ますますショスタコーヴィチに興味がわいてきました

音楽之友社:作曲家◎人と作品シリーズ/千葉潤『ショスタコーヴィチ』

音楽之友社からでている「作曲家◎人と作品シリーズ」の、千葉潤『ショスタコーヴィチ』を読み終えました。出版されたのは昨年4月。ショスタコーヴィチの評伝は、ヴォルコフの『証言』などもあって、これまでも読んでみたいとは思いつつ、結局、まとまったものはこれが初めて。あらためて自分の不勉強を痛感。

で、読み終わったところでの一番の感想は、これは“ショスタコーヴィチを歴史の中で聴いてみる”ことが必要だなぁというもの。交響曲は交響曲、弦楽四重奏曲は弦楽四重奏曲というジャンル別の聴き方でなく、年代を追って、交響曲と弦楽四重奏曲、その他の作品の横の繋がりを考えながら、聴いてみないと、本当にショスタコーヴィチの作品は分からないのではないか、ということを強く感じました。これまで、あまり弦楽四重奏曲は好きではなかったのですが、少しじっくり聴いてみようかなという気持ちになりました。

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いわゆる1つのど展開 山崎圭一『リオのビーチから経済学』

山崎圭一『リオのビーチから経済学』(新日本出版社)

ラテン続きということで、新藤通弘『革命のベネズエラ紀行』のあと、山崎圭一・横浜国大教授の『リオのビーチから経済学 市場万能主義との決別』(新日本出版社)を読みました。

タイトルから、ブラジル経済を分析した本、あるいは開発経済学の立場からの新自由主義経済学批判という印象を持たれるかも知れませんが、読んでみると、いま経済学を勉強するなら、これぐらいのことを視野に入れて考えてほしいという著者の熱いメッセージ、という感じでした。経済学というと、数式や理論が飛び交うけれど、そういう数式や理論が経済学なのではない。それぞれの地域で、どんな人たちがどんなふうに働き、どんな生活を送っているか、そういう具体的なことを調べ、考えるのが経済学なのだ、ということを、発展途上国の貧困の問題やブラジルの実態を織り交ぜながら、くり返しくり返し強調されています。

1962年生まれと言うから、大学の先生としてはまだまだ若手の著者が、大学の講義で、いまどきの学生に向かって、口角泡を飛ばしながらど展開している、そんな光景が目に浮かびそうです。(^_^;)

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ただいま革命中! 新藤通弘『革命のベネズエラ紀行』

新藤通弘『革命のベネズエラ紀行』(新日本出版社)

新藤通弘氏の『革命のベネズエラ紀行』(新日本出版社)を読み終えました。読み終わった最初の感想は、ともかくおもしろい、ということ。

ベネズエラ革命が進めつつあるさまざまな社会改革については、以前、駐日ベネズエラ大使イシカワ氏の講演を聞いた話を紹介したことがありますが、本書では、そうした紹介にとどまらず、いったいベネズエラで何が進行しているのか、度重なる旧体制派の妨害をどうして打ち破ることができたのかが、著者の、ラテンの人たちに負けないぐらいの情熱を込めて明らかにされています。

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浅野栄一『ケインズ一般理論入門』

浅野栄一著『ケインズ一般理論入門』(有斐閣新書)

古い本ですが、浅野栄一『ケインズ一般理論入門』(有斐閣新書、1976年刊)を読み終えました。伊東光晴氏のケインズ理解と重なるところもたくさんあるのですが、同じことを主張していても、伊東氏と角度が違っていたりして、理解が深まるところがたくさんありました。

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読み終わりました(2) 伊東光晴『ケインズ』

伊東光晴『ケインズ』(講談社学術文庫)

伊東光晴氏の新著『現代に生きるケインズ』(岩波新書)に続けて読んでいた『ケインズ』(講談社学術文庫)ですが、こっちも読み終わりました。

う〜む、やっぱりちゃんと読まんとあかんなぁ〜、というのが一番の感想。『現代に生きるケインズ』で論じられている問題が、いろいろ、もっと詳しく論じられています。アクセントの置き方などでちょっと変わっているところもありますが(たとえばカーンの波及的乗数効果論にたいする評価は、新著に比べて、それほどシビアじゃなかったり、など)。その代わり、流動性選好利子論や投資決定論などの説明は、ずっと詳しくて、よく分かります。

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読み終わりました 伊東光晴『現代に生きるケインズ』

伊東光晴『現代に生きるケインズ』(岩波新書)

とりあえず読み終わりました。

本書で、伊東光晴氏が批判しているのは次のような論点です。

  • 新古典派が貯蓄を利子率の関数とみなすこと
  • 実質賃金率によって労働供給量が決まるとする新古典派の労働市場分析
  • 貨幣数量説(ヒックスの「IS-LM理論」)
  • カーン流の波及的「乗数効果」理論
  • 収穫逓減を前提とした新古典派の均衡価格論

全部理解できたわけではありませんが、それでもなるほどと思うところがいっぱい。置塩信雄先生は、ケインズ理論の方が新古典派よりも資本主義経済の動きをよりリアルに反映していると指摘されていますが、本書を読むと“なるほど”と思います。

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さっそく読んでます 伊東光晴『現代に生きるケインズ』

伊東光晴『現代に生きるケインズ』(岩波新書)

先週末発売されたばかりの伊東光晴『現代に生きるケインズ』(岩波新書)ですが、さっそく読み始めて、まあだいたい半分ぐらいまで読み終わりました。

スタンスとしては、サブタイトルに書かれているとおり、「モラル・サイエンスとしての経済理論」という側面がぐっと押し出されています。理論的には、ハロッド流の貯蓄曲線、カーン流の「波及的乗数理論」、それにヒックスの「IS-LM理論」ではない「一般理論」という感じです。新古典派総合で近経を勉強した世代としては、なかなかショッキングな中味かも知れません。

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最近買った本 4・5月編

またまた前回から1ヵ月以上立ってしまいました。時々整理しておかないと、ホントに何を買ったのか、買った本人にもわからなくなるのですから、困ったもんです…。(^_^;)

まずは4、5月刊の新刊書。

  • 藤原彰『天皇の軍隊と日中戦争』(大月書店、5月刊)
  • 佐道明広『戦後政治と自衛隊』(吉川弘文館、5月刊)
  • 新藤宗幸『財政投融資』(東京大学出版会、5月刊)
  • 伊東光晴『現代に生きるケインズ』(岩波新書、5月刊)
  • 斎藤貴男『ルポ 改憲潮流』(岩波新書、5月刊)
  • 柴田三千雄『フランス史10講』(岩波新書、5月刊)
  • 半藤一利・保坂正康・中西輝政・戸高一成・福田和也・加藤陽子『あの戦争になぜ負けたのか』(文春新書、5月刊)
  • 北村洋基『岐路に立つ日本経済』(大月書店、4月刊)
  • 重田澄男『マルクスの資本主義』(桜井書店、4月刊)
  • 中西俊裕『中東和平 歴史との葛藤』(日本経済新聞社、4月刊)
  • 長谷部恭男『憲法とは何か』(岩波新書、4月刊)
  • 末木文美士『日本宗教史』(岩波新書、4月刊)
  • 神田秀樹『会社法入門』(岩波新書、4月刊)
  • 柄谷行人『世界共和国へ 資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書、4月刊)
  • 伊藤宣広『現代経済学の誕生 ケンブリッジ学派の系譜』(中公新書、4月刊)
  • 酒井邦嘉『科学者という仕事』(中公新書、4月刊)
  • 小林道夫『デカルト入門』(ちくま新書、4月刊)
  • 的場昭弘『ネオ共産主義』(光文社新書、4月刊)

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置塩信雄『現代資本主義と経済学』を読み返す

置塩信雄『現代資本主義と経済妣??(岩波書店)

「新自由主義」批判との関係で、あらためて、置塩信雄先生のケインズ経済学にたいする批判を勉強し直そうと、先週から『現代資本主義と経済学』(岩波書店、1986年)を読み返していたのですが、今朝ようやく読み終えました。

これは、『蓄積論』や『マルクス経済学II』で論じられていたことだと思うのですが、置塩氏は、正常に剰余価値を実現するためには、資本家の投資需要が不可欠であることを解明されています。要するに、C+V+MのうちMを資本家の個人的消費だけですべて消費することは不可能だということです。

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姿勢を正さずにはいられない 藤原彰『天皇の軍隊と日中戦争』

藤原彰『天皇の軍隊と日中戦争』(大月書店)

3年前に亡くなられた藤原彰先生の論文・追悼文集が出ました。

内容は3部に別れていて、1つめは、藤原先生の晩年の日中戦争にかんする論文集。2つめは、藤原先生が自らの研究をふり返った論文2つ。そして最後に、藤原先生を偲ぶ荒井信一氏ほかの追悼文。そのなかには、その後急逝された江口圭一氏の一文も含まれています。

今日、ようやく手に入れて、さっそく回想の2論文と追悼文を読み終えましたが、あらためて現代史研究を開拓してきたというにふさわしい先生の業績の大きさに姿勢を正さずにはいられません。

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古い本ですが… 四野宮三郎『J・S・ミル』

四野宮三郎『経済妨??と現代<3> J・S・ミル』(日本経済新聞社)

重田澄男氏が『マルクスの資本主義』のなかで、マルクスの「ロンドン・ノート」がJ・S・ミルの『経済学原理』の抜粋から始まっていることを知り、あらためてJ・S・ミルを勉強してみようかと思いました。

といっても、いきなり『経済学原理』(1848年)を読むのはちょっとアレなので(岩波文庫でも5分冊あるぐらいだから)、少し昔の本ですが、四野宮三郎著『経済学者と現代<3> J・S・ミル』(日本経済新聞社、1977年)を古本で手に入れて読んでみました。

J・S・ミルは、学説史的には「折衷的」と位置づけられますが、だからこそ、マルクスが経済学を学ぶ手始めに、『経済学原理』を読んだのかも知れません。『経済学原理』の出版年が『共産党宣言』と同じだというのも、なにやら偶然だけとは言えないような気もします。
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重田澄男『マルクスの資本主義』

重田澄男『マルクスの資本主義』(桜井書店)

重田澄男氏の新刊『マルクスの資本主義』(桜井書店)を読み終えました。

マルクスは、資本主義を表わす術語として、『哲学の貧困』(1847年)では、フランス語で、la production bourgeoise(ブルジョア的生産)と表記。『共産党宣言』(1848年)や『賃労働と資本』(1849年)あるいは『経済学批判』(1859年)では、ドイツ語でdie brügerliche Produktionweise(ブルジョア的生産様式)と表現していました。これが、『資本論』ではdie kapitalistische Produktionweiseという用語になっていることはよく知られているとおりです。

本書は、マルクスの資本主義概念が、なぜ、このような「ブルジョア的生産様式」という用語から「資本主義的生産様式」という用語に生まれ変わらなければならなかったか、その謎解きしようとしたものです。そのことを明らかにするために、著者は、『ロンドン・ノート』(1850?53年)や『経済学批判要綱』(『1857?58年草稿』)をたんねんに調べており、ほんらいの謎解き以外にもいろいろと興味深い論点が取り上げられていると思いました。
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ちょいはまってます

スー・グラフトン『???のC』(ハヤカワ文庫)

僕の好きな、タフな女性が活躍する小説です。主人公キンジー・ミルホーンは、32歳、元警官、2度の離婚経験あり。挫けないところが気に入ってます。

といっても、原作のシリーズは1982年に始まったので、携帯電話は出てこないし、パソコンも登場しません。主人公は、公衆電話を探し、タイプライターで報告書を打ち込みます。それに、派手なアクションシーンもないし、殺人事件が起こっても最近の小説のような猟奇的なものではありません。ドクター・スカーペッタのように、FBIも登場しないし、組織の中での足の引っ張り合いというのも登場しません。その代わり、脇役で、元気なおばあちゃんたちが登場し、活躍します。
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いまだにこんな男がいるとは… 金子雅臣『壊れる男たち』

金子雅臣『壊れる男たち』

金子雅臣『壊れる男たち――セクハラはなぜ繰り返されるのか』(岩波新書)を読んでみました。

三四郎日記のyojiro5さんが、筆坂本は「この本をあわせて読むと分かりやすいかも知れません」、と薦めておられますが、なるほどこの本を読んでみると、筆坂氏がただただセクハラについて開き直っているだけだということがよく分かります。

「仕事の話がある」と呼び出しておきながら、「俺のことが嫌いなのか」「もう、子どもじゃないんだから」と車の中でキスを迫る。「大人の付き合いも給料のうち」と言って、社長室に呼び出してスカートの中に手を入れる。派遣社員に「ミニスカートをはいてこい」と言い、セクハラで訴えられると、「相手は、派遣の人たちですよ」「正社員にしてやるといえばしっぽを振ってやってくるような連中」と平然と言ってのける。採用面接のときから目をつけ、食事に誘って、酒を飲ませ、酔わせたところで強引にホテルに連れ込む、等々…。

本書で取り上げられているのは、セクハラといっても、刑事事件にもなりかねないような深刻な事例ばかり。にもかかわらず、くだんの男性諸氏は、訴えられると、「誘ってきた」「合意の上」「相手も分かっていたはず」などと、勝手な(というか、まったく自分に都合のいい)申し立てをして、少しも悪びれない。「カラオケで、ちょっと腰に手をやったくらいで、なんで国会議員を辞めさせられなきゃいけなかったのか…」と開き直るのも、まったく同じことだというのがよく分かります。

なんで、こいつらは、こんなに分かってないんだ?! と、同性ながら呆れてしまう話ばかりです。
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やっぱり黄昏? 岡田暁生『西洋音楽史』

岡田暁生『西洋音楽史』(???新書)

西洋音楽史を新書1冊にまとめたお手軽な本――と思って読み始めたのですが、読んでしまってから、「しまったなぁ〜」と後悔。と言っても、中味がハズレだということではなく、中味が大当たりだからこそ「しまったなぁ〜」と思うのです。

まえがきで、著者は、いわゆる「クラシック音楽」は、この本が扱う「西洋芸術音楽」と同じではないと断っています。つまり、西洋芸術音楽は1000年以上の歴史を持つが、そのうち、18世紀(バロック後期)から20世紀初頭までのわずか200年間ほどの音楽にすぎないのです。実際、本書では、9世紀、フランク王国の誕生あたりから叙述が始まっていますが、こうなると、堀米庸三先生じゃないけれど、「ヨーロッパとは何か」という根源的な問題にまで行き着いてしまいそうです。

で、こんなふうに言われてしまうと、ふだん古典派だのロマン派だの、まして後期ロマン派だのと細かく区別だてして、あっちがいい、こっちがいいのと言い合っているのが、とてもスケールの小さい話に思えてしまいます。だから、「しまったなぁ〜」というのです。(^_^;)

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尾木直樹『思春期の危機をどう見るか』

尾木直樹『思春期の危機をどう見るか』

教育評論家の尾木直樹さんの新刊『思春期の危機をどう見るか』(岩波新書)について。教育問題についていろいろ論じられていますが、インターネットの普及が思春期の子どもたちの人格形成にどういう影響を与えるのか、本格的に研究する必要があると強調されているので、そのことに限って、紹介しておきたいと思います。

尾木さんは、「思春期の危機がなぜ深刻化するのか」「成長への条件を奪われる現代の思春期」と論を進めたうえで、「時代を生きる力――新たな2つの課題」の1つとして、「ネット教育の確立」が急がれると提起しています。

メールやネットの問題には2つの側面があると氏は指摘。1つは、出会い系サイトやフィッシング、振り込め詐欺、ネットオークションなどに絡む直接的なトラブルで、子どもたちがその被害者・加害者にならないようにするという課題。もう1つは、「メールやネットに遺存することによって、子どもたちの成長にどのような影響を与えているのか」という問題です(131ページ)。
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結局買ってしまった 長谷川毅『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』

長谷川毅『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』

出版当初から気にはなっていたのですが、結局、買ってしまいました。まだ読み始めたばかりですが、このあたりはほとんど勉強したことがないので、関連文献も含め、ちょっと勉強してみたいと思います。

著者は、スターリンが対日参戦の条件として、サハリンの「返還」とクリル諸島(千島列島)の「引き渡し」を上げたこと、そのさい「返還」と「引き渡し」という区別がきちんとなされていたことに注目しています。この点は、スターリンの覇権主義の問題として重要なポイントなので、それを国際政治史としてどう扱われているのか、興味があります。

日本国内の動きとしては、海軍少将の高木惣吉に注目しています。そして、高木惣吉を含め、支配層の中の「終戦派」において、「国体護持」と「皇室の安泰」とを区別する動きがあったということに注目しています。これは、従来からあった論点なんでしょうか? しかし、確かに資料には2つの言葉が並んで出てきますが、だからといって、両者を区別して考えていたということになるのかどうか。むしろ、マッカーサーの占領政策からの“後知恵”ではないかという気もするのですが…。

しかし、とりあえず結論を急がず、読んでみたいと思います。

【書誌情報】書名:暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏/著者:長谷川毅/出版社:中央公論新社/出版年月:2006年2月/定価:本体3200円+税/ISBN4-12-003704-5

最上敏樹『いま平和とは』

最上敏樹『いま平和とは』

国際法の最上敏樹氏の最新著『いま平和とは』(岩波新書)を読みました。

読み終えていちばんの感想は、とにかく読みやすいこと。考えるべきテーマは微妙で、多様なのですが、著者は、それらを“一刀両断”にするのでなく、問題の多様性をできるだけ丁寧にとりあげ、微妙な問題にきちんとつき合いながら論じてゆきます。にもかかわらず、読みやすいというのがこの本の特徴だと思います。

取り上げられている論点は、本当にたくさんあります。国連とは何か、国連による集団安全保障とは何かという問題(第2話)、国際人道法と国際刑事裁判(第3話)、そもそも「平和」とはなにか(第4話)、人道を守るための武力介入は許されるのか(第5話)といった問題が、具体的な問題として、具体的に論じられています。最後の第8話と第9話では、「和解」の問題が、世界の問題として(第8話)、そして日本の課題として(第9話)取り上げられています。それは、いかに世界に向かって人びとを、そして自分自身を開いていくかという課題。これは思想の課題であると同時に、実践の課題でもある訳で、まさに「新しい戦争」の時代に、分断と対立の理由があらゆるところに吹き出しているときに、平和とは何かを「あきらめずに考える」ことの意味が、じわ?っと伝わってきます。

【書誌情報】書名:いま平和とは――人権と人道をめぐる9話/著者:最上敏樹/出版社:岩波書店(岩波新書、新赤版1000)/出版年:2006年3月/定価:本体740円+税/ISBN4-00-431000-8
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最近買った本 3月編

また1ヵ月以上立ってしまいました。仕事が忙しいのと、仕事の関係でどちらかというと“理論”の方に関心が移っているので、ちょっとペースが落ちてます。

  • 愛敬浩二『改憲問題』(ちくま新書、4月刊)
  • 向寿一『マネタリー・エコノミクス 国際経済の金融理論』(岩波新書、4月刊)
  • 小林孝輔・芹沢斉編『基本法コンメンタール 憲法<第5版>』(日本評論社、4月刊)
  • 『岩波講座 アジア・太平洋戦争<5> 戦場の諸相』(岩波書店、3月刊)
  • 『ポリティーク<11> 特集「改憲問題の新局面」』(旬報社、3月刊)
  • 大沢真知子『ワークライフバランス社会へ』(岩波書店、3月刊)
  • 今井伸英『私たちの“共産党宣言”』(本の泉社、3月刊)
  • 笠原十九司・吉田裕編『現代歴史学と南京事件』(柏書房、3月刊)
  • 東京新聞社会部編『あの戦争を伝えたい』(岩波書店、3月刊)
  • 尾木直樹『思春期の危機をどう見るか』(岩波新書、3月刊)
  • 最上敏樹『いま平和とは 人権と人道をめぐる9話』(岩波新書、3月刊)
  • 米沢富美子『人物で語る物理入門<下>』(岩波新書、3月刊)
  • 小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』(中公新書、3月刊)
  • 薩摩秀登『物語 チェコの歴史』(中公新書、3月刊)

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覆水盆に返らず

今日は午前中、“五十肩”の診療のため病院へ。

待っている間に、佐藤勝彦著『アインシュタインが考えた宇宙』(実業之日本社)を読み終える。前半の一般相対性理論と量子力学の説明は難しかったけれど、後半の宇宙論は多少は見当がつくので、ずっと読みやすい。ただ相変わらず、素粒子の分類と「世代」の話になると、よく分からない。とくに「世代」というのがさっぱりイメージできない。

さて診察が終わって外へ出てみると、外は本降りの雨…。

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