菅直人首相は、民主党代表に選ばれたとたん、まだ首班指名もされていないうちに、オバマ米大統領と、沖縄普天間基地の辺野古沖移設を約束した「日米共同声明の着実な履行で一致」(毎日、6月6日付)、さらに施政方針演説でも「普天間基地移設問題では先月末の日米合意を踏まえ」ると表明しました(6月11日)。
ところが、その菅直人氏が4年前には、民主党代表代行として、「沖縄の海兵隊は全部移って貰うことは十分可能」「沖縄に海兵隊がいるかいないかは、日本にとっての抑止力とあまり関係がない」と発言していたのです!!
それは、2006年6月1日に現代社会民主主義研究会の主催で開かれた連続講座「小泉政治への対抗軸は何か(3)」での講演で、『マスコミ市民』2006年7月号に掲載されています。
関連部分は以下のとおり。(下線は私が付け足したもの。以下同じ)
小泉政治への対抗軸 いかなる日本を提案すべきか
菅直人(衆議院議員・民主党代表代行)[『マスコミ市民』2006年7月号]
(前略)
「米軍再編」問題は、残念な展開
(中略)
グアムへの沖縄海兵隊の移転問題も、交渉の仕方をきちんと戦略的にやれば、沖縄の海兵隊は全部移って貰うことは十分可能でした。いま、沖縄の基地の半分以上は海兵隊の基地で、あそこにいる4万人くらいのアメリカ軍の半分以上が海兵隊員ですから、海兵隊の基地と要員が全部沖縄から出ていくことになると、沖縄の基地負担は面積的にも定員的にも半分以下になるのです。
よく、あそこから海兵隊がいなくなると抑止力が落ちるという人がいますが、海兵隊は守る部隊ではありません。地球の裏側まで飛んでいって、攻める部隊なのです。たしかに来たら戦うかも知れませんが、そのための部隊では全くありません。そういう意味で海兵隊は、ラムズフェルドの言うように、良い悪いは別にして、先制攻撃的な体制を考えた時には、沖縄にいようがグアムにいようが大差はないわけです。私は、沖縄の負担軽減ということで言えば、海兵隊全部をグアムでも、あるいはハワイ州では是非来てくれといっていたのですから、そっちに戻っていって貰えばいいと思っています。
この間の経緯で、半分くらいはグアムでもつから金をよこせという、結果的に非常に中途半端な形になりました。この論理も全く分かりません。政府の答弁では、抑止力を維持することを前提にして、同時に沖縄の負担を下げるために海兵隊に移って貰うのだから、移転先の整備も沖縄の負担を軽減するための費用として日本がある程度受け持つのは仕方がないという説明です。しかし先ほども述べましたように、沖縄に海兵隊がいるかいないかは、日本にとっての抑止力とあまり関係がないことなのです。
そういうことで言えば、アメリカ軍の存在は、結果的に抑止力になっていますが、抑止力が主目的で日本にいるわけではないわけですから、そこはもう少し交渉の仕方があるのだと思います。世界の安全・安定のためにはアメリカ軍がある程度の機能を果たすことには協力しますが、しかし沖縄の海兵隊は思い切って全部移ってくださいと言うべきでした。それは数年前からの議論ですから多分うまくいったと思うのですが、結果的にそのチャンスを失いました。そういうことで、「米軍再編」問題は非常に残念な展開を続けていると思っています。
この考え方が、どうして「抑止力」維持のため、海兵隊・普天間基地の県内移設になったのか? ぜひ、菅直人首相は国民、沖縄県民に答えるべきでしょう。
【追記】
「産経新聞」(2010年6月4日付)によれば、2001年7月21日に沖縄で記者会見して、こんな発言をしています。
【菅首相誕生】「海兵隊は沖縄に存在しなくても」「細川政権は支える側に粘り不足」「未納3兄弟」 菅直人新首相語録:MSN産経ニュース
「(在沖縄米海兵隊は)沖縄に存在しなくても必ずしも日本の安全保障に大きな支障はない。米国領域内に戻ってもらうことを外交的にきちんと提起すべきではないか」(7月21日、沖縄県内での記者会見で)
「孫引き」では正確さを欠くので、ニュースを調べてみました。その結果、2001年7月22日付の「毎日新聞」「朝日新聞」にこのときの記者会見の記事が載っていました。「毎日新聞」の記事は以下のとおり。
沖縄の海兵隊、米領域へ撤退を――菅直人・民主党幹事長
[毎日新聞東京版 2001年7月22日付朝刊]
民主党の菅直人幹事長は21日、那覇市内で記者会見し、沖縄県の米軍基地問題について「海兵隊はいろんな軍事情勢、極東情勢を勘案してみて、沖縄に存在しなくても日本の安全保障に大きな支障はない。(海兵隊は)アメリカ領域内に戻ってもらうことを外交的に提起すべきだ」と述べ、米軍の海兵隊基地撤去を求めるべきだとの考えを示した。
それから、菅直人氏のOfficial Websiteでも、2001年8月19日付で、本人が次のように書き込んでいることも確認できました。
沖縄の海兵隊
[2001年8月19日 00:00]
岡田政調会長の沖縄海兵隊に関するアメリカでの発言についていろいろ問い合わせがきている。本人と話ができていないが報道を見る限りどこかに誤解が生じている。
民主党の基本的考えは「沖縄の米軍基地の整理縮小のため、国内外への移転を含め積極的に推進していく」と、基本政策に述べている。そして沖縄の米軍基地の人員でも面積でも半分以上を占める海兵隊基地が「国内外の移転を含め」整理縮小の検討対象にになることは当然のこと。民主党の沖縄政策の中では「アメリカの東アジア戦略構想を再考し、米海兵隊の他地域への移駐を積極的に議論する」と明記されている。実際に民主党の中で海兵隊の米国内への移転は有力な意見として何度も議論されてきた。私の参院選挙中の沖縄での発言はそうした背景のもと行われたもので、その場の思いつきでもリップサービスでもなく、民主党の基本政策と矛盾してはいない。基本政策より多少踏み込んだ表現があるとしても、それは政治家としての私の責任で述べたものである。
私自身3年程前民主党の代表として訪米した折にも、アメリカの当時の国防次官にこの主張をぶつけたことがある。国防次官は厳しい顔でメモを見ながら「北朝鮮に対する誤ったシグナルになるから沖縄から海兵隊は撤退はするべきでない」と反論してきた。その理屈も一部理解はできるが絶対ではない。実際には海兵隊基地を米国に戻すより日本に置いていたほうが米側の財政負担が小さくてすむという背景もある。北朝鮮の状況や日米の財政状況が変わってきている中で、沖縄にとって重い負担になっている沖縄海兵隊の日本国外移転について真剣な検討が必要。
この記事が間違いなく菅直人Official Websiteの記事である証拠として、画像でも貼り付けて起きます。なおこのOfficial Websiteは、最新更新が2010年5月8日ですから、過去のブログではなく、現在も生きたサイトであることを付け加えておきます。
さらに、こんな記事も載っています。
沖縄の事件
[2001年7月 5日 00:00]
沖縄の米兵婦女暴行事件で田中真紀子外務大臣に申し入れをする。6年前の事件の後、凶悪犯については起訴の前でも容疑者を引き渡すという合意をしているにもかかわらず約束が守られていない。少なくとも日米地位協定を改訂することが必要。沖縄の海兵隊は訓練のために新兵が次々と送られてくる。それだけに若くて世間知らずの兵隊が多く事件を起こしやすい。海兵隊が沖縄にいなければならない理由は特別にはない。アメリカ国内に戻ってもらうべき。
さらに、こんなものも発見。2003年7月、「琉球新報」のインタビューに答えて、党代表として、菅直人氏は、「私たちは沖縄の第3海兵遠征軍のかなりの部分を国内、国外問わず、沖縄から移転すべきだと主張している」と答えていました。
<インタビュー>菅直人民主党代表
海兵隊は米国移転を 「沖縄とのパイプ作りたい」
[琉球新報 2003年7月21日付]
菅直人民主党代表は20日、琉球新報社のインタビューで、日米地位協定の見直しを党全体として取り組む姿勢をあらためて強調し、在沖米海兵隊の兵力削減については大部分の兵力を米国内への移転を進めるべきだとの見解を示した。また、次期衆院総選挙については1区と4区での擁立を明言し「野党第一党の民主党と沖縄とのパイプを作りたい」と述べ、沖縄から党公認候補の当選に全力を挙げる方針を示した。菅代表は休暇を利用して来県した。(聞き手 政経部・新垣毅)
――日米地位協定の改定にどう取り組むか。
「党の基本政策で見直しに取り組むこととある。政権を取った時の公約集マニフェストを作成中で、見直しをどう扱うかは決めてないが、党の公約に間違いない。県の改定要求の11項目は党の議論とほとんど共通している。単に支援でなく、政権を取れば県と協力し、実現したい」
――米軍の兵力構成見直しで在沖米軍基地はどう位置付けられるべきか。
「私たちは沖縄の第3海兵遠征軍のかなりの部分を国内、国外問わず、沖縄から移転すべきだと主張している。米国の動きは現在、冷戦後のさらに後という位置付けで、兵力構成の考えが変わっている。ある意味で沖縄の基地を見直す大きな機会だ。国内移転よりハワイなど米国領内への移転が考えやすいはずだ」
――普天間移設問題についてどう考えているか。
「米国は15年問題を了解せず、県内移設は現在も揺れる。最初の合意自体が政治効果を優先させ、玉虫色の決着だった。考え方を整理し直す必要がある」
――沖縄の振興の在り方をどう考えるか。
「沖縄の持つ歴史的、地理的特殊性を生かした発展を目指すべきだ。私も沖縄に何度も来て海に潜ったが、海の持つ観光資源としての重要性を県民自身が意外と軽視していないかと感じる。復帰して30年余、いろんな意味で開発が進んだことは県民のためによかったかもしれないが、一方で、沖縄本島周辺のさんご礁が壊滅的な状況だ。それがすべてではないが、沖縄がこれから特殊性を生かしていく上で潜在的な強みである自然というものを沖縄の皆さん自身もしっかり把握し、生かすべきではないか」
――秋に予想される衆院総選挙にどう臨むか。
「一番力を入れているのは国会での小泉(純一郎)氏との討論と、全国各地を回ることだ。沖縄に国会議員がいないことで、なかなかストレートに県民の声が伝わらない。野党第一党の民主党が議席を持つメリットは沖縄にとって大きい。何としてでも沖縄で議席を確保しパイプを作りたい。県民もその視点で応援してもらいたい」
――1区以外から候補者を擁立するか。
「4区も地元と相談し擁立に向けて全力を挙げる」
――社民党や連合、社大党との選挙協力は。
「社民党と連合とは、ある程度協力関係ができてきている。2区や3区で社民党に協力し、わが方が候補者を擁立する予定の4区と1区で協力を得たいと思っている。きちんとまとまれば4つの選挙区で社民党と連合との協力体制が固まる。できれば社大党にも応援してもらいたいが、社大党も(4区で)候補者擁立を考えており、協力体制の中には入っていない」
この件は沖縄タイムス6月5日の社説でも取り上げられて、拙ブログでも紹介していましたが、GAKUさんが今頃になって取り上げるとは、少々オドロキです。
座標軸さま
菅直人新首相が以前には「国外移設」を主張していたということが、沖縄で大きな問題になっていることは知っていたのですが、いったいいつどこで、そんな発言をしていたのかきちんと確認してからでないと記事が書けないので、少々時間がかかってしまいました。お許しあれ。