オーケストラは忙しい 日フィル定演/マーラー:交響曲第2番「復活」

日フィル第580回定期演奏会

今日は、日フィルの定演で、サントリーへ。

指揮者ハルトムート・ヘンヒェンはドレスデン生まれ、ネザーランド歌劇場の元音楽監督(現在は主席客演指揮者)。2002年から、ドレスデン音楽祭の監督を務めている。日フィルとの共演は1987年以来とのことで、もちろん僕は演奏を聴くのは初めてです。

プログラムは、マーラー:交響曲第2番“復活”。もともと、いやでも盛り上がる曲ですが、今日の演奏は、大変情熱的で、日フィルの持ち味がふんだんに発揮されたといってよいのではないでしょうか。また、ソリストの二人がよかったと思います。アルトの池田香織さんは、プログラムの紹介によれば、慶応大学法学部の出身とのことですが、“しっかりと歌が届いてくる”という感じで、「復活」の歌がアルトで歌われるということに意味があるんだということが自然と納得されるような存在感がありました。

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ククーシュカ ラップランドの妖精

ククーシュカ ラップランドの妖精

土曜日、町田でケーテ・コルビッツ展を見たあと、渋谷で映画「ククーシュカ ラップランドの妖精」を見てきました。(今年6本目)

舞台は、第2次世界大戦末期のラップランド。ドイツと同盟を結んだフィンランド軍はソ連軍と戦っていたが、戦況不利で撤退を余儀なくされる。しかし、狙撃兵ヴェイッコは、ドイツ軍服を着せられ、鉄鎖で大岩につながれて置き去りにされる。そこにソ連軍がやってくるが、大尉イワンは秘密警察に逮捕され、軍法会議へと連行されるが、途中で車がソ連軍機の誤爆を受け、彼だけがからくも生き延びる。サーミ族の女性アンニは、そんなイワンを見つけ自宅に連れ帰り介抱する。そこに、鎖をはずすのに成功したヴェイッコがやってくるが、ヴェイッコとイワンとアンニはたがいに言葉がまったく通じなかった…。

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よく分かりませんでした… エルンスト・バルラハ展

エルンスト・バルラハ展(図録)

昨日のケーテ・コルヴィッツ展に続けて、今日は、上野へ行って、エルンスト・バルラハ展を見てきました。

エルンスト・バルラハは、1870年生まれのドイツ人の彫刻家。いわゆるドイツ表現主義の代表的作家です。しかし、結論からいうと、ドイツ表現主義って何?という感じで、よく分かりませんでした。(^_^;)

というのも、今回の展示作品の大部分は、個人的な作品というか、非常に宗教的な作品で、1920年代後半になってつくられるようになった、第1次世界大戦の犠牲者の追悼碑的な作品は4点のみで、なぜ、どういうきっかけでバルラハが、このような反戦的、厭戦的なモニュメントをつくるようになったのかという、一番肝心な問題が分からなかったからです。もちろん、これら犠牲者追悼碑の諸作品から伝わってくるものは圧倒的なのですが、それだけに、なぜバルラハがこのような作品の作成にすすんでいったのかを知りたかったというのが正直な感想です。
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ケーテ・コルビッツ展

ケーテ・コルヴィッツ展(図録)

今日は、昼から町田の国際版画美術館に出かけて、ケーテ・コルビッツ展を見てきました。

ケーテ・コルビッツは1867年生まれのドイツの女性版画家です。歴史研究者には、石母田正氏『歴史と民族の発見』(東京大学出版会、1952年)の装丁でお馴染ですが、美術展で実物を見るのは初めて。やっぱり見逃すわけにはゆきません。

で、第一印象は“小さい!”というもの。とくに彼女が初めて広く認められることなった「織工の蜂起」なんて、A4ほどもないちっちゃな作品です。事実上最後の作品である「種を粉に挽いてはならない」でも、せいぜい画用紙程度。作品の圧倒的な存在感から、勝手にもっと大きなものを想像していました。
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中年独身男の悲哀…? 「ブロークン・フラワーズ」

「ブャ??クン・フラワーズ」チラシ

仕事も終わったので、今日から僕の連休。夕方から“映画でも…”と新宿まで出かけてみましたが、やっぱり連休中、新宿の街は人だかり。映画館は満席でした。(^_^;) (今年5本目)

コンピュータで一財産を築いた主人公ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)は、一緒に暮らしていたシェリー(ジュリー・デルピー)にふられてしまう。そこに、ピンクの封筒に入った手紙が届く。手紙には「あなたには息子がいて、もうすぐ19歳になる」と書かれていた。俺に息子? 気乗りのしないドンは、隣家の友人ウィンストン(ジェフリー・ライト)に促されて、20年前に付き合っていた4人の女性を訪ねてまわる旅に出かける…。

というわけで、ドンの訪ねる元カノを演じるのが、シャロン・ストーン(ローラ役)、フランセス・コンロイ(ドーラ役)、ジェシカ・ラング(カルメン・マーコウ博士役)、ティルダ・スウィントン(ペニー役)という豪華な女優陣。といっても、シャロン・ストーンも、もはや「氷の微笑」のあの輝きはありませんけどね。(^_^;)

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買いました ゲルギエフ指揮:プロコフィエフ交響曲全集

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団:プロコフィエフ交響曲全集

ジャケットが暑苦しいとは思いつつも、買ってしまいました。(^_^;) 

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団:プロコフィエフ交響曲全集(CD4枚組)。

いままでプロコフィエフの交響曲は、演奏会で聴いたことはありましたが、あんまり気にしたことはなく、CDも持ってませんでした。ということで、28日、新宿のタワレコで購入。

さっそく聴きたおしておりますが、いやいやなかなか。交響曲第7番の出だしなんて、ショスタコーヴィチ張りの音を響かせてくれてますねぇ。う〜ん、プロコフィエフがこんな重厚な作曲家だなんて知らなかった…。(^_^;)←なにせ、プロコフィエフというと、学校の音楽の時間に聴いた「ピーターと狼」のイメージが強烈すぎるので。

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やっぱり黄昏? 岡田暁生『西洋音楽史』

岡田暁生『西洋音楽史』(???新書)

西洋音楽史を新書1冊にまとめたお手軽な本――と思って読み始めたのですが、読んでしまってから、「しまったなぁ〜」と後悔。と言っても、中味がハズレだということではなく、中味が大当たりだからこそ「しまったなぁ〜」と思うのです。

まえがきで、著者は、いわゆる「クラシック音楽」は、この本が扱う「西洋芸術音楽」と同じではないと断っています。つまり、西洋芸術音楽は1000年以上の歴史を持つが、そのうち、18世紀(バロック後期)から20世紀初頭までのわずか200年間ほどの音楽にすぎないのです。実際、本書では、9世紀、フランク王国の誕生あたりから叙述が始まっていますが、こうなると、堀米庸三先生じゃないけれど、「ヨーロッパとは何か」という根源的な問題にまで行き着いてしまいそうです。

で、こんなふうに言われてしまうと、ふだん古典派だのロマン派だの、まして後期ロマン派だのと細かく区別だてして、あっちがいい、こっちがいいのと言い合っているのが、とてもスケールの小さい話に思えてしまいます。だから、「しまったなぁ〜」というのです。(^_^;)

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読売日響定期演奏会 バルシャイ指揮、マーラー交響曲第10番(バルシャイ版)

誥??日響・バルシャイ指揮

先週の読売日響&バルシャイ指揮:ショスタコーヴィチ第5番に続いて、今日は、同じくバルシャイ指揮で、バルシャイ版のマーラー交響曲第10番を聴いてきました。

 マーラー:交響曲第10番(ルドルフ・バルシャイによる2000年作・補筆完成版)

もともとマーラーの交響曲第10番は、全5楽章のうち、生前にほぼ完成していたのは第1楽章のみ。第2楽章以下は、マーラーの残した自筆譜に、いろいろ補筆して「完成」させたもので、ちまたで一番流布しているのは、イギリスの音楽学者デリック・クックによるもの(クック版)。プログラムノーツによれば、バルシャイ版も、クック版をベースとして大幅に手を加えたものであるとのこと。

そういうこともあって、もともと10番は、なんとなく“まとまり感”に欠けるところがあって、手許にあるインバル指揮、フランクフルト放送交響楽団による演奏(マーラー交響曲全集のなかの1枚。これはクック1976年版による演奏)も、どうもよく分からない。マーラーらしくないというか、統一的なイメージがわかないというか、全体構造が見えないというか、ともかく居心地が悪いのです。

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フランス映画の悦楽 「美しき運命の傷跡」

エマニュエル・ベアール(「美しき運命の傷跡」)

日曜日、若杉&東フィルのコンサートのあと、同じBunkamuraのル・シネマで、フランス映画「美しき運命の傷跡」を見てきました。(今年4本目)

主演は、「彼女たちの時間」「8人の女たち」「恍惚」のエマニュエル・ベアール。彼女の演ずるところの長女ソフィは、旦那の浮気に嫉妬し、煩悶する美しく艶めかしい妻…。次女セリーヌ(カリン・ヴィアール)は、体が不自由になり口の聞けない母親のもとへ一人通い、世話をする。そこに魅力的な若い男性が現れるが、男性恐怖症の彼女はその男性との関係を上手くすすめられない。大学教授と不倫関係にあった三女のアンヌ(マリー・ジラン)は突然別れを告げられる…。

映画は、どうしてここまで“男”とうまくいかないのか――三者三様の悩める姿を描いてゆきます。その背景には、子どもの頃の両親の離婚と、そのときの“事故”が原因であったことが明らかにされますが……。

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若杉&東フィル2連荘!

豪勢なことに、土日と若杉弘&東京フィルを2日連続で堪能して参りました。(^_^;)

まず土曜日は、サントリーホールで第720回定期演奏会。プログラムは

  • プフィッツナー:歌劇『パレストリーナ』より 3つの前奏曲
  • ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 (ノヴァーク版)

今日は、渋谷オーチャードホールで、第721回定期演奏会。こちらは、職場の先輩から譲っていただいたもの。

  • シューベルト:劇音楽『ロザムンデ』序曲
  • マーラー:『こどもの不思議な角笛』より
    ――ラインの伝説/魚に説教するパドヴァの聖アントニウス/高い知性を讃える/少年鼓手/死せる鼓手
  • ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 op.72

若杉さんの指揮は、指揮台でぴんと背筋を伸ばされた姿勢そのままに、実に端正、すみずみまで神経の行き届いた演奏です。昨日のブルックナー7番も、ちょっとゆっくり目のスピードで始まり、最後までテンポを加速させることもなく、きっちり奏でてゆくという感じでした。東京フィルの弦も、透明度の高い音を響かせていて、僕好み。ブルックナーの、天上から降ってくるような音の響きを堪能させていただきました。

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もう止めたら?

りそな銀行が、サッカーくじを運営する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」に、訴訟も辞さない構えで、未払いの委託料144億円を督促。

もともとサッカーくじは、余剰金からスポーツ振興費をひねり出すことを考えたものでしたが、売り上げの低迷で、スポーツ振興費の捻出どころか、委託料さえ支払えない状況に。このさい、サッカーくじは止めるしかないのでは?

りそな銀怒った、委託料144億円支払え(日刊スポーツ)
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読響/バルシャイ指揮:ショスタコーヴィチ交響曲第5番他

誥??日響 バルシャイ指揮/ショスタコーヴィチ交響曲第5番他

今日は、読売日響第477回名曲シリーズ。バルシャイ指揮のショスタコーヴィチを聴くためにサントリーホールへ。

  • ショスタコーヴィチ(バルシャイ編曲):室内交響曲 op.83a
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47

ショスタコーヴィチの交響曲第5番を生で聴くのは、これで何度目でしょうか。今日の演奏は、そのなかでも、ぐっと胸に響いてくるものでした。ショスタコーヴィチが、いわゆる「プラウダ」批判の後、どんな心持ちでこの曲を作曲したかは、もうすでに何度も書かれ、語られてきたことですが、今日、この曲を聴きながら、あらためて、ショスタコーヴィチの深い悲しみと、しかしけっして諦めないという気持ちを思い浮かべました。それは、僕の個人的な解釈なのかも知れませんが…。

読響の演奏は、とくに弦の音が、弱音部まで透明度の高い音を響かせていたのが良かったと思いました。やっぱりこの曲は、こうでないと! バルシャイの指揮は、ラストもテンポ抑え目で、全体を通して、作品の深い思いを響かせるような感じでした。

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これっていいかも… ヨッフム/ブルックナー交響曲第2番

ヨッフム指揮/ブルックナー:交響曲第2番/ドレスデン国立管弦楽団

この間の、デプリースト&都響のブルックナー2番にいまいち満足できなかったこともあって、あらためて手許にあるCDをいろいろ聴いてみたのですが、そのなかで、おっ!と思ったのが、オイゲン・ヨッフム指揮、ドレスデン国立管弦楽団の2番。ブルックナー交響曲全集の中の1枚です。

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都響定期Aシリーズ/ブルックナー交響曲第9番他

都響4月定期Aシリーズ

先週の都響&デプリーストのブルックナー交響曲第2番にいまいち満足できなかった分、期待を込めて上野の文化会館へ。4階正面の2列目、ほぼど真ん中のシートで、舞台のオケは遙か下に見えますが、音はきれいに上がってきます。

プログラムは以下の通り。

  • アルバン・ベルク:管弦楽のための3つの小品 op.6
  • ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調

さてメインのブル9ですが、第1楽章の出だしがあっさりしていたので、一瞬、どうなるのか不安になったのですが、その後はたっぷりとブルックナー節を聴かせていただきました。といっても、テンポは速め?で、全体としては、あまり深みにはまらず、要所要所でしっかり“らしさ”を聴かせるという感じでした。

途中、ホルンやクラリネットが、ちょっと音がひっくり返りそうになったところはご愛敬。(^_^;) それより気になったのは、弦の音。きれいに響かせる曲じゃないというのは分かりますが、それにしても、ちょっとぎゃっぎゃっと弾きすぎるように思われたのですが、どうでしょう?
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行ってみたい美術展

最近、美術館にはとんと御無沙汰していますが、やっぱりこれだけは忘れずに見に行っておきたいです。

エルンスト・バルラハ「苦行者」(1925年、ハンブルク、エルンスト・バルラハ・ハウス蔵)ケーテ・コルヴィッツ「寡婦I」(連作『戦争』第4葉、1921/22年、ifaドイツ対外文化交流研究所蔵

エルンスト・バルラハ展(東京芸術大学美術館)
ケーテ・コルヴィッツ展(町田市国際版画美術館)
イサム・ノグチ 世界とつながる彫刻展(横浜美術館)

ケーテ・コルヴィッツの版画は、歴史研究者にとっては、石母田正『歴史における民族の発見』の表装でよく知られたもの。でも、実物は見たことがないので、ぜひ見ておきたいです。(^_^;)

今月のコンサート(2) 新日本フィル第400回定期演奏会

コンサート3連荘の最後は、新日本フィルの定期演奏会。直前のプログラム変更で、インターネット上でもいろんな“憶測”が流れています。

もともとのプログラムは、ツィンマーマン「1楽章の交響曲」、シューマン「ヴァイオリン協奏曲」、ヒンデミット「交響曲『画家マティス』」の3曲。それが、シューマンの曲を残して、ブラームス「悲劇的序曲」、同「交響曲第4番」に。個人的には、ヒンデミットは大好きな作曲家で、アルミンクが「画家マティス」をどうふるか期待していただけに、なかなか納得のいかない変更です。

当日のプレトークでも、アルミンク氏がちらとふれておられましたが、シューマンのヴァイオリン協奏曲は、作曲家の生前には演奏されることなく、初演は1937年、ゲッペルスの指示によって、ユダヤ人であるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲に代えて演奏されたという曰く付きの曲です。それに、ナチス時代に「退廃芸術」の烙印を押されたヒンデミットと、そんなナチス時代をのりこえたあと1950年代に登場したツィンマーマンの曲となれば、なるほど「信」というテーマにぴったりのプログラムだと思います。

プログラム・ノーツも、「新日本フィルの今シーズンのテーマたる『信』を語ろうとすると、最も微妙な言い回しにならざるをえない相手が、シューマンやブラームスだろう」(渡辺和氏)と、まことに微妙な書き方がされていました。(^_^;)
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今月のコンサート(1) 都響&日フィル

出張とその後のバタバタ仕事が一段落して、昨日、今日と(じつは明日も)コンサート三昧な状況となっています。(^_^;)

月刊都響4月号

昨日は、都響の定期演奏会。デプリースト指揮でモーツァルト交響曲第29番とブルックナー交響曲第2番のプログラム。

デプリーストのブルックナーは、今回が初めて。ショスタコーヴィチがよかっただけに、ブルックナーはどんなものかと期待をふくらませて聞きに行ってきました。しかしながら、第2番は、そこかしこにそれらしい展開がでてくるのですが、それがことごとくあっさり途中で次に行ってしまうので、ブルックナーらしい荘厳さが感じられません。ということで、デプリーストの指揮が悪いわけでも、都響の演奏が悪いわけでもありませんが、何となく中途半端な感じのまま終わってしまいました。(^_^;)

デプリーストのブルックナーがどうなるかは、来週月曜日の上野での第9番に期待することにしたいと思います。

で、今日は、日フィルの定期で、ベルリオーズの幻想交響曲と「レリオ」の2本立てという意欲的なプログラム。「レリオ」は、主人公レリオのモノローグ+音楽ですすむ作品です。そのため、滅多に演奏される機会がなく、僕も、生はもちろん、CDなどでも聞いたことがありませんでした。

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難しい作品… 映画「マンダレイ」

マンダレイ(プログラム表紙)

デンマークの監督ラース・フォン・トリアーが撮った最新作。ニコール・キッドマンの主演で話題になった「ドッグヴィル」(2003年)の続編です。(ことし3本目の映画)

ドッグヴィルを父とともに脱出したグレースは、アメリカ南部アラバマ州で、農園「マンダレイ」の前を通りかかる。そこでは、黒人たちが、白人の一家族によって奴隷として支配されていた。時代は1933年、すでに奴隷解放から70年たっているにもかかわらず。ドッグヴィルで「力の行使」を学んだグレースは、父の手下たちの「力」を使って、黒人たちを解放する。グレースの発案で、農園は黒人たちの「共同体」とされ、白人家族はそこで雇われて働くことになった。しかし、黒人たちは、グレースの行いに困惑の表情を見せる……。

前作同様、セットはほとんど簡略化され、屋敷の門構えやポイントになる窓、室内のベッドやテーブルを除くと、建物も農園も、みな舞台の上に引かれた線で示されるだけ。それでも、ドアをノックする音や開け閉めする音がおぎなわれているのと、ナレーションが多くなっているので、前作より少しは分かりやすくなっているかも知れません。

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東京フィル第719回定期演奏会 シューベルト交響曲第4番、チャイコフスキー交響曲第6番他

3・19集会のあと、銀座パレードを我慢してぬけだしたのは、久しぶりの東京フィルハーモニーのコンサートにいくためでした。

プログラムは、以下の通り。

  • シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D.417 “悲劇的”
  • ホフマイスター:ヴィオラ協奏曲 ニ長調
  • — 休憩 —
  • チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 op.74 “悲愴”

指揮は、ヴィオラ奏者でもあるユーリー・バシュメット。1曲目が「悲劇的」で3曲目が「悲愴」と、ちょいと暗めのプログラムですが、2曲目では、指揮者のバシュメット自身がヴィオラ・ソロをするという、いわゆる“弾き振り”を楽しませていただきました。
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