時計の仕組みを調べてみる

『資本論』第12章「分業とマニュファクチュア」第3節「マニュファクチュアの2つの基本形態」で、マルクスは、異種的マニュファクチュアの例として、時計のマニュファクチュア的分業を取り上げています。

そこには、1つの時計を組み立てるにあたっての細目労働の職名がずらりあげられているのですが、なにせ、そもそも時計というのはどういうふうに作られるのかを知らないので、さっぱり分かりません。

それで、なにか参考になるものはないかと思っていたら、こんな本を見つけました。

本間誠二監修『機械式時計 解体新書』(大泉書店)

本間誠二監修『機械式時計 解体新書』(大泉書店)。昨年12月に出版されたばかりで、クラシカル・ウォッチの魅力を紹介するためのものなのですが、その前段として、機械式時計のメカニズムについても詳しく紹介をしています。

マルクスは、時計マニュファクチュアについて、次のように述べています。

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『1861-63年草稿』を読む(1)

大月書店「資本論草稿集」の『1861-63年草稿』<1>。

第3章「資本一般」I「資本の生産過程」1「貨幣の資本への転化」の部分。

『資本論』では、第2篇「貨幣の資本への転化」第4章「貨幣の資本への転化」に相当する部分だが、『資本論』では次の第3篇「絶対的剰余価値の生産」に含まれる「労働過程」や「価値増殖過程」、「貨幣の資本への転化が分解する2つの部分」(第6章「不変資本と可変資本」に相当)などが、ここに含まれている。

42ページ下段〜43ページ上段にかけて「資本主義的生産」が登場する。これが『1861-63年草稿』での初出か? しかしすでにマルクスは、「資本主義的生産」は自明な用語として使っている。「資本主義的生産」という言葉は、すでに「資本にかんする章のブラン草案」や「引用ノートへの索引」「私自身のノートにかんする摘録」(『資本論草稿集』第3分冊)に登場する。「資本主義的生産の制限」という表現が登場する(「自分自身を止揚する資本主義的生産の諸制限」454ページ上段、483ページ下段、515ページ上段) ((重田澄男『再論・資本主義の発見』桜井書店、2010年、によると、「資本主義的」という用語は「プラン草案」には1回、「私自身のノートにかんする摘録」では14回登場するらしい(同書、111ページ)。このことからみても、「プラン草案」→「私自身のノートにかんする摘録」という執筆順序が想定できる。))。「資本主義的」という形容詞が初めて登場するときに、それが「資本主義的生産の諸制限」という角度から登場したことは興味深い。

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とりあえず『資本論』第1部読破

かなり前から取り組んでいた『資本論』第1部をドイツ語とにらめっこしながら読む作業。

いろいろな発見を含みつつ、とりあえず、本日、無事、第25章「近代の植民地理論」まで読み終えることができました。ヽ(^o^)/

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CDで聴く『資本論』

audio CD--Karl Marx:Das Kapital(6CDs)

audio CD--Karl Marx:Das Kapital(6CDs)

注文していた『資本論』の朗読CDが届きました。

さっそく聴いてみましたが、ただ延々と『資本論』を朗読しているだけ。もちろんドイツ語で、カピタルとかアルバイツ、ポリティシェ・エコノミなど、ところどころ分かる単語が出てきますが、あとはチンプンカンプン…

しかし、文字でしか追ったことのなかった『資本論』がネイティブの発音で聴ける、というのは、ちょっと不思議な感覚です。(^_^;)

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「第3の項目 果実をもたらすものとしての資本」の読み方

マルクス『1857-58年草稿』のIII「資本にかんする章」の最後の部分「第3の項目 果実をもたらすものとしての資本。利子。利潤。(生産費用、等々)」の部分をどう読むか。

中身でなく、マルクス自身の書き込みから、マルクスの思考の運びを考えてみました。手がかりとなるのは、『資本論草稿集』第2分冊573ページ下段。そこには、区切り線のあとに「本題に戻ろう」と書かれています。

そこで問題。はたして、マルクスは、ここで、どこまでさかのぼって「本題」に戻ったのでしょうか?

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今度はバベジ『機械と製造業の経済論』

バベジ『機械と製造業の経済論』

バベジ『機械と製造業の経済論』

ユア『工場の哲学』と並んで、マルクスが機械を論じるさいに大いに参考にしたバベジ『機械と製造業の経済論』(初版1832年、第3版1846年)を手に入れました。

といっても、これは当時の版本でもリプリントでもありません。届いてからはじめて分かったのですが、Google Booksで公開されている画像データをOCRに読み込んで、文字データに変換し、それをそのまま印刷したものです。

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手に入れました(^_^)v 置塩信雄『現代経済学II』

置塩信雄『現代経済学II』(筑摩書房)

置塩信雄『現代経済学II』(筑摩書房)

ずっと探していた置塩信雄先生の『現代経済学II』(筑摩書房、1988年刊)をようやく手に入れました。

置塩先生の本をきちんと勉強し始めたのは、1996年にとある学習会で直接先生にお会いしてから。古本屋を探しては、1冊また1冊と手に入れて読んできました。『現代経済学II』には、利潤率の概念、景気循環論、またハロッド理論やマネタリズムの批判があって、是非とも手に入れたかった1冊です。難しい数式がいっぱいあって、根っからの文科系人間にはかなりハードですが、がんばって勉強したいと思います。

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3つの工場調査委員会

前項の続き。

上製版843ページ3-4行目(新書版846ページ左から3行目)に出てくる「産業調査委員会」が、「児童労働調査委員会」のことであることは、前回指摘したとおり。

これに刺激されて、ほかにもいろいろ登場する「委員会」について調べてみました。

たとえば、その直後には、「1840年に児童労働にかんする調査のための議会委員会が任命されていた」(新書版846ページ最終行)と出てきます。

さらに、次のページ(フランス語版から第4版に取り入れられた部分)には、こんな記述も出てきます。

議会は、1863年の委員会の諸要求を、かつての1842年の要求のようにあえて拒絶しようとはしなかった。

さらに、数行後にはこんな記述も。

1867年2月5日の開院式の勅語のなかで、当時のトーリー党内閣は、その間1866年にその仕事を完了していた委員会の最終提案にもとづいて、さらに別の諸法案を発表した。

さらに、新書版851ページには、「1862年の調査委員会」「1840年の調査委員会」というのが出てきます。

これらの「委員会」は、何の委員会なのか? いったいイギリスにはいくつ委員会があるのでしょうか?

いろいろ調べてみると、イギリスでは「児童労働調査委員会」とか「工場調査委員会」といわれるものは3次にわたってつくられていたことが分かりました。正式名称などは、いまいち確認しきれませんでしたが、いちおう以下のとおりです。

  • 第1次は、1833年につくられた「工場児童雇用調査委員会」。33年、34年に報告書を下院に提出しました。
  • 第2次は、1840年に組織された「鉱山および炭坑、ならびに商工業における児童および青少年の雇用にかんする調査委員会」。これは1840年の下院の議決にもとづきつくられた委員会で、だからマルクスは「議会委員会」と書いているわけです。この委員会は、1842年に第1次報告を、1843年に第2次報告を提出。第1次報告が鉱山労働にかんする調査報告で、マルクスが「1842年の要求」といっているのはこの報告書のことです。エンゲルスが『イギリスにおける労働者階級の状態』で、この委員会の報告を活用しています。
  • 第3次が、「児童労働調査委員会」(正式名称は「工場法未適用職業・製造業、すなわち、陶器、黄燐マッチ、ファスティアン織裁断、レース・メリヤス機械、煙突掃除における児童労働にかんする委員会」?)で、1862年に組織され、1863年から66年まで、5次にわたる報告書を発表。これが『資本論』で一番多く引用されている「児童労働調査報告」です。先ほどマルクスが「1863年の委員会」とか「その間1866年にその仕事を完了していた委員会」といっていたのは、この委員会のことです。

いずれの委員会も「工場調査委員会」あるいは「児童雇用調査委員会」などと略称されることあったので、マルクスは、「現在の調査委員会」とか「1840年の委員会」とか呼んでいる訳です。

ここまで調べて、はじめて意味がわかったのが、第7章「剰余価値率」第3節「シーニアの『最後の一時間』」の原注(32)に出てくる、次の文章。

レナド・ホーナーは、1833年の工場調査委員の一人であり、1859年までは工場監督官、実際上の工場監察官であって、彼は、イギリスの労働者階級のための不滅の功績をたてた。

現在は、この「監察官」というのにだけ訳注がついていますが、実は、ここの「1833年の工場調査委員」というのは、上で説明した第1次の「工場児童雇用調査委員会」のことだったのです。

レナド・ホーナーは、1833年に初めて工場監督官制度がつくられたときから工場監督官として労働者の権利を守ってたたかった人物として有名ですが、実は、その前に、1833年に「工場児童雇用調査委員会」がつくられたときに委員の1人に任命されて、このときから労働者の権利を守るためにがんばっていたのです。これについては、Leonard Horner – Wikipedia, the free encyclopediaをご参照ください。

なお、『資本論』では「児童労働調査委員会」という翻訳が定着していますが、英語ではChildren’s Employment Commissionなので、「児童雇用調査委員会」という方が正確ではないかと思います。『資本論草稿集』では、第2次の委員会について「児童雇用調査委員会」という訳語をあてています。また、『イギリスにおける労働者階級の状態』では、大月書店『全集』版でも、新日本出版社・古典選書シリーズ(浜林正夫訳)でも、「児童雇用調査委員会」と訳されています。

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最後まで叙述の拡充に努めたマルクス

少し前から『資本論』第1部、第13章「機械と大工業」の第9節「工場立法(保健および教育条項)。イギリスにおけるそれの一般化」を読んでいます。その中で、今日、いろいろ調べて、わかったことがあります。相変わらず、『資本論』の理論的な本筋には全然関係ありませんが、わかってみると「なるほどなぁ」と思えることばかりでした。

上製版844ページから859ページ、新書版847ページから864ページにかけての部分。この部分は、実は、マルクスがフランス語版(1872年)のさいに大幅に叙述を拡充し、それをエンゲルスが第4版(1890年)のさいに取り入れた部分です。新日本版では、訳注でそのことが指摘されていますが、広い部分に訳注がばらばらに書かれているので、ちょっと分かりにくいところです。

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マルクス時代の最先端産業?!

『資本論』第13章のなかで、マルクスは、機械の使用にともなって労働者数が相対的に減少する一方で、生産諸手段や生活諸手段がよりたくさん生産されるようになると、「運河、ドック、トンネル、橋など」のような「その生産物が遠い将来にしか実を結ばないような産業部門」が拡大すると指摘しています(第6節「機械によって駆逐された労働者にかんする補償説」)。

そのなかで、マルクスは、「現在、この種の主要産業とみなすことができるのは」として、ガス製造所、電信業、写真業、汽船航運業、鉄道業をあげています。いってみれば、これら産業が、当時の「最先端産業」だったわけです。(新日本出版社『資本論』新書版<3>770ページ、注222の後ろ)

 労働者数が相対的に減少するもとで、生産諸手段および生活諸手段が増加することは、運河、ドック、トンネル、橋などのように、その生産物が遠い将来にしか実を結ばないような産業部門での労働の拡大を促す。……現在、この種の主要産業と見なすことができるのは、ガス製造所、電信業、写真業、汽船航運業、および鉄道業である。(一部改訳)

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メカニズムやシステムの方が分かりやすいんじゃないでしょうか?

『資本論』第13章「機械と大工業」を読んでいて、ふとわいた疑問です。

たとえば、機械と道具の違いについてマルクスは、機械の場合は、道具が「人間の道具」としてではなく、「1つの機構の道具」になっていると説明しています(新日本出版社、新書版『資本論』第3分冊、647ページ)。この「機構」の原語は、Mechanismus です。

確かに、ドイツ語の Mechanismus は英語で言えばメカニズム mechanism ですから、辞書的には「機構」という訳語で問題ありません。しかし、「機構」というと、たとえば NATO(北大西洋条約機構)のように、具体的な物ではなく、組織・制度を指す場合もあります(要するに「機構」という言葉には、Organismus もしくは Organisation の訳であるという可能性がつきまとうわけです)。だから、「機構の道具」と言われても、今ひとつピンとこないのです。

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その密度は「労働時間の密度」か?

『資本論』第1部第13章「機械と大工業」の第3節「労働者におよぼす機械経営の直接的影響」のなかの、さらに「c 労働の強化」のなかに、こんなくだりが登場します(注157のついているところ)。

与えられた時間内へのより大量の労働のこの圧縮は、いまや、それがあるがままのものとして、すなわちより大きい労働分量として、計算される。「外延的大きさ」としての労働時間の尺度とならんで、いまや、労働時間の密度の尺度が現われる。(新日本版『資本論』、新書版<3>,709ページ、上製版Ib,706ページ)

問題は、この「労働時間の密度」です。

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それは綿実か、実綿か?

『資本論』第13章「機械と大工業」のなかで、「綿繰り機」の話が出てきます。

「綿を繰(く)る」というのは、摘み取った棉 ((植物のワタのことを漢字では「棉」と書きます。))(ワタ)の実から種子を取り除いて、綿の繊維 ((棉の実から種子をとった繊維を「綿花」といいます。綿花というのは、棉の花のことではないのでご注意を。))を分離する工程のことです。そもそも綿というのは、棉の種子に生えている毛のようなものなので、糸にする場合には、まず種子をとらなければなりません ((ちなみに、その種子からは油がとれ、「綿実油」(めんじつゆ)と呼ばれます。ちょっと高品質な食用油として市販されています。で、油を搾った種子の残りかすは「綿実粕」として肥料や飼料になります。))。

それを、たとえば新日本出版社の『資本論』では次のように書かれています。

綿紡績業における変革は綿実から綿の繊維を分離するための“綿繰り機”の発明を呼び起こした……(上製版『資本論』、新日本出版社、Ib、661ページ)

しかし、昔、日本近世史のゼミで綿作の話を勉強したときには、摘み取ったままの棉の実は「実綿」(「じつめん」または「みわた」と読む)と言ったはず…。はて、「実綿」なのか「綿実」(「めんじつ」と読む)なのか? 手元にある国語辞典を引いても、「実綿」も「綿実」も出てきません。いったい、どっちが正しいんでしょうか。

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いろいろな資本論

海外の古本サイトで、『資本論』をあさっていると、実に、いろいろな『資本論』に出くわします。

マルクス、エンゲルスが直接携わって出版された『資本論』には、ご存知のように、次のものがあります。ドイツ語各版は、すべてマイスナー社から出版。

1867年   第1部ドイツ語初版
1872〜73年 第1部ドイツ語第2版
1872〜75年 第1部フランス語版(マルクスが仏訳文を点検)
1883年   マルクス没
1883年   第1部ドイツ語第3版(エンゲルス編集)
1885年   第2部ドイツ語初版(エンゲルス編集)
1887年   第1部英語版(エンゲルス監訳)
1890年   第1部第4版(エンゲルス編集)
1893年   第2部ドイツ語第2版(エンゲルス編集)
1894年   第3部ドイツ語初版(エンゲルス編集)
1895年   エンゲルス没

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57-58年草稿「固定資本・流動資本」のところをどう読むか

『1857-58年草稿』を読んでいます。マルクスは、一応、経済学の本を書くつもりでこの草稿を書き始めたとはいえ、途中で、ああでもないこうでもないと考え始めると、その「ああでもない、こうでもない」をそのまま草稿に書き込みながら考えをすすめています。だから、『草稿』を読んでいくときは、個々の記述を読み取るだけでなく、マルクスの思考の流れをつかむことが大事になってきます。

ということで、先日から、固定資本・流動資本関係のところを読んでいますが、僕自身は、マルクスの書いた中身を理解するので精一杯で、マルクスの思考の流れはさっぱりつかめませんでした。

でも、よく読むと、マルクス自身が「さて、本題に戻ろう」とか「上述の論点を詳論するまえに」とか、「最後に」とか、ちゃんと手がかりを書いています。

ということで、教えてもらった、この部分の組み立てをもとに、自分なりに、マルクスの思考の流れを読み取ってみました。はたして、どうでしょうか?

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今度はマイスナー版『資本論』を手に入れました(^^)v

マイスナー版『資本論』全3巻

今度は、マイスナー版の『資本論』を手に入れました。(^^)v

マイスナーというのは出版社の名前で、『資本論』は初版からこのマイスナー社から出版されました。マイスナー版といわれているのは、その中でも、マルクス、エンゲルス没後にマイスナー社が増刷したものを言います。ちなみに、私が手に入れたのは、第1巻が1917年刊の第7版、第2巻は1910年の第4版、第3巻は1911年の第3版です。

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