の東京地裁判決について、地方紙の社説を眺めてみました。

東京新聞や神奈川新聞が指摘するように、国旗・国歌法が制定されたとき、政府は「強制」しないと何度も答弁しています。それを、懲戒処分までして「強制」することは許されない、というのが判決の趣旨です。

国旗国歌判決 「強制は違憲」明確に断(中国新聞)
国旗国歌判決 『押しつけ』への戒めだ(東京新聞)
国旗国歌判決 やはり「強制」はいけない(神奈川新聞)

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都教委の懲戒処分は違法! 東京地裁が判決

国旗、国歌の強制を違法とした判決に、垂れ幕を掲げ喜ぶ原告団と支援者ら=21日、東京・霞ヶ関の東京地裁前〔共同〕

東京での「日の丸・君が代」強制で処分された先生方が訴えていた裁判で、東京地裁は、「懲戒処分までおこなって強制することは思想良心の自由を侵害する違法行為」「職務命令も違法」との判決を下しました。ヽ(^^@)/

当たり前のことだけれども、都教委の強制を明確に違法と断じたことは画期的。不当な処分に負けず、裁判でがんばった先生方に、心からの敬意を送ります。おめでとうございます。

国旗と国歌、義務でない 強制は思想良心の自由侵害(北海道新聞)
上の写真は共同通信
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教育への公的支出率 日本は最低

OECDの調査で、日本の教育への公的支出率(対GDP比)は、調査29カ国中、最低の3.7%だったことが明らかに。他方、教育費に対する私費負担の割合は25.9%で韓国、米国、オーストラリアに次ぐ高水準。

要するに、日本は社会全体として教育に金をかけなさすぎ、ということ。もしデンマークやアイスランド、ノルウェー並みに公的支出を増やしたら、教育予算は2倍以上。そうしたら、いろんなことができると思うんですが…。
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奨学金はどうなるの?

総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が、独立行政法人はできるかぎり貸付業務から撤退すべきとする「独法見直し方針」を確認。

独法には、奨学金をあつかう日本学生支援機構も含まれています。日本育英会をなくしたときに、「奨学金は拡充させる」と約束したのに、早くも見直しですか?

貸し付け業務から撤退を 独立法人見直し方針(共同通信)
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原因はジェンダーフリーじゃなくて、学校施設の貧困

身体検査や林間学校はともかく、体育の授業や水泳の着替えで男女同室というのは、学校に生徒用の更衣室を設けてこなかった文部科学省の責任です。

ジェンダーフリーを攻撃する前に、まずここらあたりから改善を。

身体検査:公立小学校の16.4%が男女同室 文科省調査(毎日新聞)
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「新しい歴史教科書をつくる会」と新しい「新しい歴史教科書をつくる会」?

みっともない内紛をくり返していた「新しい歴史教科書をつくる会」は、6月20日の理事会で、会長に小林正氏を選出。同時に、藤岡信勝氏ら3人を副会長に選出して、体制の立て直しを図ることに。同時に、6人の理事を新任。

他方でAERA誌は、「離脱者」中心に、新しい「新しい歴史教科書をつくる会」をつくる動きがある、フジサンケイグループもこの動きを支持すると報道。

つくる会Webニュース > 平成18年6月21日
日本の教科書わい曲団体、新しい「つくる会」が秋ごろ発足(韓国・中央日報)

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文部省、「現場・地域の声を反映せず」50%、「場当たり的」38%

文部科学省が教育関係者を対象に実施したアンケート調査の結果。「現場・地域の声を反映していない」50%、「場当たり的」38%、「現場のことを知ってほしいと思うか」に「ある」85%、などなど、散々な結果。

このアンケートは、全国都道府県・市町村の教育長(もしくは教育委員会委員長)、小中高・養護学校の校長、教務主任各200人に郵送したもの(回答率は約6割)。教育長やら校長など、日頃、文科省の言うことをよく聞いているはずの人たちの回答でさえ、この程度。実態は推して知るべし。

「現場の声反映せず」5割/教育関係者アンケート 文科省に強い不満(東京新聞)
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教育基本法「改正」問題で踏み込んだ報道

TBSが、教育基本法「改正」が継続審議で先送りされようとしていることで、この間の国会審議をふり返りつつ、「愛国心」を盛り込むことは「内心の自由」を犯すことにつながるという点にまで踏み込んで、まとめ的な報道をしています。

「愛国心」継続審議に、通知表問題は?(TBS News-i)
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まだまだ見つかる「愛国心」通知表

「朝日新聞」の調査によれば、「愛国心」評価の通知表は全国190小学校でおこなわれています。

共産党の志位委員長の質問で、見直しの動きが広がっていますが、他方で、小坂文科相は「通知表の表現は学校長にゆだねられている」という理由で通知表の表現については規制しないとも発言しており、実際に「愛国心」通知表をなくすためには、地域ごと、学校ごとの取り組みが重要です。

通知表の表現は規制せず/「愛国心」評価で文科相(東奥日報)
「愛国心」盛り込んだ通知表、全国190小学校に(朝日新聞 6/9)
77校に「愛国心」項目 中部の公立小通知表(中日新聞 6/9)
愛知県の小学校35校で「愛国心」通知表(朝日新聞 6/7)
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教基法改悪反対集会に来ています

教育基本法の改悪を許すな! 6・7国民集会(日比谷野音)

日比谷野音で開かれている「教育基本法の改悪を許すな!6・7国民集会」に来ています。

教育基本法の改悪法案は、恐らく秋(自民党の総裁選後)の臨時国会に持ち越されるでしょう。だから、それまでの時間、この改悪法案の正体を徹底的に明らかにして反対の世論を広げよう!

いま共産党の志位委員長がそう訴えています。

集会の後は国会までのデモ行進です。心配された夕立もなさそうです。頑張って、最後までデモ行進してきます。

勉強・資格が大事というのは…

東洋大学の調査で、今年の新入生の「大学生活で力を入れて取り組みたいこと」のトップが勉強(81%)、また資格取得も49%を占めたそうです。

「真面目になった」という評価も可能ですが、むしろ大学1年のときから就職への不安にあおられているという部分もあるのではないでしょうか。

<新入生調査>大学生活はバイトより勉強・資格取得が大事(毎日新聞)
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公取委、教科書の特殊指定を9月廃止の方針

公正取引委員会が、自民党の部会で、教科書販売の「特殊指定」を9月1日に廃止する方針を提示。

意見募集したが、廃止方針を変更すべき「特段の事情は認められなかった」というけれど、いったいどんな意見が寄せられ、それにたいし公取委はどう考えたのか、まったく明らかではありません。

教科書はいま、写真・図版が増え、カラー化している一方で、単価は非常に抑えられていて、教科書会社はどこも大変です。で、正直、全国的に上位2社ないし3社による寡占化がすすんでいます。そんなときに「特殊指定」を解除したら、教科書の内容よりも“営業力”によって採択・不採択が決まることになりかねません。

特殊指定を廃止するなら、検定も、教育委員会による広域採択も全部廃止して、何を教科書にするかは学校の先生が自由に決めるようにするのが当然。検定制度のもとでの「特殊指定」廃止は、最悪の結果を招くだけです。

メディアは、新聞の「特殊指定」問題ばかり取り上げ、解除が見送られたと言って浮かれていますが、その一方で、教科書の「特殊指定」解除問題はろくに取り上げていません。ちょっと身勝手すぎるんじゃないでしょうか。

教科書の特殊指定、公取「9月1日廃止」(読売新聞)
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教育基本法の学習会に参加

今日、職場で教育基本法の学習会を開きました。1時間という非常に短い時間でしたが、政府与党の「改正」案が教育基本法の精神や内実を180度逆転させてしまうものであることが非常によく分かりました。

現在の教育基本法は、第1条で教育の目的を次のように定めています。

第1条 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

ここでは、教育の目的は「人格の完成」であることが明らかにされています。そして、「人格の完成」をめざして教育がおこなわれれば、当然、「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」が育成されるはずだ、というのです。「期して」というのは、そういう意味であって、「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」を育成することが教育の目的ではないのです。

なぜ、こんな迂遠な表現をしたのかといえば、教育される子どもたちは、将来の主権者です。主権者は、国家の上に立つ、日本の将来の進路、運命を決定する権利を持つ最高の存在です。だから、主権者の「信託」(日本国憲法前文「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し…」)にもとづいて政治を行うはずの国家が、将来の主権者を特定の型にはめようとしたら、国家の方が主権者の上に立つという、逆立ちしたおかしなことになってしまいます。だから、教育の目的はあくまで「人格の完成」に限られているのです。

ところが、政府与党の「改正案」は、第1条(教育の目的)に続けて、第2条として「教育の目標」という条項を設け、次のように定めています。
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元教師に罰金刑

判決後の記者会見で、ご本人が20万円の罰金は駐車違反と同じ程度、事実上の無罪だと言っていましたが、懲役8ヵ月という求刑の異常さからすれば確かにその通り。

しかし、元教師は来賓として招待されたもの。無理やり会場に押し入ったわけでもないし、式が遅れたのはたった2分。当日出席した父母からは、「みんながいろいろ雑談していた」という指摘もある程度の出来事で、そもそも起訴する必要のない事案なのです。

それにしても、もし卒業生の親や卒業生自身が声を上げたのだったら、学校はどうするつもりだったんでしょうねぇ。

元高校教諭に罰金刑、卒業式の君が代斉唱で不起立求め(読売新聞)
卒業式2分停滞させた元教諭に罰金刑(日刊スポーツ)

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「愛国心」が通知表で評価される国

「毎日新聞」の調査によれば、「愛国心」を通知票の評価項目にもりこんでいる公立小学校が、埼玉県で52校、他に、岩手、茨城、愛知にもあることが明らかに。

小泉首相は、前日、教育基本法の国会審議のなかで、共産党の志位委員長の質問に対し、「評価するのは難しい。あえてこういう項目を持たなくてもいいのではないか」と答弁していました。

愛国心:通知表評価項目に 埼玉で52小学校、愛知も(毎日新聞)
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教育にかんする妄言2

NHKの「日曜討論」で、自民党の町村信孝元文相が次のような発言をしたそうな。

この人、教育というのは上から強制することだと思ってるんだろうなぁ…。(?_?;)

「心と態度は表裏一体だ」「内心の強制まではしないが教育には一定程度強制が入る。一定の強制力がないと教育そのものが成り立たない」(「しんぶん赤旗」2006年5月22日付から)

強制・介入を当然視/教基法改悪めぐり自民/NHK討論/日本共産党 石井氏が批判(しんぶん赤旗)

教育にかんする妄言1

22日付の「朝日新聞」オピニオン欄で、「“職員会議で採決禁止”の是非は?」のテーマで中村正彦・東京都教育長がこんな発言をしていた。

 私たちは高校改革を進めており、特色ある都立学校に変えていくことを目標にしている。地域や保護者の理解をいただき、子どもたちに目を輝かせて勉強してもらうための学校経営方針を、多数決で決めること自体なじまない。(「朝日」2006年5月22日付朝刊東京版)

本当に、地域や保護者に理解され、子どもたちも歓迎するような改革であれば、ちゃんと多数が賛成するはず。反対が多いというのは、その「改革」には問題が多いからだと考えるのが当たり前。そこを省いて「改革」を押し付けてみても、うまくゆくはずありません。
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