消費税増税で分の悪くなった民主党が、国会議員の定数削減を臨時国会で提案すると言っている。
「政治家みずからが痛みを」というのだが、今日の読売新聞の記事によれば、定数80削減で減る支出は約33億円。これで11兆円の消費税増税も仕方ないと考えたら、とんでもないことになる。
現在、衆議院議員1人あたり支出されているのは、歳費(期末手当を含む)と文書通信交通滞在費(月額100万円)、立法事務費(月額65万円)など、年間約4120万円。これかける80で、約33億円というわけだ。
「政治家みずから痛みを」というのであれば、まず政党助成金320億円を削ったらどうだろうか。金額から言えば、国会議員を700人以上削減するのに相当する。
もともと政党助成金は、汚職腐敗の原因となってきた「企業・団体献金」をやめる代わりに「民主主義の費用」として導入されたもの。しかし、いまだに「企業・団体献金」は禁止されず、企業・団体献金と政党助成金の「二重取り」が続いている。
しかも、政党助成金は「つかみ金」で、使途を報告する必要もなく、使い余しても国庫に返納する必要もない。政治家にとって、こんなおいしい話はない。
だから、新党騒ぎが起こるたびに、「現職の国会議員5人以上」という受け取り要件をめぐって、どたばた騒ぎが起こる。今回も、「新党改革」の立ち上げにあたって、「改革クラブ」の受け取っていた政党助成金を手に入れるために、新党であるはずなのに、桝添氏が「改革クラブ」に加わり、「新党改革」に加わらない議員が脱退し、党名変更をして「新党改革」を立ち上げる、などという奇っ怪なことが行われた。
企業や各種団体は、参政権を持った主権者ではないのだから、政治献金禁止は当たり前。その上で、「政治にカネがかかる」というなら、政治家は、自分でこつこつと個人献金を集めるべし。それが大変だからと言って、税金(政党助成金)に頼るとは、本末転倒。「官から民」「自己責任」を論ずる資格なし、である。
しかも、衆議院定数80削減で、民主党が削減しようとしているのは、各党の得票が比較的平等に議席に反映する比例代表部分。もともと、小選挙区制が導入されたときに、小選挙区300、比例代表200だったものが20削られ、現在は180になっている。これをさらに80削れば、比例定数は100しかなくなる。これを11ブロックに分けて選挙をすれば、北海道ブロック(現在定数8)や四国ブロック(現在定数6)などは、単純にいえば定数4とか定数3になってしまうわけで、もはや「比例代表」ではなくなる。
その結果、「各党の得票に比例して議席を配分する」という比例代表の長所はなくなってしまい、比例代表選挙でも大政党有利となってしまう。
たった33億円を削るために、選挙での民意がますます大政党有利にゆがめられてしまってよいのか。それぐらいだったら、まず320億円の政党助成金を廃止する方がよっぽど額も大きいし、筋も通る、というものだ。
国会議員「定数減」選挙後の争点
[読売新聞 2910年7月2日]
国会議員定数の削減が、参院選やその後の政治情勢の焦点になりそうだ。選挙制度改革も含め、その行方が連立政権の枠組みや政界再編に向けた動きに影響を与える可能性もある。
民主党の玄葉政調会長は1日、栃木県佐野市で参院選候補の応援演説に立ち、「衆院議員の比例定数80削減を最初にやりたい。しかし、参院で民主党が過半数をとらなければ、その法案も通らない」と訴えた。
民主党は今回の参院選の公約で、「参院定数の40程度削減、衆院は比例定数の80削減」を掲げている。主要9党を見ても、共産、国民新、社民各党をのぞく6党が定数削減を公約に盛り込んでいる。
衆院議員1人に支給される歳費(期末手当含む)と文書通信交通滞在費(月額100万円)、立法事務費(月額65万円)の年間合計額は現在、約4120万円にのぼる。
民主党が掲げる「80削減」が実現すれば、約33億円の税金が浮く計算になる。民主党とすれば、菅首相が消費税率引き上げに向けた議論に意欲を示す中、国会議員が自らの身を削る姿勢を示すことで、税制改革への理解を求める狙いがある。(以下略)
参議院定数の40程度削減にいたっては、実際にはなかなか困難。現在242議席だから、これを40程度減らすといえば、定数200ということになる。
現在は、この半数121のうち、48が比例代表選挙区、残り73が各都道府県単位の選挙区の定数になっている。6年任期で3年ごとの半数改選という現在の参議院の仕組みを前提にすれば、選挙区分の定数を削ることは難しい。
となれば、比例代表部分をそれぞれ20削減ということになるが、そうなれば、比例代表選挙の定数は28ということになる。これでは、10%の得票でも、獲得議席はせいぜい2議席(議席を得票率に応じて比例的に配分する方法はいろいろあるが、日本で用いられているドント式は、どちらかといえば大政党に有利に議席配分される)。
こうなっては「得票率に応じた議席」という比例代表の美点も、ほとんど意味をなさなくなってくる。
衆議院であれ参議院であれ、少数政党はもっぱら比例代表選挙区で議席を獲得している。比例定数の削減は、結局、こうした少数政党を国会から閉め出し、民主党と自民党の「2大政党」で国会を独占しようということにほかならない。
追記:
定数80削減でどれだけ支出が減るかは、推計なので、いろいろな数字が言われている。たとえば、共産党の市田書記局長は54億円という数字を上げているし、「東京新聞」は60億円と書いている。いずれにしても、320億円の政党助成金に比べればはるかに少額だし、まして消費税10%、11兆円の増税と引き替えにするには、あまりにわずかでしかない。
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前略
文中で分からないことがあり教えていただきたくコメントしましました。
「衆議院議員一人当たり支出されているのは、歳費(期末手当を含む)と文書通信交通滞在費(月額100万円)、立法事務費(月額65万円)など、年間約4120万円」となっていますが、その他に、私には分からないので分かっていましたら教えて頂きたいのですが、議員一人当たら公設秘書を置いていますが、この公設秘書の人件費は税金で支払いしているのはないでしょうか。もし、そうでしたら議員一人当たらの公設秘書人数と一人当たりの人件費(月額費用、期末手当、議員のように立法事務費にょうなものが出ているのであればその費目と金額)をお教えいただけないでしょうか。
その知りたい理由は、消費税増税の理由に「政治家自ら痛みを」などと言いながら、議員一人当たり国民が支払っている金額と政党助成金額とを比較をしながら、「80名の削減」でなく政党助成金に相当する「700名の削減(?)」の根拠をつくりあげることと定数削減しても「痛みは伴わない」、そればかりか一人当たりの政党助成金額が増え懐を温める結果になること知らせたいためです。よろしくお願いいたします。
林さんへ
国会議員の公設秘書の給与は、公務員に準じて国から支給されます。それについては、Wikipediaに「国会議員の秘書の給与等に関する法律」という項目があって、給与表が掲載されています。それによれば26万6,800円から54万9,200円まで幅があります。また、国会議員は政策秘書を含め3人まで公設秘書をおくことができます(すべての国会議員が3人置いているかどうかは分かりません)。
したがって、仮に公設秘書の給与を55万円として計算すると、国会議員1人当たり、55万円×3人×12ヶ月×80人分で、おおよそ16億円になります。これを「読売新聞」があげた33億円にプラスすると、「東京新聞」があげた約60億円という数字にほぼ等しくなります。このあたりが「東京新聞」が60億円という数字をあげた根拠ではないでしょうか。
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