マルクス『フランスにおける階級闘争』

いまおこなわれている研究講座のテーマでもあるので、マルクスの『フランスにおける階級闘争』を読んでいます(講座自体はすでに猛スピードで進行してしまっていますが)。

手許にある国民文庫には、マーカーで線を引いた跡や、一度引いた鉛筆の線を全部消して、もう一度線を引きながら読み返した跡など、いろいろ苦闘した痕跡が残っていますが、これまで中身をきちんと理解できたという感じがしません。今回の研究講座をよい機会に勉強し直して、ぜひ自分のものにしたいと思っています。

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『資本論』第3部第30章(続き)

第30章の続きです。

前にも書いた通り、まず問題の提示。それに続いて、新書823ページ2行目からのパラグラフ。ここは、言ってみれば、第29章で明らかにされた架空資本の復習の部分。たとえば「諸債務の蓄積でさえ資本の蓄積」のように見える、というのは「信用制度のなかで起こる歪曲の完成」だ(823ページ)などなど。

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『資本論』第30章を読み始めました

第30章?第32章は、前にも紹介したとおり、マルクスが「III)」として一まとめに書いた部分。したがって、エンゲルスの章節区分にこだわらず読んでゆくことが必要です。

で、第30章の冒頭、マルクスは「信用制度に関連してわれわれがいま取り組もうとする比類なく困難な問題」として、次の2つの問題をあげています(822ページ)。

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あり方いろいろ(続き) existierenをどう訳すか

牧野広義『「資本論」から哲学を学ぶ』(学習の友社)

学習の友社から、こんな本が出ました。まだ読み始めたばかりですが、『資本論』第1部にそって、マルクスが弁証法的に論を展開している部分をとりあげて、弁証法的なものの見方、考え方、あるいは論述の展開の仕方について解説をくわえられています。

ということで、いま少しずつ読み始めているところですが、それはそれとして、「おっ」と思ったのは、「まえがき」に書かれた「凡例」の部分です。

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『資本論』第10分冊を読了

時間がかかっているのは、途中、別な本を読んだりしたこともありますが、第3部第5編にはいって、マルクスの論述も込み入ってきたし、草稿からのエンゲルスの編集も輻輳して、すらすらとは行かなくなってきたため。

しかし、現代経済を考える上では、信用論が一番おもしろい部分の1つ。当時の信用制度の発達を理論的に解明し、イギリス経済の現実にせまってやろうというマルクスの意気込みみたいなものが感じられて、わくわくするところでもあります。

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伊東光晴氏、関志雄『中国を動かす経済学者たち』を評す

日曜日(9/2)の「毎日新聞」の書評欄で、伊東光晴氏が関志雄『中国を動かす経済学者たち』の書評を書かれていましたが、なかなか的確な書評だと思いました。

で、この書評で、伊東光晴氏は、「理解できない」「わからない」を連発されています。たとえば

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ウォルフレン『日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり』

カレル・ヴァン・ウォルフレン『日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり』(徳間書店)

『日本/権力構造の謎』で有名になったオランダ出身のジャーナリストカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の最新著。目次を眺めると、ホントにストレートに「アメリカの世界支配は終わった」という主張がずらりと並んでいます。

第1章 アメリカの覇権は終わった
第2章 テロリズムは脅威ではない
第3章 グローバリゼーションは崩壊した
第4章 貧困撲滅という虚構
第5章 地殻変動を起こす地球経済
第6章 新しい現実の中での欧州連合
第7章 中国は信頼できるか?
第8章 虚構にとって代わる真実

しかし一番面白いのは、そうした話の頭で、ウォルフレン氏が「再び支持され、復権しつつあるマルキシズム」を強調していることです。曰く――

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無事終了

風邪を引いて、昨日の夜に出かけるのをキャンセルし、今朝は今朝で人身事故による運転見合わせで、いったいどうなるのかと思いましたが、とりあえず無事時間どおり会場に到着。なんとか5時間の講義を終えることができました。

この手の講義をするときいつも困るのは、科学的社会主義、マルクス主義の基本として、かつてのような教科書的な講義ができなくなっているということ。長く自明のこととされていた「通説」的な理解も根本的に見直しがすすんでいるいま、そういう“音を立てて発展しつつある”中身を、そういうものとしてつかんでもらう、というのは、初学者にはなかなか大変なことだと思います。

しかし、今の僕には、そんなふうな講義しかできません。消化不良でアップアップしていた人もいましたが、どうもすみませんでした。僕の講義が分からなくても気にせずに、がんばって勉強&活動してください。m(_’_)m

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はてなの翻訳

『資本論』第3部を読んでいて、はてな?と思う翻訳を見つけました。

第2編「利潤の平均利潤への転化」第11章「生産価格にたいする労賃の一般的変動の影響」のなかの次の一節です。

 労賃の騰貴または下落が必要生活諸手段の価値変動に由来するならば、上述したことの修正が起こりうるのは、その価格変化によって可変資本を増加または減少させる諸商品が不変資本にも構成要素としてはいり込み、それゆえ単に労賃に影響をおよぼすのではないという限りでのことである。しかし、それらの商品が労賃だけに影響する限りでは、これまでの展開だけで、言うべきことはすべて尽きている。(新日本新書版第9分冊、349ページ)

一読して、意味がすぐ分かりますか?

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『資本論』の文章って…

『資本論』第2部、第3部は、マルクスの残した草稿をエンゲルスが整理したものだから、マルクスがあれやこれや考えながら書いたものがそのまま本文になっていて、読みにくい。「しかし」「しかし」がくり返されたり、「したがって」「それゆえに」でどこまでも文章が続いていたり、「ああでもない、こうでもない」と文章が錯綜していたりします。これは、エンゲルスの編集が悪いとか、翻訳が悪いとか問題ではなくて、もともとのマルクスの草稿がそうなのだから、どうしようもありません。

しかし、それにしても…という文章にぶつかってしまいました。(^_^;)

それは、たとえば『資本論』第3部 第1編第6章「価格変動の影響」のなかの次の部分。

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