知り合いからの質問もあって、武田一博氏の論文「現代唯物論の認識論的枠組み」を読んでみました(唯物論協会編『唯物論研究年誌第8号』2003年)。その人は、サブタイトルに「構成説に立つ投射説(志向説)について」というのが引っかかったようで、“唯物論の認識論が構成説・投射説だというのは納得できない”と言うのです。
私は、以前から、自然科学の最新の到達点を総括することは、唯物論哲学にとって重要な課題だと思っています。認識論の分野で言えば、素粒子論が提起している認識問題に正しい哲学的解答を与えること、大脳生理学・神経科学の研究にもとづいて人間の認識の成り立ちについて解明すること、社会的な対象・関係についての人間の認識と価値規範の成り立ちを明らかにすること、などがその中心的なテーマといえます。この点で、武田氏は、以前から積極的に自然科学の成果を学び、総括しようという立場で研究論文を明らかにされてきており、注目していました。
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