1冊目(上段左側から)。堀田凱樹・酒井邦嘉『遺伝子・脳・言語 サイエンス・カフェの愉しみ』(中公新書、3月新刊)。財団法人武田計測先端知財団が主催する「カフェ・デ・サイエンス」の第1回?第6回をもとに編集された本。堀田氏は元国立遺伝研所長、現在は大学共同利用機関法人情報・システム研究機構長。酒井氏は、マサチューセッツ工科大学で研究したこともあるという言語研究者で、『言語の脳科学』(中公新書)という著書もありますが、もともとは、東大物理の出で、しかも遺伝学の堀田氏の弟子だということを初めて知りました。
まだ読んでいる最中ですが、脳科学や言語の話が、非常に分かりやすく、参加者との対話を通して語られています。しかも、すごいなあと思ったのは、言語と脳の働きの説明にかかわって、手話(日本手話)が日本で使われている日本語以外のもう1つの言語としてとりあげられ、しかも、その会場でネイティブの日本手話使用者(ろう者)や手話通訳者(日本語と日本手話とのバイリンガル)の方が、日本手話がどんな言語かということを語っていることです。残念ながら、実際にどんなふうに手話で語られたかは分かりませんが、右脳の障害で手話の失語も起こることや、ろうの幼児が“喃語”から手話を使い始めるとか、とても興味深い話が次々に飛び出します。
2冊目は、京都大学高等教育研究開発推進センター助教授、つまり大学の教育・研究がどうあるべきかを研究している溝上慎一氏の『大学生の学び・入門』(有斐閣)。昔、氏の『現代大学生論 ユニバーシティ・ブルーの風に揺れる』(NHKブックス)を読んだことがありますが、僕の“ツボ”にはまっている著者の1人です。「学び」などという腑抜けた言葉を使っている本は無視するのだけれども、昨今の大学教育改革は、学生を「勉強させる」方向ですすんでいるがそれはよくないとか、大学は勉強だけをする場所ではないが、まずもっては勉強する場所だと主張しているところや、社会で本当に必要な「学ぶ力」は大学で身につけるもの、という指摘など、今度の本も非常に頷きながら読んでいます。(^_^;)
3冊目は、デヴィッド・ハーヴェイの『新自由主義』。監訳者の渡辺治氏が本書に寄せて書いた50ページ近い論文が一緒に収められています。中国の「改革・開放」経済まで、グローバルな新自由主義の中に含めているところは、ちょっと割り引いて考えないといけないが、とりあえず読み始めました。
4冊目は、清水寛編著『日本帝国陸軍と精神障害兵士』(不二出版)。まだ手をつけていませんが、兵士の精神障害の問題は、昨年、大きな反響を呼んだNHKスペシャル「日中戦争」でも取り上げられました。本書は、番組でも紹介された旧・国府台陸軍病院の資料を中心に研究されたもの。これまで十分知られてこなかった、戦争と日本陸軍の一面として、きちんと読んでおきたいと思います。
【書誌情報】
- 著者:堀田凱樹、酒井邦嘉/書名:遺伝子・脳・言語―サイエンス・カフェの愉しみ/出版社:中央公論新社(中公新書1887)/刊行年:2007年3月/定価:本体780円+税/ISBN978-4-12-101887-8
- 著者:溝上慎一/書名:大学生の学び・入門―大学での勉強は役に立つ!/出版社:有斐閣(有斐閣アルマ)/刊行年:2006年3月/定価:本体1600円+税/ISBN4-641-12282-2
- 著者:デヴィッド・ハーヴェイ/監訳者:渡辺治/書名:新自由主義―その歴史的展開と現在/出版社:作品社/刊行年:2007年3月/定価:本体2600円+税/ISBN978-4-86182-106-6
- 編著者:清水寛/書名:日本帝国陸軍と精神障害兵士/出版社:不二出版/刊行年:2006年12月/定価:本隊5800円+税/ISBN4-8350-5754-68
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