久しぶりに『季刊 経済理論』(経済理論学会編、桜井書店)を購入。
特集の「『資本論』草稿研究の現在――新MEGA編集・刊行とその成果」にも興味があったのですが、もう1つ読んでみたかったのは、中谷武・大野隆「労働時間と雇用の決定について」という論文。雇用水準と労働時間との関係を、それぞれを独立因数として数量的モデルを考え、それを1960年代以降の日本の雇用量・労働時間の実際の動きと照らし合わせて検討してみようというものです。
相変わらず数式的な議論はよく分からないのですが、
- 基準労働時間がある水準を下回っていれば超過労働が発生し、ある水準を上回っていれば超過労働は発生せず、実際の労働時間が基準労働時間に等しくなるような、基準労働時間のある水準(「限界基準労働時間」)というものが存在する。
- 「限界基準労働時間」は、基準実質賃金率が高く、超過労働に対する賃金の割増率が高い場合は低くなり、超過労働は発生しにくくなる。それに対し、離職率や割引率が上昇すると、「限界基準労働時間」も上昇し、超過労働が発生しやすくなる。
というもの。要するに、実質賃金率が高く、割増賃金率が高いときは、超過労働の限界コストが高くなるので、企業は労働時間の延長ではなく、雇用拡大によって必要な労働投入をまかなうのに対し、離職率が高く、したがって雇用調整費用やリクルート費用、ジョブトレーニングの費用がより多くかかる場合は、雇用拡大よりも労働時間を延長する方が企業に有利だということです。