マルクスの時代の税金って?

前回の古典教室で、『賃金、価格および利潤』の第11章「剰余価値が分解する種々の部分」に出てくる「税金徴収者」のことが話題になりました。剰余価値の受け取り手のなかに、資本家、地主、貨幣資本家だけでなく、「諸君が望むなら税金徴収者をこれにくわえてもよい」と、マルクスは書いています ((服部文男訳『賃労働と資本/賃金、価格および利潤』新日本出版社、古典選書シリーズ、156ページ。))。

もちろん、ここでマルクスが言っているのは、税務署の職員のことではなくて、徴税主体である国家のことです。そして、社会全体の労働を、労働者の必要労働部分とそれ以外の剰余労働部分とに大別すれば、税金が剰余労働に含まれることは明らかです。

しかし、そもそもこの時代の税金って、どうなっていたんでしょうか? そもそも、労働者が納めるような税があったのでしょうか? そこで、またもやあれこれと調べてみました。

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工芸ガラスの製造工程

岩田糸子『ガラス工芸』保育社カラーブックス

ガラス瓶の製造工程についてあれこれ調べていますが、ご紹介もいただいた岩田糸子『ガラス工芸』(保育社カラーブックス、1975年、絶版)を手に入れて、読んでみました。

本書は工芸ガラス作品の紹介が中心ですが、後ろに工芸ガラスの製造工程について、少しまとまった解説がついています。その中に、吹き竿をつかった手作業について、次のように記述されていました。

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今週の「九条の会」(1月25日まで)

全国各地の草の根で運動する「九条の会」の活動を、インターネットを流れるニュースの中から拾い集めています。新年早々から、全国でいろんな集まりがもたれています。

「みやぎ農協人九条の会」の集会を報道した「農業協同組合新聞」は、社団法人農協協会の発行する新聞です。また、「タウンニュース」は神奈川県全域と東京・町田市を対象とする地域情報紙です。

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読響定期演奏会500回、おめでとうございます

読響第500回定期演奏会(2011年1月22日)

先週の土曜日、サントリーホールで読響の定期演奏会を聞いてきました。今回で読響定期演奏会は500回ということで、それを記念する特別小冊子をいただきました。

  • 池辺晋一郎:多年生のプレリュード―オーケストラのために
  • リスト:ファウスト交響曲

指揮は、読響正指揮者の下野竜也氏。

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映画「扉をたたく人」

扉をたたく人

今月28日で閉館になる恵比寿ガーデンシネマで、これまでスクリーンにかけてきた作品をリバイバル上映していますが、先日、映画「扉をたたく人」を見てきました。2009年に公開されたときは、残念ながら見逃していたものです。

ストーリーなどは、こちらを↓。
映画『扉をたたく人』(原題:the Visitor)公式サイト

原題は The Visitor。ウォルターがNYの自宅に久しぶりに帰ったら、そこにやってきていたという意味でも、タレクたちはVisitorですが、海外からアメリカにやってきた Visitor でもあります。そして、その Visitor たちが、9・11後のアメリカ政府やアメリカ社会のあり方はそれで良いのかと問いかけ、扉を叩いている。そんな作品でした。(今年4本目)

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あらなんと、不破さんのラブレターが…

『婦人公論』2011年2月7日号

普段は女性雑誌はまったく読まない(『女性のひろば』を除いて)のですが、前号(1月22日号)の『婦人公論』から、不破さんの奥さんの上田七加子さん ((よく知られているように、不破さんの本名は上田建二郎。「不破哲三」は、不破さんが労働組合の職員だったときに『前衛』に論文を書くために使ったペンネームです。))の「夫・不破哲三との革命的熱愛人生」が短期集中連載されています。

で、その第2回(2月7日号)に、なんと不破さんが七加子さんに送った手紙が紹介されていました。歴代政府を追及する論理の鋭さや、最近のマルクス研究など理論家で知られる不破さんが、いったいどんなラブレターを送ったのでしょうか。(*^_^*)

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Glass Blowingの作業工程

先日、「ガラスビン製造マニュファクチュアがわからん…」という記事を書いたら、先輩から“The Encyclopedia Americana, International Ed. の Glass Blowing に詳しく載ってるよ”と教えていただきました。

読んでみると、たとえばガラス吹きのチームについて、次のように書かれています。

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ガラス瓶の作り方

Youtubeで、ガラス瓶の製造工程の動画を見つけました。他にもいろいろあるようです。

http://www.youtube.com/watch?v=NVKcISj2LfA

残念ながら、マルクスが書いているようなマニュファクチュア的なガラス瓶製造ではなくて、機械によるものです。それでも、なるほどと思うことがいろいろありました。

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買ってしまいました (^^)v

フルトヴェングラー/グレートEMIレコーディングス(21CD)フルトヴェングラー/ザ・レジェンド(3CD)

左は、フルトヴェングラー生誕125周年を記念して発売されたCD21枚組み「フルトヴェングラー/グレートEMIレコーディングス」。ベートーヴェン交響曲全曲のほか、ピアノ協奏曲第5番、ヴァイオリン協奏曲、フィデリオ全曲、ブラームス交響曲全曲、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲、などなどが収録されています。

右は「フルトヴェングラー/ザ・レジェンド」(CD3枚組み)。モーツァルト交響曲第40番、ハイドン「驚愕」、シューベルト「未完成」のほか、シューマン、メンデルスゾーン、シューベルト、ヴェーバーの序曲やリヒャルト・シュトラウス、リストの小品を集めたものです。

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銀行預金 貸し出し先が見つからず150兆円もだぶつく

いささか古くなりましたが、「日本経済新聞」1月12日付朝刊1面に載っていた記事です。銀行の預金残高564兆円にたいして貸出残高は416兆円と、預貸金の差が約150兆円にも達しているというのです。

全国銀行の預貸金(「日本経済新聞」2011年1月12日)

銀行預金、融資に回らず 10年末の差額、最大の150兆円:日本経済新聞

これについて、ブログなどでもいろいろなコメントが加えられていますが、かつては、家計は黒字で企業は赤字、だから銀行が預金を集めて企業に貸し出すという資金の流れ(家計→銀行→企業)がありました。しかし、いまや家計は赤字となり、逆に企業は余剰資金を貯め込んでいます。

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喉元過ぎれば…でよいのか?

阪神大震災から16年目の今日、「読売新聞」にこんな記事が載っていた。

緊急速報に必要な地震計、更新進まず…財政難:読売新聞

あのとき、6,000人を超える人が犠牲となり、多くの人が涙したはず。それなのに、「予算がない」といって地震計の更新さえできないということでよいのだろうか。

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新交響楽団第212回演奏会

新交響楽団第212回演奏会(2011年1月16日)

今日は、知り合いから招待券のお裾分けしてもらえるということで、寒いなか池袋まで出かけて、新交響楽団の演奏会を聴いてきました。

  • 高田三郎:狂詩曲第1番〜「木曽節」の主題による〜
  • 高田三郎:狂詩曲第2番〜「追分」の主題による〜
  • エネスコ:ルーマニア狂詩曲第2番 ニ長調/ルーマニア狂詩曲第1番 イ長調
  • ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年改訂版)

新響は、1956年に故・芥川也寸志氏によって創設された大変由緒あるアマチュアのオーケストラです。3カ月に1度演奏会を開いていますが、今日のプログラムのテーマは「踊り」の音楽。おもしろいと思ったのは、エネスコのルーマニア狂詩曲、とくに第1番の方。初めて聴きましたが、スラヴ的なリズムなどがなかなか印象的な作品でした。

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ピンチヒッター渡邊一正氏、奮闘す

東京フィルハーモニー交響楽団第796回定期演奏会(2011年1月14日)

東フィル新年最初の定期演奏会で、大野和士氏がショスタコーヴィチとプロコフィエフを振るということで、大いに期待してサントリーホールへ。

  • 望月京:むすび(東京フィルハーモニー交響楽団100周年記念委嘱作品)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 ロ短調 op.54
  • プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調 op.100

しかしたどり着いてみると、指揮者変更のお知らせが張り出されていました。大野氏は、頚椎の状態が悪くなり医師から5週間の治療・リハビリを指示されたということで、急遽、渡邊一正氏が登場。11日の発表で、13日から演奏会ということで、本当にあわただしいことだったと思われます ((演奏会が終わって自宅に帰ってから、東フィルから指揮者変更のハガキが届いていたことに気がつきました。))。

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ガラスビン製造マニュファクチュアがわからん…

『資本論』第12章「分業とマニュファクチュア」第3節の終わり近くに、イギリスのガラスビン・マニュファクチュアのことが出てきて、1つのガラス窯に5人の労働者が組みになって仕事をしていると書かれています(ヴェルケ版367ページ、原注(40)の出てくる少しあとの部分)。そのこと自体は分かりやすいことなのですが、問題は、その労働者の「○○工」という名称の翻訳です。

たとえば、新日本出版社の上製版『資本論』では、次のような翻訳になっています。

一つのガラス窯の同じ口のところで一つの群が労働しているが、この群はイギリスでは「穴」と呼ばれていて、(1)壜製造工すなわち(2)壜仕上工一人、(3)吹き細工工一人、(4)集め工一人、(5)積み上げ工すなわち(6)磨き工一人、および(7)搬入工一人から構成されている。(新日本出版社、上製版『資本論』Ib、601ページ)

「壜製造工」、「壜仕上工」や「吹き細工工」は、ほんとうにガラスビン製造工房でそんなふうに呼ばれていたかどうかは別にして、だいたいなんとなく何をする労働者か分かります。しかし、それ以外の「集め工」「積み上げ工」「磨き工」「搬入工」になると、なにをする労働者なのかよく分かりません。たとえば「集め工」「積み上げ工」は、なにを集め、なにを積み上げるのでしょうか。それに、「積み上げ工」と「磨き工」がなぜ「すなわち」でつながれているのかも分かりません。「搬入工」もなにを搬入するのか不明です。

この部分、原文では、こうなっています。ご覧になって分かるように、これらの職種名はすべて英語で表記されています。

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経済同友会、消費税17%を求める提言を発表

経済同友会が提言「2020年の日本創生」を発表。そのなかで、税制・社会保障の抜本改革として「消費税は2013年13%、2015年15%、2017年17%と段階的引き上げ」を求めている。

経済同友会「消費税17%に引き上げを」:日本経済新聞

経済同友会が発表した提言「2020年の日本創生」はこちら↓。
2020年の日本創生 〜若者が輝き、世界が期待する国へ〜

消費税増税以外にも、いろいろ言いたい放題、好きなことが書かれている。

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いちおう勉強もしてます… (^^;)

大津透『神話から歴史へ』天皇の歴史1(講談社)

大津透『神話から歴史へ』(講談社)

年末からコンサートと映画の記事ばかりで、遊んでばかりいると思われると困るので、まだ3分の2程度しか読んでいませんが、いま読んでいる本を紹介しておきます。

講談社の「天皇の歴史」(全10巻)の第1巻、大津透『神話から歴史へ』です。

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で、家族の問題は解決したのか?

クリスマス・ストーリー

正月明けですが、恵比寿ガーデンシネマでクリスマス映画を見てきました。主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。今年、御年67歳の大御所ですが、この映画でもばりばりの貫禄を発揮しております。(今年3本目)

公式サイト:クリスマス・ストーリー

ストーリーは公式サイトを参照していただくとして、字幕だったからか、それともオイラがぼんくらだからなのか、ともかくこのややこしい人間関係の展開に十分着いてゆくことができませんでした。(^^;)

それでも、家族のゴタゴタ、親子、兄弟、夫婦と、表向きは円満でもそれぞれ複雑な事情を抱えて、暮らしているということを、雰囲気たっぷりに描き出すあたりは、やっぱりフランス映画ならでは。

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年の初めの験直し…

アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル(2011年1月9日)

先日のアリス=紗良・オット×飯森範親×東響がいまいちすっきりしなかったので、今日、験直しとばかりに横浜まで足を伸ばして、アリス=紗良・オットさんのピアノ・リサイタルを聴いてきました。

  • メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 ニ短調 op.54
  • ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」
  • ショパン:3つのワルツ op.34 「華麗なる円舞曲」
  • ショパン:ワルツ 第6番 変イ長調 「子犬」 op.64-1
  • ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 op.64-2
  • ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 op.31

後半はCDも出ているショパンの作品ですが、前半はメンデルスゾーンにベートーヴェンと、ちょっとこれまでとはイメージが違う作品で、なかなかおもしろかったです。

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