中山元訳『資本論』第1巻第1分冊(日経BP)について呟きました。
- 日経BP中山元訳『資本論』第1分冊を購入。エンゲルス編集第4版を底本にするとあるが、実際はディーツ版が定本。原注・訳注が章・節の終わりにまとめてあるので本文が読みやすい。従来の訳書は段落ごとに注が挟んであって、文章の繋がりが寸断され読みにくかった。 posted at 21:54:02
- 日経BP中山元訳『資本論』。大胆な翻訳で、なるほどと思うところもあるが、原文から余りに離れすぎているように思われるところも散見される。価値の対象性の語が仏語版に従って価値の実態と訳されているが、これは価値の現実性と訳すべきものだろう。 posted at 23:32:15
- 日経BP中山元訳『資本論』。剰余価値を増殖価値と訳し変えられている。訳語の再検討はいろいろあってよいと思うが、増殖価値では「増殖する価値」なのか「増殖した価値」なのかわからないのではないだろうか。剰余価値といえば価値の増分であることは明らかだ。 posted at 23:38:01
呟かなかったことで付言すれば、訳者による小見出しが、見開きで1〜2個と、かなりの頻度で入っています。それによって読みやすくなっている部分もありますが、なぜここにこの見出しが?と疑問に思われるものもあって、功罪相半ばという感じです。
あと、補足。底本については、Diez版のことも書かれているので、Diez版を元にしていることを隠しているわけではありません。しかし、エンゲルス第4版の翻訳であると書かれていることも事実。Diez版は、エンゲルス版の再版ではなく、Diez社によって編集されたもの。誤植の訂正にとどまらず、たとえば、英語、フランス語などでおこなわれている脚注の引用がドイツ語に翻訳されているほか、一部本文の校訂もおこなわれています。細かいことのようですが、やっぱり何を底本にしたかというのは大事な問題ですので。
GAKUさん こんにちわ。
貴重な書評、ありがとうございます。
私は、岡崎次郎氏の訳にて読んでいますので、底本が気になります。岡崎訳の底本もDIETZ版なので、エンゲルス編集4版のデッドコピー版、Google Booksの参照が必要なようですね。ありがとうございました。
barabaraさん、こんにちは。
DIETZ版とエンゲルス編集第4版の違いは些細なものです。英語、フランス語での引用がドイツ語に訳されているのも、大部分はとくに意味の違いはありません。ただ、ごく一部、元の英語、仏語から訳した方が分かりやすいと思われる箇所があるぐらいです。
DIETZ版編集部がエンゲルス編集第4版を校訂した箇所については、岡崎訳などではきちんと指摘されているので、校訂してあっても問題はありません。ところが、中山訳では、こうした箇所のDIETZ版編集注が無視されているので、読者には、エンゲルス版が校訂されていることがわからないのです(たとえば、第3章の注(107)とつけられているところ。マルクス、エンゲルスが関わったすべての版で「反比例」となっている箇所が、DIETZ版では「正比例」に直されている。従来の翻訳ではちゃんと指摘があるが、中山氏はDIETZ版のまま訳しながらその点の指摘はありません)。
いずれにしても、DIETZ版で翻訳作業を進めながら、エンゲルス編集第4版を底本にしたと名乗ることは、出版に携わる者の態度として、正しくありません。
まさか日経が「資本論」とは驚きました。小生は「資本論」を岡崎訳、長谷部訳(読みにくいけど)またはDietz版を読みましたけど。今回の日経の企画は「光文社」の企画をそのまま経済学の古典に特化した感じがします。とにかく、読みやすさ、大胆な翻訳が売りなのでしょう。けど、こうやって「資本論」が読まれることは良いことだと思います。移動中の新幹線などで気軽に読めそうですしね。
売れればなんでも良いというのが、資本主義のルールですから。(^_^)
ただ、日経グループ企業をして、『資本論』は売れそうだと思わせたことのほうが面白いと思います。長谷部訳などに比べると、厳密さは格段に落ちます。さらに訳注はマルクスに距離を置いた感じのコメントになっていて、学問・研究、あるいは生きた力にするのために資本論を読もうというのには不向きでしょう。しかし、初めて資本論を読んでみたという人が広がるとすれば、それはそれで役割を果たすことになるのではないでしょうか。