フィナンシャルタイムズ紙の「靖国史観」批判

靖国神社の「日本の戦争は正義の戦争だった」という特異な歴史観について、ニューヨークタイムズ、USAトゥデーの記事を紹介しましたが、こんどは英紙フィナンシャル・タイムズが、7月19日付で「アジアの騒ぎ――まさに地域経済が統合されるときに、ナショナリズムが高まる」という記事を掲載。そのなかで、靖国神社の特異な戦争観について、次のように書いています。

The Yasukuni museum next to the shrine shamelessly glorifies Japan’s war record and glosses over such “incidents” as the Nanjing massacre, but the mixed and sometimes acerbic responses recorded in the visitors’ books suggest that many Japanese remain unconvinced.

拙訳で概略を紹介すると――

神社に隣接する靖国博物館〔遊就館のこと〕は、恥知らずにも、日本の戦争の記録を美化し、南京大虐殺のような“事件”についてごまかしている。しかし、来館者ブックに記録された、様々なそして時には辛辣な反応は、多くの日本人が依然として納得してないことを示唆している。

フィナンシャルタイムズ紙の記事全体は、日本だけを批判したものではなく、中国や韓国の「ナショナリズム」も問題にしています。そういう立場からのものであっても、靖国神社・遊就館がおこなっている「日本の戦争は正義の戦争だった」という主張は、「恥知らず」なものとしか言いようのないものだと批判されているところに、この記事の妙味があります。

FT.com / Home UK – A stir in Asia: nationalism is on the rise even as the region’s economies intertwine
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靖国史観――アメリカのメディアの反応

「日本の戦争は正しかった」とする“靖国史観”派にたいするアメリカのメディアの報道を2つ紹介します。

1つはニューヨークタイムズ紙6月22日付の記事、もう1つは、USAトゥデー紙6月23日の記事です(抄訳)。

日本のために無罪判決を求める戦争神社
ニューヨークタイムズ6月22日付

 靖国神社は、日本の軍国主義の過去を再評価しようとする動きの象徴的中心であり、日本と近隣諸国との関係悪化の核心に横たわっている。……

 靖国の戦争博物館〔遊就館のこと――訳注〕は、「参戦によってアメリカ経済は完全に復興した」と言うことによって、アメリカが大恐慌から逃れるために、日本に真珠湾攻撃を強要したと主張する。博物館で上映されている「私たちは忘れない」というビデオは、アメリカの戦後の日本占領を「無慈悲」なものと描き出している。しかし博物館は、日本自身のアジア占領には言及していない。たとえば南京大虐殺について、博物館は、中国人司令官を非難し、日本の活動によって「市内では、市民が再び平和な生活を送れるようになった」とつけくわえている。……

 靖国史観は、ほとんどのアジア人やアメリカ人が受け入れることのできないものである。

東京の神社がアジア中の怒りの的
USAトゥデー紙6月23日付

 数十年前、帝国の日本軍に占領され、じゅうりんされた中国、韓国その他のアジア諸国は、小泉首相の挑戦的な靖国参拝が、血塗られた過去へ反省を示すことを日本が拒否していることの象徴であるとみている。問題は、1978年に靖国神社が……第2次世界大戦後国際法廷によって有罪を宣告された14人の「A級」戦犯を、ひそかにまつったことである。
 靖国神社をめぐる(そして、日本の戦争中の残虐行為をもみけそうとする教科書をめぐる)論争は、日本にとって外交上の結果をもたらしつつあり、アジア中の神経を逆なでしている。……

 靖国神社のウェブサイトは、1941年の真珠湾攻撃と中国・東南アジアの侵略をこんなふうに説明している。「国の独立と平和を維持し、全アジアを繁栄させるために、日本は戦争を余儀なくされた」。靖国神社は、悪びれることなく、14人の戦犯を「連合軍のでっちあげ裁判で戦犯の汚名をきせられ」た殉難者だと描いている。

ニューヨークタイムズ紙の記事は、すでに有料検索の対象になっています。
USA TODAY紙の記事はこちらから。→USATODAY.com – Tokyo shrine a focus of fury around Asia

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靖国神社の歴史観は政府談話と相いれない

今日の「読売新聞」の論点欄で、元駐米大使の栗山尚一氏が「反日デモの教訓 過去を直視する勇気必要」と題して、首相の靖国参拝問題について意見を述べられています。

栗山氏は、まず10年前の政府談話(いわゆる村山談話)を紹介し、これは「自虐的なものではない」「若い世代はぜひ……この談話の意味と背景を学んでほしい」と指摘。続けて、こう書かれています。

 筆者は、政府の責任ある立場にいるものの靖国参拝には異論がある。韓国や中国が反対しているからでも、戦没者の慰霊が大切と思わないからでもない。同神社の博物館(遊就館)の展示などに示される歴史観が、政府談話の認識と相いれないと考えるからである。

外務事務次官、駐米大使などの歴任された方が、このように靖国問題の本質をずばり真正面から批判されているのは、重要な指摘だと思います。

遊就館ツアーを町田市教委が後援

町田市教育委員会が、小中学生を、靖国神社の戦争博物館「遊就館」に連れて行くツアーを後援していたことが明らかに。

市教委自身が「遊就館が靖国神社の施設とは知らなかった」と言っている以上、後援基準に照らして再審査すべきことは明らかでしょう。

靖国・遊就館ツアー、町田市教委が後援(朝日新聞)
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「日経」の記事から

安倍晋三・自民党幹事長代理らが、首相の靖国神社参拝を支持する勉強会を発足させたそうな(「平和を願い真の国益を考え、靖国参拝を支持する若手議員の会」、28日設立総会を開催)。

それに関連して、26日付の日経新聞につぎのような記事が…。

 安倍氏らは16日夜には都内のホテルに集まり、靖国神社に合祀(ごうし)されているA級戦犯の「有罪判決の問題点」などの論点を確認。…

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