白川静氏の怒り

哲学者の梅原猛氏が、今日の「東京新聞」夕刊の「思うままに」で、『字統』など漢字の研究で有名な白川静氏の文化勲章受章の祝賀会の話を書かれています。

 最後に、めったに現代政治のことを語らず、人の悪口をいわない白川氏の口から人の悪口が漏れた。それは靖国参拝をやめようとしない小泉首相への批判である。「罪を憎んで人を憎まず」という孔子の言葉を引用して靖国参拝をやめようとしない小泉氏に白川氏はよおど腹の虫がおさまらなかったのであろう。首相の靖国参拝はあの戦争でひどい目にあった中国人の心を深く傷つけるものであるが、その行為を孔子の言葉を用いて弁解するなどとは言語道断であり、日中の友好関係に致命的な打撃を与えるものと氏は思ったのであろう。[東京新聞 2005年5月30日夕刊]

「罪を憎んで人を憎まず」というのは、被害者が加害者に向かっていう言葉であって、加害者の側が被害者に向かっていう科白ではありません。ご本人は、孔子を引き合いにだせば中国だって反論しにくかろう…と思ったのか、あるいは、自分の知識をひけらかしたかったのか分かりませんが、まったくもって「言語道断」というほかありません。
続きを読む

靖国参拝は見送るべき58% 共同通信世論調査

今朝の東京新聞に載った共同通信の世論調査。小泉首相の靖国神社参拝について、「今年は見送るべきだ」が57.7%で、「今年も参拝すべきだ」16.7%を大きく上回りました。また、日中関係改善にむけた政府のとりくみについても、50.8%が「十分だとは思わない」と回答。

首相靖国参拝 「今年は断念を」57% 共同通信世論調査(東京新聞)
続きを読む

A級戦犯は「赦免」されていない

政府の答弁書によると、A級戦犯については、「減刑」は行われましたが、「赦免」は行われていません。また、「赦免」とは、「刑の執行からの解放」を意味するものであって、赦免されたからといって判決の効力が取り消されるわけではありません。

日本の戦争犯罪についての軍事裁判に関する質問主意書(1991年10月1日提出)

参議院議員吉岡吉典君提出日本の戦争犯罪についての軍事裁判に関する質問に対する答弁書(同10月29日)

続きを読む

いまでもA級戦犯は罪人

自民党の森岡正宏・厚生労働政務官が、「(A級戦犯は)日本国内ではもう罪人ではない」などと発言。

日本は、サンフランシスコ講和条約で、極東軍事裁判の判決を受け入れ、独立が承認されました。森岡氏は、それとも講和条約そのものを否定するつもりなんでしょうか?

森岡政務官、A級戦犯「罪人ではない」・中国の要求に反発(NIKKEI NET)

続きを読む

よくぞ言ってくれました!

昨日(18日)付の「東京新聞」夕刊の「大波小波」。「『反日』の深層」と題して、こう書いています。

 月刊誌、週刊誌の「反中」「反韓」のキャンペーンは目に余る。石やペットボトルは飛ばないが、言葉のつぶては、すでに中国や韓国の大使館のガラスを破っているのだ。一部の不心得な言論のはみ出し者によって。「暴支膺懲」(ぼうしようちょう)という昔のキャンペーンを思い出さざるをえない。
 それにしても、中国や韓国の「反日」についての“読み”が、専門家と称する人物も含めてなっていない。愛国主義教育のせいとか、官製の“やらせ”であるといった皮相なレベルにとどまっていては“目には目を”といった「反中」「反韓」の感情しか生み出さない。(以下略)

マスメディア、とくに出版メディアの下劣さは、呆れるばかり。通勤電車の吊り広告だけであっても、それを毎朝読まされるのは不愉快きわまりない話です。

小泉内閣の外交的ゆきづまり

小泉内閣の外交的なゆきづまりが各方面から指摘されています。

これは、「中国新聞」の社説。「首相が自信を見せ、自画自賛するほど、むなしい思いにとらわれているのではなかろうか 」「『国益』を追求する外交で、持論を貫くあまり相手を黙視しては展望も開けない」と、なかなか厳しい。

社説 小泉アジア外交 空疎にひびく自画自賛(中国新聞、5/18付)
続きを読む

靖国参拝は「責任を受け入れていないことの表明」

シンガポールのリー・シェンロン首相が、日本人記者団のインタビューで、小泉首相の靖国参拝について「悪い記憶を思い起こさせる」「日本が戦時中に悪い事をしたという責任を受け入れていないことの表明、と受け取れる」と発言。

シンガポールは、第二次世界大戦中、1942年2月、日本軍が占領。その直後から、「反日分子」とされた華僑の組織的な殺害がおこなわれ、5万人が犠牲となったといわれています。

靖国参拝「周辺国の視点を」 シンガポール・リー首相(朝日新聞)
続きを読む

小泉首相、相変わらずの「反論」

首相の靖国神社参拝問題で、小泉首相が弁明。

孔子を引き合いに出してみたところで、靖国神社がA級戦犯を「昭和殉難者」として合祀し、第2次世界大戦を「正しい戦争」として顕彰することを目指している以上、小泉首相の反論は成り立ちません。小泉首相の言動によって、ようやく修復の方向に進み始めた日中関係、日韓関係がふたたび元の地点に引き戻されるようなことが起これば、外交上の大失政として糺弾されることは必至です。

小泉首相 靖国参拝「他国が干渉すべきでない」 予算委(毎日新聞)
続きを読む

首相の靖国参拝「中止を」48% 朝日世論調査

古い記事ですが、見逃してました…。(^_^;)

朝日新聞4月25日に掲載された世論調査。首相の靖国参拝について、「やめた方がよい」48%で、「続けた方がよい」36%を上回る結果に。去年11月の調査では、「やめた方がよい」39%、「続けた方がよい」38%で拮抗していました。

中国主張「納得せず」71% 靖国参拝「中止を」48%(朝日新聞)
続きを読む

NHKの世論調査

NHKが世論調査の結果を報道。

郵政民営化では賛成32%対反対20%となっていますが、一番の多数派は「わからない」42%。相変わらず、「どうして郵政民営化なの?」状態が続いています。

郵政民営化 賛否32対20%(NHKニュース)

日中関係についての世論調査では、小泉首相の靖国神社参拝について、「続けた方がよい」40%にたいし、「やめた方がよい」48%で上回ったことが注目されます。

世論調査 中国問題について(NHKニュース)
続きを読む

「あうんの呼吸」って、それが「紳士協定」でしょ

首相、官房長官、外相の靖国参拝はしないという「紳士協定」。日本側は、そんな紳士協定は存在しないと否定してみせたけれど、今日になって、高村元外相が「『あうんの呼吸でそうなっている』と聞いたことがある」と発言。

明文の協定をつくらないからこその「紳士協定」。「あうんの呼吸」でということ自体が「紳士協定」の存在そのものを裏づけています。

<高村元外相>靖国参拝の紳士協定「あうんの呼吸あった」(毎日新聞)
続きを読む

首相の靖国参拝について

総理大臣の靖国神社参拝にたいする中国の批判について、「内政干渉だ」という意見がありますが、私は、「内政干渉だ」といってすませることはできないと思っています。

まず前提として、私は、靖国神社に限らず、どこの神社・寺院であれ、内閣総理大臣や国務大臣が参拝することは、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めた憲法第20条に違反すると考えます。

しかし、それ自体は日本の内政の問題であり、中国政府も、別に、そのことを問題にしている訳ではありません。中国政府が問題にしているのは、その靖国神社に「A級戦犯」が合祀されていることであり、そこに内閣総理大臣が参拝することです。

続きを読む

靖国参拝問題、毎日新聞世論調査

小泉首相の靖国参拝問題で、毎日新聞もすでに世論調査を実施していました。見逃してました。(^^;)

同新聞の過去の世論調査は「評価する」「評価しない」だったのにたいし、今回は「やめるべき」「続けるべき」と設問が変わっているので、同様に評価はできませんが、「評価しない」「やめるべき」が減少傾向?にあるようにも読めます。それにしても、「やめるべき」「続けるべき」とは別に、中国側の要求について「納得できない」という否定的評価が6割を超えるのは、日本国民のあいだで対中イメージが悪化していることの反映。これも大きな問題です。

靖国参拝問題:小泉首相の参拝継続 賛成46%、反対41%――毎日新聞世論調査(毎日新聞)
続きを読む

内閣支持率41%に、不支持率45%で逆転

日経世論調査で、小泉内閣の支持率41%に定価。不支持率は45%になり逆転しました。

新聞報道では調査結果がもう少し詳しく報道されています。その中で注目されるのは、小泉首相の靖国参拝についての調査。

 中国が中止を求めている首相の靖国神社参拝について聞いたところ「賛成」が48%で「反対」の36%を上回った。20歳代から70歳代までのすべての世代で「賛成」が多く、20歳代と60歳代では半数を超えた。

 20歳代で首相の靖国参拝を支持する声が多いことは、11月末の朝日新聞の調査でも明らかになっています。昨今のマスメディアの“ナショナリズム”的言動の影響でしょうが、靖国神社とは何か、A級戦犯とは何か、なぜ中国やアジア諸国が首相の靖国参拝を批判するのか、全体として若い世代のこうした世論にていねいに対応することが求められていると思います。

(12/28)内閣支持率41%に低下・日経世論調査(NIKKEI.NET)
続きを読む

NHKの世論調査

NHKの世論調査で、小泉首相の靖国神社参拝を是とする意見(「続けた方がよい」46%)が否とする意見(「やめた方がよい」38%)を上回る結果が出ました。

しかし、記事をよく読むと、質問のなかで「小泉総理大臣が『これまで参拝してきたのは、心ならずも戦禍に倒れた人たちへの慰霊の気持ちと不戦の誓いを新たにするためだ』と述べたことについてどう考えるか」と言っており、ほとんど誘導尋問。これじゃあ「理解できる」と答える人が多くなるのは当たり前です。

同じ世論調査で、自衛隊のイラク派遣1年延長について「賛成」28%、「反対」62%。また、小泉首相が説明責任をはたしたかどうかでは「果たした」21%、「果たしていない」71%という結果が出ています。

“靖国参拝は継続を”46%(NHKニュース)

NHK世調 内閣支持率44%(NHKニュース)
続きを読む

20代で「続ける」が4割…

11月末の朝日の世論調査。小泉首相の靖国参拝について、「続けた方がよい」38%、「やめた方がよい」39%で拮抗していますが、気になるのは、30代、40代では「やめる」の方が多かったのに対し、70歳以上と20代で「続ける」が4割を占めたこと。70歳以上はともかく、20代でこういう主張の方が多いというのは、やはり真剣に考えなければならない。

首相の靖国神社参拝、賛否二分 本社世論調査(朝日新聞)
続きを読む

ふたたび日中首脳会談へ

29日からのASEAN+3の場を利用して、30日に、こんどは温家宝首相との間で日中首脳会談が開かれることになったようです。

その前提として、こんな記事(靖国参拝、日中首脳会談で首相が慎重対処の意向=読売新聞)やら、こんな記事(日中首脳会談開催で再調整、中国側が打診=読売新聞)を勘案すると、どうやら日中関係の修復に向かって、小泉さんが靖国参拝問題で一定の譲歩をしたみたいですね。小泉首相ご本人も、昨日国会で明言を避けていたし。

問題は、その「譲歩」の中身です。日付だけ変えて参拝するとか、「内閣総理大臣」ではなく「自民党総裁」の肩書きで参拝するとか言われていますが、そんな姑息な手段がはたして通用するかどうか…。

日本人自身が日本の戦争責任と真剣に向き合うことが求められています。

姑息(こそく)――(名・形動)〔「姑」はしばらく、「息」はやむ意〕根本的に解決するのではなく、一時の間に合わせにすること。その場逃れに物事をすること。また、そのさま。【三省堂大辞林】
続きを読む

小泉首相の靖国参拝は「公的」

小泉首相の靖国神社参拝について、総理大臣としての「職務行為」としておこなわれたものとする判決が、千葉地裁でありました。

ただし判決は、首相の靖国参拝で「信教の自由」が侵害されたとする原告の訴えは認めず、具体的な権利侵害がなかったとして憲法判断はおこないませんでした。

首相の靖国参拝は「公的」 千葉地裁、憲法判断を回避(東京新聞)

東京新聞のこの記事によれば、小泉首相の靖国参拝についての裁判は6つおこされ、すでに5つ判決が出されています。結果は、小泉首相の2勝3敗。そのうち、「公的で憲法違反」とした福岡地裁判決(4月)は確定しています。
続きを読む

日中首脳会談のやり取りをどう読むか

日中首脳会談にかんするブログの書き込みについて総じて質が悪いと書きましたが、そんななかで、珍しくまっとうに読ませる記事を発見しました。

日中首脳会談、けっこうおもしろかったかも。――駆け引きはこれから。(Tomorrow’s Way)

首相の靖国神社参拝そのものについていえば、僕は、憲法の政教分離の立場からみて許されないと考えますが、yodaway2さんの「中国側の主張を裏返せば、靖国問題を解決できれば日中関係はもっと発展できるということだ」という指摘は全く同感です。

中国側が問題にしているのは、A級戦犯が合祀されている靖国神社に首相が参拝すること。戦没した国民一般を追悼することに反対している訳ではありません。、もともと天皇のために戦死した「忠臣」を祀る靖国神社がそれにふさわしい施設だとは僕は思いませんが、それは国内問題というのが中国側の立場でしょう。

だから、靖国参拝問題を解決して、日中両国関係の発展をはかることは十分可能だし、中国側はその道筋をくり返し示唆してきたと思います。その意味でむしろ、靖国参拝問題は日本の国内政治の問題だといえるのではないでしょうか。経済的に見て、いまや日本は「中国さまさま」の状態。さらに、北朝鮮問題の6カ国協議、あるいはASEAN+3の展開など、日本を取り巻く国際環境の発展という点でも、日中関係を進展させることは、十分日本の利益になって、おつりがくるぐらいだと思うのですが…。