櫻井良樹氏の新著『華北駐屯軍 義和団から盧溝橋への道』(岩波現代全書、2015年9月刊)を読了。盧溝橋事件(1937年)の発端となった華北駐屯軍の歴史を、義和団事件での北京議定書による創設から盧溝橋事件発生までを丹念に追いかけた本で、日本側の資料だけでなく、アメリカやイギリスの関連資料や中国側の資料なども掘り起こして、華北駐屯軍の当初の位置づけ、とくに「列強の行動を規制する側面」を明らかにした点や、その後の第2次山東出兵やとくに「満州事変」後の変質を丁寧にあとづけ、豊台に日本軍が駐屯していたことが決して北京議定書に照らして当然の事態でなかったことを明確にしたことは本書の貴重な成果といえる。
「歴史学」カテゴリーアーカイブ
吉川敏子『氏と家の古代史』
日本古代の「氏(うじ)」と家(「戸」)を論じた本。著者は奈良大学教授。
「氏」が「始祖を共有する父系系譜で結ばれた集団」(8ページ)であることをわかりやすく解き明かしている。氏姓は制度のもとで、中央の豪族(「氏」)は「連」や「造」などの「姓」を天皇から与えられる。そして、たとえば大伴連に従属する地方の豪族は「大伴直」という氏姓が与えられる。もちろん、大伴連と大伴直は血縁関係はないし、各地の大伴直同士にも血縁関係はない。
なんと大胆な! 宮地正人『幕末維新変革史』上
金曜日、仕事帰りに書店で見つけた本。元国立歴史民俗博物館館長の宮地正人氏の新刊書ですが、帯の宣伝文句がすごい!
激動の歴史過程を一貫した視点から描く、幕末維新通史の決定版
「決定版」と自ら銘打つなんて、こんな大胆なことは宮地先生でなきゃできませんね。^^;
ということで、早速読んでおります。
江戸時代と価値法則
どうも、話はうまく理解してもらえなかったようですが、昨日の、江戸時代に価値法則が段々と貫徹するようになるという話の続きです。
恵林寺検地帳について
Twitter上で、恵林寺検地帳について呟きました。中世史研究者の方にはご不満があるでしょうが、近世史研究者の側からいえば、こういうことです。^^;
本日のお買い物
右から
- 山内清『拡大再生産表式分析』(大川書房、税込み6,000円)
- 大西広『マルクス経済学』(慶応大出版会、本体2,400円)
- 齊藤彰一『マルクス剰余価値論の地層』(八朔社、4,000円)
- 孫崎享『不愉快な現実』(講談社現代新書、本体760円)
- 渡辺尚志『百姓たちの幕末維新』(草思社、1,800円)
久しぶりの散財をしてしまいました。(^_^;)
読み終わりました。古瀬奈津子『摂関政治』
岩波新書の日本古代史シリーズ最終巻の古瀬奈津子『摂関政治』。オビにあるとおり、藤原道長を中心に、9世紀から11世紀ぐらいまでを対象にしています。
以前に、講談社の『天皇の歴史』シリーズでも書いたことですが、摂関期ぐらいになってくると、描かれている時代のスケールがうんと小さくなってしまいます。古代律令国家で権力の頂点にあった天皇が、この時代になると、ほとんど内裏から外へはでなくなり、政治もほんの近親の公卿たちによって担われてゆきます。
そのことを、本書でも著者は、天皇との私的関係によって政治がおこなわれるようになると表現するのですが、国のまつりごとが私的な関係によって処理されてゆくというのは、いったいどういうことなのでしょうか?
「権門体制論」について呟く
黒田俊雄氏の「権門体制論」について呟きました。
こんどは『明治維新』にとりかかります
勉強します
遠山茂樹氏の『日本近代史I』(岩波全書、1975年)。
ずいぶんと前に古本屋で、今井清一氏の『日本近代史II』、藤原彰先生の『日本近代史III』と3冊セットで買い込んだもの。そのままほったからしていたので、あらためて読み始めました。(^_^;)
森浩一先生、83歳でもまだまだお元気
考古学の森浩一氏の新著『天皇陵古墳への招待』(筑摩選書)。
天皇陵古墳というのは、宮内庁が天皇陵(あるいは陵墓参考地)だとしている古墳のことです。僕が小学生のころ、初めて古墳のことを習ったころは「仁徳天皇陵」「応神天皇陵」だったけれども、大学で日本史を勉強し始めたころには「大山古墳」「誉田山古墳」になっていました。この名前の変更を提唱したのが森浩一氏だったのです。
なぜ、「仁徳陵」ではなくて「大山古墳」なのか? そこに「天皇陵古墳」にたいする考古学者としての森氏の学問的こだわりがあるのです。
遠山茂樹氏が亡くなられました
明治維新、日本近代史研究の泰斗である遠山茂樹氏が亡くなられました。
私が初めて遠山氏の本を読んだのは、大学1年のとき歴史学研究会で勉強した岩波新書の『明治維新と現代』(1969年)でした。しかし、日本史が好きだったとはいえ大学1年生にはむずかしすぎました。(^_^;) そのあと『戦後の歴史学と歴史意識』(岩波書店、日本史叢書)と『<新版>昭和史』(岩波新書)あたりを読んだように覚えています。
おお、都出先生の新しい本が!!
考古学の都出比呂志氏の新しい岩波新書『古代国家はいつ成立したか』です。
都出氏は、12年前、57歳という働き盛りでクモ膜下出血に倒れられました。そのあと復帰されたとは聞いていましたが、書き下ろし単著は『王陵の考古学』(岩波新書、2000年)いらいのはずです。いまでも言葉は容易に出てこないとお書きですが、ともかくお元気でなによりです。
ということで、さっそく「あとがきに代えて」を読みました。3歳で大阪大空襲に遭った「原体験」からのご自身の考古学研究をふり返っておられます。
これは歴史学関係者じゃなくても必読だ!!
歴史科学協議会の『歴史評論』9月号に、日本政治史の功刀俊洋氏が「地震と放射線に揺さぶられて――フクシマから」という報告を書かれている。書かれたのは5月時点ということだが、冷静に書かれた文章の行間から、なるほど福島(とくに福島市内)はこうなっているのかと、原発事故の深刻な実態を思い知らされるものだ。
功刀氏は、「これは想像したくないです」と断りつつ、福島原発が事故の収束に失敗して、再び大爆発を起こし、関東と東北地方全域が再び低線量被曝地となり、いわき市や郡山市、福島市を含む60km県内の150万人が避難せざるをえなくなるのではないかという「恐怖」にふれ、その恐怖のもと、福島では「県内での原発の是非を論じるのはタブー」「事故の収束がすべてに優先する課題で、それ以外のことを検討する余地がない」と指摘。その状況を、「はたして今後福島に住みつづけられるのか見通しがないのです。時間が止まっていて、過去も未来も語りにくいのです」と表現されている。
なるほど、いま清盛の評価はこうなっているのか…
平清盛のイメージというと、武士の出身でありながら、天皇の外戚となって権勢を誇り、貴族化して、とうとう最後は頼朝ら源氏勢に討ち滅ぼされてしまった、そんな感じでした。歴史は「勧善懲悪」ではないと思ってはいても、貴族化して軟弱になったから源氏に負けてしまった、あるいは、平家は古代末期、中世(封建制)は鎌倉幕府から、というイメージは、確かにありましたね。
しかしいまでは、清盛は「武家政権の創始者」として積極的な評価が与えられています。
読み終わりました 石塚裕道『明治維新と横浜居留地』
もういまではすっかり忘れられていますが、幕末・明治維新の12年間(1863〜75年)にわたって、イギリス軍、フランス軍が駐屯していました。本書は、その英仏駐留軍を中心にして、欧米列強による幕末日本の「植民地化の危機」や、当時の日本をめぐる英仏独露などの国際関係をヨーロッパの国際関係(クリミア戦争、普仏戦争、等々)とのかかわりを考察しています。
といっても、難しい理論問題としてではなく、当時の資料に即して具体的に検討されているので、へえ、ほ〜と思いながら読み進むと、日本の幕末・維新変革が、欧米列強の駆け引きやら緊迫した国際情勢のなかで展開していたことがよく分かります。
東北から見ると、律令国家の正体がよく分かる
先日読んだ坂上康俊『平城京の時代』でしばしば言及されていたので、続けて鈴木拓也『蝦夷と東北戦争』(吉川弘文館、2008年)を読んでみました。
坂上田村麻呂の名前ぐらいは日本史の授業で習いましたが、それ以上はよくわかないという人は多いでしょう。古代蝦夷というと、むしろ高橋克彦氏の『火怨』のような小説の題材というイメージが強いかも知れません。本書は、和銅2年(709年)から弘仁2年(811年)までの「征夷」(律令国家のおこなった「東北戦争」)を取り上げ、限られた史料から「征夷」戦争の具体的なプロセスや、蝦夷(えみし)の実態、そしてそもそも律令国家はなぜ征夷をおこなったか(おこなうことを必要としたか)という問題を丁寧に明らかにしています。
読み終わりました 『平城京の時代』
痛快 旧石器研究!
おもしろいです。とくに第2章は、日本の旧石器時代研究の中心である東北大学の芹沢長介グループも明治大学の杉原祥介グループも、「科学でなかった」とばっさり。ありゃ〜〜 (^_^;)
第1章では、石器の形状の発展が、ヒトの生物学的進化と重ねて解き明かされていますが、これを読んで初めてヒトの進化の意味が初めてよく分かりました。チョー納得!
日本古代史の文献をあれこれ読みました
左=吉川真司『飛鳥の都』(岩波新書)、右=同『聖武天皇と仏都平城京』(講談社)
日本古代史のシリーズを読んでいます。1つは、岩波新書ではじまった「シリーズ日本古代史」。「農耕社会の成立」から「摂関政治」までを対象とした全6冊のシリーズで、先月、3冊目の『飛鳥の都』がでました。著者は京都大学の吉川真司氏。「七世紀史」というくくりで、推古朝の成立から遣唐使の派遣、「大化改新」、白村江の戦い、近江大津宮への遷都、壬申の乱、飛鳥浄御原令の制定・施行、藤原宮遷都あたりまでを取り上げています。こうやって概略を書き並べただけでも、激動の時代だったことが分かります。
もう1冊は、講談社が刊行中の『天皇の歴史』第2巻、『聖武天皇と仏都平城京』です。著者は同じ吉川氏で、こちらは天智朝、壬申の乱(672年)あたりから書き起こして、承和の変(842年)あたりまで。こちらは「天皇の歴史」ということなので、天智系と天武系の系譜問題や、近江令、飛鳥浄御原令から律令制の成立、さらに天皇と仏教の関係などが取り上げられています。