17日に明らかになった自民党憲法調査会の憲法改正草案大綱の素案なるものは、内部向けの「たたき台」というだけあって、つぶさに読んでいくと、いろいろ彼らの「ホンネ」が書かれていて面白い。
たとえば現在の憲法9条にかんする部分。「平和主義」と「国際協調」の原則を掲げるというのですが、その仕組みは、戦争と武力の行使・威嚇は「国際紛争を解決する手段」としては「放棄する」と言いながら、「自衛」または「国際貢献」のための武力行使については「必要かつ最小限の範囲」であれば認めるというもの(これを彼らは「武力行使の謙抑性」と言っています)。そのために、「国際協調」の項を立てて、次のように「国際活動への積極的参加」を謳っています。
我が国は、確立された国際的機構の活動その他の国際の平和と安全の維持及び回復並びに人道的支援のための国際的な共同活動に、積極的に参加するものとすること。
これだけ読むと、「国連がやっている平和維持活動や人道支援活動に積極的に参加しよう」と主張しているように読めますが、ここに、以下のような但し書きがついています。
「確立した国際的機構の活動」とは、現時点では国際連合によるものを念頭に置いているが、将来的にはそれにとどまるものではなくて、EUのような機関がアジアにも誕生するようなことがあれば、それもこれに含まれることになる。もちろん、現時点でも、「その他の国際の平和と安全の維持……ための国際的な共同行動」とあるから、国連の活動だけに限定されているわけではない。
つまり、「国際活動」は国連の平和維持活動などにはまったく制限されない、というのです。たとえば米軍のアフガニスタン、イラク攻撃のようなものだって、「国際の平和と安全」という名目で、「自衛軍」の参加は可能だというのです。また、「国際の平和と安全の維持及び回復」と「人道的支援」とが明確に区別されている以上、「国際の平和と安全の維持及び回復」が武力行使を伴うものであることは明白です。ここに、彼らの一番のホンネがあることを見逃してはなりません。
法律用語としては、「及び」と「並びに」では、「並びに」の方が大きい接続、「及び」が小さい接続を表わします。だから、素案の本文は、<1-1>国連などのおこなう国際平和維持活動だけでなく、<1-2>「その他の」つまり国連以外の勢力――たとえばアメリカ――が主体となった「平和維持活動」にも積極的に参加するし、さらに、<2>「人道支援のための国際的な共同行動」――これについては「確立された国際的機構」が主体である必要は全くない――にも参加するという構成になっています。
こういう“仕掛け”を仕込んでおきながら、国民向けには「国際活動への積極的参加」といって上っ面を飾ろうというのは、「衣の下から鎧」どころか「鎧の下から鎧」というべきでしょう。