新刊紹介の原稿をアップしました

恩師・佐々木潤之介先生の遺著『江戸時代論』(吉川弘文館)と中村政則先生の『戦後史』(岩波新書)の紹介原稿をアップしました。

中村先生の『戦後史』について、前にコメントしたときは、とりあえず気になったところをあれこれ書きましたが、あらためて読み直してみて、全体的評価抜きでのつまみ食い的コメントはまったく正しくないと思いました。

同書で中村先生は、戦後史をみていく視点として、3つの軸を提起していると思います。「憲法」「アジア諸国との関係」「日米関係(というか、安保条約に代表される対米従属的関係)」の3つです。そのことは、とくに最終章で、9・11以後を「新しい戦争」の時代ととらえ、テロ特措法など自衛隊海外派兵がさらに進んだこと、それとの関連で憲法9条の改悪の動きが進行していること、そして小泉首相の靖国神社参拝問題にみられるようなアジア諸国との関係悪化にたいする批判として明確に提示されているのですが、こんど読み返してみて、実は、戦後の始まりのところから、そういう視点で書かれていることにようやく気がついたような次第です。

いまの時期に、憲法や対アジア関係、対米従属という問題を基軸にすえて著作をあらわされたというのは、やっぱり、さすが中村政則先生だと思います。中村先生、出来の悪い学生ですんませんでした。m(_’_)m

田原総一朗『日本の戦争』

田原総一朗『日本の戦争』(小???文庫)

本書は、田原総一朗氏が1998年7月から2000年10月まで、『SAPIO』に連載したもの。親本は2000年11月に小学館から出ています。御本人が「全くの素人として、5年にわたって、まるで迷路を歩くように、太平洋戦争勃発までの軌跡を辿りました」(文庫版あとがき)と書かれているように、いろいろな研究者に取材などもしながら、調べたり考えたりしながら書かれたもののようです(5年というのは、連載以前に何年か取材をしてきたということでしょう)。

目次は、こんな感じ。

第1章 富国強兵――「強兵」はいつから「富国」に優先されたか
第2章 和魂洋才――大和魂はそもそも「もののあはれを知る心」だった
第3章 自由民権――なぜ明治の日本から「自由」が消えていったか
第4章 帝国主義――「日清・日露戦争」「日韓併合」は「侵略」だったのか
第5章 昭和維新――暴走したのは本当に「軍」だけだったか
第6章 五族協和――「日本の軍事力でアジアを解放」は本気だった?
第7章 八紘一宇――日本を「大東亜戦争」に引きずり込んだのは誰か

たとえば第4章では、田原氏は、「伊藤博文は韓国を併合する意図はなかった」という想定で書いていますが、しかし、それを裏付ける資料は見つからないと書かざるをえなかったように、この想定は破綻していると言えます。

それでも、全体として、僕は、わりと真摯に歴史を調べ、書いたものだと思いました。ただ、独立を奪われた側、侵略を受けた側がどう思ったか、どう感じたかという問題がほとんど出てこず、したがって、先の戦争は、もっぱら日本はどうしてあんな無謀な戦争につっこんでしまったのか?という角度から取り上げあられることになっています。

しかし、その中でも、田原氏が、あの戦争は「失敗」だったことを明確にして、その立場で一貫されていることは、注目に値すると思います。
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最近買った本

ちょっとテーマ的に本を買い集めました。

まず日本史関係。いまさらこんな本で勉強する、なんていう筈がありません。そうではなく、逆に、こういう人たちが一体何を問題にしているのか、それを調べてみようということです。

  • 田原総一朗『日本の戦争』(小学館文庫、2005年1月刊、親本は2000年刊)
  • 坂本多加雄、秦郁彦、半藤一利、保坂正康『昭和史の論点』(文春新書、2000年刊)
  • 阿川弘之、猪瀬直樹、中西輝政、秦郁彦、福田和也『二十世紀 日本の戦争』(文春新書、2000年刊)

それから、こっちは、『拒否できない日本』で紹介されていた本。全部古本です。

  • NHK取材班『日米の衝突 ドキュメント構造協議』(日本放送出版協会、1990年)
  • アーサー・レビット『ウォール街の大罪』(日本経済新聞社、2003年)

他に、こんなのも紹介されてたので、とりあえず古本で注文しました。

  • グレン・S・フクシマ『日米経済摩擦の政治学』(朝日新聞社、1993年)
  • 対日貿易戦略基礎理論編集委員会編『公式日本人論 「菊と刀」貿易戦争篇』(弘文堂、1987年)

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今度はインド?

『榊原英資 インド巨大市場を誣??とく』

今度はインドだ! ということで、榊原英資・吉越哲雄『榊原英資 インド巨大市場を読みとく』(東京経済新報社)を読んでいます。

現在の人口10億、今後の経済成長率5?7%が見込まれ、すでに年間所得3000米ドル以上の階層が1億5000万人以上(つまり、日本の人口以上)。物価は日本の5分の1から6分の1ということなので、日本で言えば1人当たりの年収150?180万円、夫婦で300万円を超える計算になる。1991年の「新経済政策」で、市場開放を実施。IT産業の成長は有名ですが、自動車、家電などでも巨大な市場が広がりつつある、というのが榊原氏の主張。
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最近買ってしまった本…

またいろいろ本を買い込んでしまいました。いったい、いつ、誰が読むんだろう?

  • 『岩波講座 アジア・太平洋戦争』<1>なぜ、いまアジア・太平洋戦争か(岩波書店)
  • ユルゲン・エルゼサー、木戸衛一訳『敗戦国ドイツの実像 世界最強国への道?/日本への教訓?』(昭和堂)
  • 渡邉恒雄『わが人生記 青春・政治・野球・大病』(中公新書ラクレ)
  • 千葉潤『<作曲家・人と作品シリーズ>ショスタコーヴィチ』(音楽之友社、4月刊)
  • 橋本治『乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない』(集英社新書)
  • 久江雅彦『米軍再編 日米「秘密交渉」で何があったか』(講談社現代新書)
  • 山口真美『視覚世界の謎に迫る 脳と視覚の実験心理学』(講談社ブルーバックス)
  • 齋藤毅『明治のことば 文明開化と日本語』(講談社学術文庫)
  • 小林英夫『満州と自民党』(新潮新書)
  • 橘木俊詔『消費税15%による年金改革』(東洋経済新報社、9月刊)
  • ウルリック・ストラウス『戦陣訓の呪縛 捕虜たちの太平洋戦争』(中央公論新社)
  • トム・メイヤー『アナリティカル・マルクシズム』(桜井書店)
  • 副島隆彦・中田安彦『ジャパン・ハンドラーズ 日本を操るアメリカの政治家・官僚・知識人たち』(日本文芸社、5月刊)
  • 榊原英資『インド 巨大市場を読みとく』(東洋経済新報社、5月刊)
  • 中公クラシックス『ケインズ 貨幣改革論・若き日の信条』(中央公論新社)

関岡英之『拒否できない日本』

関岡英之『拒否できない日本』表紙

この本は、2004年4月27日の日記「最近読んだ本いろいろ」に書いてあるとおり、ちゃんと買ったし、そのときぱらぱらにせよ読んでいるのだけれども、あらためて探してみると、どこへ行ってしまったのか見つからず…。仕方なく、もう1度買い込んできました。(^_^;)

すでに書いたことだけれども、アメリカの『年次改革要望書』などを材料に、アメリカがどんなふうに日本を改造しようとしているか、また、これまでの日本の政府やメディアが、いかにそれに乗せられてきたかを暴露しています。それを、著者自身が自分で調べて、情報に行き着いて、点と点が結びついて、アメリカの正体が分かってきた、というところを体験風に書いているので、かなり面白く読めます。
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この間、読んだもの

この間、雑誌論文で読んだものをちょいとメモしておきます。

関岡英之「奪われる日本――『年次改革要望書』 米国の日本改造計画」(『文藝春秋』2005年12月号)

 『拒否できない日本』の著者による、「郵政民営化」後の、アメリカのねらいを明らかにしたもの。「年次改革要望書」というのは、1993年の宮沢・クリントン会談で合意されてから、毎年、双方の政府が提出しあってきた外交文書。最近のものは、駐日アメリカ大使館のホームページで読めます。そこで、アメリカが1995年以来一貫して簡易保険の廃止を要求してきています。それは、アメリカの保険業界が簡保120兆円をねらっているからだというのが著者の主張。

さて、その郵政民営化が強行されたあと、次にアメリカがねらうのは何か? それは健康保険だというのが著者の分析です。

 そういえば、小泉さん、こんどは執拗に「混合診療」をすすめようとしていますなぁ。しかし著者は、日米の医療費を比べると

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小宮山宏『地球持続の技術』

小宮山宏著『地球持続の技術』(岩波新書)

1999年刊の本ですが、最近、仕事の関係で話題にのぼったので、あわてて買い込み読んでみました。

この本の特徴は、地球持続の技術を、地球規模での物質のライフサイクルという角度から考えていること。さらに省エネがどこまで可能かも、輸送、分離、成型・加工など「素過程」に分けて理論値を考え、そこから技術的に到達可能な限界を推測しています。

たとえば水平方向の輸送は、ちょっと意外ですが、理論的にはエネルギー消費はゼロ。もちろん、これは摩擦ゼロ、ブレーキで発生する熱は全部回収し再利用する、などという理想状態でのことですが、そこから逆に、実際にはそれがゼロにならないのは、たとえばタイヤの摩擦によるロス(熱となって逃げる)、エンジンがガソリンのエネルギーを全部移動のエネルギーに変換できず、排ガス・廃熱となっているからだとか、ひとつずつ詰めていく訳です。

また、鉄やアルミは、鉄鉱石やボーキサイトから新しく生産するより、クズ鉄や廃アルミを回収して再利用した方が、はるかにエネルギーの節約になること。しかも鉄もアルミも、年々生産量が増え、地上に固定される量が増えると、当然、それがスクラップにされて回収される量も増えていくはずで、どこかで回収量と新規需要がバランスするはずです。そうなれば、もはや新しく鉄鉱石を掘り出して鉄を生産する必要がなくなり(現実には、質の問題などがあって、完全にゼロにはならないでしょうが)、資源の枯渇や、廃棄物によって地球が埋まっていくことを心配しなくてます。エネルギーの大幅な節約も可能です。

第4章「『日々のくらし』の省エネ技術」では、ヒートポンプによる暖房が非常に効率的である(これも、あくまで理論値ですが)ことが明らかにされています(ヒートポンプは、電力で、直接室内を暖めている訳ではなく、フロンを圧縮して循環させるポンプを動かすために使われているだけなので)。なんとなく、これまでエアコンで暖房するというのは、ものすごく電気を無駄にしているように思っていたのですが、とんだ勘違いでした。(^_^;)

マクロで省エネや省資源を考えるというのは、なかなか面白い視点だと思いました。
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この間買った本は…

備忘録として、ここに書いておかないと、自分でも何を買ったか忘れてしまう…。(^^;)

  • 佐々木潤之介『大名と百姓 日本の歴史<15>』(中公文庫、10月改版発行)
  • 菊池信輝『財界とは何か』(平凡社、10月刊)
  • 山田朗『護憲派のための軍事入門』(花伝社、10月刊)
  • ブレジンスキー『孤独な帝国アメリカ 世界の支配者か、リーダーか?』(朝日新聞社、10月刊)
  • 大石嘉一郎『日本資本主義百年の歩み 安政の開国から戦後改革まで』(東大出版、11月刊)
  • 唱新『中国型経済システム 経済成長の基本構造』(世界思想社、4月刊)
  • 池上彰『憲法はむずかしくない』(ちくまプリマー新書、11月刊)
  • 小宮山宏『地球持続の技術』(岩波新書、1999年12月刊)
  • アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート『マルチチュード <帝国>時代の戦争と民主主義』上(NHKブックス、10月刊)
  • 谷口義明『暗黒宇宙の謎 宇宙をあやつる暗黒の正体とは』(講談社ブルーバックス、10月刊)
  • 三井誠『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』(講談社現代新書、10月刊)
  • タニア・ハフ『ブラッド・プライス 血の召喚』(ハヤカワ文庫、10月刊)

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関志雄『中国経済のジレンマ』

関志雄『???経済のジレンマ』(ちくま新書)

著者の関志雄(カン・シユウ)氏は、1957年香港生まれ。東大大学院を卒業し、現在、野村資本市場研究所シニアフェロー。これまでに『円と元から見るアジア通貨危機』(岩波書店、1998年)、『共存共栄の日中経済 「補完論」による実現への戦略』(東洋経済新報社、2005年)などの著書と、『中国未完の経済改革』(樊綱著、岩波書店、2003年)の翻訳などがあります。今年5月には、『中国経済革命最終章―資本主義への試練』(日本経済新聞社)も刊行されていて、本書は、その簡約版といったところでしょうか。

第1章から第3章までで、「改革開放」政策の概要を紹介。第4章から第7章までで、外資導入、国有企業民営化問題、国有銀行改革、人民元切り上げという中国経済の当面する改革課題を明らかにしています。最後の2章は、こんごの発展方向を明らかにしたもので、第8章では国内の「調和のとれた発展」という問題を、第9章では、対外的な「平和台頭」論をとりあげています。
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入江昭『歴史を学ぶと言うこと』

入江昣??津??を妣??と言うこと』(講談社現代新書)

アメリカ外交史の泰斗・入江昭氏が、自分がどんなふうに歴史を学び、研究を志してきたかをふり返った一冊です。入江昭氏というと、1953年にアメリカに留学し、その後、ハーヴァード大学の大学院に進み、日本人ながらアメリカ外交史の研究者として、長くシカゴ大学、ハーヴァード大学などで教鞭とってこられた方です。
全体は3部構成。第1部「歴史と出会う」は、入江氏がどんなふうに歴史と出会い、どういうきっかけでアメリカへ留学することになったのかから始まって、大学院での修業時代、教職を求めてアメリカ大陸を西へ東へと渡り歩いたことなど、その半生をふり返っています。第2部では、「歴史研究の軌跡」と題して、入江氏の研究のあゆみを紹介。第3部「過去と現在のつながり」では、歴史を学ぶとはどういうことか、歴史認識とは何かなど、入江流歴史観を論じています。
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読まねばなるまい…

高村薫『新リア王』上高村薫『新リア王』下

今日、早めに仕事を終えて、ぷらっと紀伊國屋書店に立ち寄ったら、ありゃりゃ?? 出ちゃいましたか…。

怒れる作家・高村薫さんの最新作『新リア王』。『晴子情歌』(2002年、新潮社)の続編で、晴子の息子・彰之が、今度は、青森県の自民党代議士であり、福澤一族の長、そして彰之の実の父でもある榮と対決することに。
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連鎖視点からみた日露戦争

山室信一『日露戦争の世紀』

山室信一さんの『日露戦争の世紀――連鎖視点から見る日本と世界』(岩波新書、2005年7月刊)を読み終えました。

今年は、日露戦争100年ということで、いろんな本が出ていますが、本書は、<1>日露戦争をはさむ1世紀――つまり1855年の日露和親条約の締結から、1955年の日ソ交渉の開始までの1世紀――を、どうして「和親」から始まった日露関係がわずか50年で開戦にいたったのか、そして、その後50年の間に日本はアジアへ侵略を拡大していったのはどうしてかをたどり、また、<2>日露戦争を出発点とする1世紀を、「戦争と革命の世紀」の20世紀として、また「アジアとの交流と断絶の20世紀」として、ふり返っています。

そのための方法というのが「連鎖視点」なのですが、それは、歴史のなかで生起する「あらゆる事象を、歴史的総体との繋がりの中でとらえ、逆にそれによって部分的で瑣末と思われる事象が構造的全体をどのように構成し規定していったのか」を考えるというもの。人と人との出会いや、出来事の繋がりで、歴史の「意味」を探ろうというもののように見受けました。
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読み終えました 申京淑『離れ部屋』

申京淑『離れ部屋』(集英社)

16日のブログに申京淑さんの『離れ部屋』を読み始めたと書きましたが、今朝の通勤電車の中でようやく読み終えることができました。

小説の始まりで、作者は「これは事実でもフィクションでもない、その中間くらいの作品になりそうな予感がする」と書き、お終いでもう一度「これは事実でもフィクションでもない、その中間くらいになったような気がする」と書いています。実際、なかなか不思議な具合にストーリーは展開します。

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申京淑『離れ部屋』

申京淑『離れ部屋』(集英社)

いま読んでる最中ですが、韓国の女性作家・申京淑(シン・ギョンスク)さんの自伝的小説です。1963年生まれの彼女が、16歳でソウルに出て就職し、夜学に通いながら、小説家を目指すまでの約4年間を描いています。時代的には1978年から1981年ごろ、つまり1972年の「維新革命」をへて1979年に暗殺される直前の朴正熙独裁体制の末期、そして、1980年の「光州事件」(民主化を求める光州市の市民・学生を軍隊を使って弾圧・虐殺した事件)をへて全斗煥政権が誕生するという、本当に激動の時代です。

この時代に、貧しい田舎の家を出て、ソウルで働きながら法律の勉強をする兄を頼り、従姉妹と3人で一部屋の狭いアパートで暮らしながら、昼間は電子機器の組み立て工場で働き、夜は夜間高校に通い……、そんな“底辺”の生活が、半分事実、半分フィクションといった感じで、16年後に小説家として名をなしたあとの私からふり返られていきます。

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中村政則『戦後史』(岩波新書)

並??政則『戦後史』

日本経済史の中村政則先生の最新著です。新書1冊で、激動の戦後60年を総まくりしようという、およそ類書のない大胆な著作です。

本書の構成は、以下の通り。

序 章 「戦後史」をどのように描くか
第1章 「戦後」の成立(1945?1960年)
第2章 「戦後」の基本的枠組みの定着(1960?1973年)
第3章 「戦後」のゆらぎ(1973?1990年)
第4章 「戦後」の終焉(1990?2000年)
終 章 新しい戦争の中で―「戦後」とは何だったのか

で、著者ご本人の説明によれば、本書の特徴は、<1>「貫戦史(Trans-war histry)」という方法と、<2>目次を見ても分かるように、1960年を画期として「戦後史」をとらえる「1960年体制」論、それに<3>文献資料や先行研究をベースにした叙述の合間合間に、著者の生活体験やら「聞き書き」などを挿入するという叙述スタイル、にあるそうです。

実際、研究蓄積という点では、いわゆる歴史学の分野にとどまらず、山のように先行研究があるわけで、それらをおさえつつも、60年の歴史を詳細に書き連ねるというのではなく、上記4つの時期区分(段階区分?)にそって、それぞれの時期の特徴を浮かび上がらせるようになっています。
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森本忠夫『マクロ経営学から見た太平洋戦争』

森本忠夫『マクョ??営妣??ら見た太平洋戦争』

著者の森本忠夫氏は、1926年生まれ。戦時中は海軍航空隊員として太平洋戦争に従軍。戦後は東レ取締役、東レ経営研究所所長などを務められた方。本書は、1985年に文藝春秋社から『魔性の歴史』というタイトル(これは、荒木二郎宛の手紙で米内光政が使った言葉なのだそうです)で出版され、これまでにも文春文庫、光人社文庫などから再刊されてきたものです。

本書で森本氏は、日本が、いかに無計画、場当たり的で、現代的な総力戦をたたかう体制もなければ計画もないまま、対米戦争につっこんいったかということを詳しく明らかにされています。たとえば、日本はアメリカに資源を禁輸されたので、やむをえず東南アジアの資源を確保するために戦争にすすんだといわれることがありますが、戦争によって東南アジアを獲得し、そこから資源を日本に輸送しようと思ったら、輸送用船舶も必要だし、それを護衛する海上護衛艦も必要になるのに、そうした計画がまったく検討されていなかったうえに、戦況が悪化すると、民間の船舶建造を中止して軍艦などの建造にむりむけざるをえなくなったし、護衛艦船を戦闘に動員し、結局、航路帯を放棄せざるをえなくなったこと、その結果、結局、南方の資源を確保したものの、あまり日本に輸送できなかったことを明らかにしています。つまり、「資源確保のため」といいながら、資源活用に必要な準備はなかった、ということです。
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山中恒『アジア・太平洋戦争史』

山並??『アジア・太平洋戦争史』

山中恒さんの『アジア・太平洋戦争史――同時代人はどう見ていたか』(岩波書店)をようやく読み終えました。全体で600ページを超える大著ですが、はまりこんで夢中になって読み進めることができました。

本書が対象としているのは、主要には、1931年の「満洲事変」から1945年の敗戦までのいわゆる15年戦争ですが、話は、明治維新直後の「国軍の創設」から始まり、日清・日露戦争から、孫文の辛亥革命、そして1914年の「対華21カ条条約」と、明治以来の日本の朝鮮・中国侵攻の歴史全体に及んでいます。
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この間買った本

備忘録です。まったく、ぐちゃぐちゃです。

  • 森本忠夫『マクロ経済学から見た太平洋戦争』(PHP新書、8月刊)
  • 森本忠夫『特攻 外道の統率と人間の条件』(光人社NF文庫、7月刊)
  • 藤田英典『義務教育を問い直す』(ちくま新書、8月刊)
  • 坪井秀人『戦争の記憶をさかのぼる』(ちくま新書、8月刊)
  • 阿部善雄『最後の「日本人」 朝河貫一の生涯』(岩波現代文庫、2004年7月刊)
  • 金東椿『近代のかげ 現代韓国社会論』(青木書店、9月刊)
  • 歴史学研究会編『歴史研究の現在と教科書問題 「つくる会」教科書を問う』(青木書店、8月刊)
  • マルクス『フランスの内乱/ゴータ綱領批判/時局論―インド・中国論<上>』(筑摩書房マルクス・コレクション第6巻、9月刊)
  • 内海愛子『戦後補償から考える日本とアジア』(山川出版社、日本史リブレット、2001年刊)
  • 小野善康『不況の経済学 甦るケインズ』(日本経済新聞社、1994年刊)
  • 野田正彰『この社会の歪みについて 自閉する青年、疲弊する大人』(ユビキタ・スタジオ発行、KTC中央出版発売、8月刊)
  • 山室信一『日露戦争の世紀 連鎖視点から見る日本と世界』(岩波新書、7月刊)
  • 小菅信子『戦後和解 日本は<過去>から解き放たれるのか』(中公新書、7月刊)
  • 山田文比古『フランスの外交力 自主独立の伝統と戦略』(集英社新書、9月刊)
  • 小林英夫『満鉄調査部 「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』(平凡社新書、9月刊)
  • 三浦展『下流社会 新たな階層集団の出現』(光文社新書、9月刊)
  • 中村政則『戦後史』(岩波新書、7月刊)
  • 保阪正康『あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書』(新潮新書、7月刊)
  • 加藤周一『二〇世紀の自画像』(ちくま新書、9月刊)
  • 稲葉振一郎『「資本」論 取引する身体/取引される身体』(ちくま新書、9月刊)
  • I・F・ストーン(内山敏訳)『秘史 朝鮮戦争』(青木書店、1966年=古本)
  • 安良城盛昭『歴史学における理論と実証 第1部 太閤検地論争を中心として』(御茶の水書房、1969年=古書)
  • 石母田正『古代末期政治序説』(未来社、1964年=古書)

問題は、どうやって効率よくこれらの本を読み終えるかということ。読んでみて役に立ちそうにないと思ったら、さっさとあきらめるしかなさそうです。(^_^;)
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連休だというのに…

結局、今日は何にもせずに、一日ごろごろ。(?_?;)
やっぱり疲れてますねぇ?

少し前だけれども、考古学についての本を2冊読みました。どちらも、考古学の年代測定法に関連したものです。

  • 金関恕・森岡秀人・森下章司・山尾幸久・吉井秀夫『古墳時代の始まりを考える』(学生社、2005年5月刊)
  • 春成秀爾・今村峯雄編『弥生時代の実年代 炭素14年代をめぐって』(学生社、2004年刊)

2002年に、弥生時代の始まりがこれまで考えられていたよりも500年遡るという説が出されていたのですが、この「暦年較正年代」の正体がよく分からなかったのですが、2冊目の本を読んで、ようやく少し分かってきました。従来の学説との関係をどうするかという問題は残っていますが、年輪年代法も含め、弥生時代の実年代が相当遡るのは間違いありません。