国際法の最上敏樹氏の最新著『いま平和とは』(岩波新書)を読みました。
読み終えていちばんの感想は、とにかく読みやすいこと。考えるべきテーマは微妙で、多様なのですが、著者は、それらを“一刀両断”にするのでなく、問題の多様性をできるだけ丁寧にとりあげ、微妙な問題にきちんとつき合いながら論じてゆきます。にもかかわらず、読みやすいというのがこの本の特徴だと思います。
取り上げられている論点は、本当にたくさんあります。国連とは何か、国連による集団安全保障とは何かという問題(第2話)、国際人道法と国際刑事裁判(第3話)、そもそも「平和」とはなにか(第4話)、人道を守るための武力介入は許されるのか(第5話)といった問題が、具体的な問題として、具体的に論じられています。最後の第8話と第9話では、「和解」の問題が、世界の問題として(第8話)、そして日本の課題として(第9話)取り上げられています。それは、いかに世界に向かって人びとを、そして自分自身を開いていくかという課題。これは思想の課題であると同時に、実践の課題でもある訳で、まさに「新しい戦争」の時代に、分断と対立の理由があらゆるところに吹き出しているときに、平和とは何かを「あきらめずに考える」ことの意味が、じわ?っと伝わってきます。
【書誌情報】書名:いま平和とは――人権と人道をめぐる9話/著者:最上敏樹/出版社:岩波書店(岩波新書、新赤版1000)/出版年:2006年3月/定価:本体740円+税/ISBN4-00-431000-8
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