地名症?! これが調べてみると面白い(^_^;)

『資本論』第1部の、第8章「労働日」や第13章「機械と大工業」、第24章「いわゆる本源的蓄積」など、いわゆる歴史的な叙述の部分は、いろんな地名が登場します。

マンチェスターとかリバプールぐらいなら、高校の世界地図にも出てきますが、もっと細かい地名になると、どこがどこだかさっぱり分かりません。(^_^;)

しかし、地名の原綴りをWikipedia英語版で調べてみると、ほとんど全部ヒットします。

たとえば第8章第3節「搾取の法的制限のないイギリスの産業部門」では、こんな地名が出てきます。(新日本新書版第2分冊416ページ、Werke259ページあたりから)

スタッフォードシャー Staffordshire
ストウク・アポン・トレント Stoke-upon-Trent
ウルスタントン Wolstanton
ハンリー Hanley

で、これらを調べてみると、ストウク・アポン・トレント、ウルスタントン、ハンリーはいずれもスタッフォードシャー州の地名であることが分かります。ということで、418ページに登場するグリーノウ医師の話や、ハンリーの開業医ブロースロイド博士の話も、416ページで「スタッフォードシャーの製陶業は」ということで書き始めた製陶業の話の続きだということが分かります。

日本語では、ストウク・アポン・トレントやウルスタントンは「陶業地方」となっているので、スタッフォードシャー州とは別の地方の話かと思ってしまったりしますが、そうではありません。この「地方」と訳されているのは、ドイツ語ではDistrikt。この場合は「地方」というよりも「地域」とか「地区」の方が適訳かも知れません。つまり、スタッフォードシャー州の中の製陶業の盛んな地域という意味です。

続いて、430ページからアイルランドの製パン職人の話が始まります。そこに、ダブリン(Dublin)、ウェクスフォード(Wexford)、キルケニー(Kilkenny)、クロンメル(Clonmel)、ウォーターフォード(Waterford)、リメリク(Limerick)、エニス(Ennis)、ティペレアリー(Tipperary)、コーク(Cork)という地名が出てきます。現在アイルランド共和国の首都であるダブリンは分かるとして、それ以外の地名を調べてみると、それらも全部アイルランドのものであることが分かります。まあ、これは432ページに「以上は、アイルランドでのことであった」と書いてあるので、調べなくてもいいといえばいいんですが…。

460ページの「救貧法委員たちの同意を得て」で始まる引用に出てくる、ドーシット(Dorset)、デヴォン(Devon)、ウィルツ(Wilts)という地名も、Wikipediaで調べてみると、いずれもイングランド南西部の州の名前です。つまり、この引用中に出てくる「イングランド南部」の農業地域のことなんですね。

というふうに、Wikipedia英語版で調べてみると、『資本論』の中味がさらにぐっとよく分かったりします。ぜひいちどお試しください。

なお、地名の原綴りを知るのは、少々面倒ですが、インターネットに公開されている資本論の英語あるいはドイツ語のテキストが利用可能です。

地名症?! これが調べてみると面白い(^_^;)」への2件のフィードバック

  1. 資本論に出てくる地名といえば、学生時代、最初に参加した金子ハルオ教授のゼミ(第1巻の第12章でした)で、時計マニュファクチュアが営まれるヌシャテル州とかショドフォンとかいった地名の関係が分からず、「東京の蒲田では…」みたいにどちらかが他方に包含されている関係で述べたのか、全く別の地でそれぞれ営まれているマニュファクチュアについて述べているのかで、頭を抱えたことがありました。当時はインターネットも、それこそwikipediaみたいに手軽に調べられる手段も、そんな詳細な地図もなかったので、往生しました。

  2. かわうそ様

    ヌシャテル州(Neuchâtel)もショ・ド・フォン(La Chaux-de-Fonds)も en.Wikipedia で検索可能ですね。

    これを見ると、ヌシャテル州はスイス北部の州だということが分かります。で、その州都がラ・ショ・ド・フォン。現在の新日本訳では、ラ・ショ・ド・フォンに「ヌシャテル州の町」と訳注がついていますが、これがないとホント、ラ・ショ・ド・フォンとヌシャテル州との関係は分かりませんね。

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