民主党憲法小委、9条改正の「4原則2条件」

9条改正に条件を付けているように見えるけれど、実際には、<1>集団的自衛権を認める(「国連憲章上の『制約された自衛権』の明記」)、<2>国連決議があれば海外での武力行使に参加する、というもの。

いま焦点になっているのは、アメリカが「集団的自衛権」の名のもとに日本に対し、自衛隊の海外での武力行使にふみだすよう求めていること。「制約された」といっても、自衛権を制約するというのではなく、いま国連憲章に書かれている「自衛権」が、そもそも制約されたものだという認識を示すだけ。国連憲章に集団的自衛権も含め明記されている以上、「制約された」の限定は、集団的自衛権に関しては、何も制限していない。

9条改正で4原則2条件 民主憲法小委が提起(共同通信)
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集団的自衛権を考える

◆藤田久一著『国連法』(東大出版会、1998年)

51条の集団的自衛権規定は、地域取決とは無縁な、単純ではあるが破壊的な構造をもつものであった。(295ページ)

51条の集団的自衛権の論理構造の解釈として、

  1. 共同防衛
  2. 他国の権利の防衛
  3. 他国にかかわる重要な法益の防衛

の三つのパターンがある(祖川武夫の分類による)。

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迷走… 自民党新憲法起草委

4月に各小委員会がまとめた要綱をもとに、条文化の作業をすすめる自民党新憲法起草委員会をめぐるニュース。

自民憲法起草委 「森試案」条文化を断念(中日新聞5/20付)

「象徴天皇制」は維持 自民憲法起草委(東京新聞5/19付)
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日本海新聞の社説

憲法問題での新聞各紙の社説・論説を拾ってゆきたいと思います。

1回目は、日本海新聞の社説(5/16付)。「鳥取でも憲法論議を」と呼びかける入り口に、鳥取県内での「九条の会」の動きが取り上げられています。憲法問題については両睨みで書かれた部分もありますが、焦点の憲法9条にかんしては、「米国のように『先制攻撃権がある』と主張している国との同盟強化につながることには、慎重でありたい」と明言していることに注目。

日本海新聞:社説 鳥取でも憲法論議を(5/16付)
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自民党新憲法起草委員会、諮問会議の初会合開く

11月の自民党大会での改憲草案公表にむけて、自民党新憲法起草委員会が諮問会議の初会合を開催。6月中に、小委員会要綱の両論併記の一本化を図りたいという。

<自民新憲法起草委>改正要綱一本化で初会合(毎日新聞)
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朝日新聞の憲法世論調査

今朝の朝日新聞に、憲法問題の世論調査が掲載されています。

憲法「自衛隊規定を」7割、9条改正反対51%(朝日新聞)

憲法に自衛隊にかんする規定を盛り込むというと、すぐ9条改定だと思ってしまう僕のような人間には、ちょっと混乱させる結果ですが、詳しく見ていくと、いまの憲法問題に対する関心のあり方が見えてきます。

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戦争放棄を明確にするための改憲論

北海道新聞の世論調査。

憲法改正について、容認派77.0%にたいし護憲派21.2%だとしていますが、改憲容認派に憲法9条1項の「戦争放棄」について聞いたところ、「自衛戦争も含めてすべての戦争放棄を明記」が39.0%で最多で、「自衛のための戦争であれば良いことを明記」の37.9%と拮抗したとのことです。つまり、「戦争放棄をより明確にするために九条改正を求める『護憲的』改憲派が相当数いる」というのです。この点は、僕も読売の世論調査に関連してそういう可能性があると指摘しましたが、北海道新聞の世論調査でその点が明確に裏づけられたと言えます。

改憲容認が77% 本紙世論調査、戦争全面放棄、自衛戦争容認に二分(北海道新聞)

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最近の「九条の会」関係の動き

最近の「九条の会」関係の動きをまとめてみました。(抜けてるのもいっぱいあると思いますが)

千葉では、県議・市議レベルで超党派の地方議員「九条の会」が結成されました。奈良、徳島・池田町で、講演会が開かれました。

先日、加藤周一、大江健三郎氏などが記者会見したときは、地域での「九条の会」が1280になったと報告されていました。1つ1つは小さくても、こうした動きをなるべくひろっていきたいと思います。
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読売新聞、憲法世論調査

読売新聞が4月8日付で、憲法にかんする世論調査を報道。

憲法改正「賛成」2年連続6割超す 読売世論調査(読売新聞)

見出しでは「憲法改正『賛成』 2年連続6割超す」と謳っていますが、よく読むと、改正賛成は、昨年の65%から61%に4ポイント減っているのです。反対に、「改正しない方がよい」は23%から27%に4ポイント増です。

中身をさらに詳しく見てみると、憲法9条について今後どうすればよいかの問いには、「改正する」43.6%で、これも昨年より1ポイント減。これに対し、「これまで通り、解釈や運用で対応する」が27.6%(昨年比1ポイント増)、「9条を厳密に守る」が18.1%で、「改正必要なし」という意見は合わせて45.7%になり、「改正する」を上回っています(改正必要なし派が改正派を上回るというのは、去年も同じ)。

読売新聞は、「政界での改正論議が活発化する中…国民レベルでも時代の変化に対応した新たな憲法を求める意識が定着した」「9条改正への国民の理解が深まった」と書いていますが、両項目は、いずれも去年より減っています。とても「定着した」「理解が深まった」とは言えません。むしろ、改憲の正体を見抜きつつある――あるいは、そういったら言い過ぎというなら、改憲論の胡散臭さを感じつつある、ということではないでしょうか。
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憲法9条について考える

憲法企画を担当した関係で、あらためて芦部信喜『憲法<第3版>』(岩波書店)を読んでいます。もう企画はほとんど完了したので、いまさら勉強しても間に合わないんですが、憲法をめぐる攻防はこれまらまだまだ続くので、とりあえずスタンダードな教科書的なものをおさらいしておこうと思って、読み始めました。

で、憲法9条なんですが、改憲論の焦点の1つが、憲法9条の第2項にあることがだいぶ明らかになってきました。

日本国憲法第9条
 1 【戦争の放棄】日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 【戦力の不保持、交戦権の否認】前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

この第2項を書き換えて、たとえば「自衛隊(あるいは自衛軍)を保持する」というように変えようと言うのです。
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自民、憲法試案に「公益の尊重」を盛り込む

「公益の尊重」というと聞こえはいいけれど、ホンネは「国家のためにあなたは何ができますか?」ということ。言論の自由も思想信条の自由も、はたまた個人の財産権も、幸福追求権も基本的人権も、なんもかんもみんな「公益のため」と言えば、何でも制限できてしまう。国家主義者には、これほど便利な“打ち出の小槌”はありません。

こんなバカなことを許したら、国家のために働かない人間は生きていけない世の中になっちゃうよ。絶対ハンタ??イ!!!

自民の新憲法試案、「公益の尊重」を新設(読売新聞)
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自民党、集団的自衛権明記を見送る、そのねらいは?

自民党が、9条「改正」案について、集団的自衛権の行使を憲法の条文に明記するのは見送りつつ、「安全保障基本法」と「国際協力基本法」を制定し、そちらで集団的自衛権の行使や自衛隊海外派兵の仕組みを定めるという方針を決めたようです。

で、「毎日新聞」はそのねらいについて、次のように書いています。

1つには、集団的自衛権は「当然」だから、明記するまでもない、という議論。もう1つは、民主党との間での「調整」に期待をかけるというもの。とくに2つ目の点がポイントかも知れません。

なお、記事中では自民党の主張として、「国連憲章上も認められた国家としての自然権」という書き方がされていますが、これは間違い。個別的自衛権(つまり自国が侵略されたときに自分で自分の国を守るために戦う権利)は国家の「自然権」(国家について「自然権」という言い方をするのは不適切ですが)だという言い方もできますが、集団的自衛権(同盟国A国がZ国によって侵略されたときに、侵略・攻撃を受けていないB国が、自国への侵略と同じと見なしてZ国に反撃する権利)は、条約によって軍事同盟を結んで初めて成立する権利であり、国際法上は国連憲章によって初めて認められることになりました。従って、それはどんな意味においても「自然権」ということはできないというのは、国際法のイロハです。

自民改憲試案:集団的自衛権で民主党との一致点模索(毎日新聞)
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9条が変えられてしまった時のインパクトは日本国内にとどまらない

日本平和委員会の「平和新聞」2月25日号に、GPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)東北アジア地域会議実行委員長の馬奈木厳太郎さん(早稲田大学大学院博士課程)のインタビューが載っています。

一読して、なるほどなあと思ったのは、9条改憲の問題をアジア的視野、世界的視野でとらえていること。「実際に9条が変えられてしまった時のインパクトは日本国内にとどまりません」、「日本国内の議論はまだまだ内向き」という指摘は、この問題を僕たちがどういう文脈で考えたらいいかということを教えてくれているように思いました。

また、9条を改悪させないためにどうしたらよいかということでも、馬奈木さんは、「そもそも憲法とは何なのかというところから伝えていく必要がある」と言っています。そのことを通して、憲法が、実は僕たち一人ひとりの「生き方」に繋がっていることを意識しよう、というのです。さらに、9条だけでなく、国家と個人の関係も、これまでの「個人のための国家」から「国家のための個人」へ、「政府に守らせる憲法」から「国民に守らせる憲法」へ、根本からひっくり返そうとしているんだ、という指摘に、あらためてはっとさせられました。

※GPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)というのは、国連のアナン事務総長が、2001年に、報告書のなかで、「紛争予防における市民社会の役割が大切」だと述べ、紛争予防にかんするNGO国際会議の開催を呼びかけたのに応えて発足したプロジェクト。欧州紛争予防センター(ECCP)を国際事務局として、世界各国のNGOが「地域プロセス」に参加。2005年7月19日?21日にニューヨーク国連本部で国際会議がおこなわれます。
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自民党改憲試案の骨格明らかに

自民党の新憲法起草委員会が4月下旬に公表する改憲試案の骨格が明らかになりました。

憲法9条は第2項の「戦力不保持」を改廃し、自衛隊の存在を明記するというもの。

また、憲法前文も全面的に書き改めるとしている。「東京新聞」は、憲法前文は「憲法の憲法」であり、「自民党が『日本らしさ』をキーワードに前文の全面書き換えに本格始動したことは、改憲論議のなかで大きな転換点と言える」と指摘。「中曽根試案」の時代錯誤な前文案を紹介しています。

自衛隊の存在明示・自民改憲試案(NIKKEI NET)

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自民党新憲法起草委員会の改正試案の骨格が明らかに

自民党の新憲法起草委員会の改憲試案の骨格が固まった、と共同通信が報じています。

憲法9条の第2項「戦力不保持」を改正して自衛力の保持を明記する、としています。

自衛力保持を明記 新憲法試案骨格固まる(共同通信)
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自公民、衆院憲法調査会の最終報告に「9条改正すべき」明記で合意

自民、民主、公明3党が、衆院憲法調査会の「最終報告」に、多数意見として「憲法9条改正すべき」と明記することで合意したそうです。

憲法調査会は、憲法について「広範かつ総合的に調査を行う機関」です。論点整理を越えて改憲の方向付けをしようというのは許されません。

9条「改正論が多数」衆院調査会、最終報告に明記へ(読売新聞)
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経団連、自衛隊公認、集団的自衛権明確化の9条改正を要求

日本経団連が、憲法第9条を改正し、自衛権確保のための自衛隊の保持、集団的自衛権の明確化を求める「国の基本問題検討委員会」」(委員長=三木繁光・東京三菱銀行会長)の提言を正副会長会議で了承。近く理事会で正式承認します。

「集団的自衛権」明確化提言へ 経団連の憲法改正概要(朝日新聞)

↓これが本文
日本経団連:わが国の基本問題を考える (2005-01-18)

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改憲案作成自衛隊幹部、口頭注意のみ

24日、防衛庁は、自民党憲法調査会の中谷元・改憲案起草委員会座長の求めに応じて憲法改正案を作成・提出していた陸上自衛隊幹部にたいして口頭注意したことを発表。

「組織的な行為はなく、個人が休日などに作っただけ」「業務時間中に自衛隊のファックスを使ったのが悪いだけ」とのことですが、個人的な関与なしに組織的関与などありえません。二佐(昔で言えば中佐)のこのような政治的発言が許容されるならば、自衛隊員があっちこっちで政治的発言を始めても、それをダメだという歯止めがなくなります。

それに、休日などにやったことだから問題なし、というなら、東京・中央区で休日に選挙のビラ配りした社会保険庁職員を逮捕した事件はどうするの? 勤務時間外の自衛隊員のところへビラを配りに行くのをなぜ禁止するの? 全然理由が通りませんね。政権与党に賛成する政治的行為は許されるが、反対するのは犯罪だ、などという恣意的な基準は許されません。

防衛庁:憲法改正案作成の陸自幹部、口頭注意のみ(毎日新聞)
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