光の速さを超えるニュートリノ?!

ニュートリノが光より早く到達することが観測されたというニュース。「マイムマシン」云々はともかく、事実だとすれば、相対性理論を考え直さなければならないという大発見なのだが、光の速さと比べるにしては730kmという距離はあまりに短い(光の速度は秒速で約30万kmなのだから)。

物理:光より速いニュートリノ? 相対性理論覆す発見か:毎日新聞

マイコミジャーナルには、この観測が「真の値がこの誤差範囲を外れる確率は100万分の3.4程度」というCERNの説明が掲載されているが、これを読んでも、ナノ・レベルの精度で2地点間の距離を測り、また、発射地点と観測地点の時計を正確に合わせることは非常に難しいことが分かる。それに比べると、日本経済新聞にのった研究者が指摘する問題の方がよっぽど巨視的で、事実に合っているような気がするのだが、いかがだろうか。

【レポート】ニュートリノは光より速いのか – 相対性理論を覆す可能性をCERNが提示:マイコミジャーナル
ニュートリノ測定結果「小柴氏の観測と合わず」:日本経済新聞

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物理のお勉強(^_^)v

益川敏英・東京物理サークル『益川さん、むじな沢で物理を語り合う?素粒子と対称性?』(日本評論社)小柴昌俊『ニュートリノの夢』(岩波ジュニア新書)

本屋さんでたまたま見つけた物理にかんする新刊書2冊。左は、一昨年ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんが、高校の物理の先生たちを中心とした自主サークル(「東京物理サークル」)の合宿で素粒子論について語ったもの。右は、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんの自伝的な読み物。

これから真面目に勉強させていただきます。

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『素粒子物理学をつくった人びと』

『素粒子物理学をつくった人びと』(ハヤカワ文庫)

ハヤカワ文庫で『素粒子物理学をつくった人びと』(上・下)が出ました。親本は、1986年刊の原著の邦訳として1991年に出版されたものですが、文庫版は1996年に出た原著改定版の翻訳となっています。さらに、下巻には、鎮目恭夫さんの「文庫版への訳者あとがき」と、岡村浩さんの付録「その後の素粒子物理の歩みとノーベル物理学賞受賞の日本人の仕事について」が収められています。岡村氏の解説は、本書では、南部陽一郎氏の研究まで取り上げられているので、その後の素粒子物理学の動きを補足してくれるものです。

物理学者へのインタビューをもとに構成された本書。鎮目さんは、「文庫版への訳者あとがき」で、「本書が文庫版として出版されることになったのは、明らかに、昨年度(2008年)のノーベル賞が日本の素粒子物理学者3名に与えられたことの反映」(下、466ページ)と書かれていますが、いえいえ、十分面白いです。(^^;)

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坂田教授から学んだこと

ノーベル賞受賞で、益川さんも小林さんもあっちこっちの対談やインタビューに登場されていますが、そのなかでも、いろいろと大事なことを言っておられます。気のついたかぎりで、ピックアップしておきます。

1つめは、「日本経済新聞」の本日付朝刊にのった益川さんへのインタビュー。坂田昌一氏から学んだことについて、かなり立ち入って答えておられます。

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南部、小林、益川3氏がノーベル物理学賞を受賞

2008年のノーベル物理学賞を、素粒子理論研究の南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授、小林誠・高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)名誉教授。益川敏英・京都大学名誉教授が受賞。

益川さんと小林さんは、名古屋大学の坂田昌一門下。坂田氏は、エンゲルス『自然弁証法』やレーニン『唯物論と経験批判論』などに学んで、物質の階層性という考えにたって、素粒子といえども究極の物質ではなく、さらにその中に下位のレベルの物質があると考えました ((益川氏は、たとえば「赤旗」1984年7月14日付で、次のように語っておられます。
「素粒子が、さまざまな性質、特徴、法則性を持っているのは、その背後にそれらの担い手の物質が必ず存在するに違いないと考えていたからです。この考え方は名古屋大学の坂田昌一博士が、以前から提起されていたものです。坂田博士は素粒子を『天体、物体、分子、原子、原子核、素粒子……と続く物質の無限の階層の1つに過ぎない』『現象の背後に必ず物質の裏づけがある』ととらえていました。この考え方の背景には『電子といえどもくみつくせない』という物質の無限の階層性と認識の相対性を指摘したエンゲルスやレーニンと同様の唯物弁証法の物の見方がつらぬかれています」、「唯物弁証法と自然科学の研究方法との関係は非常に奥深いもので、今後もさらに追求する必要があると思います」))。

ノーベル物理学賞:益川教授ら日本人3氏に授与(毎日新聞)
「受賞あるなら今年だと」=「理論屋」に笑顔も?益川教授(時事通信)
熱血漢の益川、クールな小林=性格の「対照性」、独創理論生む?ノーベル賞(時事通信)
【ノーベル物理学賞】素粒子物理学の世界に金字塔「小林・益川理論」(MSN産経ニュース)

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検証しうる予測を出さない「超ひも理論」は科学でさえない?

リー・スモーリン『迷走する物理学』(ランダムハウス講談社)ピーター・ウォイト『ストリング理論は科学か』(青土社)
左=リー・スモーリン『迷走する物理学』(ランダムハウス講談社)、右=ピーター・ウォイト『ストリング理論は科学か』(青土社)

「超ひも理論」について、疑問を投げかける本を2冊読みました。

理論的な中身を僕が紹介することはできませんが、両書に共通しているのは、「超ひも理論は、検証しうる予測を何も示さない」ということ。およそ、理論が正しいかどうかを論じるためには、その理論に基づいて何らかの予測をおこない、それが実験的に検証される(もしくは検証されない)ことが必要です。ところが…

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「超ひも理論」は確かか?

ローレンス・M・クラウス『超ひも理論を疑う』(早川書房)

偶然本屋で見つけたもの。著者のローレンス・M・クラウスは、アメリカのケース・ウェスタン・リザーヴ大学の宇宙論・天体物理学教育研究センター所長で、ポピュラー・サイエンスの書き手でもあるそうです。

で、いま話題の「宇宙は実は26次元からなっていた」「余剰次元は、くるくると極小サイズに巻き上げられている」という話題の「超ひも理論」にたいして、はたして超ひも理論は確かな理論なんだろうか? ということを考えたものです。

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素粒子論の歴史

仕事の関係でいろいろ探していたら、こんな記事を見つけました。「しんぶん赤旗」日曜版の2004年10月10日号に載ったものです。

記事全体は、「素粒子物理最前線」ということで、宇宙の誕生と物質・反物質の「対称性の破れ」を取り上げたものですが、そのなかで、京都大学の益川敏英氏(京大名誉教授)が、「小林・益川理論」を思いついた頃(1964年)の素粒子論をふり返って、こんなふうに述べられています。

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