読売新聞が本日朝刊2面で、原子力安全基盤機構が昨年10月に沸騰水型原子炉で電源が全て失われて冷却できない事態になると、3時間あまりで圧力容器内の圧力が高まって、破損するとの報告書をまとめていたが、東京電力は報告を検討していなかった、という記事を載せています。
ということで、報告書を探してみました。
読売新聞が本日朝刊2面で、原子力安全基盤機構が昨年10月に沸騰水型原子炉で電源が全て失われて冷却できない事態になると、3時間あまりで圧力容器内の圧力が高まって、破損するとの報告書をまとめていたが、東京電力は報告を検討していなかった、という記事を載せています。
ということで、報告書を探してみました。
文部科学省の計測で、福島県浪江町や飯舘村の計測地点で積算放射線量が人工被曝年間限度の1ミリシーベルトを上回っていることが判明。もちろんこれらは計測地点での数値であって、特異的に放射線量が多いのかも知れないが、しかし、全体としては、原子力安全委員会が予測したように北西方向に放射線の高い地帯が広がっていることはまちがいない。
福島市は、まだ1ミリシーベルトを超えていないが、170時間の積算で0.244ミリシーベルト。もしこのままの状態が続けば、あと3週間ほどで1ミリシーベルトの限度を超えるだろう。残念ながら、これが、「ただちに健康に影響はない」と言い続けてきたことの結果である。
そうなるまえに事態が終息することを願うが、事態がここまで立ち至ると、本当にこれが「健康に影響のない」水準なのかどうか、責任ある機関が責任ある評価を明らかにすることが必要だろう。
国際原子力機関IAEAが、福島県飯館村の土壌から、IAEA基準のおよそ2倍にあたる1平方メートルあたり2メガベクレルの放射線を観測したと発表。同村は一部が20〜30kmの屋内退避地域に含まれるが、放射線が観測されたのは福島第1原発から約40kmの地点だそうだ。
飯舘村でIAEA基準超える放射性物質、避難区域の拡大圧力も:Reuters
福島・飯舘村、IAEA避難基準超す数値:TBS News-i
ロイターが、福島原発事故に関連して、興味深い「特別リポート」を掲載。2007年に、東京電力の原発専門家チームが、実は、福島原発をモデルにして津波の発生と原発への影響を分析していたと指摘している。
原発事故のさい、どう対処するかというマニュアルがこれ↓。原子力安全委員会がさだめた「原子力施設等の防災対策について」です。
原子力施設等の防災対策について:原子力安全委員会(PDF:2.49 MB)
で、これを読んでいくと、原子力発電所の場合、「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲」(EPZ)の「めやすの距離」として約8〜10kmという数字が上げられています(13〜14ページ)。
これにもとづいて、全国にある原発の地元自治体では、原発で事故が起こった場合、8〜10km圏で住民避難の計画をたてています。しかし、今回の福島原発の事故で、20km圏内は避難、20〜30km圏は屋内退避となっていて、はたしてそれで十分なのかどうかが問題になる事態に立ち至っています。それから考えると、8〜10kmというのはあまりに狭いというか、ささやかな想定です。しかし、マニュアルには、「技術的見地から十分な余裕を持たせ」たものだとされています。
なんで、こんなことになっているのか? と思って、マニュアルを読んでみました。
政府が、現在屋内退避となっている福島第1原発20〜30km圏についても、住民に「自主避難」を促しました。
枝野官房長官の発表だと、「必要な物資が届かず日常生活が困難になってきている」というのがその理由のように聞こえますが、原子力安全委員会の発表では、「放射性物質の放出が収まる見通しが立っていない」 ((原子力安全委員会「緊急時モニタリング及び防護対策に関する助言について」(2011年3月25日発表、第19回原子力安全委員会第1号)では、次のように指摘されている。
「今後なお、放射性物質の放出が継続すると考えざるを得ない状況を踏まえると、20〜30kmの屋内退避区域のうち、線量が比較的高いと考えられる区域に居住する住民については、積極的な自主的避難を促すことが望ましい」
「線量が比較的高いと考えられる区域」とは、23日に原子力安全委員会が発表した「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算について」で、試算された被曝線量の高い地域のことと考えるのが妥当だろう。))ことが主たる理由になっています。
「ただちに健康に影響はない」「いまの水準程度なら大丈夫」という「安心理論」はもはや成り立たなくなってきた、ということです。「放射性物質の放出が収まる見通し」が立たない以上、30km以遠なら絶対安全だということもできない、ことになります。
30キロ圏内も自主避難促す:NHKニュース
“自主避難の促進望ましい”:NHKニュース
被ばくの水、放射性物質の濃度は1万倍:TBS News-i
“3号機原子炉 損傷の可能性”:NHKニュース
【放射能漏れ】原発・北西40キロ飯館村土壌からヨウ素117万ベクレル、セシウム16万3000ベクレル 文科省:MSN産経ニュース
【放射能漏れ】汚染は数十年続く 避難範囲広がる恐れも指摘 仏原子力当局:MSN産経ニュース
福島第1原発を中心にして、露地物野菜などから、放射性物質(ヨウ素、セシウムなど)が検出され、出荷停止、摂取停止の措置がとられた。さらに、都内でも、1平方メートルあたり5300ベクレルのセシウム137、3万2千ベクレルのヨウ素131が検出されただけでなく、浄水場でも放射性ヨウ素131が1リットル当たり210ベクレル検出された。
いよいよ日々、食べる物、飲む物が放射能に汚染されるという事態になってしまったといえる。
このレベルで考えられる放射線の健康被害は、将来の発癌率が高まることだから、オイラのような50歳代以上は、ある意味、腹をくくって暮らしていくしかない。しかし、現在妊娠している方、そして小さなお子さんは、できるだけそうしたものを摂取しないですませられるように、細心の注意を望みたい。
首都圏、放射性降下物増える 東京で前日比10倍も:朝日新聞
都の水道水 放射性物質を検出:NHKニュース
ところで、これらのニュースに新しく登場した単位ベクレル。1秒間に1個の原子核が崩壊して放射線を放つと1ベクレル。だから、1平方メートルあたり5300ベクレルのセシウム137、3万2千ベクレルのヨウ素131を検出したというのは、1平方メートルのなかで1秒間にセシウム137の原子5,300個とヨウ素131の原子3万2,000個が崩壊しているということ。
ベクレル
ベクレル(becquerel, 記号: Bq)とは、放射能の量を表す単位で、SI組立単位の一つである。1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1ベクレルである。たとえば、370Bqの放射性セシウムは、毎秒ごとに370個の原子核が崩壊して放射線を発している。なお、放出する放射線の強さ(エネルギー)とは異なる。(Wikipedia日本語版、2011年3月23日)
日本学術会議が、18日、緊急集会「今、われわれにできることは何か?」を開きました。
脆弱なシステム、改善に向け行動 大震災受け日本学術会議声明:日本経済新聞
原発事故 鎮静へ総力/学術会議が緊急集会:しんぶん赤旗
日本学術会議は、「日本学術会議法」にもとづいて設置されている「わが国の科学者の内外に対する代表機関」(同第2条)であり、独立して職務をおこなう(第3条)とともに、「科学を行政に反映させる」ため、あるいは「科学を産業及び国民生活に浸透させる」ために必要なことを「政府に勧告する」権限を与えられています(第5条)。
日本学術会議の報告はこちら↓。
日本学術会議 緊急集会「今、われわれにできることは何か?」に関する緊急報告
そのなかでは、学術会議にふさわしく、さまざまな貴重な提案が指摘されています。
巨大地震にともなう原発事故の問題にかんする共産党・吉井英勝衆議院議員(比例・近畿ブロック)の質問の第3弾です。
こんどは、やはり2006年12月に、吉井議員が提出した質問趣意書(「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」)と、それにたいする安倍晋三内閣総理大臣の答弁書。
巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書
その全文は、インターネットで見てもらうとして、ここでは、質問と答弁とを組み合わせて、吉井議員が何を質問して、それにたいして、当時の安倍晋三自民党・公明党内閣がどう答えていたのかをわかりやすく再構成しました。
吉井議員の質問は、大きくは3つの柱からなっています。第1は、大規模地震時の原発のバックアップ電源について。第2は、沸騰遷移と核燃料棒の安全性について。第3は、データ偽造、虚偽報告の続出について。
まずは、第1の「大規模地震時の原発のバックアップ電源について」から。
共産党の吉井英勝衆議院議員(比例近畿ブロック)の、原発の地震・津波にたいする安全性にかんする国会質問の続きです。
同じく2006年の10月の国会質問。
ここで吉井議員が質問しているのは2つの問題。
で、それにたいする原子力安全委員会の答えは、「炉心が深刻な事態にならないようにするというのが我々がとっている方針」というもので、そもそもかみ合ってないのですが、吉井議員の質問には次のように答えています。
原発の津波被害について、日本共産党の吉井英勝衆議院議員(比例・近畿ブロック)が、2006年に、スマトラ沖地震の大津波を踏まえて、国会で質問していました。
まず3月1日の予算委員会での質問。このなかで、吉井議員は、冷却水が失われたときに崩壊熱を除去する機能が失われるとどうなるか、対策を考えておく必要がある、と追及しています。
衆議院会議録情報 第164回国会 予算委員会第七分科会 第2号
このとき答弁した広瀬研吉・資源エネルギー庁原子力安全・保安院長(原子力安全・保安院は現在は経済産業省所管)は、沸騰水型(福島第1は沸騰水型)の場合は「原子炉停止時冷却系で原子炉の崩壊熱を除去する」との考え方を示し、それは、原子炉から出てきた水蒸気を用いて、蒸気タービンで原子炉隔離時冷却ポンプを動かし、いま話題の「サプレッションプール」(2号機で異音がしたといわれる圧力抑制室のこと)の水で冷却をするというやり方で、「これが機能すると考えております」と答弁していました。
つまり、このとき、冷却水が失われてもサプレッションプールを含む「原子炉停止時冷却系」が機能する、という想定を原子力安全・保安院はしていたわけです。
しかし、現実には、電源が失われたため、その「原子炉停止時冷却系」が機能せず、現在の事態に立ち至っています。実は、このときの質問で吉井議員は、さらに「大規模地震でバックアップ電源の送電系統が破壊され、循環ポンプ機能そのものが失われた場合には、炉心溶融も起こりうる」と指摘して、それを念頭に置いた対策を求めていました。
政府や原子力安全・保安院が、吉井議員のこの指摘をまともに考えていれば、もう少し今の事態が違っていたかも知れません。
IAEA(国際原子力機関)の天野事務局長が来日、菅首相と会談しました。会談で菅首相は、「福島原子力発電所の事故についての情報は最大限、透明性をもってお伝えする」と約束したそうですが、そもそもなんで情報の「透明性」などが問題になったかというと、天野事務局長が来日直後に、こう語っていました。
「深刻な事故だ。総理と話をしたい。国際社会の連携と情報の公開がもっと必要だ」
つまり、IAEAは、福島第1原発の事態は「深刻な事故」なのに、日本政府は必要な情報を公開してない、と認識しているのです。アメリカCNNのキャスターが、いまだに東京電力が情報を管理していることを批判していましたが、それが原発事故にたいする国際社会の常識なのです。
IAEA事務局長“深刻な事故”:NHKニュース
菅首相、情報は包み隠さず最大限開示:TBS News-i
事故対応「場当たり的」…政府、東電を世界中が非難:スポーツ報知
福島第1原発の事故で屋内退避の指示の出ている南相馬市の病院で、点滴薬がなくなるなどして2人の患者が死亡したそうです。屋内退避の地域であっても、入院中の方や妊産婦、乳幼児などは、まっさきに圏外に避難させるのが当然でしょう。
「先進国」日本で、なんでこんなことが起こるんでしょうか。
連合元会長の笹森清・内閣特別顧問の話によると、菅首相は「僕はものすごく原子力に詳しいんだ」と専門家を自任していた、とか。しかし、中途半端な知識では事態を混乱させるだけ。東京電力にデータ評価をさせるのをすぐにやめさせ、謙虚に専門家の意見にしたがって対処してほしい。
80km圏内の自国民に退避を勧告したアメリカで、日本の対応に疑問が広がっていて、CNNのキャスターは、「民間が情報を管理して、一般市民を誤った方向に導いている」と批判しているそうだ。
僕も、これは疑問に思っていた。福島第1原発の状態がどうなっているか、どれぐらいの放射線が検出されているか、そういうことをすべて東京電力が記者会見して発表している。そして、その都度、「ほぼ安定している」とか「落ち着いている」とか、評価を加えている。
しかし、そういうデータの評価は、東京電力ではなく、原発の規制・監督機関がおこなうべきではないだろうか? 東京電力は観測数値をすべてそのまま規制・監督機関に報告し、それを規制・監督機関が評価して、安定しているのかどうか、危険な方向に向かっていないかどうか判断すべきだろう。そうでないと、3号機が危ないとなると、メディアも政府も3号機がどうだというところへ突っ込んでしまって、気がつくと、他のところで問題が重大化していたということになってはいないだろうか。
なんにせよ、事態がここまでいたっているのに、いまだに東京電力が事態が安定しているかどうかを評価していて発表しているというのは、まったく疑問だ。
米軍は、放射線被曝を避けるため、軍関係者に福島第1原発から50マイル(約80km)圏内への立ち入りを原則禁止にしました。また、それとは別に、米政府の指示にもとづいて、在日アメリカ大使館は、原発80km圏内に居住するアメリカ人にたいして、圏外退避を勧告しました。
「予防的措置」だけれども、そうした準備をおこなうべき段階ということなのだろう。
米軍、福島原発80キロ圏内からの避難命令:WSJ.com
米大使館、原発80キロ圏内居住者に避難勧告 予防的措置:日本経済新聞
日本経済新聞が、今朝の新聞で「原発の最悪事態も想定し万全の対応を」と題する社説を掲げました。
社説は「使用済み核燃料の過熱は予断を許さない」「原子炉が壊れて多数の人が被曝する惨事の恐れはなお拭いきれない」と指摘。さらに「放出された放射性物質は原発から半径30キロメートルを超える地域まで、微量ながらも広がりつつある」と懸念を表わし、「万が一の事態も想定し、広範囲の住民避難や医療提供の準備も急ぐべきだ」と提起しています。
日本共産党の志位和夫委員長が、東京電力の福島原発の事故について、事態を、原子力行政を推進してきた経済産業省、同原子力安全・保安院の手から、原子力行政の唯一の規制機関である原子力安全委員会の手にゆだね、中立的な立場から専門家の総力を結集して対応するようにと、申し入れをおこないました。
原子力安全委員会のもとに専門家の力を総結集し対応を/志位委員長が首相に提起:しんぶん赤旗
福島原発事故の対応について/志位委員長の緊急申し入れ (全文):しんぶん赤旗
枝野官房長官が記者会見で、福島第1原発の現状について、現場に残っている東京電力の作業員についても一時安全なところへ退避したと発表していました。現場は、そうした危機的状況に近づきつつあるようです。
15日、福島市内で、午後7時に約24マイクロシーベルトの放射線を観測。午後9時にも、約23マイクロシーベルトを観測し、福島県によると「福島市内の放射線量は減少していない」とのことだそうです。福島市は、第1原発から60km。
福島・飯館村で1000倍の放射線量:TBS News-i
福島県 放射線観測データ公表:NHK首都圏のニュース
福島市、500倍の放射線量観測 風の影響か:共同通信