「さらば、わが愛/覇王別姫」「北京ヴァイオリン」などの映画で有名な陳凱歌(チェン・カイコー)監督の自伝。1990年に刊行されたものの復刊です。
チェン監督は、1952年生まれ。1965?66年に始まった「文化大革命」のときはちょうど中学生で、その終結が宣言された1977年には23歳。まさに、「文革」のなかで青春を過ごしたといえます。「文革」は、人々にさまざまな被害をもたらしただけでなく、裏切り、告発、自己保身などさまざまな理由から人々を加害の側に立たせることにもなりました。そしてそのことが、さらに人々の心に深い傷を残しているのだと思います。
この本からも、あの時代の社会を覆い尽くした暴力と荒廃だけでなく、みずから望んだものでなかったにせよ、「加害」の側に回らざるを得なかったことの苦しみが、友人・知人の困難を救いきれなかったことへの後悔の気持ちとともに、ふり返られています。
チェン監督にかぎらず、中国映画では、あの時代の人々のくらしがさまざまな作品に描かれていますが、あらためて「文革」が中国に与えた傷の深さ、大きさというものを考えさせられました。
チェン監督は、中国籍現在はアメリカ国籍を取得。本書は、天安門事件(1989年)の翌年、日本語で最初に刊行。復刊にあたって、チェン監督の「復刊のためのまえがき」と「復刊のためのあとがき」、訳者・刈間文俊氏による「復刊によせて」がつけられています。
【書誌情報】著者:チェン・カイコー(陳凱歌)/訳者:刈間文俊/書名:私の紅衛兵時代 ある映画監督の青春/出版社:講談社(現代新書1008)/発行年:2006年12月復刊、第1刷1990年/定価:740円(税別)/ISBN4-06-149008-7
ご紹介いただきありがとうございます。ただ、陳凱歌氏の国籍は現在も中国です。これは本人に確認しました。
これはこれは刈間さん、わざわざお越しいただき、ありがとうございます。
国籍の件は、インターネットで見かけた情報だったのですが、きちんと確認もとらずご迷惑をおかけしました。
ご指摘ありがとうございました。