いま話題の吉井英勝議員の最新著

吉井英勝『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』(新日本出版社)

吉井英勝『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』

いま話題の、京都大学工学部原子工学科卒、日本共産党衆議院議員の吉井英勝さんの最新著『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』(新日本出版社)です。

昨年10月に発行された本ですが、実は、吉井さんがこれまであちこちの雑誌などに書かれた論文集かと思って、こんどの原発事故が起こるまで手にとってみることもしていませんでした。しかし、読んでみたら、全然違っていて、吉井さんが長年暖めていた構想にしたがって全編書き下ろされたもの。原発の危険性だけでなく、地球温暖化対策のエネルギー政策を地域経済の再生と結びつけて、どう具体化していくかが、一つ一つ分かりやすく解き明かされていて、一気に読んでしまいました。

くり返しますが、本書は昨年10月に書かれたもの(上の写真の帯は最新のですが)。ところが、本書を読んでいると、原発事故が起きたあとの現在にそのまま重なる話ばかりでした。たとえば、「はじめに」ではすでに原発トラブルによる電力不足のことが書かれています。東京電力がたびたびくり返してきた事故隠しの問題や、電力会社、原発メーカー、官僚などの「利益共同体」の話も出てきます。核廃棄物の最終処理の問題、廃炉の難しさなども明らかにされていて、つくづく今度の事故が「想定外の津波」でたまたま起こったなんていうものでないことを思い知らされました。

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横浜方面うろうろ中に読んだ本(1)

大河内直彦『チェンジング・ブルー』(岩波書店)

横浜方面うろうろ中に、いろいろ本を読みましたが、その中の1冊。サブタイトル「気候変動の謎に迫る」とあるとおり、地球的規模での気候変動を取り扱った本ですが、いま問題になっている「地球温暖化」問題を直接取り扱ったものではありません。

むしろ、そうした議論の前提になっている地球の気候変動のメカニズムそのものを探るために、数千年単位から数万年単位で地球の気候がどんなふうに変わってきたか、それがどのように研究され、解明されてきたかを紹介した本です。

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中期目標策定の責任は先進国に

続けて、またまた今日の「日経新聞」ですが、「経済教室」で、東北大学の明日香壽川教授が、「洞爺湖サミット後の温暖化対策 中期目標策定を早期に」と題する論文を書かれています。そのなかで、明日香氏は、「中期目標こそ次期枠組みの骨格」であり、それを決める「ボールは先進国側に」あると指摘されています。

洞爺湖サミットの排出国会議で、中期目標が合意できなかったことについて、私もこのブログで先進国側に責任があると指摘しましたが、環境経済の専門研究者の目から見ても、責任は先進国側にあるということになるようです。

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サミットは地球温暖化対策で何をしたのか?

洞爺湖サミットが終わりました。サミットの課題はいろいろあったが、地球温暖化問題について、サミットは何をしたのか。関連情報を集めてみた。

再送:〔焦点〕G8温室ガス削減合意に新興国から後退批判、09年末の決着に不透明要素(ロイター)
社説:北海道・洞爺湖サミット 先進国の削減責任が不明確だ(毎日新聞)
社説:G8合意、50年50%排出削減の微妙さ(日経新聞)
新興5か国が政治宣言、先進国により大きなCO2削減求める(読売新聞)
温室効果ガス削減目標、新興国と合意できずG8宣言の力不足示す(ロイター)

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地球温暖化 政府は何をやろうとしているのか?

資料&備忘録。「福田ビジョン」が発表されたが、いったい福田内閣は何をやろうとしているのか。

京都議定書目標達成計画(2008年3月28日、閣議決定)
福田内閣総理大臣スピーチ「低炭素社会・日本」をめざして(2008年6月9日、日本記者クラブ)
地球温暖化対策推進本部(首相官邸)

サマータイム制導入なんてやってないで

福田首相が、地球温暖化対策として、サマータイム制の導入をはかるらしい。

しかし、サマータイム制が省エネ、しいてはCO2削減に効果がある、という説は、どう考えても根拠薄弱。そんな見せかけだけのパフォーマンスよりも、政府にはもっとほかにやるべきことがあるはずだろう。

サマータイム10年にも、排出量取引も導入…首相表明へ(読売新聞)
サマータイム、眠りに悪影響 睡眠学会が反対声明(中日新聞)

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このままなら22年後に浸水被害だけで1兆円

大学や国立研究所など14機関の研究チーム「温暖化影響総合予測プロジェクト」が地球温暖化が日本国内にどんな影響をおよぼすか、被害予測結果を発表しました。

2030年の日本、被害年1兆円増――14機関共同研究(毎日新聞)
2030年、集中豪雨相次ぐ 温暖化の影響予測(中日新聞)
温室ガス排出このままなら…白神ブナ林、今世紀末に消滅も(読売新聞)

記者発表の内容は、↓国立環境研のホームページから読むことができます。
記者発表 2008年5月29日 地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト「温暖化影響総合予測プロジェクト」成果発表のお知らせ? 地球温暖化「日本への影響」?最新の科学的知見? ?

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「1人当たり平等な排出権」という考え方

今日の「東京新聞」暮らし面に載っていたインタビュー。語り手は、エネルギー効率化システム研究第一人者のワイツゼッカー・米カリフォルニア大学教授。

おもしろかったことの1つは、昨年のバリ会議について、EUは「強力な“主役”として振る舞った」が、「日本の提案はあまり現実的とは言えず、苦しい立場」といっていること。アメリカが提唱する「APP」については、「拘束力がないのは〔アメリカなどにとって〕魅力」だが、「問題の解決にはなりえない」とする。

そして、「では、どうすれば」の問いに、ワイツゼッカー氏が指摘するのは、「1人当たり平等な排出権」という考え方。これは、世界全体での排出量を温暖化を避けられる水準まで減らしたうえで、先進国も、途上国も、国民1人あたりで平等なCO2排出権を持つとして、それぞれの国の削減目標をきめよう、というものだ。

温暖化 日本ができること  ワイツゼッカー 米カリフォルニア大教授に聞く(東京新聞)

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ロンドン市の温暖化対策

29日のNHK「クローズアップ現代」は、ロンドン市の地球温暖化対策を詳しく紹介していた。二酸化炭素排出量の75%を大都市が占めている、しかも大都市は沿岸部に多いから、温暖化による海面上昇の被害などを受けるのも大都市だ、ということで、大都市が率先して排出削減に取り組もうというのだ。しかし、740万都市で、2025年までに60%の削減をするという目標をかかげた取り組みは、画期的。しかも着実に成果をあげているというから驚く。

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1990年基準を見直せは財界の要求だった!!

福田首相が持ち出した「京都議定書の1990年を基準にするというのは見直すべきだ」という議論。唐突だなぁ?と思っていたのですが、実は、財界が基準の変更を要求していました。

それは、経済同友会が1月21日に発表した↓この提言。

真に実効性ある政策でリーダーシップを―ポスト京都議定書の国際的枠組みを含む環境エネルギー政策への提言―(経済同友会)

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地球温暖化 日本政府の本音が見えてきた

地球温暖化対策として福田首相がダボス会議でおこなう演説案の内容が明らかになっています。

積み上げ方式での「国別総量目標」も問題ですが、見逃せないのは、1990年という基準年の見直しを要求するとしていること。

ダボス会議 首相演説案固まる(NHKニュース)
「2000年以降」提案へ 温室ガス削減目標の基準年(中日新聞)

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温暖化対策 日本は最下位!!

世界銀行が各国の温暖化対策の進捗状況を調査したところ、日本が先進国中で最下位、世界のCO2排出量上位70カ国中でも61位と最低レベルにあることが明らかに。

日本、先進国で最下位 石炭発電依存が低評価(中日新聞)

日本国内では、日本は「環境先進国だ」という誤解が罷り通っていますが、すでにヨーロッパ諸国はイギリスも含めて、CO2排出量を大幅削減することで、自分たちの新しい優位性を発揮する方向に大きく舵を切っています。あのアメリカだって、ここで後れをとっては21世紀の経済覇権を失いかねないと、やはりCO2削減に方向を切り替える動きが出ています。

そんななかで、何の具体的な対策もないまま、漫然とCO2を排出し続けているのは、日本だけです。

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温暖化防止でも軍事を聖域化

昨日の東京新聞夕刊の記事。総務省からCO2の排出量削減を求められた気象庁が、海洋のCO2濃度などを観測する海洋気象観測船の航路を一部廃止していたことが明らかに。

海がどれぐらいCO2を吸収しているか、また水温の変化によってそれがどれぐらい変化するか、というのは、地球温暖化の行く末を予測する上で重要なデータ。それを調査・観測している観測船の観測航路を廃止して、CO2削減の目標にあわせる、というのは、ほんとうに本末転倒です。

しかも東京新聞のナイスなのは、総務省がそうやって地球温暖化防止に必要な観測を切り縮めさせながら、その一方で、自衛隊をCO2の削減対象から除外していると鋭く批判しているところ。この記事に“◎あっぱれ!!”を上げましょう。(^_^;)

環境観測船に『活動削減』 CO2削減 本末転倒(東京新聞)
【解説】温暖化防止、軍事を聖域化 観測船燃料削減 説得力欠ける総務省(東京新聞)

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地球温暖化―CO2削減に資本主義は耐えられるか?

地球温暖化の問題は、現在、バリで「京都議定書」に代わる新しい枠組み作りが話し合われています。そのなかで、目立つのは、アメリカの消極姿勢と、それに追随する日本。同じ資本主義国でもヨーロッパ諸国とは大きな違いです。

先日、終わった研究講座では、講師から、いまの世界がどこを見ても出来合いの答えのない問題に直面している、それに答えを出す能力と可能性を持っているのは科学的社会主義だ、と力強い訴えがありました。その中では、現在の資本主義が直面する体制的な矛盾として、従来からの周期的な恐慌・不況という問題に加え、地球温暖化の問題が予想以上に深刻な問題になっている、しかも54億の人口がこれから文明化の道を進もうというとき、発達した資本主義国はCO2のより大幅な削減に踏み切らざるをえない、そうなったとき、問題は資本主義がそれに耐えられるかどうかだ、という問題提起がありました。

実際、ヨーロッパ資本主義は、それなりに削減にとりくみ実績も上げていますが、アメリカ、日本の資本主義はこの点で明らかに失格。21世紀の世界をこのまま資本主義にゆだねていてよいのかどうか、資本主義の是非が問われる問題です(もちろん、社会主義をめざす国の側でも、環境問題で資本主義に代わる発展の型を示すことができるかどうかが問われています)。

さて、その点で、今朝の毎日新聞におもしろい記事が。安倍前首相が唐突に打ち出した「美しい星50」計画。私も、この計画がいかに欺瞞的なものか指摘してきましたが、毎日新聞の記事では、その環境外交がいかに「場当たり的」なものか、明らかにされています。

暖かな破局:第1部・温暖化の政治経済学/3 日本の「場当たり的」環境外交(毎日新聞)

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安倍「温暖化対策」はやっぱりごまかし

安倍首相がサミットでぶちあげた「美しい星50」。2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を半減させるというものですが、それはあくまで「現状に比べて」。

日本は京都議定書で、2013年までに1990年比で6%削減の義務を負ったはず。しかし、現実には、温室効果ガスの排出量は逆に増加していて、京都議定書の責任をまったく果たしていません。

でも、新しい削減目標が「現状からの50%削減」になれば、この京都議定書の目標は事実上棚上げされてしまいます。つまり、日本が、ちっとも国際約束を守らず、温室効果ガスをますます大量に排出し続けている責任をごまかして、まるで日本が温室効果ガス削減をリードしているかのように見せるごまかしでしかありません。

先日の、昭恵ちゃんとのツーショット全面広告も、このごまかしの一環であり、こんなものに1億円もかけるのは国民の血税の私物化以外の何ものでもありません。

安倍首相、「2050年までに温暖化ガス半減」を提言(AFPBB News)
安倍提案では不十分 温暖化防止で独研究所所長(中日新聞)

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新聞に全面広告を出す前に

最近、やたらに「地球温暖化」対策が取り上げられると思ったら、今日の新聞には、安倍首相と昭恵ちゃんの全面広告が…。「地球温暖化」は確かに大きな問題だけれども、これじゃあまるっきり安倍政権と自民党の宣伝です。

省エネ家電買い替え効果 家庭のCO2 4割減可能(東京新聞)
(社説)温室ガス半減 議定書履行から始めねば(山陽新聞)

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小宮山宏『地球持続の技術』

小宮山宏著『地球持続の技術』(岩波新書)

1999年刊の本ですが、最近、仕事の関係で話題にのぼったので、あわてて買い込み読んでみました。

この本の特徴は、地球持続の技術を、地球規模での物質のライフサイクルという角度から考えていること。さらに省エネがどこまで可能かも、輸送、分離、成型・加工など「素過程」に分けて理論値を考え、そこから技術的に到達可能な限界を推測しています。

たとえば水平方向の輸送は、ちょっと意外ですが、理論的にはエネルギー消費はゼロ。もちろん、これは摩擦ゼロ、ブレーキで発生する熱は全部回収し再利用する、などという理想状態でのことですが、そこから逆に、実際にはそれがゼロにならないのは、たとえばタイヤの摩擦によるロス(熱となって逃げる)、エンジンがガソリンのエネルギーを全部移動のエネルギーに変換できず、排ガス・廃熱となっているからだとか、ひとつずつ詰めていく訳です。

また、鉄やアルミは、鉄鉱石やボーキサイトから新しく生産するより、クズ鉄や廃アルミを回収して再利用した方が、はるかにエネルギーの節約になること。しかも鉄もアルミも、年々生産量が増え、地上に固定される量が増えると、当然、それがスクラップにされて回収される量も増えていくはずで、どこかで回収量と新規需要がバランスするはずです。そうなれば、もはや新しく鉄鉱石を掘り出して鉄を生産する必要がなくなり(現実には、質の問題などがあって、完全にゼロにはならないでしょうが)、資源の枯渇や、廃棄物によって地球が埋まっていくことを心配しなくてます。エネルギーの大幅な節約も可能です。

第4章「『日々のくらし』の省エネ技術」では、ヒートポンプによる暖房が非常に効率的である(これも、あくまで理論値ですが)ことが明らかにされています(ヒートポンプは、電力で、直接室内を暖めている訳ではなく、フロンを圧縮して循環させるポンプを動かすために使われているだけなので)。なんとなく、これまでエアコンで暖房するというのは、ものすごく電気を無駄にしているように思っていたのですが、とんだ勘違いでした。(^_^;)

マクロで省エネや省資源を考えるというのは、なかなか面白い視点だと思いました。
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だったら京都議定書を批准したら?

ブッシュ大統領が、原油高騰にたいして、「世界規模の省エネルギー努力の加速」を呼びかけたそうな。

それなら、京都議定書を批准したら? 言われなくても、世界は、CO2排出量削減のために省エネに努力してますよ?

米大統領「世界規模で省エネ加速を」・サミットで議論(日経新聞)

NY原油、56ドル突破 最高値ガソリン在庫減受け(東京新聞)
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京都議定書発効

京都議定書の発効で、各紙とも詳しい記事や論説を載せていますが、やはり一番の課題は、日本自身が90年比で6%の削減の約束をどうやって達成するかでしょう。すでに90年比で8%も増えてしまっているので、上下14%の削減は、一般的な「節約」「省エネ」で片づく問題ではなくなっています。

海外からの排出権買い取りで辻褄合わせをするのでなく、ヨーロッパ諸国のように、例えば冬場に、屋内でもいろいろ着込んで、その分、暖房温度を下げるとか、公共交通の整備で自家用車の利用を制限する、コンビニの24時間営業をやめる、深夜のテレビ放映は休止するなど、私たちの生活タイルそのものの根本的見直しに踏み込む必要があります。

京都議定書:発効 追加対策でも目標遠く 「海外分」算入、模索(毎日新聞)
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