午後、突然雨が降り出しましたが、それがやんだあと、日比谷シャンテでギリシャ映画「エレニの旅」を見てきました。長回しで、静かに時間が流れていく…そんな感じの不思議な映画でした。
1919年、ロシア革命に追われて、オデッサから一群のギリシャ人たちが引き上げてくる。「お前たちは何者だ?」との誰何に、彼らの長らしき男性が「入国の許可を1カ月待った。許可がおりて、東へすすめと言われた」と答える。そこには、オデッサの街で助けた少女エレニがいる。それからおよそ10年後、エレニが養母ダナエに連れられて、〈ニューオデッサ〉に帰ってくる。叔母カッサンドラはダナエに「すべて済んだ?」「生まれた双子は?」と問う…。
ゆったりとした長回しのカメラアングルで映画はすすんでいきます。ストーリーも克明に描くというより、象徴的なスタイルで、不思議な雰囲気を醸し出してゆきます。哀調を帯びたアコーデオンの音楽も印象的です。そして、やがて水没するニューオデッサの街。〈白布の丘〉の狭い住民の集落のあいだを通っていく蒸気機関車、それに廃墟となったニューオデッサの街と、それをおおう“河”と“水”が、くり返しくり返し登場し、その間に、少しずつギリシャの〈歴史〉が動いていきます。そんな不思議な時間と空間をたっぷり堪能してください。