Google Booksでは「児童労働調査委員会報告書」も見つかる件

マルクスが『資本論』で労働実態を明らかにするために、「工場監督官報告書」や「児童労働調査委員会報告書」などの公的報告書を縦横無尽に活用したことは、よく知られているが、そうした報告書も、Google Booksを検索すると見つかる。いくつか紹介しよう。

まずこれは、1842年に発表された児童労働調査委員会の第1次報告書(鉱山編)。エンゲルスが『イギリスにおける労働者階級の状態』で活用しているものだ。もちろん、マルクスも『資本論』で利用している。

Children’s Employment Commission. First Report of the Commissioners: Mines, London, 1842

で、こちらが1843年に発表された同委員会の第2次報告書(通商・産業編)。こちらは他の報告書と合わせて活字になっている。1843年2月2日から8月24日までの会期の「各種委員会報告書集 Reports from Commissioners」の第18号に収められている。当時のイギリスでは、議会各種委員会の報告書は単体ではなく、こんなふうにまとめて発行されていたようだ。

Children’s Employment Commission. Second Report of the Commissioners: Trades and Manufacutures, London, 1843

こちらは、1862年に設置された児童労働調査委員会の報告書。この1862年の児童労働調査委員会の報告書をマルクスは『資本論』で一番活用している。同委員会の報告書は第1次から第5次まで、それに第6次の最終報告書が出ているが、いまのところ第1次報告書から第5次報告書までしか見つかっていない。

第1次報告書(1863年)
Children’s Employment Commission: First Report of Commissioners, London, 1863

第2次・第3次報告書(1864年)
Children’s Employment Commission: Second Report of Commissioners, London, 1864

第4次報告書(1865年)
Children’s Employment Commission: Fourth Report of Commissioners, London, 1865

第5次報告書(1866年)
Children’s Employment Commission: Fifth Report of Commissioners, London, 1866

なお、↑の報告書はいずれも Reports of the Commissioners(『各種委員会報告書集』)に収められたものなんで、ほかの報告書も一緒になっているので、そこは了解していただきたい。

ところで、『資本論』にはいろいろな「児童労働調査委員会」とか「工場調査委員会」が出てくる。児童労働の禁止や工場法の制定が問題になるたびに、政府にあるいは議会に委員会が設置されたからだ。以下の記事では、それを整理してあるので参考まで。

3つの工場調査委員会
4つめの「調査委員会」

英FT紙が社説「国家主義的傾向強める安倍首相」

英フィナンシャル・タイムズ紙が「国家主義的傾向強める安倍首相」という社説を掲載した。日本経済新聞電子版にその翻訳が掲載されている。

[FT]国家主義的傾向強める安倍首相(社説) :日本経済新聞電子版

日本の「集団的自衛権」行使賛成、憲法9条改正賛成の立場からのものではあるが、「国民の多くが受け身で、意見を主張しない日本では、世論を操作しようとする安倍氏の政策は危険だ」「同氏〔安倍首相〕の政策は日本自身を脅かしかねない」「中国の脅威が口実にされ、日本の開かれた社会がたたかれればこれ以上の悲劇はない」など厳しい批判だ。

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こんなもんが届いた〜!

今日、国際小包で、こんなもんが届きました。

共産主義者同盟資料集

Der Bund der Kommunisten – Dokumente und Materialien 『共産主義者同盟資料集』全3巻です。1970年に出版されたもので、服部文男先生の研究などですでによく知られた資料です。

で、届いたものを見ると、ラベルが貼ってあり、明らかに何処かの図書館か資料の廃棄本。それで、中を開けて見たら、こんな蔵印が押してありました。

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英フィナンシャルタイムズ紙、麻生発言を批判

麻生発言にかんして、日本経済新聞8月5日付が、英経済紙フィナンシャル・タイムズの論評を翻訳転載した。

FT紙の論評は、麻生発言は「与党自民党を牛耳る文化的保守派が修正主義の夢を捨てていないことを思い出させる」と指摘するとともに、自民党の憲法改正案については「新憲法を得た方が日本のためになるかどうかは議論の余地がある」とも述べて批判をにじませている。

さらに面白いのは、「矛盾しているようだが、現行憲法の最大の受益者に数えられるのは自民党自身かもしれない」と述べていること。すなわち、「憲法が多くのことをするのを許さないため」に、自民党は、「大半の有権者より右寄りの思想を持つ」にもかかわらず、「国民は自民党が軍隊(自衛隊)や自分たちの権利についてどんなことをするか心配せずに同党に票を投じることができた」と述べて、「新憲法を提言すること」は「日本と自民党にとっては、よりリスクが高いものかもしれない」と皮肉っている。

[FT]ナチス発言に見える自民党の憲法改正の野望:日本経済新聞

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BBCのマルクス特集番組が見れます

過日ご紹介した、イギリスBBCで放送された番組「マスター・オブ・マネー」の第3回マルクス篇の動画がYouTubeに乗っかっていました。

僕には、ネイティブの英語は早口でさっぱり分かりませんが、興味関心にある方はどうぞ。(^_^;)

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英女王「どうして危機が起こることを誰もわからなかったの?」

「朝日新聞」2012年10月11日付

「朝日新聞」2012年10月11日付

10月11日付の朝日新聞「カオスの深淵」の2面に載っていた話。この記事自体は原発問題の記事なんですが、そのなかで、こんなエピソードが紹介されていました。

2008年11月、イギリスのエリザベス女王が、ロンドン大学経済政治学院の開所式で、リーマン・ショックについて何気なく「どうして、危機が起こることを誰も分からなかったのですか?」と質問したことに、並み居る経済学者たちがこたえられなかった、というのです。

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イギリスBBCがテレビ番組でマルクスを取り上げるらしい

イギリスのBBCが、Masters of Moneyという3回連続番組で、第1回のケインズ、第2回のハイエクに続いて、第3回として、マルクスを取り上げるようです。番組放送は10月1日午後9時から(もちろん現地時間)。

BBC Two – Masters of Money, Marx, The World According To Marx

タイトルは「世界はマルクスに従って」といった意味でしょうか。

BBCのテレビ番組はネット上のBBC iPlayersでも視聴できるようになっていますが、イギリス国内からのアクセスに限られているようで、日本からは見ることができません。残念…。

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英ガーディアン紙 ”マルクスは銀行家のためにセラピーを提供などしない”

イギリスのガーディアン紙のサイトに、2月2日付で、こんな論評が掲載されておりました。題して、「カール・マルクスは銀行家のためにセラピーを提供などしない」

経済危機で誰もがマルクスを取り上げるようになったが、マルクスは決して慈悲深い救世主ではないし、彼が書いたものの実践的な意味はあまり知られてはいない、というお話です。

Karl Marx is never going to provide therapy for bankers | Jason Barker | guardian.co.uk

ということで、にわか仕込みのヘッポコ訳です。(一部脱文を追加。さらに全体に手を入れしました。2/8午前)

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映画「サラの鍵」

映画「サラの鍵」

昨日、フランス映画「サラの鍵」を見てきました。1942年7月のフランスにおけるユダヤ人一斉検挙をテーマにした作品です。

パリで暮らすアメリカ人女性記者ジュリアは、夫の祖父母が暮らしていたアパルトマンに引っ越す準備をしていたが、ふとしたきっかけで、その部屋に祖父母が越してきたのが1942年8月だったことを知る。そこから、この部屋に秘められた歴史に踏み込んでゆきます。

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イタリア新政権、富裕層への課税強化

イタリア新政権が富裕層にたいする課税を強化することに。

そのニュースの中に出てきたデータですが、イタリアでは、1%の富裕層が全資産の13%を保有しているそうです。それだけで資産は1兆ユーロほど。ここに0.5%課税するというのだから、税収は50億ユーロほどになる計算です。

日本で同じことをやったら、どれぐらいの税収が確保できるんでしょうねえ。

伊、追加財政再建策急ぐ 富裕層増税など検討 来月5日の閣議決定目指す:日本経済新聞

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IMFが1兆ドルの追加資金枠設定へ

ヨーロッパの信用不安について。今朝の「日本経済新聞」には、IMFが1兆ドル規模の追加資金枠を設定する案が浮上されている、という記事が出ていました。

1兆ドルといえば約77兆円、日本の政府予算の8割に相当する巨大な額。3年前のリーマン・ショックのときが3200億ドルだったので、いかに今回の危機が深刻かということがわかります。

他方で、「毎日新聞」にはこんな記事↓。

ドイツ:国債の入札不調…市場に動揺:毎日新聞

ソブリン危機に、ついにドイツ国債まで嫌われ始めたのか? という問題もありますが、この記事のなかでエコノミストが指摘しているように「年末を乗り切るための現金を持っていたい」というのが一番の理由でしょう。しかし、それだけ短期資金の流動性が悪くなっているということなんでしょうか。

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ユーロ圏の将来はどうなるか?

ギリシャ危機に始まったユーロ圏の金融不安は、イタリア、スペインにとどまらずフランスにまで広がりそうな状況。

そんななかで、こんな論評も流れている。政治家たちはギリシャのユーロ圏離脱はありえないというし、実際、ギリシャがユーロ離脱を余儀なくされたとすれば、次から次へと「弱い国」が狙い撃ちされるのは必至。したがって、政治的には「ありえない」のだが、はたしてそれですむかどうか。

焦点:「秩序ある再編」探るユーロ首脳、ギリシャ離脱賛成も | Reuters

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英労働党・影の内閣ビジネス・企業大臣 「歴史の教訓がほしいならマルクスに立ち返る必要がある」

イギリスBBC放送で、こんどはこんなニュースが流れています。労働党・影の内閣のビジネス・企業大臣労働大臣?のエドウィナ・ハート女史が「歴史の教訓がほしいなら、マルクスとエンゲルスに立ち返る必要がある」と発言したそうです。

BBC News – Business Minister Edwina Hart’s capitalist ‘regret’

詳しくは、これからヘッポコ訳にとりかかってみます。(^_^;)

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そろそろイタリアの番ですか…ね

ギリシャのパパンドレウ首相が辞任して一段落?したかと思えば、次はイタリアが危ないといわれだした。しかし、フィンランド首相が言っているみたいに、イタリアは公的資金で支援するにはでかすぎる(もちろん、デフォルトしたときにもでかすぎるのだが)。

止まらぬ金融界のデレバレッジ、本邦勢も欧州国債を処分売り | Reuters
「危険水域」のイタリア、生き残る唯一の道はECBの支援 | Reuters
イタリア、救済するには大き過ぎる=フィンランド首相 | ビジネスニュース | Reuters

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BBC “マルクスは資本主義については正しかった”

the revolution of capitalism - bbc 3 sep. 2011

ちょいと古い話題ですが、イギリスのBBC放送のA Point of View(視点)という番組で、9月3日に、The revolution of capitalism(資本主義の革命)と題してマルクスの資本主義論が取り上げられました。

中身は、「カール・マルクスは共産主義については間違っていたが、資本主義の大部分については正しかった」、資本主義は自分自身の社会的基盤である中産階級を破壊してきた、というもの。共産主義についはともかく、資本主義論としてはおもしろい議論です。

BBC News – A Point of View: The revolution of capitalism

というわけでヘッポコ訳をしてみました。

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文字どおりの一喜一憂?

ギリシャ国債の50%減額などで合意して、これでとりあえずなんとかなる…と報道されたのが、わずか2日前。昨日は、ニューヨークで3ヵ月ぶりの株価回復と言われたのですが、早くもリスク回避の動きが始まっているというニュース。

米国債(28日):反発、リスク志向後退 – 欧州危機への楽観薄れ(1) – Bloomberg

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ギリシャ 反対デモ2日目

緊縮政策の押しつけに反対するギリシャの大抗議デモ。2日目も、引き続き大規模なストライキとともに国会周辺はデモ隊が埋め尽くしているらしい。

ところで、先ほどの日本テレビ ニュースZEROによれば、デモ隊のなかで、整然とした抗議行動をおこなうべきだと主張する労働組合などと、昨日、火焔瓶などを投げて「暴徒化」した一部学生?との小競り合いが起こっているらしい。大事な動きかもしれない。

ギリシャ 緊縮策反対デモ続く:NHKニュース

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一番の主役はおばあちゃん!

あしたのパスタはアルデンテ

あしたのパスタはアルデンテ

今日は、お昼から渋谷ハチ公前での原発ゼロの署名行動に参加。最初は木陰にいたんですが、時間と共に日陰が移動して、結局、かんかん照りの炎天下に1時間……、暑かった〜

で、そのあと、銀座シネスイッチで、イタリア映画「あしたのパスタはアルデンテ」を見てきました。(今年10本目)

あらすじはこんな感じ。

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財政再建するなら富裕層への増税で

ヨーロッパで、最富豪層のなかから「われわれに増税を」の声が起こっていることは前に紹介したとおりですが、イタリア政府は、財政再建に向けて富裕税の導入を決めた。当初は、50万ユーロ(約5400万円)以上の所得に3%の特別課税といわれていたが、30万ユーロ(約3240万円)以上に引き下げられたというニュースも流れている。

おもしろいのは、ベルルスコーニ政権が、いったんは富裕税の導入を断念したのだが、そのことが伝わると国債価格が急落!! 結局、市場に不信感を突きつけられる形で、政府は、富裕層への増税に踏み切らざるをえなくなったのだ。

いまや「財政再建は富裕層への増税で」が市場の声。野田さんも、それに耳を傾けてはいかが?

イタリア、財政再建へ富裕層向け課税:日本経済新聞
G7、欧州危機封じ焦点…9日から仏で開催:読売新聞
NY市場 イタリア、富裕税の課税最低限を30万ユーロに引き下げへ:Klugクルーク

富裕税はイタリアだけではない。ポルトガルも、年間利益が150万ユーロ(約1億6000万円)以上の企業に3%、富裕層には2.5%の付加税を課すことを決定した。

ポルトガル:法人税・富裕層増税の計画発表――赤字削減目標達成に向け – Bloomberg.co.jp

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「われわれに増税を」

昨日、日刊「しんぶん赤旗」を読もう(6)で紹介した、欧米の大富豪たちが、「われわれに増税を」と主張しているというニュース。関連する記事を集めてみました。

1本目は、ドイツの富豪グループの動きを報じた英紙ガーディアンの記事。2本目は、投資家バフェット氏がニューヨークタイムズ紙に寄稿した「超富豪を甘やかすのをやめよ」。3本目は、イタリア・フェラーリの社長が「金持ちはもっと税金を払うべきだ」と主張したという記事のようです。

これからぼちぼち訳してみたいと思います。

Tax us more, say wealthy Europeans | The Guardian
Stop Coddling the Super-Rich – NYTimes.com
Montezemolo : I am rich it is right that you pay more | Ferrari Ferrari

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