富裕税導入の動き、イタリアとポルトガルだけかと思ったら、フランスでも、首相が50万ユーロ以上の所得にたいして「特別貢献税」3%を課税すると表明しておりました。
欧州各国、増税相次ぐ 財政再建努力示す狙いも
[日本経済新聞 2011/9/8 3:44]
【パリ=古谷茂久】信用不安で財政再建を迫られている欧州諸国で増税の動きが相次いでいる。イタリア政府は6日、付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)の引き上げを発表。フランスやポルトガルは富裕層に対する特別課税を打ち出した。9日に仏マルセイユで始まる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では先進国の財政問題が主要議題となる見通しで、市場に対し財政再建努力をアピールする狙いもある。
イタリア政府は6日、VATを現行の20%から21%に引き上げる方針を明らかにした。この増税で40億ユーロ(約4300億円)以上の税収増を見込んでいる。欧州連合(EU)などから金融支援を受けているギリシャやポルトガルも昨年、相次いでVAT税率を上げており、軒並み20%を超える。英国も今年1月、VATを20%まで引き上げた。
こうした増税の動きにイタリアの大手労働組合は6日にストライキを実施。ギリシャでもストがおきるなど国民は不満を表している。今のところ政権を追い込むほどではなく、政府は増税を断行し、理解を求める構えだ。
欧州各国ではVATの税率がもともと高いが、日本と異なり、食品など一部日用品や一般的なレストランでの税率は低く抑えられている。たとえばVATが19.6%のフランスでも食品などの税率は5.5%だ。
富裕層への新たな課税も潮流になっている。イタリア政府は50万ユーロ(約5400万円)を上回る所得に3%の特別税を課す方針を示した。仏フィヨン首相は8月24日、50万ユーロ以上の所得に対し来年から3%の「特別貢献税」を課税すると表明。税収は年間2億ユーロを見込んでいる。仏政府は高級ホテルの宿泊税の引き上げも検討している。
ポルトガルのガスパル財務相は8月31日、15万3千ユーロを超える所得について2.5%にあたる新税を導入すると発表した。また株式譲渡益課税を現行の20%から引き上げ21%にするとも表明している。
富裕層への課税の動きは米投資家のバフェット氏が8月中旬に高額所得者への増税を訴えたことで火が付いた。これに呼応するように、仏ロレアルの創業者一族で大富豪のベタンクール氏や仏エネルギー企業トタルのドマージュリー最高経営責任者(CEO)ら仏の富豪ら16人は連名で仏誌に寄稿し、政府に対し富裕層への増税を要請した。イタリアではフェラーリのモンテゼーモロ会長が伊紙に対し、高額所得者は政府の債務問題解決に貢献すべきだ、などと語った。各国政府の動きはこうした議論の風向きも背景にある。
だが現実には富裕層課税の歳入増への効果は限定的で、財政再建の象徴としての意味合いが強いとみられている。仏では来年の大統領選を控え、与党国民運動連合(UMP)と同党を支持する富裕層による人気取り政策との見方もある。
金融市場の標的となり財政再建策の相次ぐ導入を迫られている南欧諸国では、公務員人件費削減など一連の歳出削減策は十分な効果を上げておらず、増税に切り込まざるを得なくなっている。だが増税は景気を下押しする懸念があるほか、増税対象が広がれば国民の反発を招き、政府が支持を失うというリスクも残る。
きのう資本論学習会を国分寺で行ってた。いろんな人の意見のなかに、資本論はやはり150年前のもの、現代の投機活動、財政破綻(ソブリンリスク)、円高、BRICSなどの台頭まあいろいろ‥。どう分析するのか?いろいろ課題があるということで、現代の資本論が必要だということ。富裕層や大企業に増税というが、それらの層がどれくらい資産があり、労働者らの総資産はいくら、だから所得再分配はこのくらいにと言うデータが必要。(あまり単純化して大企業に儲けをはきださせろという共産党の演説は反感買う。)データのありかとか教えていただけませんか?
kameさん、こんにちは。
経済統計はいまはインターネットでいろいろと調べることができます。
国民経済の全般的な様子は、内閣府の経済社会総合研究所の「国民経済計算」(いわゆるGDP統計)から調べることができます。
大企業の売り上げや資産などは、財務省の法人企業統計で調べることができます。
富裕層の所得は、国税庁の申告所得税標本調査というので分かりますが、これはあくまで所得税の確定申告をおこなった人に限られます。株取引で大儲けしても、源泉分離課税を選択すれば、その儲けはこの資料には反映されません。
勤労世帯の所得水準などは、総務省の「家計調査」で調べることができます。
所得再配分については、厚生労働省の所得再配分調査があります。
ただし、富裕層や大企業にどれぐらいの資産があって、どれぐらい増税できるかというような、そのものズバリの統計資料というものは存在しません。いわゆる、企業の「内部留保」というものも、法人企業統計から計算して導き出しますが、会計上は利益剰余金、資本剰余金、引当金などの項目に分けられています。さらに、細かく見ると、どの項目を「内部留保」に含めるかは論者によってそれぞれ違っていたりしますので、数字を比較するときはご注意を。
また、資本主義の立場からすると「投機」と「投資」とを区別することができないので、投機資本が日本や世界中でどれくらいあるかという資料もありません。
どんな統計資料があって、それをどんなふうに活用できるかは、全労連が毎年発行している『国民春闘白書』(学習の友社)や、これは15年以上前の本になりますが、日本共産党経済政策委員会『新・日本経済への提言』(1994年、新日本出版社)などが参考になるのではないでしょうか。『資本論』を勉強されているのであれば、ぜひご自分で調べてみることをお薦めします。
国民所得理論を『資本論』の立場からどう考えたらよいかという問題については、川上則道著『マルクスに立ちケインズを知る――国民経済計算の世界と「資本論」』(新日本出版社)が参考になるかも知れません。
大企業の法人税引き上げでは産業空洞化、海外移転がおこるとする意見への反論は、難しいとおもいます。大企業の利潤がどれくらい必要か?内部留保も資本金にたいしてどのくらいの割合が必要なのか、よくわかりません。まったく私は勉強不足なんでわかりません。教えてください。
kameさんへ
法人企業税を上げたり、企業の内部留保を取り崩して賃上げや下請け単価の引き上げをするというのは、企業の儲けの本丸に手をつけるということです。ですから、財界・大資本は、階級的本能から本気で抵抗します。
「企業が海外に出て行ってしまう」といわれて、企業の利益を損ねない範囲でなんとかうまくいく数字をはじき出そうなどと考えたのでは、まんまんと財界・大資本の脅しにのってしまうことになります。
企業は、儲かるところに投資をするのです。日本から企業が出て行くとしたら、それは日本が儲からないからです。法人税が高いからでも、賃金が高いからでも、企業にたいする規制が強いからでも、もちろん、電力が不足しているからでもありません。ヨーロッパは、日本より法人税も高いし、企業にたいする規制も強いですが、日本企業はEUから撤退しようとはしません。それは、EU市場は儲かるからです。
いま問題なのは、大企業の過度な儲けを減らして、国民のふところを温めないかぎり、日本はいつまでたっても「儲かる市場」にはならないということ。大企業が海外へ出て行けば、日本はますます「儲からない市場」になるだけ。それでいいのか? と、真正面から堂々と主張することが肝心だと思います。