もう次の号が出てしまったのですが、『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)9月2日号が、「リストラ父さん フリーター息子/悲惨世代」というタイトルで23ページの特集を組み、「働く貧困層」(ワーキング・プア)や若年世代の賃金格差、派遣・請負の実態などを詳しく取り上げています。
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アメリカのワーキング・プアの実態 『ニッケル・アンド・ダイムド』
昨日の日経新聞の書評欄でも取り上げられていましたが、アメリカの“ワーキング・プア”(働きながら貧困から抜け出せない低賃金労働者のこと)の生活を実体験した著者のルポです。
『労働経済白書』 若者の所得格差の拡大認める
2006年版の『労働経済白書』が発表されました。「収入の低い労働者の割合が増え、若年層で収入格差の拡大の動きが見られる」と指摘するとともに、とくに20歳代でパート、アルバイトや派遣など非正規雇用が増え、「将来の所得格差が広がる可能性がある」と懸念を表明しています。
20代の所得格差広がる 労働経済白書 (朝日新聞)
若年層の収入格差が拡大…労働経済白書(読売新聞)
若者の非正規雇用が急増・06年版労働経済白書(NIKKEI NET)
正社員との収入差拡大 労働経済白書 少子化加速の一因に(東京新聞)
OECD、「日本は貧困層の割合が最も高い国の一つになった」と指摘
OECDが報告書で、「日本は貧困層の割合が最も高い国の一つになった」と指摘。相対的貧困率の高さが、アメリカに次ぐ第2位に。
この格差拡大を防ぐために、「企業が非正社員より正社員を増やしやすくする政策を」と述べていることに注目。
「日本、貧困層の割合が最も高い国の1つ」OECD報告(NIKKEI NET)
↓グラフ OECD諸国の相対的貧困率(2000年)。(クリックすると大きく表示します)
収入の二極化すすむ
厚生労働省が2005年の「国民生活基礎調査の概況」を発表。年収300万円未満層と1000万円以上層が増えるなど、二極化が進んでいることが明らかに。
全世帯の平均所得は580万円ですが、それ以下の世帯数は60.5%もあって、300万円未満層が30%を占めています。
厚労省が有期契約労働者の実態調査
厚生労働省が始めておこなった「有期契約労働に関する実態調査」の結果が明らかに。
厚生労働省発表の「調査結果」の概況はこちら
→厚生労働省:平成17年有期契約労働に関する実態調査結果の概況
財務総合政策研、経済格差についての報告書を公表
財務省財務総合政策研究所が「日本の経済格差とその政策対応に関する研究会」報告書を公表。
それによれば、ジニ係数(当初所得)は、1990年から1996年まではほぼ横ばいだったのにたいし、その後は上昇傾向であることが明らかに。1999年の0.482から2002年には0.514へと所得格差は拡大しています。また、25歳未満の若年層では、1987年?2002年の15年間にジニ係数が26%も拡大。
財務総合政策研究所の報告書の要旨はこちら。
→「我が国の経済格差の実態とその政策対応に関する研究会」報告書(PDFファイル、101KB)
雇用は増えても非正規が9割…
総務省の労働力調査詳細結果(2006年1?3月期)によれば、雇用者は前年同期比79万人増。しかし、正社員の増加はわずか7万人。非正規社員が72万人増で、雇用増の9割以上が非正規雇用であることが明らかに。また、雇用者全体に占める非正規雇用の割合は、33.2%で過去最高に。
個人の収入格差「拡大した」が6割強
連合総研の第11回「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」の調査結果概要が明らかに。
「景気回復」を反映して、今後の賃金見通しはプラスに転じたとのことですが、個人間の収入格差が「拡大した」との回答が63.6%を占めています。収入格差を拡大させた要因としては
- 「パート・派遣労働など非正規雇用の増加」51.1%
- 「失業や就職難などで収入のない人が増えた」43.7%
- 「企業間の業績格差の拡大などにより賃金の差が拡がった」42.5%
- 「成果主義的な賃金制度の導入などで賃金の差が拡がった」35.4%
など。
30?40代で所得格差が拡大
30?40代の男女で、所得格差が拡大していることが明らかに。当初所得でみると、年収1000万円以上の世帯13%にたいし、100万円未満は約23%に。
これが厚生労働省の所得再配分調査
→平成14年所得再分配調査報告書(厚生労働省)
いまの日本経済は「全体が底上げしている」と言えるのか?
日本経団連の奥田会長が、「格差社会」について、「全体が底上げしていれば、格差が拡大しても問題ない」と発言。
いまの日本、「全体が底上げしていれば」などと言えるのでしょうか? 「誤った印象論で構造改革を中断すべきない」と言う奥田会長の議論の前提の方が、そもそも「誤った印象論」なのでは?
所得格差の拡大、87%が実感
「東京新聞」19日付の世論調査によると、所得格差が「広がっている」「どちらかといえば広がっている」と感じる人が合計で87%を占めていることが明らかになりました。
表1 所得格差は広がっているか
広がっている | 43.4% |
---|---|
どちらかといえば広がっている | 43.6% |
どちらかといえば広がっていない | 6.2% |
広がっていない | 2.0% |
わからない・無回答 | 4.8% |
表2 広がっていると思う理由
アルバイトやパートで働く人が増えている | 42.7% |
---|---|
企業規模や業種での賃金の差が広がっている | 31.5% |
経済社会の仕組みが金持ちに有利になってきている | 30.5% |
注)「広がっている」「どちらかといえば広がっている」と回答した人への質問。2つまで回答、上位3つ。
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ILO事務局長が警告「世界は前例のない雇用危機」
ILO(国際労働機関)の報告で、世界の失業者が1億9200万人に達しているということは、以前、このブログでも取り上げました(→「世界の失業者は1億9180万人、半分は若者」)。
今日の「東京新聞」夕刊で、そのことがさらに詳しく紹介されています。
世界の失業者1億9200万人 「前例のない雇用危機」
前年比220万人増 半数は15?24歳全世界の失業者が、1年前より220万人増えて、過去最高の1億9200万人に達していることが、ILO(国際労働機関)の報告で明らかになった。約半数は、15?24歳の若者で占められているという。ILOのソマビア事務局長は、「前例のない雇用危機」と警告している。
——ILOのソマビア事務局長は、今年1月末にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会で「世界は前例のない雇用危機の状態にある」と警告する声明を発表した。
声明の中で事務局長は、世界の雇用危機はその市場や所有に与える影響の点からますます大きな懸念材料になってきており、世界全体の民主主義の信頼性に対する脅威であるとしている。
[東京新聞 2006年3月14日夕刊]
で、世界の雇用危機を示す根拠として、事務局長があげたのは、つぎのような事実。
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政府調査で所得格差の拡大が明らかに
総務省の「家計調査」で、所得格差が開いていることが明らかに。収入の多少に従って5等分したとき、年収が最も少ない世帯と年収が最も多い世帯の格差は3.46倍となり、3年ぶりに拡大ました。
「格差拡大を感じる」67% NHK調査
NHKの世論調査で、小泉総理大臣の進める構造改革によって所得などの格差が広がっていると思うかという質問に、「そう思う」(29%)、「どちらかと言えばそう思う」(38%)、合わせて67%が格差が広がっていると回答しました。
『世界』3月号 特集「景気の上昇をどう見るか」
雑誌『世界』3月号が、「景気の上昇をどう見るか――格差拡大の中で」という特集を組んでいます。中身は以下の通り、なかなか読み応えがありました。
- 高杉良・佐高信:対談 偽りの改革とメディアの責任を問う
- 丹羽宇一郎:インタビュー 「第二の踊り場」に来た日本経済
- 橘木俊詔:格差拡大が歪める日本の人的資源
- 高橋伸彰:「景気回復劇」の舞台裏で――何が回復したのか
- 山家悠紀夫:「実感なき景気回復」を読み解く
- 町田徹:小泉改革が煽る「独占の波」
- 藤田和恵:ルポ 郵政民営化の大合唱の陰で――郵便局の労働現場はいま
この中で一番面白かったのは、伊藤忠商事会長・丹羽宇一郎氏へのインタビュー。日本経済の現状について、丹羽氏は次のように指摘。
日本経済の現状についてですが、私は「一段高い踊り場に来ている」と思います。「踊り場を脱したのか脱しないのか」という議論がありますけれども、過去の低いところの踊り場は脱しているだろう、しかしその原因はエネルギー価格の高騰、素材関係の高騰という風が中国を発信源として吹いてきたということで、本当に日本経済が力強い回復を開始し始めたというとやや疑問です。……そして、日本経済の先行きについて、やや疑問になる点も出てきました。
その疑問点というのは、貿易収支に翳りがでるのではないか、ということ。国民経済論では、S(貯蓄)-I(投資)=X(貿易収支)という恒等式がありますが、この間、日本の貯蓄率は低下(1991年に15%だったものが、2005年は8%、2010年には3%になるといわれている)。そうなると、恒等式から貿易収支が縮小することになる、というのです。
そこで丹羽氏は、「経済成長を2%から2.5%の範囲で維持するためには、国内の消費を増やさないといけない」と主張。日本経済がいまの「踊り場」を脱却するためには、「輸出の減少を国内の消費で埋めていかなければならない」と指摘されています。
さらに格差拡大の問題について、丹羽氏は、財務省の法人企業統計調査データにもとづいて、次のように主張されています。
これでみると、過去10年間の法人企業従業員1人当たりの給与所得はどうか。中小企業・零細企業というのは、資本金1億円以下の企業です。この人たちの平均給与が過去10年間で、16%下がった。資本金が1億円から10億円の間の中堅企業の平均給与は、9%下がりました。そして、資本金10億円以上の大企業の人たちの給与は1%上がりました。内閣府はジニ係数を使って実態は変わっていないといっているけれど、この財務省の調査データをどうみるか。日本は、中小企業・零細企業が、全法人企業従業員の70%を占めている。そこが16%も下がっているんですよ。私が言いたいのは、貧富の差が拡大にしているとうことです。
その上で、丹羽氏は、アメリカのような弱肉強食の社会が「果たして、日本を本当に強くするのか」が問われていると指摘。安定した中間層の存在が、良質の労働者、欠陥品の少ない商品をつくり、高い技術を共有し、理解度が高く、倫理感の強い人たちが日本社会を支えてきたのではないかと問いかけ、「踊り場」ということばの中には、この日本の国をどうするのか、それを「所得の再配分である税体系、税制をどうするかによって決めていかなければなりません」、そういう選択の意味も込められていると述べています。
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小泉首相、「格差悪くない」と反論
社会的格差の問題で、閣議「格差は広がっていない」という資料を配っただけでなく、ついに小泉首相自ら「格差が出ることは悪くない」と発言。
しかし、「格差は悪くない」というこの議論。これも、実は、日本経団連の奥田会長が前から言っていたことなのです。
小泉構造改革は見直すべきだ 50.6%
ちょいと古くなりましたが、東京新聞1月28日付に掲載されていた共同通信社の世論調査。小泉首相がすすめてきた構造改革について、50.6%が「見直すべきだ」と回答。また、75%の人が、「以前と比べて格差が広がっている」と回答しています。
「構造改革見直せ」半数 共同通信緊急調査 75%が格差拡大実感
[東京新聞 2006/01/28朝刊]共同通信社がライブドア前社長の堀江貴文容疑者逮捕を受けて26、27日に実施した全国緊急電話世論調査によると、市場原理導入や規制緩和など小泉内閣が推し進めてきた構造改革について「見直すべきだ」との声が50.6%と過半数を占めた。また「勝ち組」「負け組」に象徴される経済的格差について75.0%が「広がっている」と回答、「格差社会」の進行が浮き彫りになった。
政府、経済格差の拡大を否認
経済活性化のためには多少の格差もやむをえないと言うならともかく、経済格差の拡大そのものを否認してしまったのでは、「負け組」は切り捨てられっぱなしで救われません。
貧困率の高い国――日本
日刊ゲンダイが、「日本で確実に進行中 階級社会の恐怖」という記事を載せています。
その中で紹介されている経済開発協力機構(OECD)のリポートは、これ。→“Income Distribution and Poverty in OECD Countries in the Second Half of the 1990s”(Michael Förster and Marco Mira d’Ercole, 18-Feb-2005)(pdfファイルがひらきます)
このリポートでは、国際比較でよく使われる基準、つまり可処分所得の中央値の50%以下の所得しかない人の割合を「貧困率」として、OECD27カ国の数値を計算。OECD平均は10.4%で、日本は15.3%。メキシコ(20.3%)、アメリカ(17.1%)、トルコ(15.9%)、アイルランド(15.4%)に次ぐ第5位。反対に、最も低いのはデンマーク4.3%、チェコ4.3%、スウェーデン5.3%、ルクセンブルク5.5%など。(数値は、1999年もしくは2000年、国によっては2001年などの値の場合もある) 日本は、90年代後半に、貧困率が1.6ポイント拡大したとも指摘されています。OECD全体では平均で0.5ポイント拡大だから、日本は、貧困率が高いだけでなく、貧困率拡大の割合も大きいということです。
OECD資料で興味深いのは、年齢別の貧困率も出しているところ。 それを見ると、日本は若年層と高齢者で貧困率がぐっと高くなっています。
ちなみに日刊ゲンダイの記事は、落ちこぼれたくなかったら、親は無理やりでも子どもを勉強させるべきだという結論になっています。教育に熱を入れること自体は悪いことではありませんが、ネオ階級社会をもたらしている小泉「構造改革」そのものをやめさせ、日本の政治の方向を大もとから切り替えることが一番大事だと思います。