企業が海外投資するかどうかはそこで製品が売れるかどうかで決まる

山下満昭さんがTwitterで紹介されていたデータ。大もとをたどると、経済産業省の「海外事業活動基本調査」でした。

その中に、海外に進出している日本企業にたいして、投資を決定したさいのポイントについての質問があって、それにたいする回答をみると、トップは「現地の商品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」68.1%。対照的に、「税制、融資等の優遇措置がある」はわずか10.6%という結果が出ています。

私もかねがね、「資本は儲かるところへ出て行くもの。日本企業が海外に出て行くとしたら、それは日本がもうからないからだ」と言っていたのですが、なかなかそれを裏づけるデータがありませんでした。

ということで、経済産業省「海外事業活動基本調査」はこちら↓。

第40回海外事業活動基本調査結果概要―2009年度実績―|経済産業省

こちらがその元データ(「今回の調査のポイント」の13ページ)。このなかから3つまで選択して回答することになっています。

23図 投資決定のポイント

こちらがそれを表にしたもの。

投資決定のポイント
(%)
現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる 68.1
良質で安価な労働力が確保できる 26.2
納入先を含む、他の日系企業の進出実績がある 25.6
出先近隣三国で製品需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる 22.5
品質価格面で、日本への逆輸入が可能 11.3
税制、融資等の優遇措置がある 10.6
部品等の現地調達が容易 7.5
現地政府の産業育成、保護政策 6.7
社会資本整備が必要水準を満たしている 6.5
技術者の確保が容易 5.4
土地等の現地資本が安価 4.5
無回答 4.7

注) 2009年度に海外現地法人に新規投資または追加投資をおこなった本社企業を対象としたもの。選択肢の中から3項目まで選択して回答。回答企業数は911企業。

その次のデータ(時系列比較)を見ても、これが2009年度だけの現象ではないことが見て取れます。

24図 投資決定のポイントの上位4項目の時系列比較

つまり、日本企業がなぜ海外に投資するかといえば、結局は、そこの国で製品が売れるから。逆にいえば、日本では製品が売れず、儲からないからです。財界・大企業は、口を開けば、「日本は法人税が高い。このままだと海外移転も考えなければならない」といって法人税引き下げを要求しますが、実際には「税金が安い」という理由で海外投資する企業は10%程度しかないのです。

日本国内では、労働者の賃金を引き下げ、正社員を非正規雇用に切り替え、リストラをやって儲けをあげる。こんなことばかりやっていたら、日本はますます「儲からない市場」になってしまいます。本気で国民のふところを温めて、国内経済を活性化させないと、日本経済は空洞化するばかりです。

ということで、山下満昭さん、ありがとうございました。m(_’_)m

企業が海外投資するかどうかはそこで製品が売れるかどうかで決まる」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。
    以前トゥイっておられた日経版『資本論』、本当に発売するんですね。
    http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P48780.html
    しかし「マルクスの生前の1867年4月に刊行された第1巻を4分冊に分けて刊行する」とありますが、「67年4月に刊行」を強調しているところをみると、初版なのでしょうか。生前には価値形態論などの叙述を改善して第2版やフランス語版も刊行したのになぜ…という感じがします。

  2. かわうそさん、こんばんは。

    ご指摘の日経BPのページの最後に書かれているように、底本になっているのはヴェルケ版のようです。ただし、一部フランス語版を取り入れるとか、傍点を振るとか、小見出しをつけるとか、多少手を加えるようですが。

    傍点ということでいえば、『資本論』は初版の時は、けっこうたくさん傍点(原文は隔字体)があったのですが、出版社が面倒がって、第2版では大幅に削除されてしまいました。

    フランス語版との関係ということでいうと、もともとマルクスはアメリカ語版が計画されたときに、ドイツ語第2版とフランス語版とを対照して、フランス語版から取り入れるべき個所を詳細に指摘したメモを残しています。いま、新しい編集で『資本論』を出版するとしたら、このメモにのっとって編集された「幻のドイツ語第3版」の日本語訳だと思うのですが…。

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