共産党の志位和夫委員長の質問趣意書にたいして、政府は、「討論記録」は「文書自体は不公表とすることとして両政府の間で作成された合意文書」と回答(3月31日付)。
「不公表」とすることを目的とした「合意文書」というのは、要するに「密約」ということですね。
ちょうどその前日、不破哲三前議長が、米公開文書にもとづいて、安保条約改定交渉の第1日目から、アメリカ側は明確に核兵器積載艦船の寄港は事前協議の対象にならないと日本側に通告していたことを明らかにしました。これによって、外務省有識者委員会の「暗黙の了解」説(日米間に認識の相違があった)は根底から成り立たなくなっていました。同日、有識者委員会のメンバーの一人である春名幹男氏も「当初から密約の認識があった」とする「私見」を公表。もはや有識者委員会の「暗黙の了解」説は完全に破綻したといえます。
そこで、政府も、ついに「討論記録」は「密約」であったことを認めざるを得なくなった、というわけです。
「討議の記録」は合意文書、政府が見解 : 日経新聞Web版
核寄港密約:「米公文書2件裏づけ」共産・不破氏指摘 : 毎日新聞
「安保改定交渉当初から密約」共産・不破氏指摘 : 読売新聞
核搭載艦の寄港、通知文書発見 有識者委報告と食い違い : 朝日新聞
核搭載船寄港で密約示す新文書、共産前議長が発表 : 日経新聞Web版
共産・不破氏、核密約報告書を批判「誤った論だ」: MSN産経ニュース
日米核密約問題 共産・不破前議長がアメリカ側の新たな公文書を公開 : FNNニュース
もともと、有識者委員会の「暗黙の了解」説は、外務省の栗山氏の1989年8月24日付メモの中身とまったく同じ。つまり、外務省の従来からの見解に合わせたものだったわけです(関連文書の廃棄が問題になっていますが、おそらく、そうした外務省見解と齟齬するような資料が意図的に廃棄されたのでは?)。
私は、有識者委員会の座長に北岡伸一氏が決まったときに、そもそも自民党政権の外交政策に深くかかわってきた北岡氏で「核密約」問題がきちんと「検証」できるのか疑問だと指摘しましたが、あらためてその指摘が正しかったことが確認されたということになります。
「討議の記録」は合意文書、政府が見解
[日経新聞Web版 2010/3/31 20:19]
政府は31日までに、1960年の日米安全保障条約改定時に藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日米大使が話し合った内容を記した「討議の記録」について、「文書自体は不公表とすることとして両政府の間で作成された合意文書」とする答弁書をまとめた。
共産党の志位和夫委員長は同日の記者会見で「日米間の密約を政府が認めたものにほかならない」と指摘。核兵器を搭載した米軍艦船の日本寄港に関する「狭義の密約」はないとした外務省の有識者委員会の報告書との食い違いを批判した。
核寄港密約:「米公文書2件裏づけ」共産・不破氏指摘
[毎日新聞 2010年3月30日 21時45分(最終更新 3月31日 0時17分)]
共産党の不破哲三前議長は30日、国会内で記者会見し、1960年の日米安保条約改定時に「核搭載艦船の寄港・通過」を事前協議の対象外とする密約があったことを裏付ける米側の公文書2件が判明したと発表した。58年10月の日米安保交渉初日に米側が「(事前)協議の定式の対象にならない」と日本に説明したことが記されており、不破氏は「(「広義の密約」とした)外務省有識者委員会の結論は誤論だ」と指摘している。
同党が入手済みの文書を精査し、発見された。不破氏は00年の国会審議で安保改定時の「討議の記録」(討論記録)の存在を指摘。有識者委もそれを認めたが、密約性は否定した。
58年10月4日交渉の文書によると、米政府代表のマッカーサー駐日大使は第1回交渉で、日本政府代表の岸信介首相と藤山愛一郎外相に対し「核兵器を積載している米軍艦の日本の領海と港湾への立ち入りの問題は従来通り続けられ、協議の定式の対象にはならない」という米政府の立場を説明。岸首相らから「中身のある応答」はなかった。
また、59年6月20日交渉の文書によると、藤山外相が条約、交換公文、討論記録を全体として受け入れることをマッカーサー大使に伝えたことが米国務長官に報告された。
不破氏は「政府は討論記録が核密約ではないという誤った解釈をただし、非核三原則の根拠ある実現の方向に動くことを望む」と述べた。【中田卓二】
「安保改定交渉当初から密約」共産・不破氏指摘
[2010年3月31日01時18分 読売新聞]
共産党の不破哲三・前議長は30日、国会内で記者会見し、1960年の日米安全保障条約改定時の核持ち込みに関する「密約」について、米政府が改定交渉当初から、核搭載艦船の寄港・通過は事前協議の対象外とする立場を日本側に伝えていたことを示す米公文書が見つかったと発表した。
外務省有識者委員会の報告書は、日米間には当初、見解の相違があったとしたが、不破氏は当初から密約が存在したとし、「(有識者委員会の)結論は誤論だ」と述べた。
文書は、58年10月22日に、当時のマッカーサー駐日米大使が駐フィリピン米大使にあてた電報で、同月4日、駐日大使が岸信介首相らに対し、「核搭載の米軍艦の日本領海と港湾への立ち入りの問題は従来通り続けられ、(事前)協議の定式の対象とならない」などとする本国の訓令を説明したとしている。
核搭載艦の寄港、通知文書発見 有識者委報告と食い違い
[asahi.com 2010年3月30日21時52分]
共産党の不破哲三前議長は30日、国会内で記者会見し、日米核持ち込み密約をめぐり、米政府が1960年の日米安保条約改定の交渉段階で、核搭載艦船の日本寄港は従来通りに行うと日本側に伝えたことを示す米公文書が見つかったと発表した。「交渉当時に米側解釈を日本側に明らかにした形跡はない」とした外務省の有識者委員会の報告と食い違う内容だ。
文書は、58年10月にマッカーサー駐日米大使が駐フィリピン米大使にあてた電報。国際問題研究者の新原昭治氏が00年に入手していたが、今回の外務省の密約調査を受けて精査した結果、存在が明らかになった。
電報によると、マッカーサー大使が同月4日に岸信介首相と藤山愛一郎外相に対し、「核搭載の米軍艦の日本領海と港湾への立ち入り問題は従来通り続けられ、(事前)協議方式の対象にならない」との本国の訓令に従って説明したという。
会見で不破氏は「日本側文書に(記述の)形跡がないことで調べもせずに、(有識者委が)結論を出したのは問題だ」と指摘。さらに「米政府が自分たちの解釈に基づいて核兵器を持ち込んでくる可能性は依然あるし、私たちは現実にあると思っている」として、現時点での核搭載艦船の寄港の可能性はないとしている政府の対応を批判した。(倉重奈苗)
核搭載船寄港で密約示す新文書、共産前議長が発表
[日経新聞Web版 2010/3/30 19:53]
共産党の不破哲三前議長は30日、国会内で記者会見し、核搭載艦船の日本寄港に関する日米の密約の存在を示す新たな外交文書が見つかったと発表した。不破氏は1958年に日米安全保障条約の改定交渉が始まった時点で、米国側は核搭載艦船の寄港・通過を事前協議の対象外とする立場を日本側に明確に説明していたと指摘。「狭義の密約」はなかったとした外務省の有識者委員会の報告書を「誤認だ」と批判した。
文書はマッカーサー駐日米大使が米国務省などにあてた電報2通。58年10月の電報では、日米交渉初日に同大使が岸信介首相らに対し、核搭載艦船の寄港・通過を事前協議の対象外とする本国の訓令に従って米国側の立場を説明したとしている。
外務省の有識者委員会が9日発表した報告書は、核搭載艦船の日本寄港については日米間に見解の相違があり、「暗黙の合意」という広義の密約だったと結論づけている。
共産・不破氏、核密約報告書を批判「誤った論だ」
[MSN産経ニュース 2010.3.30 19:20]
核兵器搭載の米艦船の日本への寄港・通過に関する「密約」についての外務省の有識者委員会の報告書に対し、共産党の不破哲三前議長は30日、国会内で記者会見し、「密約ではないという結論を出しているのは誤った論だ」と批判した。不破氏が記者会見するのは4年半ぶり。
不破氏は、昭和35年1月の藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日米大使による「討議の記録」(秘密議事録)について「公文書でないような扱いをされているが、討議の記録が核密約であることの立証には十分だ」と指摘した。
その上で「誤った解釈を正し、核密約の廃棄、文字通り非核三原則の根拠ある実現という方向に向くことを望みたい」と述べた。
有識者委の報告書では「討議の記録」の写しとみられる文書が見つかったことを明らかにしたが、「日米両国間に明確な合意はないが日本政府は事前協議なしの寄港を事実上黙認した」として、「広義の密約」と結論づけている。
日米核密約問題 共産・不破前議長がアメリカ側の新たな公文書を公開
[FNNニュース 03/30 20:24]
日米の核密約問題で核兵器を積んだアメリカの艦船の寄港について、日米政府が交渉当初から事前協議の対象外として交渉を進め、結果的に日本側がそれを受け入れたとする交渉経過を示すアメリカ側の新たな公文書を、共産・不破前議長が公開した。
共産・不破哲三前議長は「アメリカは、明確に(交渉)初日から説明したと。非常に生々しく、初日の交渉の様子が書いてあるんです」と述べた。
公開されたのは、いずれも日米安保条約改定交渉にあたった当時のマッカーサー駐日大使の電報で、1通目の電報でマッカーサー氏は、1958年10月4日の日米交渉初日に当時の岸首相と藤山外相に対して、核兵器を積載したアメリカの軍艦の寄港は、事前協議の対象にならないと提案したと報告している。
さらに2通目の電報で、マッカーサー氏は、密約とされた「討論記録」も含めてパッケージでの受け入れを日本側に迫り、岸首相が一部を訂正したうえで、すべての内容を受け入れると回答したと本国に報告し、「合意は完了した」と記している。
これらの文書は、3月9日に外務省の有識者委員会のまとめた「日米間に解釈の違いがあった」とする報告と食い違いを見せており、今後、議論を呼ぶとみられる。
不破氏が記者会見して発表した見解と資料はこちら↓から。
核密約の内容は交渉の第1日から示されていた/条約・交換公文・核密約 米側は一括承認を要求/不破前議長が米側文書示す
核密約はこうして結ばれた/五八?六〇年日米交渉の内容をしめす新たなアメリカ外交文書について/日本共産党元衆院議員 不破 哲三
日米密約:春名委員、検証委と異なる「私見」
[毎日新聞 2010年3月31日 東京朝刊]
日米「密約」を検証した外務省有識者委員を務めた春名幹男・名大大学院教授は30日の日本記者クラブでの研究会講演で、1960年の日米安保条約改定時に「核搭載艦船の寄港・通過」を事前協議の対象外とする密約について、日本側が改定当初から認識していた、との私見を示した。60年1月の藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日米大使が事前協議制を巡って交わした「討議の記録」について、日米間に解釈のズレが当初あったとした有識者委の報告書とは異なる見解を示すものだ。
春名氏は講演で、米国が50年代初めから実施していた核兵器搭載の存否を否定も肯定しない「NCND政策」などに触れた上で「当初から(日本側に)密約の意識があったのではないか」と指摘した。【中澤雄大】
日米密約:「説明受けた」中曽根元首相、認める
[毎日新聞 2010年3月31日 0時10分(最終更新 3月31日 1時45分)]
中曽根康弘元首相は30日、NHKの報道番組で核持ち込み密約について、「私が質問して、外務省が説明したと思います」と述べ、首相在職中に同省から密約に関する説明を受けたことを明らかにした。当時の同省幹部は中曽根氏に対し、「文書はないけど慣行で、(日米が)お互いに信頼関係でやっている」と説明したという。9日に公開された外交文書では、佐藤栄作内閣当時の68年から海部俊樹内閣当時の89年まで歴代首相に説明したことが書き込まれており、中曽根氏は83年1月14日に説明を受けたと記されていた。
中曽根氏は密約の必要性について、「大局的見地で政治の知恵だ。それまでノーと言ったら安全保障は成り立たない」と述べた。【野口武則】
中曽根氏は、昨年7月に不破氏と対談したとき、不破氏の質問に答えて「密約そのものは見ていない」と発言していました。それについて、私は、中曽根氏は「密約」文書そのものは見ていないが、「密約」があること自体は説明を受けた可能性が大きいと指摘しました。今回の中曽根氏の発言で、このときの私の推測は裏づけられました。
外務省の「核密約」関連ページ↓。