所有か占有か?

『資本論』の「否定の否定」のパラグラフで、最後に登場するところは「共同占有」なのか「共同所有」か。少し考えてみました。

  • 1)大谷禎之介氏は『資本論』の「否定の否定」を引用される時は必ず仏語版を使っておられるようだ。それは、仏語版では生産手段の共同占有になっているからだろう。しかし初版、第二版ではここは共同所有と書かれていた。 posted at 23:13:45
  • 2)マルクスが資本論完成稿を書く以前から所有と占有を区別して使っていたとしたら、なぜ大事な結論的部分でマルクスは所有という言葉を使ったのだろうか? これまでに、多くの論者が仏語版でなぜ占有に変えたのかを論じたが、なぜ初版で所有と書き、第二版で訂正しなかったのか。 posted at 23:13:50
  • 3)もちろん所有と占有を厳密に区別するようになったのは仏語版からだというなら、それはそれでわかるが、僕自身、マルクスの書いたものを読んでいると所有と占有はそれ以前から使い分けられているように思うので、資本論完成稿でなぜ共同所有としたのか、疑問は残る。 posted at 23:13:55
  • 4)なお、法律で認められた所有と、対象を事実上自分のものにしているという占有とを使い分けるのは、何もマルクスに限ったものではなく、ヘーゲルも論じているし、恐らくヨーロッパ言語に広く見られる一般的な用法なのだと思う。 posted at 23:14:00
  • 5)だから、資本主義のもとで、全体労働者が生産手段を事実上わがものとしているのは、まさに共同占有がふさわしいし、他方で、社会主義・共産主義の社会では、労働者は法律的にも生産手段を所有しているから共同所有がふさわしいということになる。 posted at 23:14:04
  • 6)そう考えると、初版・第二版の資本主義時代の成果とされる生産の共同所有は、資本主義時代の共同占有の事実ではなく、社会主義・共産主義になった後の、すでに社会的所有に移された後の生産手段に対する所有を言っていることになる。僕は、この部分の解釈は、これが正しいのだろうと思う。 posted at 23:14:09
  • 7)しかし、そうなると、なぜ仏語版で、それを共同占有に直したのか、という新しい問題が生じる。それは、仏語版のための平易化のせいであって、本来は共同所有が正しいという解釈も成り立つ。 posted at 23:14:14
  • 8)そうではなく、社会主義・共産主義の社会では、生産手段は個人的所有されるだけであって、生産手段はあくなで共同占有されているだけだ、という解釈も成り立つ。恐らく、平田清明氏のイメージはことらに近いのだろう。しかし、平田流市民社会主義論は大谷禎之介氏の容れるところではないだろう。 posted at 23:14:19
  • 9)そうすると、結局、大谷氏は、マルクスがあれだけ心血を注いだ初版、第二版で、なぜ共同所有だったのかという理由をどう考えられるのだろうか。もう少し細かく大谷氏の著作を読まなければならないようだ。 posted at 23:14:23
  • 10)あ、共同所有か共同占有かという問題は、マルクスのアメリカ版のための指図書きでどうなっていたか、確認しないとダメだな。今日はもうそこまで調べる気力はないが、明日忘れずに確かめておこう。 posted at 00:40:58

最後に書いた問題。つまり、アメリカ版のための指図書きでは、この「否定の否定」のパラグラフ全体をフランス語版で置き換えるように、と指示されていました。ということは、「所有」としていたものを仏語版で「占有」と直したのが、マルクスとしての最終判断ということになります。そうなると、問題は初版、第2版でなぜ「所有」になっていたのか、ということになります。うっかり間違えたという可能性もありますし、完成稿・初版では「所有」でいいと思っていたが、その後認識の発展があって、やっぱり「占有」だということになったのかもしれません。

ただ、「共同占有」だったからといって、第2の否定のあと、「資本主義時代の成果」とされる「生産手段の共同占有」が資本主義時代に成立した事実としての全体労働者による生産手段の占有の意味であるということにはならないでしょう。やはり「第2の否定」のあとの話なのだし、「資本主義時代の成果」という書き方は、いかにも資本主義が歴史的に過去の時代になったという意味にとれそうなので、ここはやっぱり社会主義・共産主義の時代になってからの生産手段の共同占有だと理解しておきます。

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

2件のコメント

  1. こんにちは

    Twitterをしていないので、ここに書きます。

    Twitterにアップされていた「資本論 初版」のPDFファイルでのダウンロードができました。

    read onlineをクリックして、ページを開いた状態にする。次に、右上の「i」をクリックすると、「about this book」の窓が開きます。その中に、「other format PDF … 」があり、そのPDFをクリックすると、ダウンロードができます。

    ご参考までに。

  2. barabaraさん、こんばんは。

    試しにやって見ました。おお、できますね、PDFのダウンロード。
    タイトルページで、PDFをダウンロードしようとするとエラーになるので、PDFファイルは作られてないんだとばかり思い込んでいました。

    ありがとうございました。

    インターネット上で公開されている「資本論」初版はこちら↓

    http://openlibrary.org/books/OL13445305M/Das_Kapital.

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