永原慶二先生の『日本封建社会論』(東大出版会、初版1955年、新装版2001年)を読み終えました。
前にも書いたことですが、あらためて1955年という“時代の息吹”を強く感じましたが、しかしそれは、“すでに時代はわかってしまった”という意味ではなく、研究の質と量が飛躍的に発展した今日において、研究における理論的総括の重要性を教えてくれるものという意味においてです。
本書は、第1章「序説 研究史と問題の所在」に続けて、第2章「封建制形成の前提」(おおよそ平安時代=荘園制)、第3章「農奴制=領主制の生成」(鎌倉時代)、第4章「封建国家の形成」(室町?戦国大名、織豊政権)という3章構成で、封建制を論じ、結びで「日本封建社会の構造的特質」が論じられる、という構成になっています。
その間に、第5章「補論 中世的政治形態の展開と天皇の権威」という章があります。ここでの天皇制論は、権力と権威を区別し、さらに自律的に支配を構成していた段階と、封建的支配層によって再生産されたものとしての中世天皇制とを区別する立場が明らかにされています。このあたりは、網野氏の天皇制論にたいする永原先生の批判に繋がる部分でもあり、興味深く読みました。