福島県南相馬市と伊達市の合わせて4箇所で、放射線量が高い地点が発見されたというニュース。地元のみなさんにとってはほんとに心配で、深刻な事態です。
同時に、このウォールストリートジャーナル日本語版の記事で見逃せないのは、原発事故から3カ月たっているのに、政府が「放射能リスクがどの程度で、どう対処すべきか依然として苦慮している」と指摘されていること。国内で54基も原子炉を稼働させておきながら、日本の政府は放射能が漏れたときにどう対処するか、これまでまともに考えてこなかったし、事故から3カ月たっていまだに考えられていないということです。川上未映子さんが「デキる人はいないのですか」「プロフェッショナルがどこにもいない」と嘆くとおりなのです。
福島原発周辺、避難対象拡大を検討―「ホットスポット」4カ所発見で:WSJ日本版
福島原発周辺、避難対象拡大を検討?「ホットスポット」4カ所発見で
[ウォールストリートジャーナル日本語版 2011年 6月 10日 8:20 JST]
【東京】日本政府当局者は、最近の調査結果で、福島第1原発から遠く離れた場所でも放射線量が局所的に高い「ホットスポット」が4カ所新たに分かったため、避難対象地域の拡大を検討していると述べた。
検討対象となっている地域は、福島県南相馬市の1カ所と伊達市の3カ所で、合計180世帯以上に避難が指示される可能性がある。この地域は半径30キロ以内という既存の避難対象地域の圏外だが、米原子力規制委員会(NRC)が大震災発生直後に勧告した80キロ以内の地域の範囲内にある。
ホットスポットの存在と避難区域拡大の可能性が出てきたことは、3月11日の震災と原発事故から3カ月経ったにもかかわらず、放射能リスクがどの程度で、どう対処すべきか政府が依然として苦慮していることを示している。
ホットスポットの見つかった南相馬市の桜井勝延市長は、問題解決のため政府が全責任を負うとの決意を菅直人首相が示してほしいと述べ、残念ながら、住民を安心させるため現場にいるわれわれが自分で決断せざるを得なかったと語った。
政府当局者は、ホットスポットが新たに見つかったことは、福島第一原発に新たな問題が発生したということではないと述べた。放射線量は、事故発生直後の数日間で大気中に放出された放射線を降雨などにより吸収した土から出ている可能性が大きいという。
日本政府は年間累積放射線量が20ミリシーベルトを超えた場合、住民の避難を求める政策をとっている。5月25日の最新放射線監視データによれば、この水準を上回る4カ所のうち1カ所は南相馬市、他の3カ所は伊達市霊山町。霊山町は原発から50キロ離れており、180世帯が住んでいる。
伊達市の広報担当者は、状況を詳細に監視しており、最新データを分析していると語った。伊達市の3カ所のデータでは年間放射線量は推定20.0?20.8ミリシーベルト。
南相馬市の1カ所は同市原町区で、放射線量は23.8ミリシーベルト。桜井市長によると、住民はわずか数世帯という。
ところで、記事では10日に日本政府が発表したとなっていますが、内閣府の「東日本大震災関連情報」のページを見ても、首相官邸の「東日本大震災への対応」のページを見ても、文部科学省の「東日本大震災関連情報」を見ても、原子力安全・保安院の「東日本大震災の影響について」を見ても全然出てきません。いったいどこで発表されたのでしょうか?
6月9日の記者会見 ((この記者会見を読んでみると、あらためて、行政の縦割りというものがいまだに克服されないということがよく分かります。たとえば、3月16日以降のSPEEDIのデータについて、文部科学省は安全委員会が判断するものといっているがという東京新聞の記者の質問に、斑目委員長は、あれは文部科学省の予算で文科省の外郭団体が運用しているもので、安全委員会は関係ないと答えいていて、お互いに責任を押しつけ合っています。))では、原子力安全委員会の斑目委員長は、「安全委員会は助言機関」なので、「実際の行政組織としてどうするかというのは、原災本部の方で考えていると思う」と言うのみ。原子力安全委員会として「住民避難を考えるというのは過度な介入になる」という立場。法律的には原子力安全委員会は「助言機関」にすぎないので、たしかに斑目先生の言うとおり。原子力安全委員会は、形の上では推進機関から独立した規制機関ということになっているが、実際には権限がない、というのは、このことなんですね。それでも、「住民の避難を考えてはどうか」「住民の避難も考えなければならないから、早急に調査してはどうか」ぐらいの助言はできると思うのですが…。