今月の日フィルは、新首席指揮者アレクサンドル・ラザレフの就任披露演奏会。当日券を買って、池袋の東京芸術劇場で聞いてきました。
ラザレフは、定期演奏会では、プロコフィエフの交響曲をシリーズで演奏しますが、今日は、リストとチャイコフスキーというプログラムです。ピアノは小山実稚恵さん。
- リスト:交響詩《プレリュード》
- リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
- 休憩
- チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調
ラザレフはご機嫌でのりのりの演奏。弦がきれいな音を響かせて、チャイコもチャーミングなだけでなく、非常にメリハリのきいた演奏でした。(^_^)v
1曲目は、リストが新しくつくった交響詩というジャンルの代表的な作品。いちおう4部構成になっていますが、連続して演奏されます。弦の、やや不安な感じを含んだ低音の旋律から始まって、金管の勇壮な旋律へ。なかなか印象的な作品です。
2曲目も、4楽章からなる作品ですが、連続して演奏されます。さすがリストの曲だけあって、細かいテクニックを織り交ぜた、相当な難曲。小山さんが、それをばしばしと弾きこなしてゆきます。
後半のチャイコフスキー。ラザレフは、客席に一礼してふり返ると、すぐにふり始め、お客さんがざわざわしている間に、金管の華やかなファンファーレが始まりました。日フィルの弦が非常にきれいなハーモニーを響かせていました。第3楽章のピツィカートも見事にそろっていました。(^_^)v
以前の日フィルというと、“出たとこ勝負”みたいなところがあって、はまった時はすごいけれど、外れた時は…、という感じでしたが、最近は、弦の音がきれいにそろうようになって、緻密な演奏ができるようになってきたのではないでしょうか。これは、ラザレフ効果というよりも、前正指揮者の沼尻竜典氏の努力するところが大きいのではないかと思いますが、それが見事にラザレフとマッチしたように思います。
ラザレフ氏は、満場の拍手をうけると、左右のオケをふり返りながら「称賛は私ではなく、ぜひオーケストラに」とでもいうふうに、自らオケに拍手を送っていました。
この組み合わせ、楽しみにできそうです。(^_^)
アンコールは、
第1部(小山実稚恵さん) リスト:「愛の夢」第3番
第2部 チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」より 行進曲
ところで、当日券で選んだ座席は、2階のLB席。東京芸術劇場は、1階席が、実は音が頭の上を抜けて行ってあまりよくありません(昨年末、日フィル×沼尻竜典で1階F列で「第九」を聴きいたときも、管の音があまり聞こえず、少々残念でした)。3階前列も悪くはありませんが、やっぱりステージまで遠い…。ということで、いろいろあちこちと座席を試しているのですが、そのなかでこの席は、音もよく聴こえるし、ステージにも近く、ひょっとするとなかなかいい席かも知れません。
【演奏会情報】 日本フィルハーモニー交響楽団第181回サンデーコンサート
指揮:アレクサンドル・ラザレフ(日フィル首席指揮者)/ピアノ:小山実稚恵/コンサートマスター:木野雅之/会場:東京芸術劇場大ホール/開演:2009年1月10日 午後2時
【関連ブログ】
ラザレフ、小山実稚恵、日フィル – 11hadley_wood_rise
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アレクサンドル・ラザレフと山田晃子 – ミーハーのクラシック音楽鑑賞
【追記】
産経新聞に、ラザレフの厳しい練習ぶりなどを紹介した記事が出ていました。
【舞台通信】日本フィルハーモニー交響楽団 ラザレフ首席指揮者披露公演 – MSN産経ニュース
【舞台通信】日本フィルハーモニー交響楽団 ラザレフ首席指揮者披露公演
[MSN産経ニュース 2009.1.11 09:19]
■本当の姿を実際の音に
オーケストラの数がベルリンやロンドンをもしのぐ東京。日々、競うように演奏会を展開しているが、日本フィルハーモニー交響楽団は、昨年9月から首席指揮者に迎えたアレクサンドル・ラザレフの披露公演を16、17の両日、東京・赤坂のサントリーホールで行う。複数の在京オーケストラが水面下で獲得に乗り出したといわれるロシアの大物の本格始動だが、年初早々から徹底的にオーケストラを鍛え上げ、勢力地図を塗り替える勢いだ。(谷口康雄)
「ここはもっとリズムをはっきりと。それではもう一度」
5日から合宿のようなリハーサルが続く。新春のコンサートの定番、ドボルザークの交響曲第9番「新世界より」にじっくりと腰を据えて取り組む。
「通常のリハーサルなら1度通して演奏するくらい。でもラザレフは第1楽章だけで1時間半もかける。普通の指揮者なら誰もついていかなくなる」「心から音楽を愛し、その本当の姿を実際の音にしようと純粋」
日本フィルのバストロンボーン奏者、中根幹太も、首席ビオラ奏者の後藤悠仁も、異口同音に語る。ラザレフは休憩時間中も指揮台を離れず、何時間もずっと立ったまま音楽に向き合う。
「2枚の写真がぴたりと重なり合うように、実際の演奏と、頭の中にある理想の響きを一致させるのがリハーサルです。何が書かれ、何を表現しようとしているのかを正確にオーケストラに伝えるのが指揮者の第一の責務です」
予定時間をぎりぎりまで使った厳しいトレーニングは定評のあるところ。ソロ・コンサートマスターの木野雅之は「既成概念を捨て去り、一から始めることで、確実に技術力が向上し、視野も飛躍的に広がる」と信頼を寄せる。
1945年、モスクワ生まれのラザレフは、カラヤン、ムラビンスキーの2人の大指揮者が高く評価した。モスクワの名門、ボリショイ劇場では内紛などで長く温めた芸術監督の席を譲ったが、オペラやバレエにも精通し、色彩的な響きと濃密な表現を卓越したバランス感覚で表出する。
「同年代のドミトリー・キタエンコらとは違った感覚があり、ロシア的な表現を押し出すのではなく、客観的な視点を持った指揮者」と音楽評論家の諸石幸生さん。東京都交響楽団が昨年からエリアフ・インバルをプリンシパル・コンダクターに招いて急速に活況を取り戻した。NHK交響楽団は音楽監督が不在になっており、諸石さんは「今が飛躍のチャンス」とも。
日本フィルはラザレフと3年間でプロコフィエフの交響曲全7曲を演奏、録音する予定だ。音楽評論家の東条碩夫さんは、「ユベール・スダーンと東京交響楽団、クリスティアン・アルミンクと新日本フィルは、名コンビとして大きな成功を収めていますが、それは一朝一夕ではなしえないもの。熱い情熱にあふれたラザレフと経験を重ねることで東京のオーケストラ状況はとても面白いものになる」と期待を込めた。