日経ビジネスオンラインが、安倍政権の行き詰まりと新政権の課題について、政治学者の渡辺治氏へのインタビューを掲載しています。
渡辺治・一橋大学大学院教授
日経ビジネスオンラインが、安倍政権の行き詰まりと新政権の課題について、政治学者の渡辺治氏へのインタビューを掲載しています。
渡辺治・一橋大学大学院教授
目次だけで7ページもあります。(^_^;) ネオリベラリズムに侵された現代社会をどう分析したらよいか、ラカン派精神分析の立場から、「再帰性」と「創造性」をキーコンセプトにして、切ってみせた本です。フランスなどでの現代思想の展開とともに、小泉「構造改革」や安倍首相の「美しい国」など、日本のいまの政治状況なども念頭に議論が展開されていて、なかなか面白いというのが一番の感想。
同時に、「プレカリテ」「マルチチュード」「マクドナルド化」「動物化」「象徴の貧困」など、現代思想の流行概念が取り上げられていて、ある意味非常に便利な“現代思想入門”になっています。
今日の「毎日新聞」夕刊の文化欄「想像力のゆくえ」の第2回で、仲正昌樹・金沢大教授が、こんなことを書かれています「『国家』はやがて意味を失うのか?」)。
結果的に、再配分重視のリベラル左派と共同体主義的な旧保守の双方が、グローバル化の荒波から「国民」を守るための楯として「国家」による規制を強化する方向で合流しつつあるのに対し、新自由主義とポストモダン系左翼がそれぞれ正反対のゴールをめざしながらも、「国家」による「国民」の抱え込みを止めて“自然な流れ”に委ねるべきことを主張するという変則的な構図が生まれている。自国民に特化した再配分機能を備えている国民国家の本質が再認識されたことによって、冷戦時代には固定化した左/右の境界線が変動してる。(「毎日新聞」2005年10月17日付夕刊)
氏の結論(「天皇制に象徴される『何となく日本的なもの』にこのまま安住し続けるわけにはいかないだろう」、「自分たちで自覚的に選択した憲法的価値へのコミットメントを基盤とする憲法愛国主義(ハーバーマス)的な政治文化への転換が求められている」)に限って言えば、そんなに異論はありません。
しかし、上記引用部分についていえば、日本にかんしては、そう簡単に「左/右」の境界線はゆらいでいないのではないでしょうか。