沖縄・宜野湾市の普天間爆音訴訟原告団が、メア駐沖米総領事の「退島」を決議しました。
「退島」つまり「沖縄から出て行け」ということですが、なぜそんな決議があげられたのかと思って調べてみたら、宜野湾市の伊波市長が「米軍普天間飛行場は米軍内部の安全基準に違反する」と指摘したのにたいして、7月11日に、メア総領事が「滑走路の近くの基地外に、なぜ、宜野湾市が建設を許しているのか疑問だ」、つまり基地の近くに住宅建築を認める宜野湾市が悪いと言っていたことが分かりました。
しかし、アメリカ国内では空軍基地は砂漠のど真ん中などにあって、人口密集地には設けられないことになっています。だから、伊波市長の言うとおり、アメリカ国内なら普天間基地は法律違反。それにもかかわらず、沖縄だと基地を置いて平気というのは、要するに、アメリカがいまだに沖縄や日本を占領地と同じようにみなしている、ということ。メア氏は、外交官の任務は「ウソをつかないことだ」とも言っていますが、なるほど、占領者の本音を正直に語ったということでしょう。
「メア氏は退島を」 普天間爆音訴訟原告団、要求決議を可決(琉球新報)
“無理解”メア氏 「近くに建設許す宜野湾市に疑問」(琉球新報)
メア発言 こんな米総領事、要らない(琉球新報)
「メア氏は退島を」 普天間爆音訴訟原告団、要求決議を可決
[琉球新報 2008年8月9日]【宜野湾】普天間爆音訴訟原告団(島田善次団長)は8日、宜野湾市立中央公民館で2008年度総会を開き「滑走路近くの基地外になぜ、宜野湾市が(住宅の)建設を許しているのか疑問」などと発言したケビン・メア在沖米総領事の沖縄からの「退島」を要求する決議を全会一致で可決した。 「退島要求決議」では「去る大戦で、米軍は沖縄上陸後、住民の土地を略奪し、飛行場を造った。重大な国際法違反だ」と在沖米軍基地の形成過程を指摘した。
その上で「裁判官は、国の『危険への接近』論を排除し、普天間基地の異常な運用を違法と断罪した」と普天間爆音訴訟一審判決を引用し、「判決を承知の上での数々の反県民的な言動に怒りをもって抗議し、メア総領事は即刻、沖縄から退島するよう要求する」と求めている。
決議のあて先は米国務長官、在日米国大使館、在沖米総領事館。
島田団長は「われわれ県民の思いを否定するような言動は容認できない。特に訴えを起こしているわれわれが声を上げていかなければいけない」と決議に込めた意味を語った。新垣勉弁護団長は「裁判所が普天間飛行場で爆音を初めて違法と断罪したことは大きな意味を持つ。W値(うるささ指数)75以上の地域に住む人は誰でも原告になれる。原告に参加するよう多くの人に呼び掛けてほしい」と原告人数の拡大を呼び掛けた。
総会では、訪米を終えた伊波洋一宜野湾市長が要請行動の報告を行い、08年度活動方針や総会宣言などが可決された。(当銘寿夫)
“無理解”メア氏 「近くに建設許す宜野湾市に疑問」
[琉球新報 2008年7月12日]ケビン・メア在沖米総領事は11日の定例記者会見で、伊波洋一宜野湾市長が米軍普天間飛行場は米軍内部の安全基準に違反すると指摘しているのに対し「基地外の建設を制御する安全基準で、逆に滑走路の近くの基地外になぜ、宜野湾市が建設を許しているのかという疑問がある」と答えた。強制的に接収され、建設された米軍基地の成り立ちを踏まえない配慮を欠いた11日の「メア発言」に、伊波市長や宜野湾市民からは「無理解」「(住民とは)逆の発想」と憤りが噴出した。
米軍普天間飛行場は、米軍内部の安全基準に違反しているとする伊波市長の指摘に「逆に滑走路の近くの基地外に、なぜ、宜野湾市が建設を許しているのか疑問」と反論したケビン・メア在沖米総領事。
基地外の建物建設について「米政府は日本の基地外の建設に何も権限がない。日本政府と県と市がコントロールしているので、米側は何もできない。普天間の滑走路の南の進入灯の近くにタワーができているが、これも安全の面で米側からはよくない。でも米側からは何もできない」と日本側の責任であることを強調した。
普天間移設で仲井真弘多知事が日米両政府が危険だとして移設合意したとしていることに「特別に危険だとは思っていない。周りの住民に騒音問題と危険性に懸念があるとよく認識して移設する方がいいと決めた」と説明し、危険なために移転するとの認識ではないことを強調した。
県議会で辺野古への移設に関連して反対決議の動きがあることには「野党が過半数になったことは米軍再編に影響があるとは思っていない」と述べた。普天間代替施設の沖合移動要求や、現飛行場の危険性除去について「日本政府から提案はない」と説明した。
普天間飛行場の危険性除去については「合同委員会で常に各基地の運用を協議する場で、安全性をいつも調整している。特別に普天間に関する協議会を開く提案はない。一番安全なように努力する必要は分かっているし、今までもやっている」と取り組みを強調した。
社説:メア発言 こんな米総領事、要らない
[琉球新報 2008年7月13日]米軍占領下の沖縄には高等弁務官という軍人のポストがあり、琉球列島米国民政府のトップとして絶大な権力を振るっていた。「沖縄の自治は神話にすぎない」。こう発言して県民の反発を買っていたのが、政治・経済面でさまざまな強権を行使したキャラウェイ高等弁務官だ。
半世紀近くも前の話を持ち出したのは、ほかでもない。最近、かの「悪代官」もかくや、と思わせるような人物が現れている。時代錯誤的な言動が目につくケビン・メア在沖米総領事のことだ。
米軍普天間飛行場の危険性に関して、総領事は11日「滑走路近くの基地外になぜ、宜野湾市が(住宅)建設を許しているのか疑問がある」と、従来の持論を繰り返した。つまり「基地の近くに後から勝手に住宅を造る住民と、それを許可している宜野湾市が悪い(だから騒音があろうが危険があろうが、米軍に責任はない)」などと、こう言いたいのだろう。
爆音訴訟で日本政府が主張している「危険への接近」理論と同じ理屈だ。普天間飛行場が米軍内部の安全基準に違反しているとする伊波洋一宜野湾市長の指摘にも反論したつもりかもしれない。何と独善的な考え方なのか。普天間基地がどういう経緯でできたのか知らないわけでもあるまい。単なる無知なのか。知っていながら知らないふりをしているのか。
宜野湾市伊佐浜では戦後、米軍がブルドーザーと武装米兵による銃剣で住民を脅し追放した。抵抗する住民を暴力で退けて家屋や農地を破壊、その後にキャンプ瑞慶覧を強引に建設した。先祖伝来の土地を追われた住民は、うち10家族がブラジルへの移住を余儀なくされた。何もない原野に基地が造られたわけではない。普天間飛行場も似たようなものだ。戦後、住民が避難先から戻ると、すでに基地が建設されていた。
総領事が責任逃れの根拠とする「危険への接近」論。6月の普天間爆音訴訟の判決でも「沖縄本島において居住地を選択する幅が限られており、普天間飛行場周辺の歴史的事情が地元回帰意識を強いものとしている」と明確に退けられている。土地を収奪された歴史的な背景を理由に、基地周辺に住宅を建設した住民に責任はないとしているのだ。
あらためて考えてみたい。総領事(館)の役割とは何なのか。赴任地の住民との友好親善が第1の目的と理解する。いたずらに挑発を繰り返し、地元との摩擦を大きくすることではないはずだ。
「外交官の基本はうそをつかないこと」。メア氏はあるインタビューで述べている。だが無知を基礎にした正直さほど始末に負えないものもない。平成のキャラウェイ気取りはやめてもらいたい。