よく分かりませんでした… エルンスト・バルラハ展

エルンスト・バルラハ展(図録)

昨日のケーテ・コルヴィッツ展に続けて、今日は、上野へ行って、エルンスト・バルラハ展を見てきました。

エルンスト・バルラハは、1870年生まれのドイツ人の彫刻家。いわゆるドイツ表現主義の代表的作家です。しかし、結論からいうと、ドイツ表現主義って何?という感じで、よく分かりませんでした。(^_^;)

というのも、今回の展示作品の大部分は、個人的な作品というか、非常に宗教的な作品で、1920年代後半になってつくられるようになった、第1次世界大戦の犠牲者の追悼碑的な作品は4点のみで、なぜ、どういうきっかけでバルラハが、このような反戦的、厭戦的なモニュメントをつくるようになったのかという、一番肝心な問題が分からなかったからです。もちろん、これら犠牲者追悼碑の諸作品から伝わってくるものは圧倒的なのですが、それだけに、なぜバルラハがこのような作品の作成にすすんでいったのかを知りたかったというのが正直な感想です。
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ケーテ・コルビッツ展

ケーテ・コルヴィッツ展(図録)

今日は、昼から町田の国際版画美術館に出かけて、ケーテ・コルビッツ展を見てきました。

ケーテ・コルビッツは1867年生まれのドイツの女性版画家です。歴史研究者には、石母田正氏『歴史と民族の発見』(東京大学出版会、1952年)の装丁でお馴染ですが、美術展で実物を見るのは初めて。やっぱり見逃すわけにはゆきません。

で、第一印象は“小さい!”というもの。とくに彼女が初めて広く認められることなった「織工の蜂起」なんて、A4ほどもないちっちゃな作品です。事実上最後の作品である「種を粉に挽いてはならない」でも、せいぜい画用紙程度。作品の圧倒的な存在感から、勝手にもっと大きなものを想像していました。
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「白バラの祈り」

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最後の日々

今日は、昼に仕事をすませたあと、久しぶりに日比谷シャンテシネで、映画「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最後の日々」を見てきました。(なんと、これでようやく、今年2本目)

ナチス・ドイツがスターリングラードの攻防に敗北しようとしていた1943年2月、ミュンヘンの大学で、反ナチスのビラを配布したとして逮捕されたハンス・ショル、ゾフィー・ショルの兄妹。「白バラ」抵抗運動として有名な事件ですが、そのなかで唯一の女性であったゾフィー・ショルを主人公とした作品です。

「白バラ」抵抗運動については、70年代に本を読んで知っていましたが、今回の作品は、90年代になって旧東ドイツで見つかったゲシュタポによるゾフィー・ショルの尋問調書にもとづいて、逮捕されてからわずか5日で処刑されたゾフィーの、取調官モーアとの緊迫したやり取りが描かれています。

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ナチ絶滅収容所長との対話

表紙カバー

ギッタ・セレニー『人間の暗闇―ナチ絶滅収容所長との対話』(小俣和一郎訳、岩波書店)。まだ100ページほど読んだだけですが、ナチス・ドイツがポーランドに設けた絶滅収容所長にたいするインタビュー。原書は、1974年にまず英語で出版されたそうです(邦訳は、1997年のドイツ語版から)。著者は、イギリス在住のジャーナリスト、歴史研究者(女性)で、1967年から1970年にかけて、西ドイツでおこなわれたナチ裁判を傍聴し、1970年に終身刑の判決を受けた元レブリンカ収容所長フランツ・シュタングルにたいする70時間にわたってインタビューしたもの。

1対1のインタビュー記録ではなく、他の関係者へのインタビューや記録とつきあわせて、シュタングル(あるいはその他の収容所関係者)の言い分が事実に合致しているのかどうか、確かめながら、なぜ普通の人間が、ヒトラーによる「ユダヤ人最終解決」を担うことになったのか。その心理に迫っています。
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野党連合だって減ってるじゃん

ドイツ総選挙、野党のキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)が与党社会民主党(SDP)を抜いて第1党になったとニュースが流れていますが、よくよくみたら、CDU・CSUだって前回比23議席減のマイナス。連立相手の自由民主党(FDP)が伸びたとはいえ14議席増なので、野党連合全体でもマイナス9議席。

他方、与党はというと、SDPが前回比29議席減、90年連合・緑の党が4議席減で、こちらは33議席のマイナス。

ドイツ総選挙の暫定開票結果
政党 議席数 得票率
キリスト教民主・社会同盟 225(248) 35.2%(38.5)
社会民主党 222(251) 34.3%(38.5)
自由民主党 61(47) 9.8%(7.4)
左翼党 54(2) 8.7%(4.0)
90年連合・緑の党 51(55) 8.1%(8.6)

( )内は前回2002年の結果。左翼党の前回は民主社会主義党の議席数。※朝日新聞9/20付より

それから、SDPとCDU・CSUとの議席伯仲は、前回も同じ。前回は、得票率はどちらも38.5%で、議席はSDPが3議席上回っていました。だから、その限りでは、前回総選挙と結果はあまり変わっていません。

今回が前回と大きく異なるのは、新しく誕生した左翼党が54議席を獲得したことです。そのため、与党連合、野党連合ともに議席を減少させる結果になったのですが、野党連合はもちろん与党連合も、いまのところは左翼党を連立の相手にはしていません。まあ、シュレーダー政権の「改革」路線を嫌ってSDPを割ってでた勢力を含む左翼党も、与党連合と組むつもりはないでしょうが…。その結果、与党連合も野党連合も過半数に届かないという状況が出現した訳です。

この結果を冷静に見れば、むしろ、今回の総選挙の政治的な意味としては、CDU・CSUが事前の優勢を保てなかったことに注目すべきでしょう。それが、CDU・CSUの社会保障切り捨て、消費税増税という公約のせいかどうか、今後の報道と分析を待ちたいと思います。

独新政権、連立協議が焦点に 野党連合も過半数届かず(朝日新聞)
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ドイツ総選挙 政権交代?それとも政権維持?

野党・キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)が第1党になったものの、社会民主党(SDP)との議席差は3。しかし、東部ドレスデン選挙区が、候補者死亡のため、10月2日に投票延期となったため、最終結果は確定していない。

CDU・CSU+自由民主党では過半数に足らない。左翼党が、SDP+緑の党の旧与党連立を閣外協力にせよ支持すれば、シュレーダー政権が続くことに。しかし、シュレーダー政権の「改革」路線を嫌ってSPDを割って出た左翼党だけに、それも難しいか…。何にせよ、左翼党54議席は大健闘。

<独総選挙>保守野党第1党奪還 過半数には届かず(毎日新聞)

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描かれたものと描かれなかったもの ヒトラー?最期の12日間

ヒトラー?最期の12日間?

話題の映画「ヒトラー?最期の12日間?」を見てきました(渋谷・シネマライズ)。実を言うと、日曜日(7/10)にも見に行ったのですが(シネマライズは、日曜最終回はいつでも1000円!)、満員・立ち見で、あきらめて帰ってきました。今日は、約8割のお客さんというところでしょうか。普段、シネマライズでは見かけないような年配のお客さんも見かけましたが、やっぱり圧倒的に多いのは若いお客さんでした。(今年18本目の映画)

さて、見た感想ですが、圧倒的としか言いようのない作品でした。とくに、これでもかこれでもかと描かれる、ソ連軍の砲撃を次々に打ち込まれていくベルリンの街の様子からは、本当に戦争というもののもつ残虐さ、残酷さが伝わってきます。
また、安全な地下壕の中で、最期の作戦指揮をとろうとするヒトラーには“狂気”すら感じさせられます。そして、ヒトラーを取り巻く将校連中は、みんな、帝国の「最期」を目前に、どこかでヒトラーに引導を渡さなければいけないと思っているにもかかわらず、裏切り者として処刑されることを恐れ最期まで忠誠を尽くそうとする者と、何とか脱出して生き延びることを考える者との間で、無駄な当てこすりやかけひきに時間が空費されていく…。そこには、「国民」を守ることなどまったく登場せず、ヒトラーの狂気は、そのまま「第三帝国」の狂気を示していると思いました。

その狂気を浮き彫りにしてくれるのは、1人の軍医の冷静な目と、狂信的なヒトラーユーゲントの少年です。(プログラムや公式ホームページでは、この2人の俳優が誰なのか書かれてないのが残念です)

しかし他方で、この映画では、ヒトラーとナチスが何をやったかは、まったく描かれません。映画は、主人公のユンゲがヒトラーの秘書に採用された1942年11月から、いきなりベルリン陥落目前の1945年4月20日に飛ぶので、その間に起こったことは、すっぽり抜け落ちています。

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ドイツがヨーロッパからの米核兵器撤去を提起

「しんぶん赤旗」によれば、NATO国防相会議で、ドイツのシュトルック国防相が、ヨーロッパにある米軍の核兵器の撤去を提起したとのこと。

NATO全体での合意に至るには、まだまだ道のりは遠いだろうけれど、注目したい動きですね。

独、米の核撤去提起/NATO国防相会議/国内の世論背景に(しんぶん赤旗)
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ドイツ左派はどうなるか?

ドイツで、ラフォンテーヌ元社民党党首が社民党を離党。シュレーダー政権と袂を分かち、新たな左派の結集を呼びかけた。

国際的には、アメリカのイラク攻撃に毅然として反対をつらぬいたシュレーダー政権ですが、国内的には失業の増大と社会保障予算の削減で支持率が低下。先週の州議会選挙で敗北していました。

独SPD左派の元党首、離党を表明(NIKKEI NET)
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音楽のすばらしさ 「ベルリン・フィルと子どもたち」

ベルリン・フィルと?どもたちプ?グラム

不覚にも泣いてしまいました。なんで、こんな映画で涙が出てきたのか? われながら不思議です。(^^;)

僕は、タイトルから、ベルリン・フィルがどこかの子ども相手にオーケストラの練習をする、というNHK「ようこそ課外授業」的な映画を勝手に想像していました。しかし、実際に見て、全然違っていて、引き込まれてしまいました。まず登場する子どもたちが、本当にいろんな困難な条件におかれていること。そして、クラシックなんて一度も聞いたことがないし、ダンスをしたこともないという、その子どもたちが、ロイストン・マルドゥームによる練習を通して、少しずつ変わっていく様子が、サイモン・ラトルとベルリン・フィルの練習風景と片身代わりに登場しながら、映画はすすんでいきます。

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