マルクスの時代の1シリングは、いまの円に直すといくらぐらいだったのだろうか?

ひょんなことで、「マルクスの時代の1シリングというのは、いまの円に直したらいくらぐらいになるのか?」 という質問を受け、少し調べてみました。

1シリングという通貨単位は現在は廃止されてしまっています ((1971年2月13日をもって、1ポンド=100ペンスに切り替えられた。))が、かつては1ポンド=20シリング、1シリング=12ペンスでした。さらに、マルクスの時代は、金1オンスの公定価格は3ポンド17シリング10ペンス半でした。ですから、現在の金1オンスの価格がわかれば、当時の1シリングが何円ぐらいに相当するか計算することができます。

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『剰余価値学説史』はどう読めばよいのか(3)

『1861-63年草稿』220ページ(MEGA II/3.2 S.335)

さて、『剰余価値学説史』の続き。大月書店『資本論草稿集』第5分冊の170ページから。

マルクスは、「今度は、スミスについて考察すべき最後の論点――生産的労働と不生産的労働の区別――に移る」と書いているが、こんなことを書きながら、{}で括りながら、「あらかじめ、前述のことについてもう1つ」といって、再生産論にかんする書き込みをしている。ここで注目されるのは、次の部分。

年々の労働の生産物がそのうちの一部分をなすにすぎないところの年々の労働生産物が、収入に分解する、というのはまちがっている。これにたいして、年々の個人的消費に入っていく生産物部分が、収入に分解する、というのは正しい。(170ページ下段)

後半の「年々の個人的消費に入っていく生産物部分が、収入に分解する」というのは、再生産表式を使って説明すると、こういうこと。

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またもや歴史研究者には必読文献が

『歴史評論』2011年1月号 ((『歴史評論』は、歴史科学協議会が編集・発行する月刊の会誌です。))に、宮嶋博史氏が「方法としての東アジア再考」という論文を書かれています。岩波新書の「シリーズ日本近現代史」(全10冊、2006〜2010年)を取り上げたものです。同シリーズを取り上げた論評は、宮地正人氏の『通史の方法』(名著出版、2010年)を除くと、初めてだと思います。

宮嶋氏がこの論文でいちばん大きな問題として取り上げられているのは、第7巻『占領と改革』(雨宮昭一氏)です。その部分の見出しが「研究者のモラルについて」になっているのですから、その批判がどれほど厳しいか、わかるのではないでしょうか。

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「綱領教室」第1回 受講しました

先日の「古典教室」に続いて、今日から始まった「綱領教室」の第1回。講師は志位和夫委員長。早速受講してきました。(^_^)v

今日のお話は、前半は「綱領教室」の「はじめに」にあたる、なぜ綱領を学ぶのかという話。後半は、なぜ日本共産党の綱領は戦前から始まるのか、という綱領第1章を学ぶ前提のようなお話でした。

講義は、アジア政党国際会議(ICAPP)に参加した話や、尖閣諸島の領有問題や千島問題など、この間志位さん自身が先頭にたって取り組んできた問題を縦横に展開。志位さんは、綱領を学べば、情勢を歴史的な視野・世界的な視野でとらえることができると強調されていましたが、今日紹介のあった活動の1つひとつが、綱領にもとづいて歴史的・世界的な視野から問題をとらえたものだということがよく分かりました。

共産党はいま、党をまるごと理解してもらうために、有権者のあいだで広く「党を語る」活動、「綱領を語る」活動に取り組んでいますが、今日の講義は、志位さんが志位さん自身の言葉で綱領を語ったといえるものだったのではないでしょうか。僕は、なるほど「党を語る」「綱領を語る」というのはこういうことなんだ、と思って聞きました。さすが、全国を駆け巡っている委員長ならでは、ですね。

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『価値、価格および利潤』の前書き

Karl Marx "Value, Price and Profit", George Allen & Unwin Ltd., London, 1941

『賃金、価格および利潤』(英語版の書名はValue, Price and Profit)が発行されたとき、編者による前書きがつけられたのですが、いろいろな邦訳をみても、これまでその前書きを読んだことはありません。

ということで、またもや海外のネット古書店で、英語版の手に入れてみました。

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『共産党宣言』を手に入れました!!

『共産党宣言』初版(リプリント版)

こんどは、1848年に発行された『共産党宣言』の初版を手に入れました。もちろんリプリント。いわゆる23ページ本で、1965年に旧東ドイツで発行された、リプリント版としては一番よく出回っているものです。中身はヒゲ文字ですので、オイラにはほとんど読めません(涙)。

海外の古書サイトで、送料込みで£12.54、約1,700円。意外と安く手に入りました。(^_^)v

買いました!! フランス語版『資本論』

フランス語版『資本論』(極東書店1967年リプリント)

フランス語版『資本論』。私が手に入れたのは、1967年に極東書店が発行したリプリント版です。ホンモノは100万円以上しますので、とても僕には買えません。(^_^;)

フランス語版『資本論』は、1872年から75年にかけて、パリのラシャートル社から9セット44分冊で発行されました。訳者はM.J.ロワですが、マルクスは、ロワの翻訳に満足せず、訳文をすべて校閲して大幅な書き直しをするなど、手を加えました。

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「古典教室」第1回 『賃金、価格および利潤』(その1) 受講しました

昨日、日本共産党の「綱領・古典の連続教室」の古典教室第1回がひらかれ、私も受講してきました。講師は不破哲三さん、古典教室の第1回と来月(第2回)のテキストは、マルクスの『賃金、価格および利潤』です。

講義は約90分。前半は、「古典」とは何か、「マルクス、エンゲルスはどんな時代の人か?」、あるいは『賃金、価格および利潤』の書かれた背景などの解説。そのうえで、『賃金、価格および利潤』の第1章から第5章は、経済学の理論が分からなくてもすぐに分かるウェストン君のたわごとへの批判で、いろいろおもしろいところあるが今回は割愛しますと断って、講義は第6章に進みました。

まずなにより、不破さんの講義は分かりやすくて、おもしろい。古典というと、難しい、読みにくいと敬遠する向きもありますが、そうしたイメージを一新してくれたのではないでしょうか。それでいて、理論的には、なるほどと唸らされるところがいっぱいあり、私自身、古典の講義、解説というのはこうでなくちゃいけないとつくづく反省させられました。

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『賃金、価格および利潤』第6章を読んでみた

明日から始まる「連続教室」を前に、テキストのマルクス『賃金、価格および利潤』の第6章を読み返してみました。

第5章まではウェストン君のたわごとへの反論で、第6章から本格的な経済学の理論が始まる。これは、従来から言われていることです。

そこでマルクスが最初に提示する問題は、「商品の価値とは何か? それはどのようにして決定されるか?」というもの。そして、以下マルクスの説明が始まるのですが、僕は、この部分を、『資本論』第1部第1章第1節の説明を簡単に繰り返したものだと思って読んでいました。多くの方もそうだろうし、新日本出版社の古典選書版『賃労働と資本/賃金、価格および利潤』の125ページには、わざわざ「以下の叙述については、『資本論』第1巻第1章第1節参照」という訳注までついています ((この訳注が間違っているということではありません。この訳注から、『賃金、価格および利潤』を『資本論』第1章第1節の要約解説だと誤解されるとしたら、それが問題だということが言いたいだけです。誤解のないように、念のため。))。

しかし、つらつら読み返してみると、価値の社会的実体が労働であり、価値の大きさを決めるのは商品に体現された労働の量であることを明らかにした後で、マルクスは、次のような「質問」を取り上げていることに気づきました。

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『剰余価値学説史』はどう読めばよいのか(2)

サー・ジェイムズ・スチュアート、重農学派と、文字どおり「剰余価値」にかんする諸学説を扱ってきたマルクスだけれど、「A・スミス」になって、ちょっと調子が変わってくる。

草稿ノート第6冊243ページ(大月版『資本論草稿集』第5分冊、51ページ)から、スミスの剰余価値論について書かれているが、ノート257ページ(同、77ページ)にきて、{}にくくられた次のような書き込みがある。{}は、草稿でマルクスが[]でかこっていた部分。

{ここでなお次のことを考察するべきであろう。(1)A・スミスにおける剰余価値と利潤との混同。(2)生産的労働に関する彼の見解。(3)彼が地代と利潤とを価値の源泉としていること、および、原料や用具の価値が収入の3源泉〔賃金、利潤および地代――大月版訳注〕の価格と別個に存在したり別個に考察されたりしてはならないような商品の「自然価格」についての彼のまちがった分析。}

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林基さんの訃報

本日新聞を眺めていたら、日本近世史の林基氏の訃報が出ていました。

林基さんと言えば、『百姓一揆の伝統』(1955年刊)と『続・百姓一揆の伝統』(1971年)が有名。最近は名前をお見かけすることもすっかりなくなっていて、正直なところ、訃報をみてまだご存命だったのかと驚いたほど。しかし、私が学生の頃は、まだまだ日本近世史の必読文献でした。ご冥福をお祈りします。

訃報:林基さん96歳=元専修大教授、日本近世史専攻:毎日新聞

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『剰余価値学説史』はどう読めばいいのか?

『剰余価値学説史』(「1861-63年草稿」の「剰余価値にかんする諸学説」部分)には何度か挑戦していますが、まったく歯が立ちません。(^_^;)

そもそもマルクスは、何を明らかにするためにこれを書いたのか? それを考える以前に、全体の組み立てさえよく分からない。そのまま闇雲に読み始めてみても、さっぱりつかめいない。

マルクスがここはこうだと見通しをもって書いている部分と、マルクス自身が経済学者の著作と格闘している探求的部分とがあるようだ。そこを区別しながら読み進むしかないのだろうか。

まず、全体の組み立てを整理しておこう。ということで、まず『資本論草稿集』(大月書店)の目次から。

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脇田晴子さんが文化勲章を受章

今日、2010年度の文化勲章受章者が発表されましたが、そのなかに日本中世史の脇田晴子さんのお名前がありました。おめでとうございます。

蜷川幸雄、三宅一生氏に文化勲章…ノーベル組も:読売新聞
文化勲章受章者・文化功労者:主な業績:毎日新聞

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マルクスの市場価値論

高橋勉『市場と恐慌』(法律文化社)

高橋勉『市場と恐慌』(法律文化社、2009年)を読み始めた。『季刊・経済理論』第47巻第3号(2010年10月、桜井書店)では、長島誠一氏が詳しい書評を書かれているが、なかなかの理論作品であることは間違いない。

まだ第1部「市場メカニズムに関する基礎的考察」の第2章までしか読んでいない。第1章で、投下労働を基準とした均衡が成り立っている場合には使用価値での部門間均衡が成り立つが、投下資本を基準とした均衡、投下自己資本を基準とした均衡では、均衡水準が動くので、使用価値での部門間均衡が崩れることが明らかにされている。投下自己資本を基準とした均衡というのが新しい議論なのだが、まだよく分からないところもある。いずれにせよ、生産価格が成り立つようになると、使用価値での部門間均衡が崩れ、そのことが資本主義の不均衡の一番根底にある不均衡ではないかという議論は、よく分かる。

しかし第2章でマルクスの市場価値論について著者が論じたもののを読んでいると、いろいろと疑問になるところが出てきた。それで、あらためて『資本論』を読み返してみた。自分でもまだも整理できていないが、とりあえずのメモとして、気づいたことなどを書いておく。

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これは凄い論文だ!! 『経済』11月号

『経済』2010年11月号(新日本出版社)

新日本出版社発行の雑誌『経済』11月号が届いたので、早速読んでいます。その中でも、これは素晴らしい論文だと思ったのは、貧困問題や非正規雇用の問題を取り上げた2本の論文。

 唐鎌直義「なぜ資本主義は貧困を広げるのか」
 関野秀明「非正規労働は『自己責任』なのか」

いずれも、貧困問題、非正規雇用の問題に、マルクス『資本論』の「相対的過剰人口(産業予備軍)」論の立場からきわめて鋭く、戦闘的にせまって、資本主義のもとでの貧困とはいったい何か? 「非正規雇用」問題の本質は何か? ずばり真正面から解明されています。

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あと1冊、これも読んでます

赤嶺守『琉球王国』(講談社選書メチエ)

あともう1冊、いま読んでいる本を忘れていました。赤嶺守氏の『琉球王国』(講談社選書メチエ)です。

沖縄の歴史というと、第二次世界大戦末期の沖縄戦の話や、戦後の米軍基地問題を取り上げたものはいろいろありますが、それ以前の沖縄の歴史となると、なかなか手軽に読める本がありません。そういうなかで、本書は、11〜12世紀に始まる「グスク時代」から説き起こして、琉球処分にいたるまでの琉球王国の歴史を通史的に描いた貴重な一冊です。

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いま読んでいる本

村岡俊三『グローバリゼーションをマルクスの目で読み解く』(新日本出版社)小林賢齊『マルクス「信用論」の解明』(八朔社)安西徹雄『英文翻訳術』(ちくま学芸文庫)

左から、村岡俊三『グローバリゼーションをマルクスの目で読み解く』(新日本出版社、2010年9月)、小林賢齊『マルクス「信用論」の解明』(八朔社、2010年7月)、安西徹雄『英文翻訳術』(ちくま学芸文庫、1995年)

村岡俊三氏の著作については、ここでも2冊(『マルクス世界市場論』『資本輸出入と国際金融』)紹介しましたが、本書は、今月刊行されたばかりの新刊書。「グローバリゼーション」(あるいはグローバリズム)の実態や現状分析にかんする本は数あれど、この本はそうした実態を分析した本ではありません。

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あらためて勉強します 河音能平著作集1『中世の領主制と封建制』

河音能平著作集1『中世の領主制と封建制』(文理閣)

2003年になくなった日本中世史研究者の河音能平氏の著作集が文理閣から出版されることになり、1冊目の『中世の領主制と封建制』を手に入れました。同巻は、1971年に刊行された『中世封建制成立史論』(東大出版会)所収の論文を中心に、その後に発表された関連論文を収録しています。

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亜洲青年管弦楽団2010、芝原拓自、電磁機関

アジア・ユース・オーケストラ2010

アジア・ユース・オーケストラ2010。8月はせっかくの夏休みなのに、オケはオフシーズン。ということで、生オケが無性に聴きたくなって、本日はぷらりとかようなコンサートへ行ってきました(オペラシティ)。

中国、台湾、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの、17歳から27歳の若者2万人のなかから選抜された108人のオーケストラ。3週間のリハーサルキャンプのあと、3週間でアジア各国16カ所で公演をして回るそうだ。

本日のプログラムは、

  • シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 op.129
  • マーラー:交響曲第5番 ハ短調

指揮はジェームズ・ジャッド、チェロ独奏は王健(ジャン・ワン)。

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