日中首脳会談のやり取りをどう読むか

日中首脳会談にかんするブログの書き込みについて総じて質が悪いと書きましたが、そんななかで、珍しくまっとうに読ませる記事を発見しました。

日中首脳会談、けっこうおもしろかったかも。――駆け引きはこれから。(Tomorrow’s Way)

首相の靖国神社参拝そのものについていえば、僕は、憲法の政教分離の立場からみて許されないと考えますが、yodaway2さんの「中国側の主張を裏返せば、靖国問題を解決できれば日中関係はもっと発展できるということだ」という指摘は全く同感です。

中国側が問題にしているのは、A級戦犯が合祀されている靖国神社に首相が参拝すること。戦没した国民一般を追悼することに反対している訳ではありません。、もともと天皇のために戦死した「忠臣」を祀る靖国神社がそれにふさわしい施設だとは僕は思いませんが、それは国内問題というのが中国側の立場でしょう。

だから、靖国参拝問題を解決して、日中両国関係の発展をはかることは十分可能だし、中国側はその道筋をくり返し示唆してきたと思います。その意味でむしろ、靖国参拝問題は日本の国内政治の問題だといえるのではないでしょうか。経済的に見て、いまや日本は「中国さまさま」の状態。さらに、北朝鮮問題の6カ国協議、あるいはASEAN+3の展開など、日本を取り巻く国際環境の発展という点でも、日中関係を進展させることは、十分日本の利益になって、おつりがくるぐらいだと思うのですが…。

莫言『赤い高粱』

出張2日目です。今日は、ずっと雨が降り続いて、建物の中に閉じ込められています。

昨日から読み始めた莫言の小説『赤い高粱』は、第1章を読み終えて、第2章の真ん中ぐらいにさしかかっています(もちろん、仕事をしながら、休憩どきや寝る前に読んでいるだけですが)。

「わたし」の父と祖父、祖母の話(これがちょうど日中戦争の頃)、そして祖父、祖母の若かったときの話を、「わたし」が故郷の昔話として語るという感じで、話がすすんでいきます。そして、その父が子どもの頃の話と、祖父、祖母が若かったときの話とが、一面の赤い高粱畑を舞台としながら、折り重なるように語られていくので、読んでいると不思議な感じがします。莫言の『赤い高粱』は、全部で5つの話からなる連作で、岩波現代文庫にはそのうち第1作と第2作が収められています。あとの3作についても読んでみたくなりました。

池莉『ションヤンの酒家』(小学館文庫)

ションヤンの酒家

中国の作家・池莉『ションヤンの酒家』(小学館文庫)を読みました。映画「ションヤンの酒家」の原作ですが、いわゆるノベライズではなく、ホントの原作(原題「生活秀」)です。

映画は見逃してしまったのですが、小説は非常に面白かったです。主人公・来双揚(ライ・ションヤン)は、映画だと30代になったばかりぐらいに見えますが、原作だと、もう少し年がいっているように感じます。そのションヤンが、妹や兄夫婦、甥っ子、父親などに悩まされながら、下町の屋台を切り盛りしている。そういう“いま”を生きる庶民の強かな暮らしが描かれています。

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中国人強制連行で和解―大江山ニッケル鉱山訴訟

第2次世界大戦中の中国人強制連行大江山ニッケル鉱山訴訟(東京高裁)で、原告と被告企業・日本冶金工業との和解が成立。和解金は、原告1人あたり350万円、計2100万円。昨年1月の京都地裁一審判決では、強制連行の違法性は認めたものの、被害から20年で賠償請求権が消滅する民法の「除斥期間」を理由に請求を棄却していました。

和解の成立は、2000年11月の花岡事件訴訟(東京高裁)に続いて2件目。国は和解を拒否したため、訴訟は継続されます。

中国人強制連行訴訟 大江山鉱山 原告と日本冶金工業和解(毎日新聞)
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丸山昇『上海物語』

上海物語カバー

柄谷行人を読んでいると書きましたが、その“息抜き”というわけではありませんが、中国文学の丸山昇氏『上海物語』(講談社学術文庫)をぱらぱらと読み終えました。親本は1987年に出されたということですが、「中国の城都」シリーズの1冊ということでは気づかなかったのかも知れません。

上海を舞台に、清末から辛亥革命、さらに日中戦争へと時代の動きを追いながら、日中文化人たちの交流を調べ上げた本です。魯迅、郭沫若といった有名な人物だけでなく、労働運動や革命運動の中心地でもあった上海で活躍したたくさんの中国文学者が登場します。また、日本人も、芥川龍之介、谷崎潤一郎、佐藤春夫、金子光晴などのほか、内山完造、林京子など、さまざまな文学者が登場。人間ドラマとしても、ぐいぐい引き込まれてしまいました。

【書誌情報】著者:丸山昇/書名:上海物語 国際都市上海と日中文化人/出版社:講談社(講談社学術文庫1667)/発行年:2004年07月/定価:1050円+税

田村秀男『人民元・ドル・円』

本カバー

中国経済の実情を、「人民元」という通貨を通して紹介しています。著者は、日経新聞の経済部出身のジャーナリストで、中国「脅威論」や「崩壊論」をまくし立てるのではなくて、経済成長を可能にした仕組みを、それが生み出したさまざまな矛盾と一緒に、いろんなエピソードを交えながら紹介しています。気楽に読めて、中国の「改革開放」経済のしたたかさや奥深さが分かったような気がします。

面白いと思ったのは、人民元が事実上ドル・ペッグだったということ。そして、それが中国経済の驚異的な発展を可能にしている最大の条件になっているという指摘です。
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再び中国で旧日本軍の遺棄化学兵器による被害

また、中国で、旧日本軍が遺棄した化学兵器による中毒事件が発生しました。

旧日本軍化学兵器で男児2人負傷=液体に触れ中毒症状―中国吉林省(時事通信)

少し前に、NHK(だと思う)の特集番組で、旧日本軍の毒ガスが浜名湖に遺棄されていたことが取り上げられていましたが、実は戦後すぐに、そうした遺棄毒ガスが岸に打ち上げられ、被害が生まれていたのです。そのとき、政府が本腰を入れて、海外を含めた毒ガス遺棄の状況を調査していれば、こうした問題はもっと早く解決していたかも知れません。
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中国政府、農民負担の軽減へ

中国で、地方政府が様々な名目で賦課していた費用徴収にたいし、政府が規制に乗り出しています。これまでの杜撰なやり方に呆れるとともに、今年の全人代で、中国政府が打ち出した「農業・農村・農民」問題(いわゆる「三農問題」)解決への取り組みとして注目されます。

<中国>地方政府の「乱収費」違法徴収 農民の生活を圧迫(毎日新聞)
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